
ふってわいた「川越市庁舎」移転計画
市民の意見聞かず暴走はかる舟橋功一市長
川越十カ町地区の自治会長らは反対意見書を提出
短期間(1/10〜2/12)で“アリバイ”的に「計画(素案)」公開
2月13日、新聞各紙は川越市庁舎の川越駅西口への移転計画に現市庁舎周辺の自治会長ら13人が連名で反対の意見書を提出したことを報じた。反対意見書を提出したのは、川越十カ町地区の12自治会(志多町、喜多町、宮下町一丁目、宮下町二丁目、元町一丁目、元町二丁目、末広町二丁目、大手町)の自治会長ら13人。川越市が1月10日から2月12日にかけて各地区の公民館などで市民の閲覧に供した「川越市中心市街地活性化基本計画(素案)」(埼玉県川越市 平成20年1月)をめぐって提出されたものだ。
この「計画(素案)」は、全部で126ページに及ぶA4版の冊子にまとめられたもの。この間の川越市の中心市街地におけるまちづくりの取り組みや市民ニーズに関する過去のアンケート結果とその分析、国が制定して進めている中心市街地活性化法(平成18年改正)に基づく川越市の基本姿勢と現段階の方針が、多くの都市計画や統計資料とともに示されている。市民が仮に関心を持ったとしても、とても公民館で短時間のうちに目を通しおおせるものではない。
多くの専門的知見をちりばめた分厚い冊子を「さあ、言いたいことがあるなら読んで意見を送ってこい」と言っても、公民館でいきなり冊子を見た市民がそう容易に反応出来るものではないことは明白だ。こんなことは、川越市当局にとってもわかりきったことで、正に「市民の声を行政に反映する」という掛け声だけの“アリバイ”的措置にすぎないものである。現に、2月12日の意見公募締め切りまでに市に提出された意見は、個人5通、団体2通の計7通に過ぎない。
さらに今回、自治会関係者が危惧の念から反対意見書を提出した市庁舎移転問題については、「計画素案」の冊子には、たったの半ページを費やすのみで、次のような簡単な説明しか記載されていない。
(4)国の支援がないその他の事業 (82ページ)
事業名、内容及び実施時期 |
実施主体 |
目標達成のための位置付け及び必要性 |
支援措置の内容及び実施時期 |
その他の事項 |
●事業名
市庁舎建設推進
●内容
市庁舎の川越駅西口地区への移転推進
●実施時期
平成20年度〜 |
川越市 |
・老朽化と狭あい化が進み、耐震性能が不足している市庁舎の問題を解決し、市役所機能の更なる充実を図るため、川越駅西口に新市庁舎を移転することを目指した取り組みを推進する。
・西部地区振興ふれあい拠点施設と併せこの地区に業務機能を立地させることで、業務機能集積の推進及び新たなにぎわいの創出をはかる。
・基本方針である「にぎわいのあるまちづくり」に寄与する中心市街地活性化に必要な事業である。 |
|
|
|
ふだん、市政に率先して協力を惜しまず努力している地元町会が「反対」の意見を表明し、新聞もそれを重視する内容について、この程度の説明しかないのだ。「市庁舎移転」という市民生活と行政にとって重大な影響を持つ内容について、「あまり説明したくない」とでも言いたげな川越市行政の態度は、いったいどういうことなのか?公明正大な行政執行の前提条件である市民への説明責任を放棄するような一連のふるまいは、何を示しているのか?
