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「拉致事件報告」はデタラメ!

 さる十月二日、北朝鮮による日本人拉致事件に関する政府の現地調査団の調査報告が出された。この報告には、政府与党や公安関係者だけではなく庶民大衆が衝撃を受け、また北朝鮮に対する不信感、怒りが爆発している。

 自民党の山崎拓幹事長は「きわめて衝撃的で、改めてこの問題の悲惨さを強く感じた。より明確で詳細な調査が行われるべきだ」と主張。保守党の野田党首も「被害者の家族の気持ちを思えば政府が北朝鮮に調査と情報提供を求めるのは当然」と述べた。拉致議連副会長の米田副大臣も「横田めぐみさんの自殺がもし本当なら、十三歳で誘拐された少女にのしかかった精神的重圧の結果であり、北朝鮮の非道な行為に怒りを覚える。一家のガス中毒死とか、墓が洪水で流れたという話も常識では考えられず、関係当局は真相解明に努力すべきだ」と指摘している。野党内でも「この調査でこと足れりとするならば、こんな被害者や国民をばかにした話はない」(自由党・小沢党首)などといった意見が噴出している。

 こうした状況のなか、自民党内には「真相が明らかになる前にコメ支援や経済協力をすべきでない。国民が許さない」(伊藤元国土庁長官)などと北朝鮮に対する国民感情が一段と厳しいものになるとの見方が広がっている。

 拉致事件に関する調査報告は新聞TVが全文を公表している。是非ともこの報告書を精読していただきたい。そのうえで、北朝鮮側の発表の矛盾点を考察していきたい。

 たとえば亡くなったとされる横田めぐみさんについて、北朝鮮側は以下のように説明している。

「入国経緯=一九七七年十一月十五日、新潟市内で工作員が学校から帰宅途中の本人に会った。工作員は身辺の露出の危険性を感じ、露出を防ぐために同女を拉致した。特殊機関は、所属に関係なく軍事化されており、命令を実行した者は責任を問わないことになっているが、本件の実行犯は命令なく恣意的に行動した者であり、職務停止処分を受けている。
入国後の生活=一九七七年十一月から一九八六年七月まで、招待所で朝鮮語、現実研究および現実体験をした。一九八六年八月十三日結婚。 死亡の経緯=一九九三年三月十三日、平壌市スンホ(勝湖)区域四九予防院で精神病で死亡。」

 サッと読めばいかにも納得できそうな話だ。ところがこれを読んだ警察関係者、公安関係者は唖然となった。「工作員が出会い、身辺の露出の危険性を感じて拉致した」という筋書きは、じつは日本の警察当局が捜査の過程で「恐らくこうした形で拉致されたのであろう」と想像し、それを公表したものなのである。

 しかも「精神病で死亡」については、八年前に北朝鮮から韓国に亡命した人物が当時、「横田めぐみさんは嘆き悲しんでノイローゼになっている」と語った事実に乗った形なのだ。

 また横田めぐみさん拉致の翌昭和五三年(一九七八年)七月に福井県小浜市の海岸から拉致され生存が確認された地村保志さんと浜本富貴恵さんについては、拉致現場の証言が非常に不自然である。「袋に入れられ担がれて斜面を下りた」というが、現場で海岸に下りる斜面はほぼ垂直の斜面で人が駆け降りることなど絶対に不可能なのだ。

 さらに、死亡したと発表された有本恵子さん、石岡亨さん、田口八重子さんの死亡確認をした医療機関がいずれも「第六九五病院」である点も奇妙だ。有本さんと石岡さんは一九八八年(昭和六三年)十一月に慈江道で中毒死をしたと説明されている。いっぽう田口さんは一九八六年(昭和六一年)七月に黄海北道で事故死したとされる。この二つの地域はその間に平安南道という大きな地域を挟んでおり、距離は相当離れている。いったいなぜ同じ医療機関で死亡が確認されたのか……。

