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東松山市立市民病院・どうする再建問題 2年後に「閉鎖」か?止まらぬ医師不足に約8億の累積赤字 参院選出馬への色目で経営放棄の坂本市長と無為無策の病院経営陣 竹森副参事が示した、悪循環を断ち切る「市立病院改革プラン」! (プリントアウト用はこちら) 全国の自治体病院はいま深刻な医師不足に見舞われている。東松山市立市民病院(以下「東松山市民病院」)も例外ではない。他の民間医療機関がやらない、あるいはできない医療・診療のために、地域住民の要望により自治体の首長が議会の決議を経て設立した自治体病院……。その数は全国で973(平18現在)。自治体病院とは医療機関であるとともに、自治体の一部という側面も持つ。その多くが民間病院の少ない地域に存在するため、自治体病院の医師不足とは、すなわち直接地域医療の崩壊に直結する。
そんななか、東松山市民病院が来年1月10日より日曜にかぎり救急診療を再開させることを発表。だが喜んではいられない。「週1回」という一部再開では救急診療の需要にほど遠い。日曜深夜〜月曜早朝以外の時間は、たとえば市民が循環器障害の救急自体に陥ったら……。一刻を争うとき、搬送されるのは市外の病院なのだ。これでは救急車内で死亡する事態すら、十分に考えられる。実際、東松山市内に住む循環器系の救急患者が病院に搬送されるまで2時間を要したケースもあるのだ。 深刻な医師不足を解消するために、東松山市民病院はどのようなプランを講じているのだろうか。市民病院は再建できるのか。同院の若き副参事が総務省に提出した、医師不足解消のアイディア……。自治体病院改革という問題は一刻の猶予も許さない。市民の命を守るため、東松山市が直ちに着手しなければならない重大な課題だ。 市民病院の第一の役割は救急診療 医師1名退職で「中止」・1名増員で「一部再開」の現実自治体病院(国公立病院)の経営が悪化している。厚生労働省は、07年6月単月の収支を平均5799万円の赤字とし、赤字額は2年前の2倍に拡大したと発表した。 この4ヶ月後である07年10月26日、東松山市民病院は救急医療の休止を発表した。医師不足が原因であった。03年には31人いた医師は16人に半減。内科医も9人から5人に減った。市は医師の給与・手当を1人あたり年間約150万円増額するほか、内科当直医の応援を外部から呼ぶなどの努力をつづけた。だが新たに内科医1名の退職が決定したことから、残る内科医は院長と副院長を含めて4名。「内科病棟で診察しながら救急入院患者を受け入れるのは困難」と判断したことからの休止であった。 それから約2年後の現在……。さる11月25日、東松山市民病院は救急診療を一部再開することを発表した。日曜午前8時半から月曜午前8時半までの24時間、内科と外科の医師二人と看護師一人が救急患者の診療にあたる。本紙がこの再開の理由を同院に尋ねると「内科医1名を新たに確保できたから」という。医師1名の増減が、まさに救急診療存続の可否を左右している……。これが東松山市民病院の実態だ。 日曜日深夜~月曜早朝に再開した理由を市民病院に聞くと「その時間は、市内の他の病院の対応状況が手薄であるから」との回答。「あくまで救急診療再開に向けての第一歩です」という。 東松山市立市民病院が抱える赤字は7億6千万円! 「経営陣」の無為無策と危機意識のなさは絶望的! 「自治体病院改革プラン」が示す「2年後に閉院」の可能性なぜ自治体病院の経営が悪化しているのか。救急医療など採算が合いにくい医療を行うことが多いため、医師が自治体病院での勤務を忌避することが大きな理由の一つである。医師が不足すれば診療科の縮小を招き、さらには病院閉鎖に追い込まれる。 もう一つの大きな理由は、非効率な経営そのものにある。これは何も市民病院に限ったことではなく、地方公営企業や第3セクター等が多額の赤字や負債を抱えているのと同根の問題といえよう。 