現在
 ゲスト 24 人
 がオンラインです
火を噴くか、朝鮮半島! Eメール
内外展望 - 海外情勢
2010年 4月 28日(水曜日) 08:32

火を噴くか、朝鮮半島!
「外交」・「安保」という視点を失っている日本政府は
非常事態に対処できるのか?

プリントアウト用はこちら

韓国哨戒艦の沈没事件が怪しい雰囲気を見せ始めている。
これまで絶対に考えられなかった、朝鮮半島の南北軍事衝突が現実味を帯びて語られ始めた。謎に満ちた哨戒艦沈没事件をめぐる動向を眺めてみよう。

事件に北朝鮮が関与か?

事件は3月26日の夜9時45分に起きた。
韓国・北朝鮮の南北軍事境界線付近で、通常の警備活動中だった韓国の哨戒艦「天安(チョンアン)」(1200トン級)の船体後方に、突如として大穴が開き、沈没したのだ。天安には104人の乗員が乗り組んでいたが、半数以上は救助されたものの、46人が行方不明となってしまった。

事件の翌日、合同参謀本部情報作戦処長のイ・ギシク海軍准将は、「艦艇の船底に原因不明の穴が開き、沈没した」と説明。この発表の直後に在韓米軍は、「北朝鮮の介入の可能性は低いと判断している」とコメントを発表している。韓国軍、在韓米軍の発表があったこの時点で、哨戒艦沈没は艦内の爆発等といった事故の可能性が高まったように思われていた。

ところが事件から4日過ぎた3月30日になると、米国防総省のモレル報道官が、「正確な原因はいまだ究明されておらず、追加調査が必要な状況だ」と語り、ここにきて俄然、北朝鮮の関与の可能性が疑われ始めるようになった。

韓国海軍の体たらく

その後の調べで、事件前後の哨戒艦「天安」の乗組員の行動に、きわめて重大な過失が重なっていたことが明らかになっている。

まず、沈没直前に乗艦中の乗組員が携帯電話で会話をしていたという事実が明らかにされた。携帯電話の電源を入れれば、その場所が特定されることは、誰もが知っていることであり、日本の海自の場合でも、一般隊員が携帯電話を艦内に持ち込むことは禁止されている。しかもあろうことか、事件発生の状態を携帯のカメラで撮影した乗員が複数名存在したというのだ。これもまた、とんでもない規律違反である。さらに、沈没が始まった午後9時45分の時点で、パジャマ姿の兵が複数名いたというのだ。他にも、事件時刻の証言の食い違いや、報告系統の混乱など、いくつもの不祥事が報告されている。韓国海軍の規律の乱れは、笑い話ではすまされないものだった。恐らく人類史上の軍隊のなかでも一、二番を争うほどの出鱈目ぶりだったと考えられる。

余談になるが、韓国政府関係者にこの体たらくを揶揄したところ、早口で思わぬ逆襲を受けてしまった。
「普天間基地移設で右往左往する鳩山首相や、無料化を公約した高速道路の料金値上げで小沢幹事長と対立する前原国交相など、政権末期症状の民主党。さらに野党転落後、分裂してガタガタに崩壊していく自民党を抱える日本政界は、天安よりよほど酷い状態。間もなく沈没するでしょう。人類史上最悪の政治状況なのではありませんか?」

哨戒艦の真下で爆発?

4月14日、米国のキャンベル国務次官補は、記者団に6カ国協議再開に向けた外交展開に関して質問を受けた際に、「協議再開に関する議論は、韓国哨戒艦『天安』沈没の原因究明後に進められるもの」と答えた。

キャンベル次官補のこの言葉は、よく考えると非常に意味深長な言葉である。つまりキャンベル次官補=米国北朝鮮担当プレーンは、天安が北朝鮮の攻撃で沈められた可能性が高いと判断し、沈没原因が究明された後にならないと、6カ国協議再開に向けた外交努力を行わないと答えたわけだ。

4月18日、天安の艦尾部分がやっと引き揚げられ、続いて23日には艦首部分も引き揚げに成功。これらを調査、解析することで、沈没原因解明が大きく前進することになった。

艦尾や艦首が引き揚げられる直前まで、沈没原因として、韓国軍が70年代に設置した機雷に触れたのではないかとか、艦内で何らかの爆発が起きたといった見方も存在していた。だが24日と25日に行われた調査では、衝撃的な事実が明らかになったのだ。

艦の破断面やねじれ、底部の穴の開き方等々から、暗礁に乗り上げたとか、潜水艦と衝突したといったものではなく、外部から強烈な圧力がかけられたものであることがわかった。天安底部にこれだけの破断を引き起こす圧力として想定できるのは、機雷または魚雷である。だが、艦の破断状況から、機雷の可能性はゼロと見なされた。さらにその後の調査で、巨大な穴が開く魚雷直撃の可能性もゼロと結論づけられた。

