|
中朝国境 波高し
胡錦濤の全軍掌握は東亜の未来に何を呼ぶか
人民解放軍が国境に結集!!
今年(平成16年)10月初旬から、北朝鮮との国境に中国共産党人民解放軍が巨大な兵力を結集させている。
川幅が狭く、以前から脱北者が越境する場となっていた豆満江沿いの南坪、三合、開山屯等には昨年末から人民解放軍が1万規模で展開していた。この地域ではかつて、人民武装警察が脱北者を取り締まっていた。だが最近になって、北朝鮮の国境警備軍人たちが組織的に大規模な脱北を行う可能性があるという理由から中共人民解放軍が警戒体制に入ったというのが北京筋の説明である。
ところが10月初旬には、豆満江沿いだけではなく鴨緑江沿いにも中共人民解放軍が集結し始めたのだ。その兵力は数万規模のもの。これに呼応するように、北朝鮮軍も精鋭部隊が結集しはじめたと北京筋は語っている。
ご存じのことと思われるが、今年8月下旬に中共人民解放軍は北朝鮮との国境である鴨緑江で2000人規模の渡河訓練を行った。
この渡河訓練は2週間にわたって繰り広げられたが、これは脱北者対策とは根本的に異なる。明らかに北朝鮮への侵攻作戦を想定したもので、金正日政権には非常な圧力となったことだろう。その直前に北京政府が平壌を訪問し、6カ国協議再開に向けて圧力をかけたがこれが失敗に終わってしまった。渡河訓練による威嚇は、金正日政権に対する軍事的圧力以外の何ものでもない。
大爆発以降の中朝軍事対峙
建国記念日にあたる9月9日未明(8日深夜)に北朝鮮北部の両江道(リャンガンド)付近で大規模な爆発が起きた。この爆発事件は3日後の9月12日に韓国政府が公表して明らかになったものだが、その後、米韓両国政府は冷静に対応し、ライス報道官など「山火事の可能性もある」と説明したほどだ。
北朝鮮当局は「水力発電所建設のための発破」だったと説明。米韓政府もこれを追認したため、世間一般では話題にもならなくなった。だが建国記念日の深夜に発破作業を行うなど絶対に考えられないことで、異常事態が起きたことは間違いない。事実、IAEAのエルバラダイ事務局長はこの爆発について「核実験だった可能性を否定できない」と語っている。
実際のところ、北朝鮮の爆発が核実験だった可能性は極めて低い。だが、この爆発が意図的に引き起こされた可能性は高く、それは何者かの工作が絡んでいたと分析できる。いったいそれは何者なのか?
北朝鮮国内の反体制派(反金正日一派)が起こした可能性もゼロではないが、最も考えられるのは外国の関与だ。ではどこの国が北朝鮮で爆発を起こしたのか?
米国説、英国説などいくつかあるが、最も強いのは北京政府関与説だ。北朝鮮では4月にも、金正日が通りすぎた直後の竜川駅で大爆発事件が起きている。こちらの爆発の真相も謎に包まれたままだが、北京関与説が根強い。
北朝鮮と北京政府との歴史的な関係については熟知されていることと思う。1950年(昭和25年)に勃発した朝鮮戦争には、支那人民解放軍が全面参入した過去もある。北京政府の本音は「北朝鮮は支那の属国」といったところだ。
ところが“属国”北朝鮮が北京政府に楯つくことが多い。その暴走があまりに酷いと、北京がお灸をすえることになる。だが、北京政府にとっては〔暴走者・北朝鮮〕は必要悪でもある。米国との最終対峙に際し、衝撃隔壁の意味があるからだ。
北朝鮮の核開発疑惑以降、6者協議の場でもそれ以外の場でも、北朝鮮は終始一貫して「米国との単独交渉」を求めてきた。米朝単独交渉とは、かつて存在していた「米朝秘密回路の復活」を意味している。だが北京政府は秘密回路の存在そのものが許せない。
――北京政府と米ブッシュ政権との微妙な駆け引きの局面で、北朝鮮が暴走するため支那側が駆け引きに失敗している――というのが北京側の正直な感覚だろう。
当然ながら北京政府は北朝鮮との関係修復を図ってきた。すでにわが国新聞各紙が報道している通り、今年6月には支那人民解放軍の参謀クラス数名が平壌を訪れ、極秘理に軍事会議を行っている。この会議がどのような内容であったかは不明だ。だが恐らく、決裂状況に陥ったと推測される。
決裂を推測させる情報は山ほどある。たとえば7月初旬、北朝鮮は豆満江や鴨緑江などを中心とする支那と北朝鮮との国境を固め、支那側から北朝鮮に入ろうとする支那人の移入を全面ストップさせた。国境界隈には北朝鮮に食糧等を持ち込み、北の物資を支那側に輸入する商人たちが多く存在し、それなりに経済活動を行っていたのだが、これが停止されたのだ。明らかに、北朝鮮が支那北京政府に対して絶縁状を叩きつけたような話だ。
これを受けて、7月中旬には鴨緑江で支那側が反撃に撃って出た。人民解放軍の国境渡河訓練だ。北朝鮮問題専門家は、「六カ国協議の議長役として、核開発を進める北朝鮮に対し圧力をかけるための示威活動ではないか」との見方をしている。
こうしたなかで北朝鮮の建国記念日に謎の「大爆発」が起きたのである。
この爆発の背後に北京政府の関与、工作があったと考えるのは当然のことだ。
さらに注目すべき点がある。
中朝国境への両国軍隊の結集は、じつは北京政府の説明とは全く逆だったのだ。