東松山市民病院という組織は、医局(医師組織)と事務部に大別できる。企業という側面から経営に関与するのは事務部であり、「社長」は坂本祐之輔東松山市長。公営企業をいわゆる「宛て職」社長が率いる構造の弊害はこれまでも再三指摘されてきたことだ。民間では想像もできないほどの非効率・ムダが平然と横行している現実を知れば知るほど、納税者としての怒りが収まらない。「ムダを省く」ことも重要だが、それ以上に致命的なのが効率を生み出す創造性の希薄さである。 医師が不足し経営が悪化、経営が悪化した病院に医師はやってこない。この悪循環の中で、東松山市民病院が現在抱えている累積赤字は7億6千万円に達している。民間病院ならとっくに潰れている、この「崖っぷち」状況を、これまで事実上甘受してきたとしか思えない病院経営陣側の無為無策。本紙の取材に応じた同病院事務部の金子課長に「7億6千万円の累積赤字とは、いったいいつからの累積なのか」と質問しても、即答どころか答えられないありさまである。民間病院が約8億もの赤字を抱えていたならば、赤字発生に関するあらゆるデータや要因を頭にたたき込み、日夜眠らず解決策を必死に模索するだろう。管理職ならば胃に穴が開くほどの危機感に苛まれるはずだ。 この「7億6千万円の累積赤字」……。実は東松山市、これまでも市民病院に対して一般会計予算から毎年5~8億円を補助金として、いわば赤字補填を積み重ねてきた。そうした状況にもかかわらず生じている赤字なのだ。 民間の経営コンサルタント等への相談も「やったことがない」。経営の改善策も「具体的にはまだ考えていない」(事務部井上部長の回答)。 普通なら、モンスターのような巨大赤字に顔面蒼白、経営改善に七転八倒するはずだ。だが公務員経営陣にとっては「自腹の痛む」問題ではないのだろう。しかも「社長」である坂本市長はさる12月8日、今期限りでの市長引退を表明。市民病院など歯牙にもかけず、参院選出馬へ色気を見せているのは全国紙報道のとおりである。 千葉県銚子市では市立総合病院が閉鎖し市民が大激怒、銚子市長のリコールが成立した。だが先述のとおり、東松山市民病院の経営トップである坂本東松山市長は今期限りでの引退を表明。辞めるんだからリコール運動も何のその。経営責任を放棄し、ひたすら自分自身の国政進出に腐心しているのが「日本一の福祉都市」の実態だ。そして業績悪化と救急診療休止に対するこれまでの無為無策が、効率経営とは無縁の「お役所意識」にあるとしたら、これは市民の生命に対しての、見えざるテロとすら思えてくる。 ところが、これまで「約8億の累積赤字」に安閑としていた東松山市民病院に激震が走った。一昨年(07年)、国が閣議決定した「経済財政改革の基本方針」の一環である「公立病院改革ガイドライン」が、総務省により全国に通知されたからである。 「経営の効率化」「再編ネットワーク化」「経営形態の見直し」という3つの指針をもつ、この公立病院改革ガイドラインが東松山市民病院にもたらす影響を簡単に説明すれば、平成23年(11年)までに病院経営が黒字に転じない場合、経営形態自体の見直しがはかられ、場合によっては国からの借金を一括償還しなければならなくなる。「公設公営」だった市民病院を民営化するか、PFI(民間資金を利用し民間に施設整備と公共サービスの提供をゆだねる方法)を導入するか、あるいは閉鎖するか……。閉鎖という事態が避けられたにせよ、3年後の東松山市民病院が公設公営形態ではなくなる可能性は非常に現実味を帯びている。だが市民が一番望んでいるのは、何といっても救急診療を行ってくれる「公設公営」なのだ。 東松山市民病院をはじめ自治体病院の大きな目的とは救急診療、そして地域の町医者が担当できない高度医療の提供である。これができなければ自治体病院に存在価値はない、といっても過言ではない。 なぜ医師は市民病院を避けるのか? 医師不足を解消するのに「医師を増やす」? 「東松山市民病院在り方懇談会」の「机上の空論」
