行政調査新聞社 社主:松本州弘 埼玉県川越市

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【埼玉県比企郡川島町特集】
内部告発文書への反論!
「根も葉もない嘘に傷ついています……」
「農協の生き字引」小久保徳次氏、本紙に激白!

 本紙は先月号にて、全農埼玉県本部の前副会長である小久保徳次氏をめぐる、匿名の「告発文書」について取り上げた。「全農埼玉県本部、小久保副会長、古谷本部長の悪事の数々について」とタイトルされた、18ページにおよぶ分厚い文書は、差出人無記名の封筒にて、本紙宛に送られてきたものだった。

 告発文書の概略は以下のようなものだ。

  • 1:副会長に選出された小久保氏は関連組織の役員を辞任する際、辞任したすべての組織から退職金を手にした。
  • 2:同副会長は自らの地位職権を利用し、農協と取引するメーカー各社からの接待三昧。
  • 3:江原会長は信頼できる人物だが、小久保副会長にかなり遠慮しているように見える。
  • 4:同副会長は人事権、メーカーへの発注権を縦横に駆使し、現金ないし商品券等の「土産物」を贈る職員のみ優遇する。
  • 5:全農埼玉本部の宿泊での会議には某ホテルを常宿としバックマージンを得る。
  • 6:管理職や定年OB、同副会長に再就職の斡旋を受けたOBらが毎日、同副会長に「詣でて」いる。
  • 7:職員は同副会長の親戚の冠婚葬祭にまで参列させられ出費を強いられる。
  • 8:同副会長らは全農埼玉発注の建設工事入札で談合しバックマージンを得ている。
  • 9:同副会長らは組織内でのコンプライアンス(法令遵守)を積極的に推進するが、真意は自らの行為に対する責任追及を回避するため。
  • 10:監査室は無用の長物。副会長の悪事を見て見ぬふり。
  • 11:同副会長らの甚だしい公私混同ぶり。冠婚葬祭から個人的な仕事まですべて全農埼玉から支出させる。
  • 12:組織改編をめぐり従来の組織および会社を解散する際、どさくさまぎれに退職金等を取得。
  • 13:新たな非常勤役員は一年もすれば本部長らに懐柔されがち。全農埼玉のことを真剣に思う新役員に期待。
  • 14:組織のためになる常識的な役員の就任を期待するか、司直の手による調査処罰を期待。

 告発文書で問題とされている小久保徳次氏は、全農埼玉の副会長と同時に、埼玉中央農協の会長でもあった。だがさる4月25日、小久保氏は全農埼玉に対し辞表を提出。さらに5月2日には中央農協に対しても同じく辞表を提出し受理されている。

  小久保氏は川島町における「農協の重鎮」だ。「生き字引として尊敬している」との町民の声も聞こえる。だがいったん町外へ出ると、正反対ともいえる評価も耳にする。
「何かやましいことがあったのは事実だろう。実際、辞めているわけだし」

 小久保氏の辞任をそう評する農協関係者もいる。「告発文書」は、こうしたマイナス評価のいわば集大成である。

 本紙は寄せられた告発文書を手に7月初旬、まさに豪邸と呼ぶべき小久保氏宅を訪れ、直撃インタビューを試みた。

「(その)文書については知っています。ひどいことが書かれている、と傷ついていますよ」
  告発文書の束を眼にした小久保氏は開口一番、苦虫を噛み潰したような表情でそうつぶやいた。

 

酪農ヘルパー補助金事件の真実
「わたしが4年分の補助金全額を自主返還した」

 さる5月のことである。会長を辞めた小久保氏の労をねぎらうべく、農協職員有志が送別会を開いた。この会に出席した関係者によれば、小久保氏は自身の辞任理由について「職員の不祥事の責任を取った」と発言したという。

 職員が不祥事を起こした場合、通常はその職員自身が懲戒免職等の処分を受ける。その上で組織のトップが管理不行き届きの責により、一定期間の減俸処分等に処せられるものだ。だが「職員の不祥事の責任を自分が取った」と発言する小久保氏……。その不祥事とは、すでにさる1月、全国紙等で報じられた「酪農ヘルパー補助金未払い事件」である。

 牛は毎日乳搾りしなければならない。酪農家の日常作業には強い拘束性が生じる。このため労働負担の軽減及び休日の確保を図り、ゆとりある酪農経営を実現するためには、搾乳作業等を請け負う「酪農ヘルパー制度」の普及・定着を推進する必要がある。

 このため国(農水省)が推進するのが「酪農ヘルパー利用拡大推進事業」である。同事業に基づき、埼玉県では全農埼玉県本部が「酪農ヘルパー委員会」を組織し運営にあたっている。副会長の小久保徳次氏は「酪農ヘルパー運営委員会」委員長を兼任していたのだが、ここである問題が発覚した。

「酪農ヘルパー利用拡大推進事業」の実施にあたっては、農水省が造成した基金を(財)農畜産業振興機構が補助金として支給する。

 ところが昨年12月、全農埼玉県本部は01〜04年度の酪農家212戸に対する補助金総額約1,127万円を、実際には酪農家に払っていなかったことが明らかになったのだ。

 同県本部は「この基金の経理を担当した職員がうっかり忘れた」と説明。だがその後の全農の調査で、01年度から事務を担当していたこの職員は、同年度分の補助金約147万円を払い忘れ、酪農ヘルパー全国協会から指導を受けた。にもかかわらず同職員は酪農家への支払い手続きを行わず、04年3月には未払いになった02年度分の補助金との合計約359万円を別通帳に振り替え、さらに05年にも同様に別通帳に振り替えて、同協会に支払い済み報告をしていたことが判明した。

