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混乱が続く中東情勢。北朝鮮、中国を初めとする東アジア情勢の混沌。さらに米国内の対立、激変する欧州……。世界情勢は相変わらず目まぐるしく変化している。いったい世界は何処に向かって動いているのだろうか。表層的な情勢分析をしつつ、その背後に潜む本質を追ってみよう。

中東情勢を俯瞰する

今年3月20日に米軍等によるイラク開戦4周年が過ぎた。この4年間でイラクは新しい国家として生まれ変わったが、それは米国が公言しているものとは大きく異なっている。バグダッドを中心にイラクの治安状況は安定するどころか内戦状態にあると言って問題ないだろう。

この4年間で、公表された米兵の死者は3300人に及ぶ。非公表、あるいはイラクで負傷した後にドイツなどに運ばれて死亡した兵士の数は数千人に及ぶと考えられる。イラク国内の民間人の死者数は「10万〜15万人」(イラク保健省発表)とも、「65万人」(欧州の民間調査機関発表)とも言われ、正確な数は誰にも把握できていない。

国内の治安悪化に伴い、200万人以上がシリアやヨルダンに逃れているが、同時に180万人を越える国内難民も発生している。まさに混乱の坩堝となっているのだ。
このままだとイラクは3分割に向かい、さらに最悪の場合、国家崩壊となるかもしれないとの予測もある。

イラクの3分割は、じつのところ米国を初めとする西側諸国が心の中で描いてきた最終形だったのかもしれない。3分割とはすなわち、北部クルド人地区、中部スンニ派地区、南部シーア派地区である。しかしスンニ派地区の独立はトルコやイランに住むクルド人たちを刺激するだろうし、それを恐れるトルコ、イランの介入を招く可能性がある。シーア派が実権を握る南部地域は大油田地帯であり、この地域が独立すれば当然ながらイランの影響力が強まる。

米国はこうした状況のなか、親米派のサウジがスンニ派に肩入れすることを黙認している。中部スンニ派の武力が強まればクルド人地区も南部シーア派地区も抑えることが出来るとの読みがあるからだ。ところがサウジの資力で軍事力を高めたスンニ派が米治安部隊をも標的としているのだ。

サウジは、イランと連携するシーア派民兵組織の勢力拡大を恐怖に感じている。イランの勢力拡大はアラブ諸国に深刻な危機感を募らせているのだ。サウジ王家は昨年末にチェイニー(米副大統領)を呼び寄せ、イラク中部スンニ派に対する武器援助を了承させている。それどころかチェイニーは、米議会の承認を得ないまま米国民の税金を密かに中部スンニ派武装勢力に流しているのだ(ワシントン・ポスト紙掲載情報)。これは、米国の税金で武力を高めたスンニ派がイラク駐留米軍への攻撃を激化させていると言うことになる。

ブッシュ大統領に直結するチェイニー批判はこれだけではない。チェイニーと関係が深い米石油サービス大手のハリバートンがテキサス州ヒューストンにある本社をUAEのドバイに移転させると発表した。中東戦略の一環と説明されているが、イラク駐留米軍との間の不透明な契約関係が問題視されたことを受けた「税金逃れ」なのではないかとの批判があがっている。米議会にも「兵士と納税者をいかに欺いたかの証拠がある」(民主党ヒラリー・クリントン)との声がある。

チェイニー批判を強めるヒラリー・クリントンだが、彼女は自分が大統領になったら駐留米軍の兵力を削減するとは明言しているものの、「反米勢力の攻撃から石油産出地区の利益を守る」とも語っている。それだけではない。さらにヒラリー・クリントンは、「イスラエルの利益を保護するために永続的に米軍をイラクに駐留させる」と宣言しているのだ。

米国内部は確実に「イスラエルの存続」を軸に動いているだけだ。その内部はしかし、強硬シオニズム右派から世俗的国際派ユダヤに至るまで数段階に分かれ、いま両極の2派閥が激烈に戦っているところなのだ。