 十三人のうち八人が死亡。それも自殺や中毒死、事故死など。さらに八つの墓のうち七つまでが流出……。唯一「遺骨」が持ち帰られた松木薫さんについては日朝首脳会談が発表された八月三十日に二度目の火葬に処せられた。拉致被害者の誕生日も住所も間違いだらけ。なかには北朝鮮に拉致される以前に平壌で目撃された等といった馬鹿馬鹿しい話もあった。こんな話をどこまで信用すれば良いというのか。政府関係者を初め大衆に至る誰もが北朝鮮側の発表を頭から信用しないのは当然のことだ。


「報告書」に見られる特徴

 この報告書にはある特徴が存在している。

 その第一は「よど号犯を拉致事件と無関係に位置づけている」点だ。小泉訪朝前まではマスコミの一部では「使い捨て『よど号』犯」(『週刊現代』ほか)といった表現で、北朝鮮にいるよど号犯が拉致事件の犯人に仕立てられ処分されるとの観測があった。

 ところが今回の報告のなかで、北朝鮮側は拉致事件に関し「よど号犯」の関与を一切否定している。今年(平成十四年)三月に八尾恵がよど号事件の裁判の過程で、「田宮高麿の指示により有本恵子さんを拉致して北朝鮮に送った」と証言したが、これについて北朝鮮は一切触れていない。

 また、札幌市出身の石岡亨さんに関しては、今回の報告では「一九八五年に有本恵子さんと結婚。翌年に長女誕生。一九八八年十一月にガス中毒で一家全員死亡」とされている。ところが今月七日発売の雑誌『創』で元赤軍派議長の塩見孝也が以下の事実を明らかにしている。すなわち、「石岡さんはよど号事件犯グループの元妻らによって拉致された」こと、さらには北朝鮮にいるよど号犯に石岡さんのことを尋ねたところ「グループの手に負えなくなり、労働党が出てきた。その結果、石岡さんらは『手の届かないところに行った』」とし、思想教育に失敗して朝鮮労働党の手に委ねたようだと分析している。

 よど号犯は拉致事件とは無縁……。

 これが金正日・北朝鮮の主張である。

 なぜよど号犯を守るのか。答えは単純である。建国の父・金日成の遺訓「よど号実行者を守り抜け!」を遵守しているのだ。

 北朝鮮側の拉致報道に関する特徴の第二は、北朝鮮脱出者(亡命者)が韓国その他で発表した情報をことごとく否定し、歯牙にもかけない素振りを見せていることだ。この背景には、平成五年(一九九三年)に韓国に亡命した北朝鮮元工作員の安明進の暴露情報の否定にある。

 前述のように横田めぐみさんの自殺については、亡命者が「ノイローゼだった」と語った話に乗っていると思われる。だがそれ以外については、亡命者(脱北者)による情報を全否定している。
 北朝鮮元工作員・安明進は「金正日政治軍事大学で複数の拉致日本人を見た」と証言。さらに彼は、「当時、日本に潜伏する工作員には日本人拉致が重要な任務だった。『できるだけ縁故のない人を探せ』という指令が出ていた」とも語っている。またわが国政府が拉致と認めていた八件十一人に関する証言には「秘密の暴露」的情報が含まれるものもあり、被害者家族らは安明進の証言を「信頼できる」という。

 彼の証言によれば、横田さんも有本さんも、その他何人かが北朝鮮当局の死亡認定時期よりずっと後まで生きていたことになる。さらに認定以外の拉致被害者が何人もいるとされる。

 だが北朝鮮側は拉致を今回の十五人(死亡八人、生存五人)に限定し、これですべてであると断言した。日朝交渉という公式の場で、これ以上「拉致問題」を取り扱うことを拒否したのだ。

疑惑を追及せよ

 驚くべきことだが、大韓航空機爆破事件(昭和六二年十一月)について北朝鮮は未だにこれを認めていないことが明確になった。この事件の実行犯・金賢姫(元工作員)の日本語教育係だった李恩恵とは田口八重子さん(昭和五三年に拉致)だとされている。ところが北朝鮮の報告によると、田口さんは昭和六一年七月に三一歳で亡くなったいうのだ。これも安明進の証言と大きく食い違っている。

