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「教科書問題」の深奥
順風満帆の小泉政権という表現があるが、現実には茨の道ばかりしかない。そうしたなか、国際的に注目を集めているのが教科書問題である。とくに支那北京政府と韓国からの抗議は厳しい。
参院選を直前に控えた7月25日には、ベトナムのハノイで韓国の韓昇洙外相(外交通産相)が田中真紀子外相に面談を求め、「日本の中学歴史教科書が未来志向の韓日関係を築くうえに深刻な問題である」と申し入れを行っている。田中外相は、「検定制度に従って真摯に行ったものであり再修正はあり得ない」と理解を求めたが、韓国側の態度は非常に厳しいものであった。
教科書問題に対しては、支那、韓国それぞれ若干の差異を持っている。まず韓国について考えてみよう。
韓国における日本の教科書問題のポイントは2点ある。第一は、慰安婦記述問題。第二は韓国の国内事情である。
韓国が日本の教科書を問題にしているのは、古代や中世、近代における全分野における日韓関係ではない。たった1点、慰安婦の記述である。今回検定を通
った歴史教科書2冊に、「慰安婦」の記述がされていなかった。平成5年(1993)年以降、全教科書に記述されていた文字が一部で消されたことが問題視されているのだ。
「慰安婦」とは戦時下という異常時におけるセックス処理の話であり、義務教育の現場で教えにくいとする教師側からの注文が主な理由で、記述がなくなったものだが、韓国側はこれに猛反発した。
慰安婦問題は平成5年以降、日本にとって避けて通れないものとなった。
この年、韓国側が用意した自称「元慰安婦」16人の『証言』を、日本政府はウラを調査することなどまったく無しに、鵜呑みにしてしまい、平成5年8月4日、河野官房長官が「強制連行を認める」公式談話を発表してしまったのである。
その後、慰安婦強制連行を巡っては、裁判沙汰に発展する気配まであったが、いずれにしても日本側はあらゆる調査を尽くしても強制連行の証拠を見つけることができなかった。
ところがこれ以降、韓国側は「河野官房長官談話」そのものを「慰安婦強制連行の証拠」とするようになった。この一事だけでも、まさしく河野洋平は、戦後最大の売国奴だと決めつけることができる。ところが河野洋平に対する抗議等は今日に至るまで軽微なものに終始している。不思議な話だ。
じつは日本の歴史教科書はかつて国際問題化したことがある。昭和57年(1982年)のことだ。日本の歴史教科書のなかに、それまで「侵略」と記述されていたものを「侵出」と言い換えたことに対する抗議だった。
このときの韓国大統領は軍人あがりの全斗煥。彼は大統領になってまだ1年余で、その政権基盤も固まっていない状態だった。そんな時に起きた「侵略・侵出問題」を、彼は存分に利用した。この問題で韓国内の意思を統一し、対外的には日本に「近隣諸国条項にも配慮する」と言わせしめて強い大統領を演出した。
さらに全斗煥は、二つの政策により、政権基盤の確立と対日外交姿勢を強化していった。それは第一に「独立記念館建設」であり、第二に「克日運動の展開」である。
独立記念館とは、表向きには「正しい歴史を後世に伝えるために建設」されたもので、そこには蝋人形によって旧日本軍の残虐行為が延々と描き出されている。この人形館の拷問や強奪、戦闘シーンを見た韓国人なら、まず間違いなく反日思想が燃え上がることだろう。毎年、8月15日にはこの独立記念館で独立祭典が挙行されるが、この記念館建設の費用は日本政府が負担している。
克日運動とは、それまで韓国内に漠然と存在していた「反日感情」を「日本を超克しよう」とする運動にまで高めるものだった。そしてこれが日本に対しては「知日運動」という形で紹介され、日本に100億ドルの借款を申し入れ、これが成立している。全斗煥による「克日運動」は「知日運動」となって韓国内に広まっていった現実も一方には存在しているが。
今回の韓国における「日本の歴史教科書問題」は、まさしく韓国内の国情によるものと考えて良い。
現在の韓国政局は1年半後の大統領選に向かっている。
しかも与野党の対立、与党(民主党)内部の対立を抱え、金大中大統領は孤立化した状況にある。こうした韓国政界の事情が、日本の教科書問題追及に重大な影を落としている。
金大中は「歴史的」と表現される南北会談を成功させると同時に、友好的日韓関係の構築に腐心してきた。とくに「防衛交流」の現場では、海難救助活動の名目で日韓両軍が共同訓練を行ったが、これは結果
として、韓国の港に日本の海自艦が日の丸を掲げて入港するという衝撃的シーンを生み出してしまった。
前大統領・金泳三は、こうした金大中の日韓友好親善政策を批判してきたが、この批判に野党が乗ったのだ。
さらにまた、日米韓三国による軍事体制というものは、北朝鮮にとっては脅威以外の何ものでもない。韓国内に存在する親北朝鮮派は、軍事的日韓合同にクサビを打ち込み、最終的には日韓防衛協定の破棄にまで持ち込もうと考えている。
教科書問題で日本を叩き、強いては日韓の間に溝を作ろうとする動きが、ここにある。 また、孤立無援となった金大中ではあるが、彼が一夜にして栄光の大統領となれる秘策が一つ残されている。それは金正日ソウル訪問が実現した時である。
いかにして金正日をソウルに招き入れるか? 金大中復活のためには、それ以外の手段はない。そのためには金正日に大プレゼントをする必要がある。では、今、金正日・北朝鮮にとって何が重大問題なのか?