唯一考えられることは、哨戒艦・天安の真下10メートルの位置で、魚雷が爆発した場合だ。強烈な爆発であれば、想像を絶する激しいジェット水流が真上に突き上げられ、これが天安の艦底を破断し、二つに折れた形で一気に沈没に向かわせる。

韓国政府関係者は「天安は魚雷などの水中兵器の直撃を受けたのではなく、船底から非常に近くで起こった強い爆発の影響を受けた」と語ったという(「聯合ニュース」4月26日)。これは、天安の船尾が引き揚げられた直後に調査団が行った説明とも一致する。

「回天」型人間魚雷の爆発があった

たとえ哨戒艦・天安の規律が乱れていたとしても、通常の警備活動を展開中の艦艇の真下に潜り込み、10メートルのところで魚雷を爆発させるなどということが可能だろうか。考えられるのは唯一、大東亜戦争中に帝国海軍が作成した「人間魚雷・回天」である。

引き揚げられた天安の艦尾部分の分析には、制服のNSA(米国家安全保障局)の人間が同席していたと伝えられるが、ここでは「人間が搭乗した魚雷」が「哨戒艦の真下に入り込んで自爆した」と結論づけられたようだ。

もしこれが正しいなら、間違いなく自爆テロである。

しかし、たとえ北朝鮮が計画して実行したテロだったとしても、北朝鮮の正規軍がこのような攻撃を行うことは考えにくい。考えられるのは、かつての国際情報調査部と作戦部35号室などが合体し、国防部直轄の独自組織として誕生したと伝えられる「偵察総局」だ。そして奇妙なことに、いま北朝鮮の偵察総局が別な事件で話題になりつつあるのだ。

偵察総局とは何か

偵察総局とはもともと旧ソ連のGRU(赤軍参謀本部情報総局)を参考に作られた秘密部署である。旧ソ連のGRUは、最終的には「極東ソ連軍情報総局」という形で、ソ連解体の刻を迎えた。

余談になるが、ソ連解体後、GRUはかつての日本帝国陸軍の「陸軍中野学校」のような組織となった。すなわち、破壊工作、宣撫、暴動訓練、暗殺、テロを教育する組織になったわけだ。各国のテロリストたちが、ここで暗殺、破壊工作等々を学習したのである。北朝鮮の偵察総局の人間がここで学んだか否かは、調べようがない。ただ明らかなことがある。オウム真理教の複数のメンバーがロシアで軍事訓練を受けたことがわかっているが、彼らは、ここGRUで学んだのだ。

哨戒艦・天安の沈没事件に、北朝鮮国防部直轄の秘密部署、偵察総局が関与しているのではないかと考えられ始めた矢先の4月20日、韓国の国家情報院とソウル中央地検は、「国家保安法違反」で北朝鮮の工作員2人の身柄を拘束したと発表した。この2人は北朝鮮の偵察総局所属で、13年前に韓国に亡命した黄長燁(元労働党秘書)に対する「殺害指令」を受け、昨年12月に脱北者を装って韓国入りしていたと自供しているという。

たしかに黄長燁は3月末から米国、日本を訪問して、4月8日に韓国に帰国している。米国、そして日本でも、黄長燁に対する警備状況は異常とも思えるほどの厳戒ぶりだった。日米当局ともに黄長燁が狙われているという情報を下に厳戒態勢を組んだことは事実だろう。だが、ここは熟慮が必要である。13年も前に亡命した秘書に対して、なぜこの時期に暗殺司令が出されたのか。しかも指令を受けた北朝鮮のスパイは、なぜこの絶妙なタイミングで逮捕されたのだろうか。さらに逮捕された彼らは、なぜ簡単に、偵察総局のメンバーだとペラペラと自供したのか。

いつか来た道

いつの時代にも、絶妙のタイミングで歴史を突き動かす事件が発生する。今回の事件を俯瞰してみたとき、これが1968年(昭和43年)の出来事に似ているということが理解できる。1968年当時の韓国大統領は朴正煕(パクチョンヒ)だった。

これより前、1966年に韓国漁船が北朝鮮の魚雷艇から攻撃を受けたのを皮切りに、1966年、1967年と、38度線を挟んで大規模な戦闘が繰り返され、南北間は緊張していた。そんな状況下、1968年1月に、対南工作(対韓国工作)を専門とする朝鮮人民軍第124部隊の精鋭31名(+α)が韓国軍の制服に変装して38度線を越境し、ソウルを目指した。目的は朴正煕大統領暗殺である。

