行政調査新聞社 社主:松本州弘 埼玉県川越市

行政調査新聞

ご挨拶

地方行政を読む

国内展望

海外展望

社会の片隅

噂の怪奇情報

特集

資料室

 

 

地方行政を読む

arrow行政も議会も“企業癒着体質”!?
官製談合疑惑で逮捕2名・大量処分の東松山市、議員には違法献金横行
これではチェック機能は果たせない=しっかりしろ、市議会議員!

yellowbox 度し難い感覚マヒを露呈した東松山市の官製談合疑惑

 7月、東松山市で露見した官製談合としかいえない特定業者見積に基づく不正常な入札実施に関わった職員15人が停職、減給などの懲戒処分となった上、逮捕者2名を出し、市政史上でもかつてない事件となった。逮捕されたのは、市の河川下水道課長だった平野敏夫容疑者(58)とみどり公園課副主幹だった高荷修男容疑者(52)。平野容疑者は、指名業者から現金を受け取っていたとする収賄で7月11日に、高荷容疑者は、市発注の浄化センター維持管理業務の入札前に予定価格を業者(水道施設管理会社「日本ヘルス工業」)に漏らした偽計業務妨害で同29日に逮捕された。

 これらが発覚するきっかけとなったのは、今年3月10日に市が実施した指名による50件の事業の競争入札。この入札では、50件中13件で予定価格と落札価格が全く一致する(落札率100%)という不自然さが見られ、いぶかった坂本裕之輔市長が内部調査を命じた。その結果、2004年以降のほぼ全ての指名競争入札で市の担当課が落札実績のある一業者から事前に見積を取り、そこで出た価格をそのまま予定価格に設定するという驚くべき不法が行なわれていたことが発覚した。これでは、行政自らが予定価格を漏らしたことにより、競争入札を全く有名無実化させたに等しいことになる。

 東松山市の行政内部でこうした不法行為がまかり通ってしまったのは、市職員の中に蔓延する度し難い企業への依存・癒着体質がある。2004年以降にこうした事態が生じたのは、本紙の取材に答えた行政関係者らによると坂本市長が当時、行政当局に命じた「事業費の一律20%削減」方針。ともかく、従来発注してきた事業の額面を2割カットするための方策に悩んだ職員が、現場の業者の知恵を借りる形でつい見積を取ったというのだが、これが正常な入札を損なうと共に、行政と業者の依存と癒着を進めてしなうことに幹部も含めて職員の誰も思い当たらなかったのだという。公僕たる自覚を溶けて無くしてしまったような、あきれた感覚マヒぶりである。

 市は、調査で判明した事実に基づき、4月の段階で平野容疑者を懲戒免職にした他、関与した係長以上の職員約20名を懲戒処分にする方針を決めた。そして、調査内容を「東松山市における入札実態に関する報告書(案)」にまとめて6月3日の市議会各会派代表者会議で提示。しかるのちに6月定例市議会に「報告書」を提出したのである。

 

yellowbox 市議会議員のチグハグな態度と市長の露骨な“議会軽視”

 6月19日の市議会一般質問では、鈴木健一議員が市提出の「報告書案」の内容について質疑に立った。鈴木議員は、「落札率の高止まり(※入札に於ける落札率が異常に高く、談合の存在を十分に疑わせるもの)について、何度も質問してきた。‥ほんの少しでも注意していれば、常識的にもわかったのではないか。『事務方の最高責任者は副市長』ということで副市長が辞職したが、最高責任者は市長ではないのか。指名委員会の監督を市長が行なっていなかったことが問題ではないのか」と坂本市長に問い質した。

 坂本市長は、「落札率が100%とか高止まりしているとかではなく、業者の見積をそのまま(予定価格として)出していたことが最大の問題である」と行政のあり方が問われていることを認めつつ、開き直りとしか言いようのない次のような答弁をも口にした。
「‥このことを鈴木議員が知っていたなら、なぜ私たちに知らせてくれなかったのか。私も市長になって5年で折々議員の方が市長室に来て要望を多くされるが、鈴木議員はここ5年で一回もない。‥職員もいるのだから、質問ではなくい担当課などにいち早く知らせてくれれば、市の発展にもつながる」

 有権者の代表が行政をチェックする議会の場での答弁とは考えられない、あきれた暴言である。議員は、住民の要望や意見を議会の場で公に質すのが第一義的な仕事だ。市長が「質問でなく担当課などにいち早く知らせてくれれば」と発言することは、議会の尊厳に泥を塗るものに他ならない。それこそ、「密室の談合」への誘いを市長自らがしたと言われても仕方のない所業である。無反省どころか、首長としての資格が問われる発言だ。

 坂本市長の人を食ったような答弁に対しては、残念ながらわずかに日本共産党の小野美佐子議員だけが「まずい発言である」と会派代表者会議で批判するにとどまっている。

 ところで、市長からなぜ、こんな議会軽視発言が口をついて出てしまうのか。その背景には、市議会に全体として漂う“事なかれ主義”の雰囲気だ。実は、今回の官製談合事件について市当局がまとめた「報告書案」は、先に触れたように議会で審議される直前の6月3日に開かれた市議会の各会派代表者会議で諮られていた。この場には、“一人会派”である先の鈴木議員は出席していない。