突出する舟橋市長の「市庁舎移転、結論先にありき」の姿勢
昨年9月の市議会で自説をブチ上げる
川越市の拙速に見えるふるまいの背景には、舟橋市長の市庁舎移転にかける姿勢の突出ぶりがある。市長は、昨年9月の平成19年川越市議会第5回定例会における新井喜一市議会議員の質問(9月18日)に対する答弁で、「移転はもう決まっている」と言わんばかりの態度で、市庁舎移転のあり方についても滔々と自説を述べている。
「……まだ検討の方は終わっていないわけでございますが、市役所をどうするかという問題についてはいろいろ御苦労をしていただいておる中で、私がきょう結論めいたことは問題だと思うのでございますが、いつまでもこれを実は長引かせても、もし震度6の地震が起きたらこれだめになります。私はそう思います。私の方の調査は、もう震度6になったら無理だろうと、これ全部崩れるだろうと思っています。私は市長室4階から急いで逃げ出さないと潰されると、こういうふうに思っているのです。……(中略)
それで費用の問題になります。費用はなるべく一銭もかけないで市役所をつくる方法を考えなければいけません。これは後で皆さんと一緒に視察に行きたいのですが、けれども、岐阜にシティ・タワーというのがあります。……(中略)
43階ありまして、これは駅のそばです。市役所は建てたのですけれども、これは実は民間が介入しておりまして、市役所は金を出していないそうです、一銭も出さない。これは森ビルが計画したのですけれども、ここに細かい部分の説明があるのですけれども、43階のうち15階から42階まではマンションにして分譲しております。それで14階までをいろんな面で使うのですけれども、3階に福祉施設、医療施設、こういうのを入れてあります。……(中略)
43階を一部分譲しております。上の方は分譲しております。工事中でしたけれども、工事用のエレベーターへ乗りまして中を見せてもらいました。もう工事中に一番上は売れています。一億円以上のマンションだそうですが。……そういうことで、実は、余計なことを言って恐縮ですが、こういう方法で市役所を建てれば、実は借金をしないで、そして後のランニングコストまでこの分譲した中へ入れると、こういうことだそうでございまして、そういうことでやれると。……(中略)
私ももうある程度任期が来ておりますから、これはもう今後どうするかは別といたしましても、やはり決断をもってこれはやらないとだめだと、こういうことで、これは私の人生最後の事業になると思うのですが、こういうことでぜひとも川越市に新しい市役所をつくりたい。そしてそれは議員の皆さんの御同意を得て、できれば川越駅西口につくって、……(中略)
この川越のシンボルタワーとして、そして今後の発展の礎でつくりたいと、こういうふうに思っておりますので、ちょっときょうは興奮しておりますので……」
自分が「結論」を述べるのは「問題」だとか、「余計なことを言って恐縮」などとへりくだりながら、「私の人生最後の事業」と「興奮して」ブチ上げる……。会議録で3ページにもおよぶ独演を繰り広げて披瀝した舟橋市長の市庁舎移転にかける異常な熱情は、これを見ると察して余りあるものがある。
「一銭も使わない」という夢のような市庁舎移転計画……。しかし、考えてみていただきたい。後述する川越市が現在実施中の「川越市役所庁舎に関する市民アンケート」に付された「川越駅西口に新しい市庁舎を建設することについての考え方」の中では、予定地と目される「川越駅西口市有地」が、まるで規定のものであるかのように地図で示されている。市長がブチあげる「民間介入」型の市庁舎および分譲住宅等の抱き合わせ建設計画で最も得をするのは、先の市長答弁のなかで例として挙げられている「森ビル」のような大手デベロッパーなのだ。何しろ、公有地をタダで利益獲得のための開発事業に活用できるのだから。
具体的な方法論までに踏み込んで、市庁舎移転を既決の問題のように扱う舟橋市長の突出ぶりは、何かの背景の存在を感じさせずにはおかない。いったい誰がこの計画で得をするのか? なぜ川越駅西口なのか? ちなみに予定地と目される市有地のすぐ近くには、本紙が「市長一族の犯罪行為」として追及を続けてきた「学校乗っ取り劇」の舞台=トータルビューティカレッジ川越(現理事長は市長夫人である舟橋浩子氏)が存在している。「まるで、“舟橋城”を完成させようとするかのようだ」と、指摘する市民の声があがるのも当然だ。
報道によれば、市庁舎移転反対の意見書に連名した自治会長の一人は、こう述べている。
「移転せざるを得ないのなら、市庁舎裏の体育館跡地が、現在の庁舎より広く最適ではないのか」
また、反対意見書では、次のような趣旨も書かれた。
「市庁舎の移転先を川越駅西口に限定すべきではない。駅周辺の交通渋滞が予想され、市民生活に大きな混乱を招く恐れがある。市所有車両の駐車場問題も発生し、高額の地下駐車場では市民の税負担となる」
既存の位置から数キロも行政の拠点を移動させることが、さまざまな面で市民生活に大きな影響を与えることが明らかだ。ここにあげた意見は、そうした点で市長が興奮気味にまくしたてる内容よりも、はるかに正論に思える。
旧「基本計画」(平成11年)には無かった市庁舎移転計画
「舟橋移転構想」の狙いは、来年の市長選挙対策か?
