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「9億円の錬金術」公金横領疑惑=県住川越笠幡団地建設予定地
疑惑追及にフタ? 困惑する上田清司埼玉県知事
小紙公開質問書に対しての回答

役者が出揃った9億円横領疑惑
議員・元県幹部・県宅建業協会会長の犯罪

 小紙が2月からの短期集中連載で川越市笠幡のある空き地から掘り出した前代未聞の公務員らによる巨額横領疑惑は、追及と暴露を重ねるにつれ県内有力者の関与も明らかとなり行政関係者のみならず広く市民の関心を集めるに至った。

「9億円錬金術」の舞台となった土地の地主である川越市元幹部で現川越市議の神田壽雄氏、この男と共謀して当該土地に県住計画を引っ張り込み無価値の市街化調整区域を「金池」と化した元県住宅都市部長の村上貞夫氏(川越市助役も歴任)、この二人の意を受けて土地コロガシによる土地価格高騰を主導し、血税から通常価格の10倍以上も土地の価格を引き上げた買収額を引っ張り出し、県との買収契約を一手引き受けた現埼玉県宅地建物取引業協会会長で郷土開発椛纒\取締役の細谷金作氏(全国宅建業協会副会長も兼任)と、現在も計画未完のまま「継続事業扱い」になっているに「県住川越笠幡団地建設計画(仮称)」は、正に役者が出揃った状況である。

 現在、世論の厳しい指弾を受けた神田市議は“雲隠れ状態”で、県宅建業協会の細谷会長は小紙の取材から逃げ回り、あげくは最近も会長改選で名乗りをあげて引き続きその座に居座るという厚顔無恥ぶりである。そのため、業界の自浄能力に期待した小紙は既報の通り県宅建業協会の有力役員たちに公開質問書を発し、細谷会長の許されざる悪行について真意を問うたが、今に至るも回答はない。

 真に嘆かわしいことに、責任を持って説明すべき関係者は疑惑を否定するどころか、ひたすらに口をつぐんで逃げ回るばかりなのである。土地登記の記録に明確に刻まれ、消えることのない不正行為の数々について「わからない」「記憶にない」「資料がない」と逃げ回る埼玉県住宅課を含む関係者の姿勢は、小紙が抱いた疑念をますます深めさせるものである。

 

疑惑解明の最大の道義的責任が所在する埼玉県知事への公開質問書

 そこで5月に入ってから小紙は県政を舞台に歴史の汚点として刻まれた「9億円錬金術・公金横領疑惑」について、上田清司知事に対して公開質問書を呈することに決した。“下手人”たる関係者がこぞって逃げ回り、その周辺の者たちや県の担当部署までが言を左右して「わからない」を繰り返す“灰色”解決を期待しての頬かむりを繰り返している以上、県民の選択で直接県政の最高責任者としての権能を付与された知事にその解決を図るよう求めざるを得ないからだ。

 現知事の上田清司氏は、民主党所属の衆議院議員から打って出た“気鋭の政治家”として知られた人物である。四年前の北方領土問題等にからむ公共事業談合その他「ムネオ疑惑」がクローズアップされた時、民主党側での追及の急先鋒をつとめた華麗な政治的実績を積んできた。

 この上田知事がいかなる姿勢で今日にまで連なる県政史上もまれな汚職疑惑に取り組まれるのか。知事の経歴を知る者としては、小紙ならずとも一縷の期待を持って当然であり、知事としての義務でもあろう。

 小紙がこれまでの資料・記事を付した上、知事に送達した公開質問書は、以下の通りである。

埼玉県知事 上田清司殿

「県住川越笠幡団地(仮称)用地買収に関連した
元県幹部らによる職権乱用・公金横領疑惑について」

公  開  質  問  書

平成十八年五月 八日
行 政 調 査 新 聞 社
       社主 松本州弘
                      〒三五〇―一一〇三
川越市霞ヶ関東三丁目八番地十三
   TEL〇四九(二三七)五四三一
FAX〇四九(二三七)五四三二