これは「青瓦台襲撃未遂事件」としてよく知られた物語だが、結論を言えば、北朝鮮の特殊部隊は襲撃に失敗したのだ。1名は逮捕、1名は自爆。29名が射殺された(2名が北朝鮮に逃げ帰ったという説もある)。韓国側は軍人、警察官の他、巻き添えをくらった一般市民を含め68名が死亡している。

この事件は1968年1月21日に決着を見たが、北朝鮮から生命を狙われた朴正煕大統領は激怒。北朝鮮への攻撃を準備し、L・B・ジョンソン米大統領に戦闘開始の了解と支援を依頼したのだ。

ところがその2日後の1月23日に、衝撃的事件が勃発する。プエブロ号事件だ。

佐世保を出港し、北朝鮮の元山港沖の公海上(北朝鮮は領海侵犯と主張)で電波傍受、情報収集を行っていた米海軍の調査船プエブロ号が、北朝鮮警備艇から攻撃を受け、乗員1名が銃撃を受けて死亡、調査船と82名が北朝鮮に拿捕されたのだ。

米軍は直ちに空母エンタープライズを現場に急行させると同時に、米空軍に戦闘準備体制を採らせた。世界は第二次朝鮮戦争勃発を予感したが、これにソ連軍が呼応。当時、長期にわたるベトナム戦争を戦っていた米国は、ソ連軍の参戦を考慮して戦闘突入を断念。北朝鮮に謝罪することで、プエブロ号乗組員の解放だけを手にした。なおプエブロ号は現在も平壌の大同江に飾られ、反米宣伝に利用されている。

また余談になるが、このときプエブロ号乗組員の通訳を行ったのが、ジェンキンス(曽我ひとみさんの夫)だった。

朴正煕大統領は日本との国交回復(1965年・日韓基本条約締結)などで知られるが、米国からは嫌われており、最終的には「私の背後には米国がついている」と叫んだKCIA部長・金載圭に射殺されている。青瓦台襲撃未遂事件も、プエブロ号事件も、そのタイミングを含め、数々の裏話が世の中に出回っているが、真相は未だ不明である。

金正日と金正雲

青瓦台襲撃未遂事件やプエブロ号事件、あるいは同じ年に起きた不審船による日本領海侵犯事件を指揮したのは、金正日だとされる。1968年当時の金正日は満26歳。4年前に朝鮮労働党中央委員会に入り、「この男が金日成の後継者になるかも」と囁かれ始めた頃だ。

そして2010年のいま、金正日の後継者として金正雲(27歳)の名があげられている。

北朝鮮では指導者の資質として、「胆力」があることが重要だとされる。要するに、腹が座っていない男でなければ、国家を運営することはできないと考えるのだ。第二次朝鮮戦争を誘発するような事件を立て続けに起こしたことで、金正日はその胆力が認められたともいえるだろう。

金日成主席の生誕日だった今年4月15日に、朝鮮中央放送が興味深いニュースを流した。後継者と見なされる金正雲大将が「4月13日に砲撃演習の指揮をとった」というものだ。この演習は射程60キロの長距離砲訓練だと説明されているが、この演習に参加したメンバーの中に呉克烈の名も見ることができる。

呉克烈(オグリョル)とは1980年代~90年代に第一線で活躍した北朝鮮の軍人(元空軍司令官)で、ソ連空軍大学を卒業している。今年79歳になるが、昨年2月には国防委員会副委員長に就任。同時に、国防部直轄の秘密組織、偵察総局のトップに就いているとも目されている(No.2は金永哲中将)。そして、未確認情報ながら、金正雲がこの偵察総局を仕切り、今回の哨戒艦・天安撃沈事件を演出したというのだ。

父である金正日が26歳のときに青瓦台襲撃未遂事件やプエブロ号事件を仕切ったという話に、よく似た話ではないか。

金正雲の「近影」

黄長燁暗殺指令を受けたと自供する北朝鮮工作員が逮捕された4月20日、「毎日新聞」朝刊に世界中の情報通が仰天する写真が掲載された。その写真には、以下のコメントが付けられていたのだ。
「咸鏡北道の金策製鉄連合企業所を視察中の金正日総書記に同行する三男の金正銀(=正雲)氏。視察日は不明。朝鮮中央通信が3月4日に配信した」――。

毎日新聞の記事によると、「北朝鮮の金正日(キム・ジョンイル)総書記(68)の最有力後継候補で三男の正銀(ジョンウン)氏(26)の写真を、朝鮮中央通信や朝鮮労働党機関紙・労働新聞など国営報道機関が3月初めに報じていたことが分かった。北朝鮮指導部に近い関係者や韓国情報機関の関係者が毎日新聞に証言した。北朝鮮の公式メディアが正銀氏の姿を伝えるのは初めてで、正銀氏への権力移行作業が本格化している様子が浮き彫りになった」。

