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東松山市が全国に先駆けた「英断」
障害児の差別的な就学「振り分け」と完全に決別
就学支援委員会廃止は、坂本祐之輔市長の福祉重視政策の一環

障害の有無にかかわらず
ともに地域で生活する地域社会を

 東松山市が障害児の就学先を養護学校などに振り分ける「就学支援(指導)委員会」を完全に廃止する方針を打ち出し、全国の注目を集めている。

 近年、「障害があっても地域社会に生きていく以上、自分の子供を普通に就学させたい」と希望する保護者が増えつつあり、各地で「学校に受け入れ態勢が無いから、養護学校へ就学されたい」とする自治体就学指導委員会からの指導とのあいだに摩擦が生じるケースが相次いでいる。こうした行政側の指導に対し、障害者団体からは「差別につながり、これを助長するものだ」と批判がなされてきた。

 本紙は、東松山市のこの「英断」の真意と背景を知るため、福田實副市長ならびに同市教育委員会、健康福祉部福祉課に取材要請して詳しい説明を受けた。その結果、就学支援委員会の廃止措置は、ここ数年以上にわたる坂本祐之輔市長の福祉重視政策の一環であり、さまざまな総合施策に裏打ちされた地域社会改革の営みであることがわかった。

小中学校に介助員を配置(34名)
相談員も大幅増員へ(7名⇒20数名)

「市は3年ほど前から就学支援委員会の廃止を考えてきました。当時は時期尚早ということで見送られましたが、実質的な『指導』(当該児童にとってふさわしい就学先の判定)内容については、あくまで「一つの情報」として保護者に提供するものであり、『こうしろ、ああしろ』と指図するようなものではなくしてきました」

 教育委員会はこう説明する。つまり東松山市においては、障害児の就学について他の自治体で行われてきたような指導は実施されておらず、今回の就学支援委員会廃止措置の決定は、ここ数年積み重ねてきた行政の実態に合わせたものである。

 今回の廃止措置の考え方について、福田副市長は次のように述べる。

「坂本市長は就任以来、福祉施策に力を入れてきました。今回の措置はその一環で、『障害児もできるだけ同じ環境で教育を受けるべきだ。兄弟や近所の子どもたちが同じ学校に行くのに、障害児だけが違う学校へ通うというのは不自然だ』との市長の考え方があります。そのいっぽうで、障害児を持つ保護者への相談業務は大切であると捉え、就学支援委員会の廃止とともに相談受付の組織を新たにつくることにしています。障害児の就学は、障害児・保護者とよく話し合って進めることが大事です」

 しかも、こうした措置は「看板」だけではなく、実質的な態勢拡充を図りながら具体的に進められている。教育委員会は次のように説明する。

「障害児の受け入れを図るため、市内の16校(小学校11、中学校5)のうち、南中学校と新明小学校を全面バリアフリー化しました。歩みは遅いですが、他の学校でも今後、バリアフリー化を進めていきます。また、よりよい教育を実現するためには、現場の教職員の研修が大切です。現場の先生方の不安を解消していくためにも、研修については重視していきます。あわせて、就学した障害児の安全を守るとともに健常な児童生徒の教育を受ける権利を保障するため、市独自の施策として介助員を学校に配置しています。現在、34名を雇用(1年更新)しています」

 障害児の学校受け入れについても、具体的な準備を怠っていないのである。あわせて障害児・保護者への相談業務の拡充も図られる見通しだ。現在、東松山市には非常勤を含め7〜8名の相談員を配置しており、就学希望先や養護学校への訪問に同行するなどの援助活動を行っている。しかし常時動ける人員が1〜2名程度になってしまうので、これを20名以上に増員して対応するという。

 今後、相談員の増員については、総合教育センター(不登校児への対応や教職員研修を支援する施設)の常勤職員や退職教職員(校長経験者)などとあわせ、埼玉県が実施している上級カウンセリング研修の修了者などに働きかけて対応していくとのことだ。