【主旨】

 県民の生活と福祉の充実、公正な県政の実現のための日夜にわたるご活躍に心より敬意を表させていただきます。

 この度、貴殿に質問書を差し上げたのは、小紙がインターネット版ならびに三月号(別添)で取り上げました県住川越笠幡団地建設計画について、その真相の解明にどうしても埼玉県自らが取り組むべきと考えたことによるものです。

 川越市大字笠幡中新町に十八年前、建設が計画されたとみられる(こうした表現をするのは、後述しますように県そのものが明らかにしないためです)県住川越笠幡団地は、国が保護動物に指定している稀少種のオオタカやアオミミズクが棲息する良好な自然環境破壊を心配した周辺住民の強い反対のため建設が見送られ、用地買収が終了した後、ずっと空き地のまま推移してきました。買収に八億七千六百一万五千九百二十円を要した県民財産たる八、四二三・二三平方メートルの土地は、約二十年にわたり「塩漬け」にされてきたのであります。

 しかし、この経過の端緒には、当時公務員の要職にあった二人の人物が県内の有力不動産業者や公共工事受注建設業者らと画策し、本来売却不能だった市街化調整区域に属する山林を県に高額で買い取らせるためにあらゆる手練手管を尽くした事実が背景にあったことを小紙は掴みました。その二人の幹部公務員とは、買収された土地の所有者の一人(当該土地の約半分を所有)であった当時川越市経済部次長の神田壽雄氏(現川越市議会議員)と元川越市助役で当該県住計画時に県住宅都市部長(昭和六十二年四月〜六十三年三月に在任、その後川越市助役)であった村上貞夫氏です。そして、この二人に協力し、他の業者を引き入れて短期間のうちに買収予定地の転売=土地コロガシを繰り返して価格を高騰させ、国土利用法や都市計画法違反の無届宅地開発を当該地で強行した上、県に対する買収の取りまとめを行ったのが郷土開発椛纒\取締役社長で現在埼玉県宅地建物取引業協会の会長を務める細谷金作氏なのです。

 詳細な事実経過については、別添の小紙三月号やインターネット版に掲載しました記事、公開質問書等を参照いただきたいのですが、ここにお示しした三名の人物を主要な登場人物にしての県住川越笠幡団地建設計画をめぐる不正劇の顛末は、およそ次のようにまとめることが出来ます。

@ 県住計画を統括する立場の村上氏と地主たる神田氏が共謀し、当該地への県住建設を決定させる(すべての行為の出発点であり、前提条件)

A 当該土地の価値を上げ、県住用地に適したものとするため、市幹部たる神田氏が隣接市道の拡幅を地元に根回しして陳情させ、考えられぬスピードでこれを事業採択させて着工させる

B 市道拡幅への布石を打つと同時に、細谷氏主導の下、該当する五筆のうちの二筆の土地を二〜四ヶ月間で転売を繰り返させ、当該土地全体の価格を高騰させる(土地コロガシ)

C 市道拡幅による評価額向上とあわせ、最終的に細谷氏の郷土開発鰍ェ取りまとめて五筆全体を当初地価(市道拡幅時の川越市による平米あたりの買収価格)の十一倍にあたる価格で県に一括買収させる

 以上の経過を経て、約九億円の金員が県財政から引き出され、件の企みに関係した者たちによって分け取りされたであろうことは、火を見るよりも明らかな事であります。

県民全体の総有的財産である自然環境を壊し、本来売却不能だった土地を県住用地とさせることで“金銭化”することを可能にするどころか、バブル経済時代にあっても禁じ手であった土地コロガシで当該土地の価格を法外な値段に吊り上げて貴重な県財政を余計に費消させる=しかも、この一連の犯罪的行為を、村上、神田の両氏は公務員として駆使できるあらゆる権能と知見をもっぱら私益追求の立場で駆使するという正に「法匪」というべき悪質性をもって成し遂げたというのが、半年を越える期間を費やして取材・調査し、その内容を発表するに至った小紙が確信している結論です。