そもそも、なぜ市民病院は深刻な医師不足に見舞われているのだろう。簡単にいえば、医師の労働環境が民間医療施設と較べて劣悪だからである。 先述のとおり、市民病院(自治体病院)の存在意義のひとつは救急診療。救急診療の場合、最も多いケースは循環器と産科だが、この救急診療をやりたがらない医師が非常に多いのである。日本全国の医師数およそ30万人のうち、救急専門医はわずか2500人しかいない。アメリカの救急専門医数3万5000人に較べれば、いかにも少ない。 医師が救急診療を嫌う理由として挙げられるのは労働として過酷であることに加え、医療過誤訴訟の問題がある。治療した脳神経外科医の救急医療の水準が不足していたとして病院側に損害賠償の支払いを命じた03年の高裁判例も影響しているのだろう。救急でも高度な医療水準は必要だが、現状では医療過誤がつきもの。医療過誤訴訟に対して医師を守る体制が脆弱では、医師は恐ろしくて診療どころではなくなる。また緊急時の医療にいささかの瑕疵でもあれば即、医療トラブルとしてマスコミが過剰報道しかねない。 さらには公営企業という市民病院の性格上、勤務医は公務員扱いとなる。民間医療施設にみられるような高額な給与・手当は望むべくもない。公務員として多くの制約に縛られ、過労死に近い過酷な労働が強いられるのが市民病院の医師である。大都市の民間病院に勤務すればこうした呪縛から解放される。好きな時間に診療しつつ、重症患者は専門の大病院に送り、家庭生活もエンジョイでき、そして収入もはるかに高いのである。「医の倫理」を説くには、なにより医師が、ゆとりと生き甲斐を持って働ける労働環境が備わっていなければならない。市民にとって市民病院とは必要不可欠な存在。だが医師にとっての市民病院とは、そうした環境が著しく欠如した職場、というのが現状だ。 「公立病院改革ガイドライン」を受け、東松山市は一昨年「東松山市民病院在り方懇談会」を設置、市職員・市議をはじめ有識者らが対策を検討した。「公設公営を継続する」というのが懇談会の検討結果である。市民病院にとっての救急医療の重要性が再確認された、という意味では適切な結論といえるだろう。 だが問題は、同懇談会が示した具体的数値目標だ。「1・平成23年度に経常収支の黒字化」「2・一般病床220床のうち56床を削減して110床とし、一般病床利用率を80%以上にする」「3・平成23年度までに常勤医師を15名体制とする」の3点……。何のことはない。「病院インフラを節減し医師を増やして黒字にする」というだけのもの。医師不足が経営悪化の一大原因であるのに、その解決法が「医師を増やす」では、机上の空論ですらない。市職員・市議や有識者が集まり、半年も話し合った結果がこれなのだ。本当は改革する気などないのでは、と思わず勘ぐりたくなるではないか。 「市民病院を医師に魅力あるものにしよう!」 竹森副参事が市政策財政部に提出予定の「3つの具体的プラン」 悪循環を断ち切る起死回生の「市立病院改革作戦」!「医師の増員」。誰もが思いつく方策は給与・手当の増額であろう。東松山市民病院は勤務医にいくら支払っているのか。たとえば勤続年数や経験を平均化した単純計算レベルで、民間病院とどの程度の差が生じているのだろうか。 「民間の医師の給与・手当についてはこちらも調査したが適切なデータがない。市民病院との間にギャップがあることはわかっているが、比較するまでには至っていない」(事務部井上部長) 医師の確保先はどうか。先の「在り方懇談会」による報告書には、東松山市民病院について「日本大学医学部の関連病院として市民病院は位置づけられてきた」と記されている。まるで資本提携でもあるかのような表現だが、これは明らかに市民病院がこれまで、日大医学部の医局人事による医師派遣に頼ってきたことを示唆するもの。「関連病院として位置づけられてきた」などと表現しているこの一文だけで、東松山市民病院の運営体質、特に医師確保の方法に一種の硬直性が感じられる。 