市庁舎移転計画は、1971年ごろにも持ち上がったことがある。だが当時は地元の反対で撤回されたという。今回、移転を急ぐ理由として舟橋市長や行政当局があげている内容の主なものは、「震災対策」である。地震などの災害の際、市庁舎のような公共施設は救難・復興活動の拠点とならねばならず、そのためには相当な耐震性を持たなければならないが、現状の庁舎では耐震診断の結果、それが不足しているという。そして、現状のまま耐震強度を増す補強工事をする場合は8億円を要するが、その他にOA化の進展などにともなう建物内スペースの狭隘化で費用対効果が悪いこと、工事の際に行政業務に支障が生ずることなどを理由に、市長らはこれを排している。
本紙が取材したところ、平成6年にも市議会で市庁舎のあり方について、移転を含めた検討が行われた。また平成7年の阪神淡路大震災以後は、市庁舎のあり方が本格的な検討課題になったという。しかし、市民生活への影響から検討は慎重に行われてきた。そして、平成11年に出された「中心市街地活性化基本計画」(川越市)では、市庁舎の移転などは一切課題とされなかったのである。
しかし、ここへ来て急遽、浮上した移転計画。市民の前に計画が公然化したのは、前述したとおり昨年9月の市議会に於ける市長らの答弁だ。しかしすでに昨年中には常設のプロジェクトチーム(3つ)が置かれ、日常的な体制で検討が進められてきたという。この“加速化”の背景はいったい何なのか?
行政に精通したある有力消息筋は、こう述べている。
「舟橋功一市長が、来年春に予定されている市長選挙での再選を狙ってアドバルーンとして挙げたものでしょう。建設産業は、社会資本整備の進展の中で構造改革が求められています。民間活力導入型、分譲住宅・店舗等の抱き合わせ型の市役所庁舎建設計画は、地元や中核ゼネコン・デベロッパーにとってこの上なく魅力的なプロジェクトとなります。これで、中央を含めた業界の支援を集め、再選への盤石の態勢づくりを狙っているのだと思います」
本紙は、市庁舎のあり方の見直しなど、公共施設再編を含めたまちづくり計画の見直しと策定は、それが市民や地場産業からの広い意見を反映し、住民合意の中で進められるなら大いにやるべきと考える。しかしいま問題になっている、ふってわいたような市庁舎移転計画に対する舟橋市政のスタンスとは、住民の合意はおろか、住民の意見より先に「結論ありき」で進めようとする姿勢があまりに露骨だ。「自治会長たちがあえて反対意見書を出したのは、市長の拙速さを牽制し、対話の場を作らせるためだ」との声も、取材の中で聞いた。
しかし、川越市の姿勢はこれを一顧だにしていない。3月14日締め切りで川越市総合政策部政策企画課が実施している「川越市役所庁舎に関する市民アンケート」(〜みんなでつくろう みんなの市役所〜)は、市役所移転計画が「既定のもの」であるかのような記述であり、いわば「誘導尋問」的な設問を並べては、市民の声を利用しようとしていることが明白なものだ。
- 「問6 新しい市庁舎の場所は川越駅西口がよいと思いますか」
- 「問7 新しい市庁舎は、どのようなイメージが望ましいと思いますか」
- 「問10 新しい市庁舎を建設する場合の視点 新しい市庁舎を建設する場合、重視しなければならないことは何だと思いますか」
- 「問11 移転後の現在の庁舎〜市庁舎を移転した場合には、現在の市庁舎に市役所の窓口機構を残し、観光拠点等として有効活用を図るよう検討していく予定ですが、それ以外にどのように活用したらよいと思いますか」

<川越市役所庁舎に関する市民アンケート・インターネットアンケートより。
「新しい市庁舎の場所」について市民から意見を聞く設問として、これは適切だろうか?市民に対し「川越駅西口」という結論を刷り込んでいるかのようだ>
正に「結論先にありき」の恣意的設問と言わざるを得ない。ろくに説明資料も示さず、決まった結論への同意を前提にした意見ばかり求めている。舟橋市長は、市民の意識まで私物化しようというのか?
本紙は川越市に対し、この間の市庁舎移転のあり方についての検討内容について、資料開示を求めてきた。そして、過去の資料をいくつか入手している。また、他の自治体における庁舎の耐震強化問題等についても調査を進め、市民本位のあり方について検討しているところだ。
市役所の歴史は、市民の歴史そのものである。町の中心として、市民生活の大切な基盤として重要な役割を果たしてきたのであり、その位置、施設とも長い歴史のなかで定められ維持されてきたものだ。こうした性格の「市民財産」を、一時の為政者による選挙対策」のような思惑で、好き勝手な改変をされてはならない。
本紙は、引き続き舟橋市長が突然ブチ上げた拙速な市庁舎移転計画について、その問題点をえぐり出していく所存だ。■
|