 会議では、松坂喜浩議員が次のような奇妙な行動に出たのである。「報告書(案)」に記載されていた次のような文言について「こういう文言の使い方はどうなの」と難クセをつけ、日本共産党以外の議員たちの多くがこれに同調し結果として削除させたのである。

「平成16年度から落札率が高くなったという事実と、同年度の予算編成時に財政契約課の指示により各担当課が業者より見積りをもらい予算計上していたという事実を対比した結果、本件の原因は、予定価格を知り得た業者が談合等により高い落札率で落札していた可能性が否定できない状況にあると考えます」(「東松山市における入札実態に関する報告書(案)」の4ページより)

 この文言は、「報告書(案)」の中の「4.問題を引き起こした原因について」の結論部分にあたるもので、行政当局が調査の結果到達したものとして極めて重要な認識を示したものだ。そして、これを抜いてしまえば、「報告書(案)」の記述は、調査したデータの羅列にすぎないものになってしまう。

 松坂議員は、敢えて行政が深い反省に立って調査作成した「報告書(案)」の骨抜きをしたとしか言いようがない。住民の代表たる議員がこんなことをしていては、チェック機能が果たせるわけがない。市長の議会軽視もむべなるかな、である。

 この問題は、日本共産党の蓮見 節議員の一般質問で「二つの違う報告文書がある(※会派代表者会議に諮られた「報告書(案)」と議会に提示された「報告書」)。なぜ、「報告書(案)」から文言が削除されたのか」と質された。しかし、市側答弁者(竹森 郁秘書室特別理事)は、「行政が一般論として談合の可能性を述べ、世間を騒がせるべきでない。‥捜査機関や公正取引委員会のような専門機関の調査と結論を待つべき」という、行政の中で行なわれた不法に対する責任と反省を放棄するような答弁を行なった。この筋道は、会派代表者会議での松坂議員ら不可解な言動をする議員たちによってつけられたものである。

 松坂議員の住民代表にあるまじきこの言動は、他の多くの議員の面前で行なわれた。一人会派としてがんばる鈴木議員や「東松山市議会で唯一の野党」(行政関係者の声)である日本共産党市議会議員団以外からは、何の反対や抵抗もなかったのだ。これはいったいどうしたことか。実は、こうした市議会議員たちのチグハグな態度の裏にも、あきれた体質がひそんでいたのである。

 

yellowbox 馴れ合いの陰に市議会議員のあきれたモラル・ハザード
議員22名中10人が政治資金規正法違反!
市議選(平成19年)の選挙運動資金で違法寄附を受け入れ

 実は、こうした多くの議員たちの馴れ合い体質が昨日今日に始まったものではないことを示す資料が本紙の調査で判明した。

昨年4月のいっせい地方選挙で改選された埼玉県東松山市の市議会議員22名のうち、10名が政治資金規正法違反の企業団体寄附を受け入れていたのである。これは、各議員、候補者が公職選挙法に基づき東松山市選挙管理委員会に提出した選挙運動収支報告書を調査した結果、わかったもの。

 政治資金規正法は、企業や団体が政治家個人に寄附することを禁じている(法第21条)。これは、総務省政治資金課の説明によれば、「公職選挙法に基づく選挙活動に対する寄附にも適用される」もの。選挙運動資金は、候補者の自己資金や寄附金(政党・政治団体からの交付金と個人からの寄附)で賄われるが、選挙運動があくまで個人毎のものである以上、これへの寄附は政治家個人への寄附にほかならないからだ。

 本紙が東松山市議会議員選挙の選挙運動収支報告書(候補者個人毎に提出)を精査すると、何と現職議員の半数近い10人が違法な企業団体寄附(献金)を受けていたことがわかったのである。中には、政治への寄附行為そのものが絶対に禁じられている学校法人(幼稚園)や公益団体(消防団)からの寄附すら受けているケースもあり、順法主義に対するあまりの無自覚、モラル・ハザードぶりにはあきれさせられる。

  昨年のいっせい地方選挙で政治資金規正法違反の企業団体寄附を受け入れていた東松山市議会議員10名は、次の通りだ。

榎田達治
福田武彦
岡村行雄
松坂喜浩
加藤正三
根岸成直
神嶋 博
米山真澄
鈴木建一
吉田英三郎



yellowbox 寄附総額の2割、3割が違法献金=松坂喜浩、吉田英三郎両議員

 これら10名の議員中、選挙運動への寄附額の2〜3割が違法献金で占められるケースが2人の議員に見られた。「報告書(案)」から文言の削除を主張した松坂喜浩議員と吉田英三郎議員である。

 松坂喜浩議員は、選挙運動収支報告書によると合計103万円の寄附を昨年の選挙に向けて集めたが、そのうちの21万円、およそ20%が違法献金だ。その内訳は、以下の通りである(企業名は仮名)。