北京政府は、「支那人民解放軍が数万規模で中朝国境に集結したため、北朝鮮軍も結集を始めた」と語っていた。だが実態は逆で、北朝鮮人民解放軍が先手を打って動いたのだ。
9月12日に謎の爆発事件に関する情報が世界中に流された頃、平壌には北京政府の使節団が滞在していた。彼らが帰国した直後の9月15日から、38度線に配備されていた北朝鮮の最精鋭部隊が中朝国境に戦術配置されたのだ。この動きに仰天したような形で急遽、中共軍が鴨緑江沿岸に結集したものなのだ。しかも中共軍は、いつでも増派できる体制をとり始めている。
北京政府の訪朝使節団は、そもそも六者協議に北朝鮮を引きづり出そうという意図で平壌を訪れた。ところが北朝鮮がこれに逆らい、協議は延期となった。北京政府の意思に反する行動を採るのだから、金正日には相当な覚悟があったはずだ。そうした思惑が交差するなか、9月9日未明に謎の大爆発――。仮にそれが事故であれ何であれ、金正日は北京の工作をまず疑っただろう。そして直ちに、最も重要な国境防護線である38度線に常駐している最精鋭部隊を中朝国境に振り向けたのだ。
いま明らかに中朝国境は極度の軍事緊張の状態にある。
胡錦濤が全軍掌握
香港の月刊誌『争鳴』10月号(9月30日発売)に興味深い記事が載っていた。その記事によると、江沢民(前国家主席)が第16期中央委員会第4回総会(4中総会)で中央軍事委員会主席を辞任したのは、軍OBの要求に基づく「突発事件」で、江氏の意思に反するものだったという。
同誌は、最終決定直前までの20日間、指導部内には激しい権力闘争があり、江氏の辞任決定で江氏派は勢いをそがれたとしている。
江沢民の辞任直後の9月30日、胡錦濤は「全軍司令部建軍会議」を招聘して自分が軍の最高指導者であることを印象づけた。さらに胡錦濤が軍事委に引き入れた張・海軍司令官、靖・戦略ミサイル部隊司令官の2名を昇格させている。軍内部での自分の威信を早急に確立させる意思を見せ、また人脈作りにも着手している。恐らく今後、江沢民に倣って地方部隊の視察を行い、矢継ぎ早の人事を行うことだろう。
ただし胡錦濤は、江沢民の対米強硬路線を踏襲することはない。どちらかと言えば対米融和路線を演出してみせている。それでいながら「4中総会」開催中の9月中旬に、米NYタイムズ北京支局員を上海で拘束するといったメディア規制路線も垣間見せている。ちなみにこの支局員は趙岩という名の中国人で、彼の逮捕拘束は米中間の火ダネにもなりかねない。趙岩は9月初旬に早くも「江沢民辞任」の観測を報道しており、北京政府としては彼の情報源を掌握したかったことと推測される。
胡錦濤は対米融和だけではなく対日融和の方針も見せているが、小泉首相の靖国参拝問題に対しては断固として拒否する姿勢も忘れていない。いっぽうでは10月に入ってフランスのシラク大統領との間で両国の「戦略関係」を改めて強調するなど、米国を牽制する巧みな外交戦を繰り広げている。
胡錦濤は12月に62歳になるが、これは北京政府の政治家としては極めて若いと言って良い。まだ若い胡錦濤が今後どの程度の政治家に成長するかは不明だが、彼が毛沢東、トウ小平を凌ぐ大政治家になる要素を持っていることは事実である。
米国はすでに、支那大陸を分裂させる「アジア2025」(アーミテージ・レポート)戦略を公表しているが、世界中の多くの識者たちは支那大陸が近々に大分裂を起こすと予想している。ところがこうした“国家の危機”に突如として出現するのが英雄である。胡錦濤はあるいはそうした英雄列伝に名を連ねる巨人に成長するかもしれない。
今春、米上院外交委員会、東アジア太平洋問題小委員会(サム・ブラウンバック委員長)の公聴会でリチャード・ローレス国防次官補代理が支那の軍事力の現状について証言した。そのなかで彼は、「支那は短距離弾道ミサイルの質量両面の強化を続け、台湾海峡に面した(福建省などの)地域に配備した短距離ミサイルの数はすでに五百から五百五十基に達した」と述べている。
さらにローレス国防次官補代理は、「2006年〜2008年に北京政府が台湾に武力行使する可能性が高まっている」との分析結果を台湾政府当局に伝えている。
支那北京政府と台湾との武力対決、そして北朝鮮国境の軍事的緊張。この状況のなかにあって胡錦濤は巧みな融和路線を採っているかのように見せている。明らかに胡錦濤は、極東全域の未来、ユーラシア大陸の行方、そして世界情勢の変化を見据えて国家戦略をたてている。
では、極東の島国・日本はどうか。
中朝国境緊張、台湾海峡緊張といった状態を奇貨と捉え、これを活用する戦略的外交を展開する好機到来と考える者はいないのだろうか?
小泉純一郎の悪口を並べるだけでは一歩も前に進めない。小泉純一郎は、まさしく破壊者の正体を明らかにしつつある。「自民党を壊す」と宣言した小泉は橋本派を壊し、そしていま日本を壊そうとしている。だが破壊者に建設を求めても無意味なのだ。
いま日本に生きる大衆が、一人の庶民としていったい何をすべきなのか?
その答えを出せぬ者が政治批判をすることなど、まさに無意味だろう。
|