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arrow台湾情勢・秒読みに入った「国民党総裁誕生」

遅ればせながら、明けましておめでとうございます。
旧年中はたいへんお世話になりました。ここに改めて御礼申し上げます。
本年もご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。
昨年末より諸般の事情で本ページの進行を停止させていただいておりました。お陰様で年末年始の間、スタッフ一同、十分な休養と充電を果たすことができました。心機一転、今年も精一杯頑張って情報をお届けいたすつもりです。なにとぞよろしくお願い申し上げます。

 行政調査新聞社 スタッフ一同

 今年は十二支の「子年」。干支の最初のスタートであり、すべてが原点から再スタートするという年だ。

 年回りが大きく変わる今年、世界もまた激動の中にある。韓国では大統領が代わり、ロシアもプーチンが大統領を辞める。米国では11月の大統領選に向けて、いま熾烈な戦いが繰り広げられている。そのどれもが重大極まりないものなのだが、本紙はここで、3月に総統選が行われる台湾情勢を俯瞰してみたい。

yellowbox 国民党、総統を奪回か

1月17日の「中国新聞社」の報道によると、台湾メディアが行った世論調査では、野党・国民党の正副総統候補である馬英九氏と蕭萬長氏の「馬蕭ペア」が56%の支持率を獲得。いっぽう、民進党の正副候補、謝長廷氏と蘇貞昌氏の「謝蘇ペア」は僅か26%で、馬蕭ペアが倍以上の支持率を獲得し、国民党総裁誕生が秒読みの状態に入ったと分析できる。

また、同日の台湾のテレビ局・TVBSの報道によると、6カ月前には20%の市民が民進党の謝長廷氏を、43%の市民が国民党の馬英九氏を「総裁に当選する人物」と考えていたが、国民党が大勝利を収めた立法委員選挙後にはこれが逆転、謝氏10%、馬氏57%に転じている。6倍近い支持率の開きがあるのだ。さらに、大接戦を演じた前回の総裁選で「陳水扁・呂秀蓮」を支持した市民のうち60%が、今回も民進党の「謝蘇」を支持すると答えているものの、27%は「馬蕭」支持に転じている。反対に、前回の総裁選で「連戦・宋楚瑜」を支持した市民のうち90%が「馬蕭」を支持、「謝蘇」支持に回った者は3%に留まっている。どうやら圧倒的大差で国民党・馬英九総統が誕生しそうな雰囲気なのだ。

そもそも台湾=中華民国とは、国民党が作ったものであり、いわば本来の形に戻るとも言えそうだが、じつはこの変遷には、注目すべき点が多い。

yellowbox 台湾の存在

第二次世界大戦の終了時点で、中国を統治する唯一の正統国家は中華民国だった。ところが国共内戦を経て1949年に成立した、中国共産党率いる中華人民共和国の建国後に、蒋介石率いる国民党軍が台湾に逃れたため、中国を統治する唯一の正統国家としての権利を主張する二つの政府が並立する事態となった。ここに「両岸問題」が勃発することになったのだ。

こうした状況下で、世界各国はどちらが正統な中国政府なのかという選択を迫られた。そんななか、米ソ冷戦、中国(中華人民共和国)の巨大化といった微妙な軍事・政治バランスや、複雑な情勢を経て、中ソの対立を勘案した米国が、1960年に中国(中華人民共和国)に急接近。その後の1971年に国連は中華人民共和国こそが「中国」の代表権を所有すると認定した。

だが、中華人民共和国を「正統な中国政府」として承認した後も、民主主義国家である中華民国との関係維持を求める日米など多数の国は、中華民国の統治地域を中国の統治地域とは別の「地域」と判断。「台湾」という名称で中華民国政府を扱うようになった。こうした世界環境が「両岸問題」をさらに複雑なものにしていった。

yellowbox 李登輝の登場と台湾独立運動

中華民国を存在させたのは国民党・蒋介石であり、その子供・蒋経国がそれを継いだ。だが、蒋経国の死後、その後継者として中華民国総統、国民党主席らに就任した李登輝は、その政策を大きく変えてしまった。

李登輝が総統になるや、それまで中華民国が掲げ続けてきた「反攻大陸」のスローガンを下ろし、中華人民共和国が中国大陸を有効に支配していることを認めたのだ。さらに、台湾には中華民国という別の国家が存在するという「中華民国在台湾」を主張、その後さらにこの国のことを「台湾中華民国」と呼ぶようになった。勝手に国名を変え、北京政府との内戦状態を一方的に終結宣言したわけだ。

李登輝はさらに民主化運動を展開して、1996年には初の総統直接選挙を実施。54%を得票して当選し、初めての民選総統に就任した。この選挙に際して中国は台湾の独立を推進するものと反発し、総統選挙に合わせて軍事演習を実施。ミサイル発射実験等を行ったのだが、これに対しアメリカは2隻の航空母艦を台湾海峡に派遣して中国を牽制。両岸の緊張度が一気に高まり、これが「台湾人」のアイデンティティーを触発し李登輝の再選を実現したと分析されている。

総統に再選されたところで李登輝は台湾独立の政治的立場を強めていく。両岸関係を「特殊な国と国の関係」と表現して、両国論を展開するようになっていった。

yellowbox 中国的国家観

国家とは、そもそもどういったものなのか。「国家論」と呼ばれるものは数多く存在し、さまざまな価値観、さまざまな論議を呼ぶものだが、一般論として単純に言うならば、「国家とは、一定の土地と多数の国民、人民から構成される、主権を持つ社会集団」ということになる。原則論として、多くの人々の意見はこうであり、読者諸氏の考え方も原則的にはこれで問題ないだろう。