 しかし、唯一、北朝鮮側が苦慮している部分がある。大阪の中華料理店店員、原敕晁さん拉致事件に関してのものだ。政府調査団が発表した資料には「辛光洙の関与等については今後、法的仕組みができたら(北朝鮮が情報を)提供する」と書かれている。北朝鮮は辛光洙(七三)の犯行を依然として認めていない。だが、事件に関して、今後、何らかの形で言及しなければならなくなったのは間違いない。警察庁は辛容疑者を、原さんの拉致をめぐる旅券法違反容疑で、国際刑事警察機構(ICPO)を通じて国際手配し、北朝鮮に身柄の引き渡しを求めている。日本人拉致事件のなかでは「犯人」が明らかになっている数少ないケースなのだ。

 報告書には拉致に関して「現地請負業者(日本人)」という言葉を使っている。これを読む限り、カネに目が眩んだ日本人が拉致を手助けしたように感じられるし、あるいは週刊誌マスコミなどのなかにはそうした日本人業者を特定するような報道がなされるかもしれない。

 だが、北朝鮮工作員がカネで日本人を雇って仕事をさせることなど、あらゆる局面で絶対に考えられない。一般大衆のなかには「バカな日本人がやったかもしれない」などと思う者がいるかもしれないが、諜報の現場を知る者、それも戦時下同様の状態にある北朝鮮が日本人を使うことなど絶対にあり得ない。ここに登場する「現地請負業者」とは、明らかに在日の人間、それも朝鮮総連に繋がる人物である。……いや、唯一、日本人がやった可能性がある場合がある。それはよど号犯やその妻など、まさに北朝鮮に洗脳され、北朝鮮の人間になりきってしまった人々である。

 今回、生存が確認された五人が日本に帰国することは、まずあり得ないだろう。あるとすればそれは、十月三日に三九年ぶりに帰国した寺越武志さんのように「敬愛する金正日総書記のご配慮により……」といった言葉を心の底から発言できるようになった時だけである。あるいは仮に、強引に一時帰国を果たしたとしても、それはわが子を人質として北朝鮮に残し、工作員同伴で短期帰国をするときだけなのだ。

 それでは拉致問題に対して今後どう対応すれば良いのか。

 日朝国交正常化交渉など、ほんらいは破棄すべきなのだ。だが残念なことに、小泉首相は国交正常化交渉を十月中に再開すると署名している。これを中止するわけには行かない。

 であるならば、断固として拉致事件についての正確な情報を開示させる必要がある。今回のデタラメな報告などまったく無視して良い。

 小泉首相はこの報告を「誠実に対応した」と評価したが、冗談ではない。十三人中八人が死亡、遺骨流出といった報告の、どこが誠実なのか!

 北朝鮮側は明らかに日本政府を嘗め切っているフシがある。日本の警察力を小馬鹿にしているフシがある。確かに優秀だとされるわが国警察力も、在日朝鮮人に対しては及び腰であり、海上保安庁がいかに厳重に取り締まろうともわが国の海岸線をすべて見張ることはできない。また正直な話、わが国の警察は国家権力の従順な下僕であり、政府決定に対して逆らうことなどできない。

 本紙が明らかにしたように、北朝鮮に対する補償金はその一部が政治家にキックバックされる仕組みになっている。また今回、凡そ五百億ドル(六兆円)の補償がされるというが、その五百億ドルの分担業者がすでに内定しているという噂まである。

 こうしたおぞましい、反吐が出るほどの噂はともかく、北朝鮮側がわが国政府を嘗めきっていることは、拉致事件報告を見ただけで明らかだ。北朝鮮に文句も言えず、武力攻撃することなどもちろんできず、ただ贖罪意識だけで唯々諾々としている政府。

 北朝鮮はわが国政府の内情すべてを知り尽くし、利権の構造まで理解し、その結果としてこの報告書を提出した。

 だが、北朝鮮側がわが国に対して理解していない点が一つある。

 庶民大衆の怒りである。

 政府のこと、政治家一人一人のことは調べあげているが、庶民大衆のことなどまったく理解していないのだ。

 「拉致問題の解決なくして国交正常化交渉はあり得ない」と小泉は断言した。

 拉致問題は、今回の報告で解決したのか?

 わが国の最高ポストに就いている小泉首相に対し、国民大衆は詰め寄らなければならない。国民大衆の怒りの炎が燃え上がれば、事態は一変する。

 すべては庶民大衆の力にかかっている。

 

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