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米中枢同時テロと中国
――支那北京政府の展望――
「外交とは平時の戦争である」と言い切ったのは支那北京政府の故・周恩来。この言葉通
り、米中枢同時テロを受けて世界各国はまさに外交戦を繰り広げている。
東西冷戦終結後、国際世界の最大関心事は、ユーラシア大陸一元支配が成立するか否かの問題に移った。極言すれば米国対支那の構図である。両者は米ソ冷戦とはまったく趣を異にした対峙姿勢を取りつづけている。
そうした緊張のなかで米中枢同時テロが勃発した。このテロ騒動を如何に利用し、有利に持ち込むか。それが外交である。米政府は表向きには「テロとの対決」を打ち出し、現実にアフガンに軍事力を展開、長期戦の展望情報を内外に流しているが、裏ではこの事件を見事に利用し、中央アジアの石油利権確保を視野に入れたうえ、支那北京政府(中国)の背後に軍の長期駐留を目論んでいる。米第10山岳部隊1000人が入り込んだウズベキスタンには、かつてソ連時代、最大の軍事基地が置かれていた。その基地に米軍が駐留するというのだ。
では、こうした米国の動きに対し、支那北京政府のほうはどう動いているのか。
江沢民国家首席は米中枢同時テロが起きた9月11日深夜、ブッシュ大統領に慰問電を送り、テロ事件と被害者の家族に哀悼の意を表明したうえ、「中国政府は一貫してすべてのテロ行動を指弾し、反対する」と表明している。さらに10月8日、訪中した小泉純一郎首相に対し、米英軍によるアフガン空爆を容認する発言を行っている。
支那北京政府はさまざまな難題を抱えているが、その1つ、分離独立運動はかなりの重大問題である。とくにチベット自治区や新疆ウイグル自治区の過激な独立運動には手を焼いてきた。しかもこうした独立運動を弾圧するたびに、国際世論から人権蹂躪といった批判を浴びた。ところが、新疆ウイグル自治区の独立運動にはイスラム過激派が絡み、オサマ・ビン・ラーディンから資金援助を受けていると噂されるグループもある。「テロには断固反対する」と表明した江沢民は、これでウイグルの独立運動を正面
から弾圧できると考えたはずだ。チェチェン問題に苦悩するロシアのプーチン大統領の思いも同様だろう。
新疆ウイグル自治区と聞いてもピンと来ない読者がいるかもしれないが、場所は中国大陸の遙か奥地、タクラマカン砂漠を擁する地域でチベットの北部にあたる。一部はアフガニスタンと国境を接している。この地域は18世紀に清(中国)が侵出して国土にしたもので、元来は中東系ウイグル族が住んでいた。清の時代に漢民族が流入したが、その後も昭和初期頃には独立運動が起きた地域。中央アジア原人の故郷といわれるホータン(和田)、シルクロードの町ウルムチ等がある広大な地域だ。住民の多くはイスラム教徒である。
世界最大のイスラム国家はインドネシアだと言われている。事実インドネシアには約2億人のムスリム(イスラム教徒)がいる。では、支那全域にはどれくらいのムスリムがいるのか? これが不明なのだ。支那のムスリムの多くはウイグル族などの回族だが、漢民族のなかにもムスリムが存在している。その数は漠然と2億以上3億未満とされ、あるいはインドネシア以上の「世界最大のイスラム国家」なのかもしれないのだ。
中央からの分離独立運動の背後にイスラム勢力が存在するということは、支那北京政府にとって、弾圧への絶好の口実となっている。
こうした独立運動への対処法だけではない。江沢民を中心とする現政府は今回の米中枢同時テロを1つの好機と捉えているフシがある。
江沢民を初め現政府の中枢は来年以降に任期を迎える。その後任問題は今年の夏、北戴河で話し合われたと推測されるが、内容は不明だ。ただし北京政府を観測している情報通
のなかでは「江沢民一派は定年延長を目論んでいるのではないか」との説が囁かれていた。今回の米中枢同時テロの「混乱」を理由に、北京政府中枢が居すわる可能性はますます高まったと見て良い。
しかし、支那の困窮はなお続いている。
黄河の水不足は想像を絶するほど深刻である。中流〜下流域にあたる洛陽、開封あたりを流れる黄河は、かつては滔々たる水を蓄え、対岸遙か彼方といった表現ができたが、今年はそこあたりで「水がチョロチョロ」といった状態である。この旱魃に加えて飛蝗(バッタ)が猛威を振るい、食糧不足は必至の状況にある。恐らくは近年、北京遷都が現実のものとなるだろう。
さらに支那北京政府を悩ましているのは、「存在しない人間」の増加である。
ご存じのように支那では現在、「少子化政策」が採られ、1夫婦は1人しか子供を生むことが認められていない。それでも子供ができた場合には、政府から戸籍が与えられない。戸籍が無い、すなわち法的には存在しない人間が、現在5000万人〜6000万人存在すると推定されている。わが国総人口の約半分ほどの数だ。そして今では、彼らの子供まで誕生する状況になっている。
非合法の膨大量の人口を抱えることは、国家安寧に微妙な影響を及ぼす。だが、支那全体の賃金水準を低く抑え、結果
として廉価な労働力を提供し、支那がアジア全域での経済力を高めることにも繋がっている。法的に存在しない「戸籍の無い人」たちは、食べ物と寝る場所さえ提供されれば無給で働く。まさに奴隷状態なのだが、こうした人々が地方から都会に流出し、超廉価な労働力となる。この労働力がある一面
では、支那の力となっているのだ。もちろんその貧困は、どこかで火がつけば命知らずの反政府勢力と変貌することもある。
全体として支那北京政府の未来は決して明るくはない。国際政治研究家の間では、やがて支那は分裂するだろうと見るむきが多数だ。台湾の李登輝・前総統が「7つの中国」論を提唱したが、確かに政治経済的に現支那政府が統一力を失う可能性は高い。とは言ってもそれは10年20年先のことだ。しかもそれは、国家分裂というより緩やかな連邦制と考えたほうが正見だろう。
今回の米中枢同時テロを見る限り、近未来に国家分裂、国家崩壊を起こしかねないのは支那(中国)よりも米国のほうが先だと思われる。その根源的理由は「文明力の差」だと言って良い。支那はなお、巨大な文化、文明を保ち続けている。
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