埼玉県にとって重大なのは、以上申し述べたことが決して十数年前の過去の事案というべきものではなく、いまだ空き地として当該用地が残されていることに象徴されるように、県住川越笠幡団地計画は“凍結”された形で「事業継続中」であるということです。また、当該地で繰り広げられた土地コロガシの実態は、土地登記簿を閲覧すれば容易に確認できるものであり、公共用地として買収する側の埼玉県が気づかないことは有り得ず、責任ある立場の者の承諾を前提にした行政側の「暗黙の了解」があったとしか解釈のしようがないことも極めて重要な問題です。今日、貴重な県民財産となった土地が頓挫した形で「塩漬け」のままで置かれているのは、元幹部公務員の村上、神田両氏と県宅建業協会の現会長である細谷氏らの公金略取を狙った画策と、それを黙認した県の無為による結果というべきものであります。

悪質な企みのため拙速に進められた同県住計画は、周辺住民に事前の十分な告知も無く、豊かな自然を保全していくための配慮も無いまま強引に進められようとし、これに怒った近隣住民の大きな反対を受けて頓挫せざるを得なかったのです。現在、近隣の方々に対して県は同意の無いままの計画推進はしない旨の約束をされているようですが、これは当然のことです。こうした経過をもふまえるなら、村上、神田、細谷ら三氏の行為の犯罪性は今日も全く色あせたものとはなっていません。

小紙として不可解なのは、こうした重大性をはらむ事案に関わる問題であるのに、取材・調査の過程で埼玉県の担当部局は真相の解明に全く消極的であった事です。数次にわたる取材の中途、小紙は次のような質問を県住宅課に提出し、回答を求めました。

(昨年十月十七日付 県都市整備部住宅課事業調整担当者への質問)

お尋ねしたい項目について

 先日は、ご多忙中のところ貴重な時間を割いて取材に応じていただき、誠にありがとうございました。さて、小紙は引き続き川越市川鶴三丁目に隣接した県営住宅建設用地について、取材と調査を進めております。その中で、どうしても県側の取り組みの具体的内容をお聞きしなければならない事項が生じて参りました。

 明日、お会いいたします際には、是非下記いたします質問項目に沿って、お話を聞かせていただけますようお願い申し上げます。また、その際に関連した周辺事実等もお尋ねさせていただくことになると思いますが、その点もよろしくお願いいたします。

【質問項目】

@ 埼玉県が川越市大字笠幡字中新町に建設を予定している県営住宅について、事業計画の正式名称をお知らせ下さい。

A 上記事業は、具体的に何年の何月頃から計画が起案され、当該予定地の地権者に対して何年の何月何日に県側の買収意図が伝達されたのですか。

B この事業計画に関連して、こうした用地を県が買収する場合、用地の適否等について地元自治体関係者などに照会するのが通常だと前回の取材でご教示いただいたのですが、当該事業については川越市側との調整はどのように行われましたが。

C 小紙の調査では、当該予定地のうちの二筆の買収地(大字笠幡字中新町1672、同1678)について県が買収する以前に不自然な売買が同じ業者によって繰り返されていましたが、そのことを県は買収以前に調査していませんでしたか。

D 行政機関等が公共用地として取得を希望する土地については、事業の手続きの中で現状を固定するため、転売や利用態様を変更したり過分に価値を附加するような開発行為・築造が禁止、制限されます。大字笠幡字中新町の当該地については、何年何月何日付をもってこうした制限がかかりましたか。

E 当該事業が進捗する前後、県川越土木事務所長、県住宅都市部長を歴任した村上貞夫氏が川越市助役に就任しています。当該事業と同氏の関わりについて、ご教示下さい。

F いまだ当該事業は完成をみていませんが、今後の進捗見通しについてご教示下さい(事業は今日も継続中なのか、今後中断して違う計画に変更する可能性はあるのか、その他)。

