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北朝鮮核実験実施!?極東アジアは今後どうなるのか?

10月9日朝、北朝鮮の東北部で核実験と思われる爆発があり、北朝鮮当局は「地下核実験を実施した」(朝鮮中央通信)と発表。これを受けて国連安全保障理事会は14日午後、核実験実施を発表した北朝鮮に対し、経済制裁を規定した国連憲章7章41条に基づく制裁決議案を全会一致で採択した。いったい北朝鮮・金正日政権は何を考え、どこに向かっているのか? そして無法者を隣国に持つわが国は、どう対応すれば良いのか。極東アジアは今後どうなっていくのか。冷静に分析を進めれば見えてくる衝撃の未来像があるのだ。

核実験か、それとも……

9日当日午前、市ケ谷防衛庁を初めとする日本の情報収集担当者たちは緊張の極致にいた。すでに北朝鮮は核実験を宣言していたし、各国からの情報で実験実施が迫っていることも、安倍晋三が訪中、訪韓時に行われる可能性が高いことも理解していた。だが、米国、ロシアから午前10時半に実験実施との情報を入手したのは、まさに実験直前のことだったのだ。午前10時35分ごろ、北朝鮮北東部咸鏡北道で核実験と思われる地震波が観測された。その規模は韓国発表ではM3.58〜M3.7。米国発表ではM4.2。日本の計算によるとM5.1というものだった。

地震計による観測結果について東大地震研は「過去の核実験のマグニチュードから類推すると、今回の実験は広島型原爆の数分の1、つまり0.5キロトン程度、最大でも3キロトン程度と推測される」(阿部勝征教授)との見解を示した。長野県松代町にある気象庁精密地震観測所の地震波データを手にした防衛庁情報処理班は、9日昼前には首を傾げていた。核実験の場合、その規模に関わらず瞬間的に非常に鋭角な、突出するような波形が観測されるのに、今回の地震波はギザギザの波形なのだ。このことは何を意味しているのか……。通常爆弾をほぼ同時に連爆させた波形と考えるのが適切だ。それは単に核実験の失敗を意味するのではなく、「核実験をやったフリ」、つまり偽装核実験の可能性を示唆していた。

防衛庁がその結論に達したころ、米軍も同様な推論を提起していた。

――北朝鮮は初めから核実験に見せかけた爆破実験を行う予定だったのではないか……。

だが同日午後、朝鮮中央通信は、「科学的計画と綿密な計算によって行われた今回の核試験(核実験)では、放射能漏れのような危険がまったくなかった」としたうえで、今回の核実験が「朝鮮半島と周辺地域の平和と安定を守るのに寄与する」との正当性を主張した。同時に日米両国を初めとする国際世論も、「今回の実験が核だったか否かが問題なのではなく、北朝鮮が核実験を行ったと宣言した点が重要」との認識に傾いていった。

毛沢東の「対ソ独立宣言」をなぞった「対中独立宣言」?

国連安保理は14日、北朝鮮に対し経済制裁を規定した国連憲章7章41条に基づく制裁決議案を全会一致で採択した。核実験発表から1週間以内というスピード採択で、北朝鮮の朴吉淵国連大使は「完全に拒否する」と宣言。決議案は日米韓など9カ国が提出していたもので、加盟国は採択から30日以内に履行状況を報告し、安保理に設置される制裁委員会が確認する。北朝鮮が決議を順守した場合、制裁解除の余地を残す文言も残し、中国、ロシアの要求にも配慮した。

今回の北朝鮮核実験には世界中が衝撃を受けたが、より厳しい状況に追い込まれたのは韓国の盧武鉉政権だ。金大中以降の太陽政策(融和政策)の破綻が韓国民のなかでおおっぴらに語られ、現政権に対北政策の方針抜本的改革を求める声が70%を遥かに超える状況になっている。だが、それ以上に厳しい局面を迎えたのは中国だ。

北朝鮮の今回の「核実験声明書」は、じつは毛沢東がかつて行った核実験声明書とまったく同じ内容なのだ。金正日は毛沢東の核実験宣言を強く意識していた、と考えられるのだ。毛沢東はそのとき、「アメリカ帝国主義と対決するために核を所有した」とその正当性を語ったのだが、真意は中国のソ連影響下からの脱却、ソ連からの自立を宣言するものだった。

金正日が毛沢東声明を引用・流用したとすれば、その真意として考えられるのは、核実験を行うことで北朝鮮は中国影響下からの脱却、中国からの自立を宣言した可能性である。核実験の予告が、ロシアに対して2時間以上も前に行われ、中国に対しては僅か20分前だった点も注目に値する。2時間と20分では、まるで違うのだ。

