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小泉政権は終焉を迎えたか

ワイドショー内閣

 アフガン復興支援会議へのNGO(非政府組織)参加拒否問題に絡んで、1月末に田中真紀子外相と野上義二外務次官(いずれも当時)を更迭した小泉首相は、その後支持率を一気に30ポイントほど急落させてしまった。高支持率に支えられることが政権運営の柱だっただけに、小泉政権にとって田中真紀子更迭は厳しい選択だったようだ。

 しかし、その後2月中旬には訪日したブッシュ米大統領との会談を順調にこなし、ブッシュから全面的支持を引き出した小泉首相は、とりあえず支持率下落に歯止めをかけかのように見えた。小泉周辺がホッとひと息をついたところで行われた衆院予算委参考人質疑応答に登場した田中真紀子は、だが、更迭させられた恨み節を爆発させ、小泉首相との事実上の決別宣言を行った。ワイドショー内閣と揶揄される通り、主婦層を中心とした庶民人気に支えられてきた小泉政権だけに、田中真紀子の反乱はかなりの痛手となる。

 こうした状況のなか、実に都合良く…というわけではないが、鈴木宗男の疑惑が噴出している。田中更迭で人気を下げた小泉政権としてみれば、失地回復の意味でも厳しく対応せざるを得ない。予算成立、経済対策早期着手を念頭に置いている政府与党とすれば、喚問要求にも応じる構えを見せざるを得ないし、野党側は鈴木宗男の議員辞職までも視野に入れながらこれを追及している。本紙もその一部を解説したが、たしかに鈴木宗男には数知れぬ疑惑があり、追及の手を緩めることは許されない。

 だが、世界全体の流れを良く眺め、現在の小泉政権がどのような立場に立たされているか熟慮する必要もあるのではないか。――ODAのカネを掠めて私腹を肥やす政治家の存在は許されるものではないし、お茶の間人気に支えられる元外相の言動も気にかかる。それはそうだろうが、世界はいま、ワイドショー内閣とは無縁の、極めて切迫した状況のなかにあるのだ。

 米ブッシュ大統領は何が目的で日・韓・北京を歴訪したのか。日本に来た最大の目的は何だったのか。マスコミを見る限りそれは「経済政策」と「対テロ戦」の2点だった。その最大主題が「対北朝鮮政策」であることは明らかである。

米国の真意

 9・11の米中枢同時テロ以降、米国はテロリストとの対決を前面に押し出した。変貌した米軍がこれを後押しし、旧ソ連軍が手こずったアフガンを短期間で制圧。「悪の枢軸」という表現で次の目標が北朝鮮であることを世界に明らかにした。湾岸戦争以降、米国の目標が北朝鮮であり、それは最終的には支那大陸制覇を目論んでいることは誰の目にも明らかである。米軍が武力をもって北朝鮮政策を押し進めるということになれば、経済政策も何もブッ飛んでしまう。ブッシュの東アジア3国歴訪の最大の主題は北朝鮮政策に関わっているのだ。

 訪日にあたり明治神宮を参拝したブッシュだったが、当初は靖国神社参拝を考えていたと伝えられる。現在のブッシュ政権は「戦時下」にあり、その大統領が靖国参拝を考えたところに並々ならぬ決意が感じられる。その後の流鏑馬見学も当然ながら「対テロ」という姿勢の延長上にある。国際舞台でのすべての行動にはウラがあり、それぞれに意味が籠められているものなのだ。

 2月18日、会談を終えて共同記者会見場に現れた小泉・ブッシュ両首脳を、世界は固唾を飲んで見守った。

 会見場に現れた小泉首相の様子は、誰の目にも異様に思えた。まず小泉は会見席を間違えてブッシュに注意され、慌てて自席に立ったが、その目は宙を漂い、顔面は蒼白――自信に溢れたこれまでの小泉とは明らかに違っている。ブッシュが小泉首相を、「偉大な改革者で、信頼している」と最大限に持ち上げても最後まで落ちつきを取り戻すことはなかった。官邸垂れ流しの安易な情報に現を抜かしている一般庶民ですら、小泉の言動には奇妙さを感じたほどだ。

 では、ブッシュとの極秘会談の席上で小泉はいったい何を聞かされたのか。何でこれほどまでに動揺したのか。考えられることは以下の3点である。

 1・北朝鮮に対する米国の強硬政策。
 2・北朝鮮絡みで勃発する日本国内の混乱。
 3・小泉政権の終焉。

 そしてじつは、この3点は同時に起こり得るものでもある。

 1の「対北朝鮮政策」について考えてみよう。米国は北朝鮮・金正日政権の存在を容認できない。ブッシュは北朝鮮の国民大衆と金正日王権を分け、金正日さえ倒れれば北朝鮮民衆を敵に回すものではないとしている。だが現実には、正日の父であり建国の父である金日成の見事な指導成果により、北朝鮮は国家そのものが「一家である」との認識が強い。ここが国家よりも家族・親族・一族を重視する韓国と大きく違うところだ。つまり金正日政権の否定は北朝鮮の国家そのものの否定に繋がっているのだ。