問題はイラクだけにあるのではない。アラブ社会が最も恐怖に感じているのはイランの勢力拡大である。もちろん米英もイラン核開発問題には神経を尖らせている。

3月末に英海軍のボートが領海を侵犯したということでイラン海軍に拘束されるという事件が起きた。これはちょうど、国連安保理がウラン濃縮活動を続けるイランに対して追加制裁決議を採択する直前のことだった。英海軍は、「領海侵犯ではなくイラク側海域での通常の密輸取締り監視活動中だった」と主張。英イラク両国の言い分は食い違っていた。

幸いなことに4月4日に拘束されていた15人の英兵は無事解放されたが、ここで本紙は奇妙な事実に気づいたのだ。かつて9.11米同時テロ発生の直後に、英軍はアフガンに偵察要員を送り込んだのだが、なぜかタリバーンに拘束され、1カ月後に全員無事に生還を果たしている。中東のこの地域と言えばかつて大英帝国が勢力下に置いていたところでもあり、現在でも英国流の地下活動が展開されている場所だ。穿った見方をすれば、表面には出せない裏取引があった可能性が指摘できる。

英兵士の解放は英首相直属の外交政策顧問とイラン最高安全保障委員会事務局が水面下の交渉で事態収拾に動いた成果だと説明されている。また英兵士が解放された日に記者会見に臨んだマコーマック米国務省報道官は、イラク北部で米軍が拘束したイラン機関員との面会をイラン政府が求め、イラン人を含む国際赤十字委員会との面会を許可したと述べている。英米とイランとの間に、表には出せない駆け引きがあったことは事実で、外交の本質とはこうした動きにあることを忘れてはならない。

イランに対する追加制裁決議の採択を終えた直後に、米ライス国務長官は中東和平に向けたシャトル外交を展開した。ワシントンポスト紙はライスの中東外交に期待を表明。かつてキッシンジャーが調停外交で成果をあげたように、「(ライス長官の外交政策は)将来のパレスチナ国家が強固な統治を打ち立てるための財政・技術支援のステップとなるだろう」と記している。

これは明らかに、米国内に急速に拡大しつつある「反ユダヤ感情」に配慮したものだ。つまり同紙が言いたいことは、在米ユダヤ社会に対して「ユダヤ人はパレスチナ国家の創設を認めるべきだ」と説得していると考えて良い。

北朝鮮と米国の不思議な関係

中東情勢が変化するなかで、とくに米国社会では支配階層のユダヤ人社会に対立が起き、また米国大衆のなかに反ユダヤ感情が広まり、焦燥感や欲求不満状態が蔓延しはじめている。欲求不満はそれだけではなく、対北朝鮮外交の不首尾についての不満からも発生している。

北朝鮮が最優先課題と位置づけていたマカオの凍結資金問題は、米側が全面返還することでいちおうの決着を見た。ところが米側が敵の要求を丸呑みしたにも関わらず、北朝鮮は一向に核開発に終止符を打つサインを見せていない。ライス国務長官やヒル国務次官補に対して「腰抜け外交」と野次が飛ぶのも当然かもしれない。

このためもあって、米財務省のなかには国務省(ライス)の対北朝鮮外交に苦言を呈する勢力が強まっている。同時に国防省内にも激しく不満を漏らす勢力がある。こうした政権内の不満分子を集めて復権を狙っているのがチェイニーだが、いまのところチェイニー復権の芽は見えてはいない。

新聞TVの報道を見る限りでは、米の北朝鮮政策は腰抜けであり、外交戦略、外交戦術が間違えていたのではとの感を持つかもしれない。だが本紙が重ねて主張している通り、米朝間には隠れた秘密回路が存在していると考えられる。

話は25年前に遡る。

イランイラク戦争真っ只中の1982年、北朝鮮の女性テロリスト5人がイラク軍将校12人を射殺するという事件が起きた。この北朝鮮テロリストを指揮していたのは「砂漠の殺し屋」との異名を持つ国際テロリスト、アブ・ニダルだった。

当時の状況は現在とはまったく異なっていた。米国はサダム・フセインの国イラクを支持し、アラブ諸国はイランを支持していたのだ。アブ・ニダルはイラン側、アラブ側に回って米側のイラク将校を殺害する役目を負っていたわけだ。