 全農埼玉は1月10日から13日にかけて酪農家に対する謝罪と、未払い補助金の清算を完了。会計検査院による立ち入り検査が行われたのは、それからおよそ10日後の24日であった。

 小久保氏は自らの「辞任」の理由を、よどみなくこう説明する。

「補助金だけが別の通帳、つまり口座に移されていたのです。これは横領というべきケースにさえ匹敵するのでは、との指摘もありました。補助金の原資は国民の税金であるため返還が必要だ、と会計検査院は全農埼玉側に指示したのです。しかし1月上旬で、すでに各酪農家への清算は終了していました。ですから、いくら会計検査院の指示とはいえ『返還』というのでは、こんどは酪農家が納得しないでしょう。結局、ヘルパー運営委員会および関係した職員が自主返還をする、ということで会計検査院との間に合意が成立しました。酪農家にご迷惑をかけることなく税金を国にお返しするには、それしかなかったのです。

しかし運営委員は、会議の際に数千円の日当が出るだけで、基本的にはほとんど無報酬です。そのため運営委員会の自主返還とはいえ、運営委員の皆様に協力してもらうことはできません。したがって委員長であり、全農埼玉県本部副会長という立場からも、わたしが『運営委員会』として全額を自主返還すると同時に、委員長を辞任するということで、責任を取ったのです」

 前述の通り、4年間の補助金総額は約1,127万円だ。小久保氏は『運営委員会』として、これを全額支払ったという。

「全農にはこれまでもさまざまな事件がありました。全農という組織自体が事件を生む温床となっているきらいさえあります。中央(JA全農)からも『全国的な事件にならないよう、埼玉県本部で責任を取ってほしい』との指示もありました」

  不祥事を起こした職員は現在、一時的に降格処分となり、全農中央からの「本処分」を待っている状態だ。

 

「3500万円の着服など、とんでもない話」

 本紙が取材した、ある農協関係者はこう述べた。

「東松山市に『東松山臓器食品』という会社があった。運営主体は旧JA埼玉県経済連。トップは小久保氏だった。経済連が全農埼玉と合併することが決まり同社が解散する際に3500万円のマイナスが生じた。本来、全農に返還すべきこのカネは使途不明金として処理され、小久保氏の懐に入ったという噂がある」

 だが小久保氏はこの「噂」についても言下に否定した。JA埼玉県経済連が運営する株式会社だった「東松山臓器食品」は02年3月に解散し、同年4月から全農埼玉に合併。清算業務の際に生じた3500万円は決算処理上のマイナスであって「使途不明金」ではない、という。同社の株主比率は経済連と商系業者が半々。清算代表人は同社専務として設立から関わってきた商系業者であった。

「清算業務に関する書類を持っていたのは清算人代表でした。したがって全農側には書類がなく、清算金の具体的内容がよくわかりませんでした。そこでマイナス分についてはとりあえず、まとめて『使途不明金』という表現を用いたのです。実際には3500万円のマイナスについては、使途内容は明らかになっていますし、内訳明細も出ています。わたしが着服した、などということは絶対にありません」

 告発文書には、小久保氏が人事権を握る立場から、農協職員をプライベートな冠婚葬祭にまで参列させている……などと、その「独裁者ぶり」が描かれている。

「現実に、わたしにそんな力がありますか」

 小久保氏は一笑に付す。

「まず、わたしは業者接待など一切受けたことはありません。そもそも酒がまったく飲めない体質なのです。また農協職員にも『やむなく業者と宴席をともにせざるを得ない場合は農協側が費用を持つ』ように指示しています。根も葉もない話です」

 だが氏は、告発文書に書かれている内容すべてを否定したわけではない。 

「旅費や日当の二重取りに関してですが、これは『そういう事実があった』という意味においては、この告発文書に書かれているのは本当のことです。

たとえば同一の場所で午前と午後に異なる会議が開かれたとしましょう。これを『会議2回分』とカウントし、2回分の日当が支払われたことは何度もあります。もちろん他の役員にも同様に支払われていました。しかし02年に経済連が全農と統合した後では、全農の『旅費規程』にしたがって按分する……たとえば一日分の日当が4千円なら、午前中の会議に2千円、午後の会議に2千円、となります。したがって午前と午後でそれぞれ4千円を受け取ったならば、それは『二重取り』に値します。実際のところ、わたしのみならず他の役員にも、ずっとこうした『二重取り』の形で日当や旅費が支払われてきたのは事実です。

しかし県本部副会長ともなると、実際問題としてわたしが自ら旅費や日当の計算をして書類を提出する、ということはないのです。わたしはいつも『もらっていいものなのですか』と確認してから受領していましたが、わたしや他の役員への支払いに旅費規程違反があるならば、それは規程を徹底遵守してこなかった事務局にも問題がある、という解釈だって成り立つではありませんか。現在この問題は会計検査院の調査結果待ちです。返還を命じられれば、もちろん返還します」

 告発文書には、小久保氏が農協を専横するさまがこれでもか、と書き込まれている。「謎の著者」による「小久保憎し」の情熱には圧倒されもする。だがよく見ると同じ内容の反復が多く、また氏の「悪しき行状」に対し具体的な証拠などは何一つ挙げられていないのである。同文書は小久保氏を「刑事被告人であるべき人」とし、司法の処罰を求めている。だがこの告発内容は、「単なる悪口」の域を出ていない。

 川島町における農協の重鎮であり、町民に「生き字引として尊敬している」とさえ言われる小久保氏。そんな小久保氏に対し、こうした文書が密かに流通しているという事実が、のどかな農村・川島町のダークサイドを垣間見せている。■

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