 米国としてみれば、金正日政権が倒れグローバリズムを受け容れる国家が誕生する保証さえあれば、1年が2年でも待つ。日本、韓国、北京政府を揺さぶり、あるいは北朝鮮政権そのものにも圧力をかけて、金正日王朝崩壊を目論むのは当然だ。だが、アフガンに対する対テロ戦を仕掛け、肝心のビン・ラーディンを取り逃がしたブッシュ政権に余裕はない。しかもブッシュの最大のバックであったエンロンが倒産し、支持率維持のためにはブッシュには果てのない対テロ戦を継続するしか道がない。

 非常に近い将来――遅くとも年内に北爆を開始する。そうした決意をブッシュが小泉に伝えたとしたら、小泉の動揺は理解できる。本紙はその可能性は半分以上だと推測している。

 2の「北朝鮮勢力による日本混乱」とは、最もわかりやすく言えば国内テロ勃発情報である。
 かつて米軍による北朝鮮空爆が話題になり始めていた頃、北朝鮮側は「もし米軍による北爆があれば、ソウルが火の海になる」と警告していた。だがハイテク化された米軍の戦力を目の辺りにすれば、相手の土俵に立ってがっぷり組むことが不利なことは火を見るよりも明らかである。まして昨今の在韓米軍は『カチューシャ部隊』と呼ばれる「表向きは在韓米軍、実態は韓国兵」の部隊。北朝鮮が正面から対韓国戦を起こす可能性はほぼゼロである。となれば、米軍による北爆を阻止するために、北朝鮮は何をするのか?

 ソウルに代わって「東京が火の海になる」という脅しを流し、あるいは現実に日本国内に混乱事件を引き起こす必要が出てくる。米中枢同時テロが起きて3日後の9月14日には北朝鮮の機関紙『労働新聞』の論説欄に、「日本は人口密度が高く故に弱点が多い」といった表現がとられ、さらにこれに関連して「原発や上下水道」という具体的単語まで載っていたのは、この表れである。

 とはいえ、北朝鮮が直に日本国内でテロを引き起こすことは、考えられない。そんなことをすれば、かえって北爆の餌食になってしまう。そこで考えられるのは、日本内部の反政府組織・団体を使嗾した破壊活動である。たとえば中革を使った鉄道破壊工作、あるいはオウム真理教のような勢力を使った大規模テロだ。こう述べると絵空事のように思われるかもしれないが、報道はされていないが現実に鉄道破壊予備工作は連日繰り広げられており、またオウムの活動も奇妙な方向に向かっている。北朝鮮絡みのさまざまな動きは、実は国内の反政府分子の活動と直結しているのだ。

 正確な情報が得られないため真情報とは言いがたいが、最近頻発している院内感染のほぼ全部は細菌テロの可能性が高いし、新幹線周辺でも奇妙な事故が絶えない。あるいは米情報筋はより緻密で高度な国内テロ活動の情報を得ており、それが小泉首相に伝えられた可能性もある。小泉の顔色が変わるほどのテロ情報だとすれば、それはいったい何なのだろうか。

 3の「小泉政権の終焉」とは、まさに米ブッシュ政権が小泉を見限ったというものだ。「偉大な改革者で、信頼している」というブッシュの発言は、去り行く首相に対する最大限の温情だったとの見方もある。ブッシュ政権が小泉を見限ったとすれば、それは巷間言われているような経済失政などが原因ではない。支持率だけが頼りの小泉政権の、肝心の支持率急落に米側が敏感に反応したとも考えられるが、最も可能性があるのは、与党内部に反小泉の大勢力が形勢され、それがブッシュ政権に伝わったと考えて良いだろう。

 では、小泉ワイドショー内閣の後を受ける次期政権とは、いったい誰が主宰するものなのか?

 これは残念ながらわが国国会議員の資質を考えて推測するものではない。また、小泉が政権の座を下りるにしても、そのタイミングは微妙だ。3月経済危機が囁かれる中ではあるが、3月いっぱいといった性急な政権交代は考えられない。早くて6月――ワールドカップの真っ最中ということになるだろう。

 では、小泉の後は誰か?

 一般的に考えられるのは、田中真紀子による新党結成と政界再編、そしてその後の田中真紀子首相誕生かもしれない。その可能性はもちろんゼロではない。だが最も普通に考えられるのは、自民党中心の旧来型政権だろう。

 米側はいったいどう考えているのか。これについての情報は案外少ない。ブッシュ政権がポスト小泉政権についてさまざまなシュミレーションを行っていることは明らかにされているが、その内容は不明だ。漏れ伝わるところによると、米側は「民主党・菅政権」までも考慮に入れてシュミレートを行っているとされる。そうしたなかで最大の時間と対策を費やしているのは“好感を持つわけではないが”「石原慎太郎政権」の場合だそうだ。

 ちなみに永田町界隈では専らの話題は麻生太郎。先の衆院予算委では全員の視線が集中するなか、野中広務が自ら麻生太郎にメモを渡し、それが報道されたりもしている。河野グループという弱小派閥出身の麻生なら、「小泉の抵抗勢力」というわけでもなく、また米側のウケも良いということだろうか。

 悪徳政治家・鈴木宗男追究に日本中が躍起となっている。政府予算で私腹を肥やすなどとんでもない悪党で、こんな政治家はこの国には必要ない。だが同時に、ワイドショー感覚を政治の世界に持ち込むことも必要ない。

 世界はいま、混乱混迷に向かい、あるいは日本中が火の海に包まれる可能性まであるのだ。国民大衆の目が、悪人退治よりも国家の未来に向くことを期待したい。

 

 

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