北朝鮮・金正日は中国をコケにしてその怒りを誘った。少なくとも、この核実験により国際世論における、中国の体面は丸つぶれとなったのは事実だ。ドイツの新聞フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥング紙は核実験の翌日、「中国がすでに経済的に破綻状況に達した“兄弟国家”を裏庭で統制できないのなら、全地球的な指導国家候補者としての中国の体面は、大きく損傷するだろう」と、北に対する中国の影響力の失墜を揶揄している。

核実験の規模についての観測が、ロシアだけが異常なまでに突出して大きい点も興味深い。ロシアは北朝鮮が核実験をやったと認めた――北朝鮮が核を保有していると公認したようなものだ。今春以降、金正日がロシアに亡命するのではないか、といった噂がまことしやかに語られている。

 金正日は強い親露感情を抱いている。 「朝(北)・露共同宣言文」(2000年7月・平壌)と「モスクワ宣言文」(2001年8月)は言うに及ばず、2005年には金正日とプーチンの友情をテーマとした、まるで媚びるような「私たちの親善は永遠に」という歌までもが作られ、朝鮮中央テレビがこれを嬉々として放映した。

 こうした強い親露感情に較べ、金正日にとっての「中朝関係」はどうか。少なくとも7・1経済改革以降、北朝鮮はこと経済に関しては中国に依存してきた。中朝貿易は増加し、エネルギーはもとより食料、衣料、家具、電化製品、PC、文房具、歯ブラシ等々の日用雑貨に至るまで、すべてが中国に依存する状況である。中国からは税関ノーチェックで、毎日10トントラックが約300台も往来している。だがこうした中朝交易の実態は、中国による北朝鮮への支援というより、むしろ北朝鮮の奴隷化であると言っても過言ではない。北朝鮮は、鉱物資源等も中国の言いなりで安値で売り飛ばさざるを得ず、いっぽうの中国は北朝鮮人を月数ドルの奴隷賃金で雇用。中国は環境費を負担しないため、すざまじい自然破壊を随伴している……。こうした実態は、あたかも甲午改革から日韓併合までの「旧韓末時代」を思わせる。いま平壌が感じているのは、かつてのソウルが感じた「無力」と同一線上にあるといえる。

経済的支援の背景にある中国の真意は、北朝鮮の「南吉林省」化にある……。平壌にあふれる中国製日用品を目にしつつ、金正日が心の中で中朝関係をどう捉え、どの方向に進もうとしているのかを、今回の核実験は濃厚にうかがわせる。一言でいえば「中国はまるで信用できない」のだ。

どうなる? 北朝鮮

国連安保理で採択された決議では、北朝鮮に対する禁輸、資産凍結などを明記している。軍事行動に繋がる「7章42条」は採られなかったものの、中国は、北朝鮮との国境地帯に鉄条網を新たに設置。北朝鮮から脱出する住民の流入をストップさせている。また丹東の銀行で北朝鮮への送金も拒否されている。これを受けて北朝鮮は、朴吉淵(パク・キルヨン)国連大使が「米国による圧力は宣戦布告とみなす」と宣言、さらなる「物理的手段(再度の核実験)」を行うとの強硬姿勢を崩していない。

こうした状況については新聞TVマスコミを通じて多くの方々が理解され、またそれぞれに判断されていることと思う。それでは北朝鮮は今後、どういった方向に進み、どう変化するのか。あるいは変化しないのか……。わが国だけではなく極東アジア全域、全世界に影響を及ぼす北朝鮮未来について考察してみよう。

北朝鮮の近未来については、以下の選択肢のいずれかを歩むということは国際通の一致するところだ。それぞれについて分析してみよう。

1・金正日体制が存続し、国際圧力のなかで悲惨、過酷な国家経営を強いられ、国家体制崩壊が見え始めたころになって軍、党内部から革命勢力が出現して革命的に変革。……北朝鮮は長い歴史のなかで自らの力で体制変革を行った事歴を所有していない。また庶民大衆も、軍、党も、現体制に弓を引く精神力も物理的能力も持ち合わせていない。したがって行動を起こす可能性はゼロに近い。

2・金正日が指導者の立場から引退。高英姫との間に作った息子の金正哲(または金正雲?)が指導者となり、段階的に市場経済体制に移管。米欧寄りの自由主義世界への接近を目指す。……米欧中心の国際勢力が当初描いていた未来像だが、金正哲が軍を支配下に置けるか否かがポイント。金正日自身が軍を掌握しきっていないとの説もあるような状況では、正哲はむしろ軍に使嗾されるのが関の山。(あり得ない話だが)ウルトラCで金平日を登用しても状況は変わらず。

