狙われる北朝鮮
東シナ海不審船事件
昨年(平成13年)12月22日、東シナ海の日本の排他的経済水域(EEZ)内で不審船が出現、海保と銃撃戦をして挙げ句に沈没(自沈)するという事件が起きた。この事件については当初、新聞TVを初め多くのマスコミがさまざまな情報を流したが、年が改まったところですっかり忘れられた感がある。しかしじつは、この事件の背後には非常に興味をひく、いや驚愕の内容が隠されていた。
問題の本質を記す前に、まず不審船事件について考えてみよう。
12月21日にわが国海上自衛隊哨戒機によって発見され、海上保安庁の巡視船が追尾、最後には沈没した不審船は、明らかに北朝鮮のものと思われる。事実、この船は北朝鮮の南浦(ナムポ)港から出港したことが明らかにされており、一旦上海沖まで南下した後、東シナ海を北上、奄美大島沖で海自哨戒機に発見されたものだ。
北朝鮮には4つの軍港が存在する。日本海側に面して清津(チョンジン)と元山(ウォンサン)港、そして渤海側に面
して南浦(ナムポ)と海州(ヘジュ)港がある。それぞれの軍港は役割が明確化されている。
清津は対日本基地。かつて日本海能登半島沖に現れて高速で逃げ去った不審船は、清津から出港したものだった。
他の3つの軍港はすべて対韓国用のものだ。元山は対韓国東海岸(日本海側)をターゲットにした軍港。南浦は対韓国南海岸を、海州は対韓国西海岸をターゲットにしたものである。
また北朝鮮の工作船は、その装備が対日本用のものと対韓国用のものでは、まったく異なる。
日本の場合、海上自衛艦が出て行こうが海上保安庁の巡視船が出て行こうが、これまでは絶対に攻撃をしなかった。攻撃しない艦船に対して武器を所有することは、かえって拙い。万一拿捕された場合も、武器(兵器)所持が問題となるし、その武器や兵器を没収・分析されることは拙い。だから対日本用の工作船は、一切の火器を持たず、ただひたすら逃げることに眼目を置く。
ところが対韓国の場合は、そうは行かない。かつて韓国に侵入しようとして撃沈された例などを見てもわかる通
り、韓国側は拿捕、捕捉など毛頭も考えていない。北朝鮮の工作船が現れたら撃沈させることしか考えない。これは韓国・北朝鮮の歴史が作り上げた残念な事実なのだ。だから対韓国用の工作船は重装備して銃撃戦に備え、そして最悪の場合、自爆・自沈する覚悟を決めている。
昨年末に日本の経済水域(EEZ)に出現した不審船は、南浦港を出港したものだった。常識的に考えて、これは対韓国用工作船である。
平成十一年三月末に日本海・能登半島沖に現れた不審船(北朝鮮工作船)は清津港から出港した対日本用のもので、船体には日本の漁船と思わせる名がペイントしてあった。今回奄美大島沖に現れた不審船は、『長漁3705』と中国名をペイントしていた。これはいったい何を意味するのか?
日本侵入用の工作船なら日本の漁船名を記すのが当然であり、中国名を記しているのは、明らかに韓国海域侵入用のものである。
しかも今回の船は、ロケット砲などで重装備しており、また対日本用に作られた工作船のように逃げ足が速いものでもなかった。
誰が考えても、この船は対日本工作のための船ではない。明々白々に、これは対韓国用の工作船である。
ところが、そういった報道が一切なされていない。なぜか――。
今回の不審船発見は、米軍の情報提供から始まっている。
じつは12月中旬時点で米軍軍事偵察衛星が南浦港を出港する3隻の工作船を捉えており、この情報が12月18日に防衛庁に伝えられ、やがて鹿児島県喜界島の通
信施設(通称「象の檻」)が通信無線を傍受。派遣された対潜哨戒機P3Cが21日夕になって奄美大島沖の漁船の群れのなかに不審船がいることを発見したものだった。これに関し、米陸軍参謀長エリック・シンセキ大将と防衛庁幕僚会議幹部などが緊密に連絡をとっていたことも明らかにされている。
ところが不思議なことに、一部週刊誌のなかには「不審船は米軍からの情報を得て発見されたものではない。海自鹿屋基地が電波を傍受し、付近の船舶を軒並み撮影してこれを分析、不審船を特定した」と、米軍からの情報提供を否定する記事も見られた。この週刊誌情報によると、米軍は北朝鮮の小型工作船などには神経を尖らせておらず、仮に南浦港を出た船を軍事衛星が発見したとしても、上海付近まで南下した船のことなど追尾することはあり得ないとしている。
情報の真の提供者は?