以 上

 これらの質問事項は、いわば県が自ら行う事業について初歩的かつ基本的事項を問うたもので、どの項目についても容易に答え得るはずのものといえます。しかし、後日県の担当者から回答が得られたのは、前記のうち@とFについてのみ(名称は「県住川越笠幡団地(仮称)建設計画」、事業は「凍結という形で継続中」)で、後については「わからない」というものでした。いつが計画の起点かもわからない公共事業計画などというものが、常識的に有り得るのでしょうか。

 また、その後も文書開示請求で得た当該土地の買収契約書についても、細谷氏の郷土開発鰍ェ五筆全てを取りまとめて県に売却し補償金も一括して受け取っている点について、通常の公共用地の買収方式である「地権者それぞれとの個別交渉、個別補償」に沿わなかった理由についても「全くわからない」と回答し、こうした事例で必ず必要な地権者から交渉及び契約の代理執行者である郷土開発鰍ヨの委任状についても「存在しない」と県側は答えています。小紙から言わせれば、これは公金を使った異常な土地取引の証拠文書を隠匿・破棄したに等しい犯罪幇助行為としかみなしえず、埼玉県側の重大な責任を認識せざるを得ませんでした。

 既に前述した三氏らによる犯罪的行為については、小紙は把握した事実だけからも確信を持って公表し得る段階に至ったのでありますが、埼玉県自らが密接に関係しているこの事案に対して、真相解明に力を尽くすべきなのは以上、縷々述べさせていただいた事から明白なのではないでしょうか。当然、小紙は神田、村上、細谷の三氏に対して取材ならびに質問を行ってきましたが、いずれもまともな回答をせず、ひたすら言を左右して責任回避を図るか、面会すらせず文書質問にも答えないまま逃げ回るばかりです。小紙は、三氏のこうした姿勢もまた、取材と調査で把握された事実にいっそうの確証を与えるものと考えています。

 そもそも以上の事案が明らかになる端緒となったのは、県建設産業団体連合会の会長である島村治作氏が代表取締役会長を務める島村工業鰍ニ神田氏の癒着による私益追求を告発する小紙宛の投書でした。その後の調査で、投書の内容は事実であるばかりか、元県幹部の村上氏も現職時代に同社から自宅土地の提供を受けていたことまで判明しています。公共事業を発注する側の幹部が、受注側企業の団体代表とかかる癒着関係にあるのは許しがたい事実であり、先に指摘したように細谷氏が県宅建業協会の代表であることをも鑑みれば、正に小紙が取り上げた県住計画をめぐる不正事案には、埼玉県の業界団体代表が幹部公務員と共に揃い踏みした重大事案と言うべきものであります。かかる不正を、「遠い昔の事」として棚上げしてしまうことは、今後、埼玉県で厳正に綱紀粛正を図っていく上でも許されるものではありません。

上田知事に於かれては、ぜひ埼玉県にとって重大な責任問題である本事案の内容を受け止められ、左記にお示しする質問事項について事実を真摯に吟味され、完全なるご回答をいただけるようお願いいたします。かつて、民主党の衆議院議員として国政の場で公共事業における不正追及の先頭に立たれた知事が、現在自ら監督される県政上の問題についても果断にメスを入れられることを心から期待いたしております。 

【質問事項】

一、 小紙三月号並びに別添の神田氏、県宅建業協会役員宛公開質問書をお読みになっての上田知事のご感想をいただきたい

二、前記「お尋ねしたい項目について」の各項目について、正確な内容を関係者からの聴取などをふまえて調査し、いま一度明らかにしていただきたいが、どうか

三、県税約九億円を費消させ、いまだそれを「塩漬け」状態に置かせた本事案について、小紙による追及にまかせるのみならず埼玉県自らが事態を調査し、その結果を県民に公表すべきと考えるが、どうか

四、本事案で土地コロガシや違法な無届宅地開発行為などを推進した細谷金作氏は、県が監督権を有し行政実務の一部を委託している県宅地建物取引業協会の会長であるが、公益性を団体の第一の性格であることとし信頼を第一とする業界代表として氏が相応しいといえるのか、所見をお示しいただきたい

