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ネパール異変の真相


 六月二日未明(現地時間一日夜)、ネパールの首都カトマンズの王宮で銃撃事件が発生した。伝えられるところによると、王宮内で発砲したのはディベンドラ王子で、彼の銃撃により第十代国王ビレンドラ夫妻の他、王族が十人射殺されたという。自殺を図ったディベンドラ王子が新国王に即位 したが、二日後に死去、ビレンドラ元国王の弟ギャネンドラが新たな国王に即位 した。

 争いの原因として、一般的には、ディベンドラ王子が結婚を希望した相手を認めてもらえなかったため発砲に至ったとされている。だがネパール国民はそれに納得せず、ギャネンドラ国王即位 式の当日には、「真実を語れ」「ギャネンドラに死を」等と書いたプラカードを持って市民・学生がカトマンズ市内を行進、市内各所で警察隊と激しく争い催涙弾が飛び交う不穏な情勢となった。

 六月十四日には調査委員会が事件の全容を発表(ディベンドラ王子の単独犯)したが、国民はそれを信用せず、王家と国民の間に深い亀裂が生じはじめている。以前から王政打倒を主張してきた過激組織ネパール共産党(毛沢東主義派を自称)が勢力を一気に伸長させ、今後は武装闘争まで進展するのではないかとの見方も強まっている。

 さて、それではこの事件の真相は何か? 国王を初めとする王族十人を射殺した真犯人がディベンドラ王子なのか否かは、残念ながら闇の中だ。だが事件の背後にネパール軍部が関与していることは確かだろう。
 今回の事件は、起こるべくして起きた事件だったのだ。それは巨視的に見れば全世界に広がっている〔文明の衝突現象〕と考えて良い。直接的な引き金になったのは、タリバンによる仏像破壊だった。


 タリバンによる偶像破壊

 アフガニスタンを実効支配しているイスラム原理主義勢力タリバンは、今年早々から偶像破壊を積極的に行ってきた。

 イスラム教の根本聖典『コーラン(クルアーン)』には、「あなたがた信仰する者よ、偶像と古い矢は忌み嫌われる悪魔である」等々、偶像崇拝を絶対に許さないとする教えがある。タリバンの最高指導者モハマド・オマル師はこれを実行することを命令、今年二月にアフガン国内のあらゆる彫刻、仏像の破壊を命令した。そして三月に入ると、カブール博物館を初めとしてガズニ、カンダハルなど世界的に有名な遺跡を次々と破壊、二日にはバーミヤンにある世界最大の石仏像二体をロケット砲や戦車砲で大規模破壊を行った。

 この石仏破壊に対し、欧米諸国を初めとする多くの国々が非難を行った。とくにタイ、スリランカ、ネパールといった仏教国ではその非難は激しく、ヒステリックなものだった。五月二二日にはミャンマーで仏教徒によるイスラム寺院モスク襲撃事件が起き、イスラム教徒四人が殺害されている。

 ネパール国民の感情はまた別だった。大国インドと中国の境界にあって、日頃から両大国の圧力を受けているネパール国民は、タリバンの蛮行がインド帝国主義の更なる拡大を呼び、それがインドによるネパール併合に繋がるとの危惧が一気に拡大したのだ。五月には小規模ながら、インドによるネパール併合を反対するデモが起きたが、このデモに呼応するように地方で過激派が反政府活動を展開、警官隊三〇人が殺害されるという事件が勃発している。

 ネパールは首都カトマンズを除いて七五の郡からできている。この七五郡のうち五郡を完全掌握し、五〇の郡を半分以上制圧しているのが、過激派であるマオイスト(毛イスト=毛沢東主義を主張)勢力である。ちなみにネパールには十を超える共産党政党が乱立しているが、マオイスト(毛沢東主義者)は支那北京政府とはまったく無縁の過激派組織。ただし「反インド主義」という部分でネパール国民の半数近くが同調しているのが現状だ。

 殺されたネパールの元国王ビレンドラは民主化政策に積極的だったが、新国王になったギャネンドラは専制君主制度の復権を望んでいる。またギャネンドラは政府による一部過激派の取り締まりに批判的で、警察どころか軍隊まで投入することを主張していた。それでいて彼はまた、毛沢東主義派に資金援助も行っていた。

 これは矛盾するように思えるが、じつはそうではない。インドを初めとする都市型市場経済を認め一部特権勢力だけが利益を得るような主義思想を排除したいという主張なのだ。ネパールの毛沢東主義者は多数の貧困層の心情を理解するいっぽうで王政には反対しているわけではない。専制君主制度は貧困層には希望でもあるのだ。

 こうした状況のなか、タリバンによる石仏破壊が行われ、ネパールでは国民による「反インド」デモまで行われた。そこにディベンドラ王子がインド人女性との婚姻話を持ち込んだ。


 「文明衝突」を演出する者

 ネパール王族惨殺事件の実行犯が誰かは未だに闇の中だが、その背後にタリバンの仏像破壊という蛮行があったことは事実である。タリバンの蛮行はイスラム国家パキスタンを動かし、それが中印対立の火種となったこともまた事実である。それだけではない。イスラム、ヒンドゥー、仏教、キリスト教……この地域の宗教戦争にまで火がついてしまったのだ。こう考えたとき初めて、タリバンの行動がインド亜大陸からユーラシア全域に紛争の種を撒き散らした事実が見えてくる。

 タリバンを使嗾した者は何者なのか?ここに世界中の過激テロ組織を背後から操る勢力の姿が朧気ながら浮かんでくる。それは一般 に「サンパウロ・フォーラム」と呼ばれ、南米ブラジル・サンパウロに一時拠点を置いたとされる、世界中の過激組織同士の連絡会だという。ペルーのトゥパク・アマル、コロンビアのFARCはもちろん、日本赤軍の一部(坂東国男等)もこのサンパウロ・フォーラムのメンバーだとされる。

 余談になるが、日本で逮捕された重信房子は今年五月十四日に「日本赤軍の解散」を宣言したが、南米に逃亡中の坂東国男、大道寺あや子らは「解散宣言無効」を発表、なお世界革命を目指して闘争を続行すると表明している。

 タリバンもまた、サンパウロ・フォーラムの一員である。そしてさらに驚愕の事実がある。支那北京政府と無縁ながら毛沢東主義を主張するネパールのマオイズムもまた、サンパウロ・フォーラム勢力下にあるのだ。

 米国の情報専門誌『フォーリン・アフェアーズ』に発表されたハンチントンの論文『文明の衝突』(邦訳=集英社刊)に沿った形で、世界の未来は「文明衝突戦争」を迎えるという見方がある。国家、国境の紛争から宗教戦争へ、そして最終的には民族が固有に持つ文明同士が戦い争い、文明は次々と消されていく……。米クリントン政権下では、まさしく『文明の衝突』に向かう世界が構築されてきた。

 ところが米国にブッシュ政権が誕生して、事態が変化した。ハンチントンの『文明の衝突』に真っ向から反対し、『文明の共存』という論文を書いたアーミテージが国務副長官になり、日米関係なども「アーミテージ・レポート」を中心とした方向に向かいつつある。世界の将来は「衝突」から「共存」へと向かうかもしれない。そんな微かな期待が生まれつつあった。

 だが、世界一元支配を目論む国際金融結社(またの名を偽ユダヤと言う)は、力で世界の文明を一つにする意欲に燃えている。ブッシュ政権誕生以来、世界各地で頻発している奇妙な闘争の影には、サンパウロ・フォーラム、あるいはその背後に潜む国際金融結社があると思われる。

 

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