行政調査新聞社 社主:松本州弘 埼玉県川越市

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【埼玉県比企郡川島町特集】
「川島町庁舎建設等検討委員会」の不思議
合併を熱望する町民の声も聞かず
町内大手企業と、何を検討するというのか?

 平成11年度から始まった「平成の大合併」。市町村合併の大きなうねりは全国を席巻し、それまで3,232を数えた市町村は、今年3月末には1,821となり、埼玉県内の市町村数は92から71へと減少した。

 また「市町村合併の特例等に関する法律」(合併新法)の施行に基づいて埼玉県が策定した「埼玉県市町村合併推進構想」では、県内を12の市に再編する合併案が示され、川島町は川越市をはじめとする3市3町との組み合わせとなっている。一方の川島町もまた、平成14年度には庁内職員による「川島町市町村合併庁内研究会」を組織した。住民への情報提供や住民意識調査、事務事業の現況調査などを実施するなかで、平成16年1月には「市町村合併に関する住民意識調査」を実施。すると回答者の約7割が、最も望ましい合併の相手先として川越市を挙げている。

 川越市との1市1町での合併を目指す川島町……。だが川越市の反応は冷めている。「平成の大合併」で、これまで一度も合併協議をしていない川越市は、平成15年(03年)に中核市へと移行した。次の目標は政令指定都市である。合併に対し「ゆったり構える」川越市は、あくまで「川越都市圏まちづくり協議会」に加盟する市町村(川越市、坂戸市、鶴ヶ島市、日高市、川島町、毛呂山町、越生町の4市3町)の広域合併計画である「レインボープラン」を視野においている。

 だが、川越市に熱いラブコールを送っているはずの川島町で、奇妙な動きが認められた。川島町庁舎の改修計画である。

 なぜ、いま庁舎の改修工事なのか。川島町と川越市との間には、下水道や道路、商業などの水準に格差が顕著である。川島町の「熱烈求愛」を川越市に受け入れてもらうつもりなら、町庁舎の改修よりも他に予算をかけるべき分野があるはずだ。晴れて合併の暁には、もはや町庁舎としては使われないはずの建造物に、なぜ、いま改修が必要なのか。

 一見、矛盾しているとも思えるこの町庁舎改修計画について調べるために、「鄙びた」庁舎を訪れ職員に話を聞いた。

三井精機、日之出水道……
町庁舎の改修を検討するのに、なぜ企業の意見が必要なのだ?

「川島町庁舎は昭和31年に建設されました。すでに50年を経過しております」

 川島町財政課長はこう切り出した。

「途中で改修工事を行ったのですが、ともかく老朽化が激しいのです。また昔とは異なり、OA機器等も搬入されたため事務室のスペースが手狭になってきています。また1階のフロアーには、床が20センチほど高くなっている部分もあります。そうした部分も含め、改修が必要なのではないか、という話が出てきたのです」

 実は、川島町にはいわゆる新庁舎建設のための基金が存在する。正式名称を「川島町庁舎建設及び整備基金」とするこの基金は、バブル経済真っ盛りであった昭和63年(88年)に発足。毎年1億円ぐらいずつ積む予定で始められた。だが毎年定額を積むことはできず、また積み立てそのものも平成12年(00年)でストップ。「川越との合併を踏まえて中断した」との噂も流れたが、川島町はこれを否定する。

「何年度に庁舎を改修、あるいは新築するのか」が定まっていない以上、「できるだけ積み立てておこう」という漠然とした意図のもとで、川島町は基金積み立てを行ってきたという。

 平成16年(04年)、川島町に町庁舎の改修計画が持ち上がった。予算案まで策定したのだが、建物の構造上の問題から、結局は見送ることとなった。

 しかし昨年8月、町庁舎に対し簡易的な耐震診断(一次診断)を実施した際、「昭和31年の一般的な建物と比べれば頑丈に作られてはいるものの、やはり現在の耐震基準には合わない。部分的な補強が必要だ」との診断結果を得ている。

 今回の改修計画には、そうした経緯がある。

 前回(平成16年当時)に問題となった建築構造上の問題をクリアしつつ、大規模に改修するか。あるいは新庁舎を建て直した方がいいのか……。通常の市町村ならば予算だけが大きなネックとなるはずのこの問いには、ストレートな回答を阻む懸案がある。いうまでもなく、川越市との合併である。合併するのか、しないのか。するとすればいつなのか。それまでに町庁舎をどうするのか。改修か、新築か、あるいはこのまま我慢して使い続け、合併後の「新・川越市」に任せた方がいいのか。

 見通しはまるで立たない。そこで町庁舎の問題を検討するため、7月13日に「川島町庁舎建設等検討委員会」が発足し、初会議を開いたのである。

 検討委員会のメンバーは12名。その構成内訳は町議会議員2名(長谷部武冶議長および山田敏夫総務常任委員長)、企業関係者2名、自治会長(区長)2名、商工会会長1名、農業青年会議所1名、川島町法人会代表1名、消防団長1名、公平委員(女性)1名、そして民生委員(女性)1名となっている。

誰のための町政か?