この事件の10年前の1972年、アブ・ニダルはミュンヘン・オリンピックの際にイスラエル選手団を襲い(「黒い九月」事件)、11名を殺害。1974年にはローマ空港でパンアメリカン航空機を襲撃して31人を殺している。

アブ・ニダル逮捕に向けて、米CIA、英MI6、イスラエルのモサド等が総力を挙げたのだが、彼が捕まることはなかった。アブ・ニダルが莫大な――無尽蔵とも思える逃走資金を持っていることだけが明らかになった。

その後の調査で、BCCIという銀行を通じてアブ・ニダルが資金を得ていたことがわかる。ところがこのBCCIという銀行は米CIAの御用達銀行だったのだ。反米、反ユダヤ活動の殺し屋として名高いアブ・ニダルは米国から資金を受け取っていた可能性が強いということになる。

1986年にイラン・コントラ事件が発覚する。イラクと手を結んでイランを叩いているはずの米国ブッシュ(父)政権は、イランにも武器と資金を与えていたことが明らかにされてしまった。米国の自作自演戦争だったわけだ。アブ・ニダルもまた、コントラ事件同様、米国の手駒として動いていたとも考えられる。二ダルがCIAの要員だったという説も根強い。

(2002年8月16日、アブ・ニダルはバグダッドにあった自宅で死亡していた。 遺体に残された弾痕から自殺の可能性が高いとされているが、暗殺の可能性も否定されていない)

ここで本紙が問題としたいのは、アブ・ニダルが北朝鮮の女性テロリスト5人の指揮官としてイラク将校を殺害したという事実である。なぜニダルは北朝鮮工作員と行動を共にしていたのか? じつは彼は、平壌の軍事施設でテロリスト訓練を受けていたというのだ!CIA工作員とも噂されるニダルが平壌で軍事訓練を受けていたのは、金正日の指令に基づいている。――それは金正日とCIAが背後で繋がっている可能性を意味する。

国際情報通たちは北朝鮮を巡る6カ国協議が進展しないことに関し、「米国は不手際の責任を中国政府に押し付けている」とか、「中国は米朝間の直接対話に怒り、米国にやられたと腹を立てている」「北朝鮮は中国の邪魔のお陰で米朝会談が進展しないと考えている」などと解説しているが、それは本当だろうか。実際のところは、米朝間はじつに見事に連携プレーをこなしているのではないのか。

4月8日のワシントン・ポスト紙は「今年1月に北朝鮮がエチオピアに武器輸出をしたことを、米政府は黙認した」と報じた。米軍が1月からソマリアでアルカイダ掃討作戦を展開している最中だったので、この件に関しては問題視しなかったというものなのだ。この暴露報道は実際のところ、米国の対北朝鮮政策が柔軟化したことを内外に知らしめる意図があったと考えて良い。いや、さらに突っ込んで、北朝鮮が米国と組んでアルカイダ掃討作戦に協力しているようにも受け取れる報道なのだ。明らかに米国は、北京の頭越しに北朝鮮外交を行い、成功に近づいている。

拉致問題の深奥を考える

慰安婦問題に関する米議会の審議が進み、国家関与責任を認めない安倍首相に対して米政府内部から批判が続出。お陰で首相発言がブレるなど訪米を前にして安倍政権に対する米国の一部勢力の圧力が高まっていた。

そうしたなか、3月末から4月にかけて、ネオコン系のフランシス・フクヤマが「靖国神社の真の問題は、神社自体ではなくその隣にある遊就館である」等々といった発言を行い、再び遊就館問題に火を付けはじめた。昨年(平成18年)夏にワシントン・ボストのコラムで遊就館の展示資料を非難する論文が載り、元外交官の岡崎久彦氏がこれを受けて産経新聞に「遊就館から未熟な反米史観を廃せ」との文章を発表、遊就館側が一部を削除、改訂した経緯があった。この問題を再度焚き付けてきたのだ。

慰安婦問題と遊就館問題を狭い枠の中から見ていては深奥は理解できない。これらの問題は時系列的に俯瞰すれば、明確に6カ国協議の進捗状況に合致していることが理解できる。その真意は、北朝鮮による日本人拉致事件を相対化することにある。