M設備工業
10,000円
(有)T石油
10,000円
(有)A商店
10,000円
(有)Y建設
10,000円
(株)N建材
50,000円
(株)T観光社
10,000円
S電設
10,000円
Iテクノス(株)
10,000円
正代自治会
10,000円
(有)T設備
10,000円
(有)M本不動産
10,000円
Mソフト一同
10,000円
H住研
10,000円
H興業(株)
30,000円
(株)A金物
10,000円

 この中には、公職選挙法第199条(別掲)にも明確に違犯して寄附していることになる東松山市の指定業者として市発注の公共工事に応札している企業が2社ある。あまりに重大なので、業者、議員本人に確認取材をしたところ、さらに問題が発覚した。

「我が社に関係している人が松坂議員の選挙運動に寄附したようですが、それを我が社からの献金扱いと勝手にしてしまわれたようです」(当該業者)

これを松坂議員に確認すると、あっさり事実を認めた。
「関係者だったので、勘違いしたようです。申し訳なかった。収支報告書は、訂正届けを出したいと思います」(松坂議員)

本紙は、松坂議員に対して更に「なぜ、『報告書(案)』から談合の可能性を示唆した記述などを削除するよう主張したのか」と問い質すと、「そんな意図ではない‥」と口を濁すばかりだった。

 吉田英三郎議員については、収支報告書に記載した寄附総額61万3千円のうち、違法な献金は18万5千円、約3割にのぼる。内訳は、次の通りだ。

(株)S建設
50,000円
H幼稚園
20,000円
H石油
10,000円
K自動車
60,000円
S園(造園)
30,000円
T商店
10,000円
とんかつM
5,000円

 これらののうち、(株)S建設、S園は東松山市指定業者であり、公職選挙法第199条で当該自治体議会である東松山市議会議員選挙への寄附が禁止されている業者である。まったくもって、あきれるしかない。

 

yellowbox こっそり「訂正届け」をした7名の市議会議員たち

 市政史上に例のない汚職腐敗疑惑を引き起こした東松山市。それを正していくべき役割が最も期待される市議会にして、半数近くの議員が違法な献金を受け取っていた‥何をかいわんやだ。

 本紙が東松山市選挙管理委員会で選挙運動収支報告書をチェックし、該当議員への追及を始めた矢先、7名の議員たちはすぐさまこっそりと同委員会に対し、報告書の「訂正届け」を出した。違法な企業献金を示す部分に棒線を引き、訂正印を押して「個人寄附」に書き換えたという。

しかし、こんな姑息な手段で違法行為が是正できると思ったら、大間違いだ。東松山市民に対する裏切り行為に等しい違法献金問題について、市議会は襟を正して対処し徹底した真相究明と責任の明確化を行なうべきである。本紙の取材に対し、東松山市選挙管理委員会事務局は、次のように述べた。

「事態について、厳正にチェックし、総務省とも確認しながら是正すべき点は指導していきたい」

 本来、こうしたケースでは、違法な献金について議員から寄附者に返還が行なわれた上で選挙運動収支報告書の記載訂正手続きを行なわれなければならない。本紙の追及に慌てて、“駆け込み”的に「訂正届け」だけしても、実際に違法な献金が返還されたことが確認されないなら、引き続き悪質な違反者として疑われ、刑事告発されても仕方ないのだ。

 本紙としては、東松山市民に責任を持つ市議会議員各位が是正を徹底することで、政治に対する信頼を回復することをつよく期待したい。これなくして、市政の信頼を失墜させた現状からの回復への道は開かれない。

 「襟を正せ!」=市民に代わり、本紙は東松山市議会議員諸氏を強く叱責し、糾したい。

(別掲)

「公職選挙法第199条」

衆議院議員及び参議院議員の選挙に関しては国と、地方公共団体の議会及び長の選挙に関しては当該地方公共団体と、請負その他特別の利益を伴う契約の当事者である者は、当該選挙に関し、寄附をしてはならない。
2 会社その他の法人が融資(試験研究、調査及び災害復旧に係るものを除く。)を受けている場合において、当該融資を行なっている者が、当該融資につき、衆議院議員および参議院の選挙に関しては国から、地方公共団体の議会の議員及び長の選挙に関しては当該地方公共団体から、利子補給金の交付の決定(利子補給金に係る契約の承諾の決定を含む。以下この条において同じ。)を受けたときは、当該利子補給金の交付の決定の通知を受けた日から当該利子補給金の交付の日から起算して1年を経過した日(当該利子補給金の交付の決定の全部の取消しがあったときは、当該取消しの通知を受けた日)までの間、当該会社その他の法人は、当該選挙に関し寄附をしてはならない。」


行政調査新聞社 社主:松本州弘 埼玉県川越市
著作権は行政調査新聞社またはその情報提供者に属します。
Copyright 2001-2007: Gyousei Chosa Shimbun.
All Right Reserved.
 本紙へのメールはこちらをクリックしてください。