だが、これはあくまでも西欧的国家観に過ぎない。人類史の歴史上、最大の領土を誇ったのは元(チンギスハンのモンゴル帝国)だと考えられる。巨大国家としては歴史上、ローマ帝国や大英帝国も存在したが、元の領土にはまるでかなわない。ところが本当の意味での実質支配で人類史上最大の国家は唐だった。唐とは中国はもちろん、遙かトルコ、ペルシャまでもを支配する、今日の国連以上の巨大勢力を持つ途轍もない国家だったところが、ここが中華思想の中華思想たる所以なのだが、支配力が及んでいながらも、その土地の統治をそれぞれの王家、支配者に委ねていたのだ。西欧覇権主義と東洋王道思想の根本的な違いがここに見られる。唐の持つ国家観は、西欧の国家論では解釈することができないのだ。

寸分の狂いもなく線を引いて分割するのではなく、曖昧なグラデーションを認める鷹揚さとでもいうべき姿が中華思想の根源に存在する。そして、その思想は今なお中国には脈々と生きていると考えて良い。つまり中国にとって、一国二制度体制も一国三制度体制も問題はないのだ。

中華民国の存在を認め、中華民国政府が存在することも認める中国は、しかし、「台湾独立」を認めるわけにはいかない。その感覚を西欧覇権主義の観点から解釈することは難しい。

yellowbox 陳水扁総統の誕生

2000年の総統選では、国民党は連戦、蕭万長を立てる。李登輝は国民党党首として連戦、蕭万長の選挙支援を行なったのだが、この選挙では国民党を離党した宋楚瑜が総統選に参加するという奇妙な構図が生まれていた。この構図を意図的に作り出したのは李登輝なのではないかとの憶測も乱れ飛んだ。国民党票が分裂した結果、最終的には民主進歩党候補の陳水扁が当選し、第10期中華民国総統に就任した。ここで、初めて野党に転落した国民党内部からは、李登輝の党首辞任を求める声が高まり、2000年3月に国民党主席職を辞任している。

陳水扁は李登輝以上の独立志向を有しているとされ、中華人民共和国との緊張関係を発生させた。

2004年の総統選挙では、国民党と親民党が選挙協力を行い「泛藍」陣営を結成したことで、当初は国民党が優勢と考えられていた。ところが、投票前日の3月19日に情勢の大変化が生まれたのだ。3月19日、陳水扁と呂秀蓮が台南で民衆の応援に応えながらパレードの最中に、銃撃を受けて負傷するという暗殺未遂事件が発生したのだ。

この事件は社会的に大論争を巻き起こし、選挙結果にも大きな影響を与えた。投票直前のでは、それまで優勢と思われていた国民党・連戦候補だったが、選挙結果の得票率は僅か0.2%の差で陳水扁が当選したのだ。銃撃事件は自作自演なのではないかとする泛藍陣営に対し、陳水扁陣営はその疑惑を全面否定している。また、投票日に大量の治安関係者を動員したことで投票に影響を与えたことから、連戦陣営は投票集計のやり直しを要求するなど、中華民国の社会に大きな影響を与えた。なお、銃撃事件に関しては鑑定専門家の李昌トをアメリカから帰国させて調査。銃創は拳銃によるものであるとの鑑定結果を提出、残された弾丸より犯人捜査が行なわれた。その後、被疑者が特定されたが、その被疑者は既に死亡しており、真相は未だに不明である。

yellowbox 両岸問題を国民党・馬英九氏に託す

来る3月22日の台湾総統選では、予想通り国民党の馬英九氏と蕭萬長氏の「馬蕭ペア」が勝利するのだろうか。現状を分析する限り、国民党陣営の楽勝のようにも見えるが、選挙は蓋を開けてみないとわからない。まして、李登輝が存在する以上、なお不透明なところがあるのだ。

李登輝は戦時中に京都帝国大学に在籍していたこともあり、岩里政男という日本名を使っていたこともあって、日本では比較的人気がある人物だ。またご存じの通り李登輝は本省人(日本統治時代からの台湾在住の人)であり、外省人(日本の統治が終わった後に大陸から来た人)には理解できない本省人の悲哀を熟知している。李登輝本人が、その思想として台湾独立を叫ぶ理由は、本人にしかわからない微妙な感情を内包している可能性もある。だが現在の国際情勢のなかで台湾独立を主張することは、巨大市場・中国大陸を虎視眈々と狙う諸外国の格好の餌食となることを理解すべきなのだ。とくに英米勢力は、対中圧力として台湾をコマに使っていることは間違いない。

今日、台湾ではなお、李登輝の動きに注目している。総統選に関して、李登輝の動きには目が離せないのだ。彼が3月に向けて、新たな「次の一手」を打つことは、恐らく間違いないからだ。

現実に、1月12日の立法委員選で大敗した与党・民進党の総統候補である謝長廷はその翌日13日に李登輝宅を訪問、総統選への支援を求めて長時間の話し合いを行っている。

国民党陣営のほうも、副総統候補の蕭万長にとっては、李登輝はかつての上司であり、李登輝腹心の黄昆輝・台連主席を通じて接近工作を強化。また馬英九候補も、16日の演説では李登輝の業績を賞賛して秋波を送っている。まだまだ陰の実力者の影響力を捨てきれる状況にはないのだ。

3月の台湾総統選は、実のところ世界情勢に非常に重大な影響を与えるものなのだ。北京五輪を直前に控えた中国はもちろん、プーチン以降のロシア政局、そして米大統領選。世界が大きく動く今年最初の国家首長選を厳正な目で注目していきたい。■

 

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