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支那北京政府の動向
米国の最終目標はユーラシア大陸一元支配であり、中期目標としては中国(支那北京政府)を掌中にすることにある。
その支那北京政府は7月1日に、共産党創設80周年を祝う式典を行った。この式典で演説した江沢民国家首席(総書記)は、富国強兵と中華民族復興を目標として掲げ、これまで拒否していた私営企業の経営者が共産党に入党することを容認する方針を表明した。
これは非常に大きな意味がある。見方によっては支那北京政府が、最終的には共産党からの脱皮を考えているとも受け取れるからだ。
江沢民総書記は今後の支那の指導理念として、従来から掲げていた「三つの代表論」(三代表論)を力説した。
「三代表論」とは、中国共産党が(1)先進的な生産力の発展、(2)先進的な文化の方向、(3)広範な人民の利益を代表するとする理論。昨年(2000年)2月に江沢民が打ち出したもので、その後全国規模で学習会を組織し、「毛沢東理論」「トウ小平理論」と並ぶ重要思想との宣伝を強めていたものだ。その核心は、共産党の中に、理論上は労働者の敵である資本家までもを取り込むといった発想である。
またこの式典の演説のなかで江沢民は、「共産党が直面している最大の問題は、党官僚の腐敗である」として、腐敗撲滅への決意を述べ、参加者たちから最大の拍手を得ている。実際、現在の支那北京政府は、党中央から税管吏に至るまで恐ろしいほどの腐敗がはびこり、亡国への道を猛スピードで突き進んでいると考えられる。
さらにここに、苛烈な権力争いが絡んでくる。江沢民は来年に引退することになっている(定年)が、その後を誰が引き継ぐのか。
今回の共産党創設式典には、党・軍から約六千人が出席。党序列第二位
の李鵬(全人代常務委員長)が主宰したが、江沢民の演説の前に胡錦濤(政治局常務委員兼国家副首席)が優秀党員を表彰している。じつは江沢民と胡錦濤の間の熾烈な権力争いが問題なのである。
毛沢東、トウ小平といった歴代支那政府の指導者は共産党軍として日本と戦い、蒋介石・国民党軍と戦い抜いた実績を持つ。だが江沢民はこうした世代とは異なる。昨年、フォーリン・アフェアーズ誌上に「天安門事件文書」が暴露されたウラには、江沢民によるトウ小平の権威失墜策謀があったのでは、と噂されるように、江沢民は故トウ小平に異常な敵意を示しているが、これは自分が歴代指導者と並んで称賛されたいという欲望の表れでもある。
その江沢民は、来年で定年となる。
トウ小平は定年後も中央軍事委員長のポストに就いていた。このポストには定年がないのだ。当然ながら江沢民もこのポストを狙っているが、今のところその可能性は低い。この地位
に就けないのなら、次の国家首席を自分の息がかかった曽慶紅(中央組織部長)に譲りたいところだが、反対勢力のために曽慶紅は今なお政治局委員の〔候補〕でしかない。彼が次の首席になる可能性はほとんどゼロに近い。では、誰がなるのか。
胡錦濤である。トウ小平は江沢民の次として胡錦濤を指名して亡くなっている。
だが、トウ小平が選んだ胡錦濤が国家首席となれば、江沢民の存在意義はなくなる。
こうした状況のなか、今密かに囁かれている噂は、江沢民、李鵬、朱鎔基ら定年組が全員揃って定年延長を決めるのではないかというものだ。奇妙なことに米ブッシュ政権も江沢民擁護に回っているようにも見える。恐らくこれは、江沢民らがいなくなると軍部強硬派が台頭し、緊張が一気に高まることが懸念されるからであろう。
いずれにしても支那北京政府の内情は混乱迷走のように見える。チベット独立運動、新疆ウイグル自治区独立運動に加えて、台湾問題も火を噴きかねない状況にある。支那の分裂は、それほど遠くない将来に起こり得るかもしれない。米国の狙いはむしろそこにある。黙って待っていれば支那は分裂し国際金融資本の軍門に下るだろうというわけだ。
だが、それは米国の一方的な読みでしかない。
小泉純一郎の「米百俵」ではないが、かつて毛沢東は「愚公移山」という例え話を好んだ。話の内容は、こうだ。
大家族を抱えた愚というお爺さんがいた。子供、孫にも恵まれ、財産も適当にあり幸せそうだったが、この愚さんの家の前には巨大な山があった。これが邪魔で、町に出かけるにも遠回りをするか山を越えるしかない。そこで愚お爺さんの命令で、大家族揃って山を削ることになった。山を削ると土が出る。その土をどこに捨てるか……。何と、遙か遠くにある渤海まで一日がかりで捨てに行くのだ。小さな子供もモップ一杯の土を担ぎ、渤海まで捨てに行くのである。途方もない大仕事だ。それをバカにして隣家の爺さんがこう言った。「愚さんよ。お前さんは何と愚かなのだ。この山は天にも届くほど巨大ではないか
。山を移すことなど出来るわけがないよ」。――それに対し、愚お爺さんはこう答えた。
「山は育たない」――。
「私の生きている間に、この山がなくなるわけはない。子供の代でも無理だろう。孫の代でも無理だ。だが、山は育たない。何代かが続ければ、山は必ず移すことができる」。トウ小平は亡くなる直前にこう言明したと伝えられる。
「21世紀の半ばまでは忍従の時代だ。現在の中国では、米欧に戦う経済力も軍事力もない。21世紀の半ばまでに、米欧に並ぶことができる経済、軍事力をつけるのだ。そして同等になって初めて対等に口を聞ける。二一世紀の末には、中国は世界をリードするようになるだろう」。
また支那北京政府は米国の情勢をしっかりと把握している。
米国は21世紀半ばには黒人の大統領を戴くだろう。21世紀を迎えたばかりの今、米国の黒人たちは続々とイスラム教に改宗している。現在、米国大統領は聖書に手を置いて宣誓しているが、21世紀半ばには、コーランに手を置いて宣誓する可能性が極めて高い。米国は、現在の米国ではあり得ないのだ――と。
米国と支那大陸。この二つの巨大勢力の闘いの結末は、もちろん不明だ。多くの日本人は米国の圧勝のように考えているが、支那政府が〔共産党〕という枠組みを壊すことまで考え、また一時的には分裂をも許容していることを考えると、最終的には文明の地力の差が出てくるのではないだろうか。
そして非常に残念なことは、わが国政治家のなかに百年先の国家像を見据える者が皆無であることである。
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