 なぜこのようなメンバー構成にしたのかと問えば、「幅広い方々の意見を聞きたい」とのありきたりな答えが返ってくる。町庁舎改修の目的とは、町職員が業務を滞りなく遂行できる環境の整備の他に、市民にとって安全で利用しやすい庁舎環境の提供が主眼でなければならないはずだ。ならば、まずは「7割が川越市との合併を希望する」川島町民に、老朽化した町庁舎建物の現状を訴え、合併問題と並行しつつ現町庁舎をどうすべきか、住民に問いかけるべきではないのか。「検討委員会」には、なぜ公募された町民が一人もいないのか。そもそもなぜ検討委員は「12名」なのか。誰が何の権限で決めたことなのか。そして、なぜ「企業関係者が2名」いるのか……。財政課長が説明する検討委員会のメンバー構成に、疑問符がたちどころに林立する。

 企業関係者とは、具体的にどのような職種の企業なのかと問うと、財政課長は言葉に詰まったような表情を見せる。本紙の取材に対し、どこまで情報を開示していいのか計っている様子がありありと浮かぶ。財政課長は傍らの職員と顔を見合わせながら、小声でつぶやくように回答した。

「三井精機さんと、日之出水道さんです」

 三井精機工業(株)は三井グループ直系の工作機械メーカーであり、川島町八幡に本社工場を置いている。また日之出水道機器(株)は福岡県に本社を置くマンホール蓋(グラウンド・マンホール)の世界的メーカーであり、川島町大字吹塚に工場を有している。

 だから……何だというのだろう。工作機械ややマンホール蓋のトップメーカーが、築50年以上を経過した川島町庁舎の改修計画、しかも「合併問題を見据えつつ、するのかしないのかも未定な改修計画」に参画する必然性が、いったいどこにあると言うのか。しかも川島町はこの「検討委員会」発足に向けて、何らかのメンバー公募活動を行った事実は全くないという。ならば、「検討委員会に入ってください」と、川島町の方から頭を下げ、三井精機工業や日之出水道機器だけに「お願い」したとでも、言うのだろうか。川島町内に存在する、さまざまな業種の地場産業をすべて無視して……。

 財政課長らの口ごもった説明と、メンバー選定からしてあまりに不可解な「検討委員会」に、本紙は苛立ちを抑えることができなかった。

これは一体何だ?
公募もせず、一般町民の参加もない「密室謀議」?
あまりにも不透明な「検討委員会」

 なぜ、三井精機工業と日之出水道機器を検討委員会メンバーに呼んだのか。大企業だから、なのか?

「ええ……。まあ、そういう……ことです。川島の大手企業ですから、意見を聞くのに適切と判断したからです。2社とも人材が豊富ですし。三井精機さんは川島の八幡工業団地の代表的な存在でありますし、また特に日之出水道さんは現在、自社工場を建て替えしています。ですので……庁舎改修の際に参考となる意見が聞けるかもしれない、と判断したからです」

 その判断を下したのは、誰なのか。財政課をはじめ職員全体の意見が反映しているのだろうか。

「いえ、検討委員会の立ち上げそのものは去年から出ていた話なのですが、具体的なメンバー構成を含めた委員会の発足については、6月時点で町長と助役が決定したものです。その際、町長および助役の方から『八幡工業団地の中から一社ぐらい入ってもらった方がいいだろう』という指示がありまして、私たち(財政課)が三井精機さんに話をしましたところ、三井精機さんが承諾してくれた、という経緯です」

 川島町は、何か考え違いをしていないだろうか。町職員を除いて、庁舎建物を最も頻繁に利用するのは、各種書類の申請や相談に訪れる町民ではないのか。町民の中にはお年寄りも、子どもを連れた主婦も、身体障害者もいる。耐震性やバリアフリー構造を十分に考慮しつつ、町民全体にとって最も利用しやすい構造に作り替えてはじめて、庁舎改修の意義がある。庁舎改修に際し川島町が本当に考えなければいけないのは、業務遂行環境を整備することに加えた、「最大多数(町民全体)の最大幸福(利便性と安全性)」だ。そこには、「三井精機さん」も「日之出水道さん」も関係ない。

 町民代表である2名の町議、自治会長、そして2名の女性委員や消防団長の存在意義は理解できる。だが法人会や商工会の会長、そして「企業関係者」らが、なにゆえに検討委員会メンバーに座す必要があるのか。

 公募もせず、「新築にするのか改修にするのか、あるいは何もしないのか」の見通しさえ立たないという「川島町庁舎建設等検討委員会」。まずは町民を広く公募し、あるいはインターネット等を利用し「7割が合併を望む」町民たちの生の声を聞く……そこから始めるべきだ。誰のための町政であり、誰のための庁舎なのか。いま川島町には、このシンプルな問いが必要だ。■

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