北朝鮮最大の懸念は、人権問題である。北朝鮮という国家が「人権蹂躪国家だ」と国際的に烙印を押されることがあれば、それは北朝鮮崩壊に繋がる。そのことは金正日は痛いほど理解している。
この問題の解決は、歴史に学べば良い。恐らく韓国、北朝鮮サイドはこう考えたのではないだろうか。
パレスチナの人々が2000年にわたり生活していた土地に、突如としてイスラエル国家が誕生した。そしてイスラエルは、かつてその地に住み生活してきた人々を脅かし、生命を奪い、人権を蹂躪し続けた。だがイスラエルはこう強弁する。「われわれはナチスにより悲惨なホロコーストという民族的体験の歴史を持つ」と。ホロコーストを絶対神聖化し、一切の批判を排除することで、ユダヤ人国家イスラエルは正義の国として存続できるのだ。
朝鮮民族にとって日本軍の慰安婦とは、ホロコーストなのだ。この人権蹂躪の事実を追及し続けることは、「北朝鮮=人権蹂躪国家」という烙印から逃れる唯一の手段なのだ。
そして、南北統一に向けて前進しノーベル平和賞を受賞した金大中が、再び民族の英雄として輝くためには、金正日ソウル訪問が絶対であり、慰安婦問題追及が絶対なのである。
かつて昭和57年の全斗煥時代の教科書問題の折りに韓国に出かけた日本人は、いつ自分が襲われるかわからないほど緊張したと伝えられる。それほど韓国内の反日感情は高まっていたのだ。では、平成13年夏の今日、韓国の状態はどうか?
ソウル市内は日本人観光客で溢れ、カラオケでは日本の流行歌が歌われている。どこにも反日感情など存在していない。わずかに大学周辺などに「反日ビラ」「反米ビラ」が貼られているが、大学生たちは就職活動や趣味に忙しく、ビラに目を止める者などいない。日本の歴史教科書糾弾運動はごく一部で、まるで官製抗議行動のように行われるだけであり、ビラを貼っているのも明らかに北朝鮮工作員の仕業と考えられる。
日本が何と謝罪しようが、教科書でどんな記述をしようが、それが問題なのではない。慰安婦問題追及は、追及する行為そのものが必要なのだ。
したがってわが国がとるべき態度は簡単である。
韓国政府の抗議など一切無視すること。ただこれのみである。
支那北京政府の対応
日本の歴史教科書を問題にしているのは、韓国だけではない。支那北京政府の場合、とくに扶桑社の歴史教科書に対して「強烈な遺憾と不満」(唐家セン外相)を表明している。だが、支那北京政府の反応は、韓国政府とはまた違ったニュアンスを持っている。
そもそも北京政府の対日姿勢は、中国共産党という組織そのものの正統性の問題に関わってくる。中国共産党、毛沢東共産党とは、その存在理由を「抗日戦争を戦い抜いて勝利した」という1点に置いている。極論を言えば、中国共産党とは「悪者である日本と戦って勝った」存在であり、日本が悪者でなければ中国共産党はその根源的存在理由を否定される存在なのだ。
日本の歴史教科書に対する支那北京政府の対応は、その根源的理由を十分に理解したうえで、現政府の内情から発生しているものである。
すでに本紙7月29日更新『支那北京政府の動向』でお伝えした通
り、北京のウラ事情は切迫している。最高指導者、国家首席である江沢民とその周辺が、来年の定年に向けて最後の足掻きをしているところなのだ。
とくにトウ小平から「江沢民の次の首席」と認定された胡錦濤と、江沢民一派との確執は激しい。そしてこの確執を利用するかのように、過激派の軍部が党中央を強硬路線に向かわせている。
米誌『フォーリン・アフェアーズ』に天安門事件文書を漏洩させたのは、胡錦濤首席排除派(=江沢民直系)ではないかとの噂も流れているが、最近では「中国共産党中央軍事委員会議事録」の内容までが北京でリークされ始めている。「中央軍事委議事録」など、国軍の極秘中の極秘であり、これが流出したということは、軍内部のトップの中に反中央勢力が存在している証拠である。
こうした情勢を的確に把握した米ブッシュ政権は、対米強硬路線や対台湾強硬路線派の軍部台頭に神経を尖らせている。ブッシュ政権にとって、今すぐ支那北京政府と軍事行動を起こすことは絶対に避けたいものである。
対米強硬路線、対台湾強硬路線を主張する軍部強硬派は、同時に「抗日戦争を戦い抜いて勝利した」軍部の精神的継承者であり、日本の歴史教科書の記述について妥協を許さない。
北京政府内のこうした確執、権力争奪戦を背景として、外相・唐家センは「不満を表明」したのである。わが国の新聞、TVマスコミを読む限りでは、支那北京政府がいったい教科書のどこを問題視しているか、さっぱりわからないだろう。
極論すれば北京政府の唐外相は、こう言っているのだ。「わが中国は今、国内の強硬派を抑えるのに苦労しています。お願いだから国内強硬派がこれ以上騒がないように、何らかの穏便な手を打ってください」。
――これをわが国の新聞はこう表現する。「中国の対応、韓国とは温度差」――。
以上のことから判断できることは唯一つ。わが国がとるべき態度は、支那北京政府の動向など一切無視して粛々とわが道を歩むことである。
小泉首相の「靖国神社参拝問題」についても同じことが言えるだろう。
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