3・金正日が指導者の立場から引退。息子の金正男が政権を引き継ぎ、中国寄り、北京政府の傀儡政権となって国際社会と調和を果たす。……中国・北京政府が描く未来像。だが金正男自身は北京が想像しているほど北京べったりではない。正男が北朝鮮の指導者となった場合は金正日政権の延長上となり、米欧との確執はさらに深まり、今日以上に半島が危険な状況に陥る可能性大。

4・ミサイル発射、核実験などの一連の暴挙は、金正日と対立する軍部が暴走した結果だとして、金正日一族が亡命。国家指導者を失い、国際勢力から暴徒と認定された北朝鮮反政府軍鎮圧のために国連軍が進軍。北朝鮮全土は国連指導下に入る。……今回の実験が核だったのか核ではなかったのか……。この微妙な駆け引きが、この未来像を一気に現実のものに浮上させた。恐らくこの未来像は、かなり以前から検討されていたのだろうが、これまでは机上の空論の域を出ていなかった。7月のミサイル実験前後から現実味をもって囁かれる状況になったものだ。だがこの場合、国連軍という名目で米軍が中国国境に進駐することになる。これは中国にとっては絶対に許せないものだ。

憲法改正に動く安倍新政権

新聞TVマスコミは国連安保理の経済制裁を大きく取り上げてはいるが、これが実質的効果を与えないだろということも語られている。すでに困窮極まりない状況に追いやられている北朝鮮の庶民大衆は、この措置でますます悲惨な状態に陥るだろうが、政権中枢や軍部への影響は微小と考えて良い。武器密輸と麻薬密輸による闇資金は今後も継続的に北朝鮮の政権を援助していくからだ。だが、北朝鮮が現在の体制を維持し続けることはもはや困難だ。金正日体制が崩壊するか否かは不明だが、国家体制は間違いなく変化する。いや激変する。その激変はこれまで、金正日の後継者問題という形で語られてきた。だが今は、そうではない。誰が(どの国が)北朝鮮の背後に就くかという問題になってきている。

それはすなわち、米中直接対峙の前哨戦ということだ。

こうした状況のなか、北朝鮮をどこかが統治下に置くという前述4項が急浮上してきた現実をしっかりと認識する必要がある。金正日亡命が現実のものになるか、あるいは現体制が存続するかは、どちらでも問題ではない。北朝鮮の実質支配をどの勢力が行うかが問題なのだ。国際舞台における北朝鮮の言行は、すべてこれを睨んでのことで、だからこそ米国との直接対話を切望しているのだ。

では、北朝鮮を国連軍(実質的には米軍主導)が管理することがあり得るだろうか? 絶対にない。――いや当分はあり得ない。中国がそれを許すことはない。では中国支配があり得るのか……。それもない。米欧、とくに中国との直接対決に臨もうという状況下で米国がこれを容認することはない。それではロシアが……? それも米欧中すべての反対を食らう。こうした3竦みを巧みに利用してきたのがこれまでの北朝鮮だったが、それも無理になってしまった。では、どうなるのか? 日中共同管理という妙案が浮上し始めている。日本の経済力と中国の政治力の融和である。しかしそのためには、何より安倍新政権が完全に米国の傀儡となり手足になることが必須条件である。

そのためには安倍新政権が真に親米政権であることが確認されると同時に、自衛隊の海外派兵が正当性を持たなければならない。アフガンやイラクの場合とは異なる。日の丸をつけた軍隊が朝鮮半島に入るのだ。アジア近隣諸国の衝撃は想像を絶するだろう。今のままでは、たとえどんな論陣を張ろうが絶対に不可能だ。その不可能を可能にする出来事が誘発される可能性に注意を払う必要がある。それが何なのかは、まったく想像ができない。まさか北朝鮮が、韓国と日本に同時にミサイルを撃ち込むなどということはないだろうが、米911テロを超越する衝撃が襲ってくる可能性は否定できない。安倍新政権が憲法改正を謳っている深奥には、こうした意味合いがあることを理解すべきだろう。

極東アジアは今まさに激変期を迎えている。今年も残すところ2カ月余となったが、早ければ年内にでも、遅くとも今後2〜3年後にはアジアが変わる!そのとき自分がどこにいるのか……。物理的所在地ではなく、自分の精神がどこにいるのかを明確にしておく必要があると思われる。■

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