4月中旬になって、中国の武大偉(6カ国協議議長=外務次官)と米国のヒル国務次官補が、それぞれ日本側に、「拉致問題の進展の『定義』」を明確化するように要請していたことが判明した。日本側が「進展の定義」をあえて明確化してこなかったのは、拉致問題の全面解決を求めるという基本立場があるからだ。だが、米中両国がこれほど明確に言ってきたということは、日本の拉致問題が6カ国協議全体の進展の障害になる可能性が高いということを意味している。つまり明確に言うなら、米中は「拉致問題などに拘るつもりはない。日本がそれに拘るなら6カ国協議から離脱しろ」という話なのだ。

米国はなぜ、拉致問題を実質的に無視したいのだろうか。それは北朝鮮の「テロ支援国家」という烙印を解除したいと考えているからだ。

これまで米国は、拉致問題を一つの根拠として北朝鮮を縛り、水面下の交渉のカードにしてきた。その交渉に一定の結論が見えたところで、拉致問題は米国にとっても解決不能の面倒な問題に変わりつつあるのだ。

日本の拉致問題専門家や外交知識人、外交問題研究家たちは「なぜ北朝鮮が拉致などという馬鹿げたことをやったのか」という問いを、北朝鮮の立場から解説することができない。――日本の戸籍が欲しかったのだとか、日本語教育のために必要だったとか推測して勝手に満足しているだけだ。だが、拉致事件が頻発した1970年代と言えば、日本では左翼思想が全盛期。「よど号」乗っ取り犯が北朝鮮に渡って間もない頃で、自ら平壌に行くことを志願する若者が星の数ほどいた時代なのだ。拉致などという面倒で危険な手法を採らなくても、十分対応できたはずだ。

もう一つ、重大な問題がある。小泉純一郎首相が初めて平壌を訪れたとき、なぜ金正日は拉致を認め謝罪の言葉を口にしたのか? 今日にまで至る過程を熟慮してみると、金正日の拉致認定、謝罪はあまりにも異様に感じられるはずだ。この問いを北朝鮮の立場に立って考えると、必然的帰趨として曽我ひとみさん・ジェンキンス氏問題に辿り着く(詳しくは本紙「東アジア波高し!!ジェンキンス問題の真相を読み取れ!」参照)。

ネオコンに操られたブッシュ大統領が北朝鮮を「テロ支援国家」に指定し、武力制裁の対象国家に決め付けたとき、閉ざされてしまった米朝秘密回路を復活させるために金正日は大きな賭けに出たのではないだろうか。それがジェンキンス氏問題であり、その結果として秘密回路が修復できたのではないだろうか。

今春になって、横田めぐみさんの生存情報がさまざまな形で頻繁に流布されている。生存説だけではない。欧州の某国某市に生存している、実質的に身柄を保護されているといった情報まで流されている。そうしたなか、米国のヒル国務次官補は、「拉致問題の解決には、拉致総体ではなく横田めぐみさんだけに限って問い詰めるのが効果的」と示唆している点も考慮すべきだ。

アブ・ニダルの例を先に示したが、北朝鮮のテロリストと米CIAが繋がっていた可能性が山ほど指摘されている。それはすなわち、日本人拉致事件を米当局が黙認していた可能性をも示している。そして恐らく、横田めぐみさんに限っては北朝鮮にとっても米CIAにとっても「想定外」の事件だったのではないだろうか。

いずれにしても、紆余曲折はあるだろうが、東西冷戦の残滓である38度線は近い将来必ず無くなり、半島は統一される。そのとき、統一コリアと中国東北部(旧満洲)、そしてモンゴル一帯に巨大経済圏、統一文化圏が出現することは間違いない。それはかつて日本帝国が描いていた大東亜共栄圏なのだが、これを支配する者はネオコンなのかユダヤ国際派なのか、それとも中国なのか……。

どの勢力が支配するにしても、かつての日本の影響力を勘案しないわけには行かない。日本を忠実な番頭に仕立てようとする圧力がいよいよ高まってくるだろう。だがその国際情勢を逆手に取り、東亜の繁栄のために日本が文明力を発揮する時代が来ることも十分あり得ることでもある。

すべては現在に生きる日本人一人一人の肩に掛かっている。■

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