写真をご覧になった方はすぐに「怪しい」と感じただろう。なにしろ写っているのは、どう見ても40代の男。思い切りサービスしても30代後半としか思えない。しかもこの写真の人物は、金正日総書記が工場見学という見出しの記事で、過去に何度か登場したことがある男と瓜二つなのだ(その男は「金策製鉄連合企業所の上級幹部」と説明されていた)。

なぜ「毎日新聞」がこの日を選んで金正雲(正銀)の写真を掲載したのか。一般には、毎日の北京支局長が北京在住の北朝鮮情報員に騙されたと解説されている。もしそうだとすると、このタイミングを選んで毎日新聞を騙した北朝鮮の思惑はどこにあったのだろうか。

厳しい決断を迫られる李明博

哨戒艦・天安の沈没事件から1週間たった4月2日、韓国の李明博大統領は「海軍哨戒艦沈没事故は安保的次元の問題である。このため、今月の国会では与野党が力を合わせるべきだ」と強調している。

その後も李明博大統領は、韓国の各界代表と会合を重ねている。その中には、このところ韓国大統領府と疎遠な関係にある仏教界の重鎮も含まれている(李明博はクリスチャン。前大統領・盧武鉉もその前の金大中も、さらに前の金泳三もクリスチャン)。

与野党どころか宗教界まで含めた各界の意見をまとめようとしている状況は、最悪の場合、北朝鮮に対して何らかの報復を行う意思を持っていると考えるのが普通だ。

4月7日には、韓国国防部は英国政府とオーストラリア政府に対し、哨戒艦・天安沈没事件の合同調査への参加を打診(両国とも調査に積極的参加と回答)。それだけでなく、国際社会全体に対し、公明正大な事故調査を行い、結果によっては「重大な決意」を行うと言明。さらに23日には、「調査に関しては、厳格かつ科学的に国際社会が受け入れられる結果を出す」としつつ、「結果が出れば、そのときに国際社会と協力し必要な措置を取る」と語っている。

朝鮮半島有事は絵空事ではない

1968年の青瓦台襲撃未遂事件やプエブロ号事件のときには、朴正煕大統領は北朝鮮との戦争を決意した。だがその後のラングーン事件(1983年。韓国閣僚など21名が爆死)の際にも、大韓航空機爆破事件(1987年。乗客乗員115名死亡)の際にも、北朝鮮に対する報復は見送られた。

しかし今日の事情は、当時とはまったく違っている。

4月1日には、冷え切っていた米中関係が新たな蜜月関係へと変化した。
米中関係は、今年年頭に行われた台湾への武器輸出、2月のダライ・ラマとオバマとの会見、グーグル問題などで悪化していたが、オバマ大統領が胡錦濤国家主席と長時間の電話会談を行った結果、「米中両国が連携する重要性」を認識したとしている。半島で小競り合いが起きても、米中関係が破綻する恐れはない。

ご存じの通り、朝鮮戦争は「休戦中」であって、いつでも再開できる。そうした状況下、現在北朝鮮軍と正面対峙しているのは在韓米軍である。その在韓米軍は2012年3月末に撤退することが決まっている。そうなれば、北朝鮮軍と対峙するのは韓国軍になる。そして2012年に、北朝鮮は「強盛大国の大門を開く」と宣言しているのだ。

沈没した天安乗員の規律の乱れを見てもわかる通り、このままの状態で在韓米軍に撤退されることは、韓国の国防にとって非常に厳しい状態が見えてくる。万一、北朝鮮と事を構えるのであれば、在韓米軍が残留しているこの時期でなければならないと李明博大統領が判断しても、おかしくはない。

米国にしても、東アジア情勢を俯瞰するにあたり、対北朝鮮政策を変更する可能性は高い。天安沈没の原因が北にあると認定された場合、再度北朝鮮を「テロ支援国家」に認定する可能性も浮上してきている。

さらに、「対米自立」を掲げ、中国に接近し、普天間基地移設問題すら右往左往している日本の民主党政権、あるいは日本国民全体に、再度「アメリカの核の傘」という実力を認識させる意味合いも出てくる。

問題は、朝鮮半島情勢が極めて厳しいところにあるという認識が、日本全体に不足していることだ。

マスコミは本来なら、連日、新聞一面トップでこの問題を掲げてもおかしくない。政府も官僚も、野党も国民も、あまりに「平和ボケ」しているのではないか。

朝鮮半島有事――。現実には起きてほしくない恐怖が、いま、日本のすぐ隣で煙をくすぶらせている。■