「地域でともに生きる」
障害者就労支援やグループホームでも独自の施策

 東松山市の障害者施策は、就学問題にとどまらない。まず保育園においては、10年前(平成8年度)から保育士を加配して障害児受け入れを実現。障害者が成人しても介助を受けつつ、ともに暮らすグループホームも市内に18カ所設置している。

 また、障害者が地域で生活していく上で決定的に重要な就労支援については、市レベルでは極めて珍しい障害者就労支援センター・心身障害者地域デイケア施設・精神障害者小規模作業所(市が建設し、NPO法人が運営)が設けられている。現在、各年度に於いて80〜100名が在籍し就労準備訓練と実習を行っている。坂本市長は、この施設での就労支援事業について次のように述べている(東松山市障害者就労支援センター紹介パンフレットより引用)。

「多くの障害のある方にとって、企業等への就労を目指すことは非常に困難な状況にありますが、地域での生活のためには就労が大きな要素となります。
  この施設は、働く意欲がありながらもなかなか就労に結びつかない方の就労を支援する・就労した方の継続的な雇用を確保する・就労に関する情報の提供を行う・通所しながら就労に向けての訓練を行うなど、障害のある方が充実した社会生活を送るための支援の拠点となる施設です。
  多くの皆様に利用していただき、ノーマライゼーションの街づくりが進むことを期待します」

  ここには、就学支援委員会廃止を含む坂本市長の「障害者福祉政策の根底思想」があらわれている。

根拠がなく無責任な「埼高教」の東松山市批判

 新聞報道で、坂本市長は今回の就学支援委員会廃止措置決定について、「垣根が取り払われ、障害児を持つ親も安心して子供を預けられるのではないか」と述べている。本紙も取材を通じ、今回の措置は真に英断であり、障害者が地域で共生できるやさしい街づくりに向けた成果の一つと評価できるものと認識した。

 ところで、今回の措置について各界から目立った批判は聞かれないものの、唯一の例外が共産党系の教職員組合である埼玉県高等学校教職員組合(埼高教)の態度だ。埼高教書記次長(障害児教育担当)の小野知二氏は、「保護者任せになる恐れがある」として、次のようなコメントを明らかにしている。

「就学支援委員会は廃止すればいいというものではない。子どもの成長と発達を保障するために機能するよう発展させることこそ必要。保護者任せになる恐れもあり、なくすなら普通学校の条件整備が求められる」

 本紙の取材に答えた東松山市関係者の説明を見るなら、埼高教のこの批判はまるで見当違いのものとしかいいようがない。いったい、何が言いたいのか?

 埼高教は、障害児教育部が力を持っているという。ならば、すべての障害児が希望にそった就学を実現する上で妨げになると批判されてきた就学指導について、本来であれば彼らが、保護者や障害児とともに積極的に改革、あるいは廃止するよう求める運動のイニシアチブをとるべきではないだろうか。

 この批判の底には、「現場に負担を押し付けるな。手のかかる障害児を普通学校に入れるというなら、教員の数と待遇を改善しろ」という、自分たち本位のホンネが透けてみえる。財政面で苦境に立つ市が前向きに障害者福祉施策に取り組んでいるのに対して、埼高教の批判はいわば「けたぐり」の類であり、まじめなものとは言い難い。

 また、かつて「弱者の尊重」「生活向上」を率先して掲げてきた日本共産党のスローガンと実態とのギャップ(不破哲三など最高幹部の「拝金主義」や幹部・国会議員の「平目」化など)による凋落で、末端の共産党員や支持者たちの感覚もマヒしていることが、埼高教による陳腐な批判コメントに反映されているのであろう。

 いずれにせよ東松山市の取り組みに対して、全国の自治体や教育現場の関係者は真摯に学び、自分たちが何を出来るのかを明確にすることを視座に考えていくべきだろう。■

 

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