04年からの新医師臨床研修制度が施行されている現在、医師の確保先を日大医学部、いや「大学」に限る必要性があるのだろうか、と取材に応じた病院側に問うと 「埼玉医大にも依頼しているし、他の大学に行くこともある。むろん大学のみならずインターネットでも募集しているが、大学がやはり一番頼みやすい」(同部長) ネットで募集しているのなら、何も大学に頼みに行かなければならない理由などないはずだ。 約8億の累積赤字に対し何の改善策もなく、医師不足解消案を「医師の増員」という、ふざけているとしか思えない回答を示す病院経営陣。呆れかえった本紙に対し、それまでの井上部長らの回答をよそに、整然と「改革プラン」を述べはじめた職員がいた。 竹森副参事……。かつて東松山市リーマン社債損失事件において、坂本市長の右腕として奔走、市長から結果的に責任を負わされる羽目となった竹森郁・元特別理事だ。疑惑の市長に「トカゲの尻尾切り」された若き敏腕職員が回された先こそが、この東松山市民病院だったのだ。 竹森副参事は「この病院に来てからというもの『市民のための病院が市民を救えない』という現状を何とか打破しようと、私なりに必死に調査し考えた」と前置きし、私案として3つの改革プランを本紙に示した。 第1は研修施設の充実化。「調査したところ、医師は必ずしも給与・手当の向上ばかりを望んでいるのではない。勤務条件の中に『スキルアップ』を望む医師が多くいる。全国的に著名な医師を招聘し、高度な医療技術の研修をはかることができる環境を、まずは整えたい」 第2は医療過誤訴訟へのバックアップ。医療過誤先訴訟専門の弁護士を常駐させることで、訴訟対策を全面的にバックアップする体制を整える。 第3は病院経営そのものを経営のプロに任せること。もちろん「公設公営」という経営形態を失わずに、である。副参事が主張するのは「地方公営企業法の全部適用」だ。 東松山市民病院には、これまで地方公営企業法(地方公営企業の組織や財務、職員の身分取扱などを定める法律)の財務規定のみが適用されてきた。だが全部適用に変わると、病院事業は経営責任者である「病院事業管理者」(新設)に移行し、市長部局から独立する。そして病院事業管理者には人事、勤務条件など経営に関する広範な権限が与えられることになる。これにより権限と責任が明確化し、病院経営の自主性を高めるとともに、職員の意識改革を進めながら経営改善を行うことができる。むろん変化するのは病院の経営形態だけであり、診療体制や診療内容が大きく変化するものではない。 「北海道夕張市は市民病院を経営のプロに任せることで、診療内容は大きく変わったものの救急医療は見事に復活した。そうしたケースも参考にしたい。何より『経営がしっかりしていない』ことは、医師に嫌われる一番の理由だ」(竹森副参事) 副参事は最後に「大学病院との提携だけに頼らないことも重要。医師不足とはいえ、全国の医師数全体が不足しているわけではない。リソースは同じ。偏在している大都市の病院等、確保先を増やしていかなければならない」と付け加えた。 竹森副参事のよどみない説明に、本紙は東松山市民病院の未来にようやく光明を見た。むろん副参事が列挙したこれらの改善プラン、部分的にはすでに全国の自治体病院で採用されているものもある。だが営利第一の民間病院ではなく、「市民の税金」という貴重かつ潤沢な資金源を要する市民病院であればこそ、複数の改善プランの同時進行によるドラスティックな経営改革もまた可能であるはずだ。 「市民の命を救える市民病院にしたい。いや、そうでなければならない」……。かつてリーマン事件で「市長の身代わり」となった竹森副参事はいま、東松山市民病院の再建に全身全霊を傾けている。人が変わり、病院も変わる。市民生活も変わってゆく。東松山市が真の意味での「日本一の福祉都市」に向かう改革の第一歩は、いま始まったばかりだ。■ |