では、現実にそうなのだろうか。
これについて複数の政府機関関係者は以下のように答える。
「米軍にとって半島情勢は最重要監視地域であり、どんな小さな漁船類の動きも見逃すことはない。とくに最近の韓国工作用の船は、ほとんどが上海沖まで南下し再び北上するパターンをとっており、南浦を出港した小型船を見失うなどという話は絶対にない」。
以上の話を合わせて考えると、こうなる。
12月中旬に3隻の工作船が南浦港を出港した。そのうちの1隻には『長漁3705』と記されていた。3隻の目標は韓国南海岸。この3隻は一旦上海沖まで南下した後、一転して北上して韓国を目指していた。この動きを逐一監視していた米軍は、日本の防衛庁に連絡し、日本の排他的経済水域内で捕捉することを求めた。
ところが防衛庁は躊躇した。問題の不審船は韓国を目的とした工作船である可能性が高く、もしそうだとすれば攻撃用の兵器を搭載しているはずだ。海保の巡視船がこれを捕捉に向かえば攻撃される恐れもある。その間、米軍とどのような通
信があり、どのような結論が導き出されたかは不明だが、海自はP3C哨戒機を飛ばし、奄美大島沖で1隻の不審船を確認。海保の巡視船「あまみ」「きりしま」「いなさ」が現場に急行した。巡視船は当初威嚇射撃を、続いて船体射撃を行ってこれを停船させようと試み、「あまみ」「きりしま」が挟撃しようとしたところで反撃を食らい、「あまみ」の乗員2名が腕などに怪我を負った。これに対し「いなさ」が正当防衛による射撃を行い、直後に不審船は自爆して沈没した。「あまみ」などは船体に無数の被弾を受けたが、不審船はロケット砲を発射したことも明らかにされている。
運良く乗員2名の軽傷で事無きを得たが、もし至近距離からのロケット砲が命中していれば巡視船は木っ端微塵となったはずだ。そしてその可能性を、米軍は初めから知っていたと考えられる。――米軍は、日本の海保巡視船の危険など、何とも思っていなかったのだ。いやことによると、海保巡視船が撃沈されることを望んでいたかもしれない。
そして事件が終了するや、一部週刊誌に「海自鹿屋基地が電波を傍受し、不審船を特定」といった情報が流れ、米軍サイドが不審船攻撃を求めたという重大情報が隠蔽されてしまったのだ。余談になるが、朝鮮総連のトップ許宗萬(責任副議長)の亡命騒動を独占スクープした(実際には亡命はなかった)のもこの週刊誌だった。許宗萬亡命事件については後日改めてご報告することにしよう。
船体引き揚げ
不審船沈没直後に小泉首相はこんな発言を行っている。
「引き揚げは技術的にも可能だ。現場水域がどういう状況か調べて、できることなら引き揚げたほうが良い」。
さらに扇千景国土交通相も「なんとしても引き揚げる」と威勢の良い発言をしていたが、福田康夫官房長官は逆に「引き揚げなくとも船籍や積み荷の調査だけで良い」と消極発言を行っている。一般
にこうした消極論は、中国(支那北京政府)の意向から出たものと思われているが、じつはそうではない。
じっさいのところ、引き揚げて、それが北朝鮮籍の工作船だと確認された場合、日本政府はいったい何をするのか?
せいぜい北朝鮮に遺憾の表明を出すだけしかない。現実の国際舞台では「外交」というものは「武力」を背景に行われている。悲しいことにわが日本は、北朝鮮に対して何一つ手を出せない。福田官房長官の消極論は、こうした現実から出たものである。
日本が不審船引き揚げに消極的になった途端、米側からは引き揚げに強い要望が出始めた。1月13日にはアーミテージ国務副大臣が「不審船は北朝鮮の工作船だと思う。対北朝鮮政策では、日本米国韓国の連携が最も重要だ」としたうえで、引き揚げに関しては「工作船対処で日本から支援の要請があれば必ず応じる」と発言している。さらに翌1月14日、より明確に、バウチャー報道官は「船体回収について要請があれば喜んで協力する」と述べている。
こうした状況のなか、俄然として不審船引き揚げ強硬論がさまざまな形で表出しはじめている。だが、真剣に考えなければならないことは、引き揚げてそれが北朝鮮工作船だと判明したところで、わが国がどのような対応をするか、である。
米国ブッシュ政権は、何としても金正日政権を崩壊させようとしている。金正日を倒して、北朝鮮が米製グローバリズムを受け入れる国家になることを切望している。だが金正日政権が倒れるということは、北朝鮮そのものが崩壊することを意味する。
2月中旬からブッシュ大統領は日本、韓国、中国(支那北京政府)を歴訪する。ここでは現実問題として、金正日政権を崩壊させるさまざまな手だてが提案されることだろう。そうしたなかに北朝鮮空爆というプログラムも含まれているはずだ。
北朝鮮空爆が意味するものは、ソウルと東京が火の海となる現実を前提としている。小泉首相も金大中大統領も、そして北京の江沢民も、北朝鮮空爆を容認することはあり得ない。だが、もし仮に北朝鮮が先手を打ってソウルや東京に衝撃的で重大なテロを起こしたら、どうなるだろうか。当然ながらわが国も韓国も、米軍による北朝鮮空爆を支持することになるだろう。
北朝鮮がそんな愚かなテロ行為を起こすとは思えない。
だが、考えていただきたい。9・11の米中枢同時テロは、ほんとうにイスラム過激派が行ったものだったのか。
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