 最後に、上田知事に於かれては日頃の激務故にご多忙とは存じますが、政治にとって第一に重要なのは信頼、信義であることから、小紙が指摘しました問題について是非とも真摯に向き合っていただくことを心からお願いし、また期待させていただく次第であることを申し上げます。

  調査には、一定の期日が必要であろうことに鑑み、ご回答は本質問書送達の日より二週間後にいただけますようお願いいたします

以 上

 

判断不能? 政治家としての資質を疑わせる回答書

 質問書では、既に小紙がインターネット版連載で明らかにしてきた事実をふまえ、政治家としての所感を問い、県政上の問題として眼前の事実をどう処理するか認識を明らかにするよう求めたものである。

 しかるに、上田知事からの回答は、別紙のように自ら肉筆の署名をしたためたものながら誠に簡素というか、問題に向き合わない投げやりなものであった。

上田知事の回答は、以下の通りである。

行政調査新聞社  松本州弘様

 私あてに資料をお寄せいただき、ありがとうございました。

 ご指摘いただいた県住川越笠幡団地(仮称)用地買収について、早速、その状況を確認いたしました。

 当該用地は、県営住宅建設用地として、平成元年2月13日に購入したところです。計画を進める中で、中高層建築物による環境悪化を理由に、周辺自治会から反対の陳情がありました。その後、周辺自治会との話合いを続けてきましたが、ご理解を得るにはいたりませんでした。

 また、平成9年から実施された環境影響評価において、川越笠幡団地(仮称)の近接地にオオタカの生息が認められました。このため、オオタカの生息状況調査を実施してきたところです。

 これらの状況から、結果として長時間を要しています。

 質問事項についてですが、一及び四については、私が感想や所見をお答えする立場にはございません。

 また、二については、再度住宅課に確認しましたが、以前お答えした以上のことは、わかりませんでした。

 三については、前述した状況により、現在まで事業化されておりません。今後については、県営住宅用地としての活用が原則です。

 しかしながら、オオタカの生息状況調査により、建築物の高さを抑えることや、建設工事の工期を短くするなどの条件があります。

 このため、コストや採算面を検討しながら進めていきたいと考えています。よろしくお願いします。

平成18年5月25日

埼玉県知事 上田清司

 この回答をもって、何と評価すべきか?

「確認したけど、わからない」=こんな答えが県民から重大な行政上の権能と責任を付託された政治家の回答として、及第点にすら達していないのは明白だろう。

 不正を為した者たちは、その協力者をして可能なかぎりその痕跡を消し去ろうとする。巨額の血税を費やして購入した土地にからんだ事業が未完で継続すべきものであるのに、その経緯をたどる基礎的な資料が見当たらないということ自体が、事業にからんだ不正行為の存在を十分に予想させるものである。

 同じ県知事であっても、長野県知事の田中康夫氏による同様の問題に対する姿勢はまるで違う。かつて小紙は田中知事に対して苦言を呈してきたこともあるが、当初の公約として掲げていた「脱ダム」の理念に対して単に自然環境破壊に反対するという情念的問題だけでなく、「再現のない談合につぐ談合を呼ぶ公共事業構造の象徴」ととらえ、県が統括していた浅川ダム建設事業について談合の存在を第三者からなる委員会に諮問検討させ、仮に刑事訴追上の時効をすぎた事案で談合議事そのものの証拠がないにも関わらず、複数の状況証拠(入札調書での事業落札率やゼネコン内部文書など)で「談合が存在した」と答申されるや直ちに「不正で不要な事業である」として計画を中止させた。

「資料が見当たらないからわからない」では、利権の一物を腹にかかえた小役人の言い訳以上のものにならない。田中知事の姿勢こそ、政治家としてあるべきものである。田中氏同様に「市民の目線」を信条としてきた政治家である上田知事は、この点をいかに考えるのか。

 「私益追求のための出来レース」のような公道拡幅、土地コロガシを展開しての高価での用地買取が出発点となった事業について、「県営住宅としての活用が原則」「コストや採算面を検討しながら進めていきたい」と述べるなどは、信義を第一とすべき政治家としての矜持を投擲するに等しいもので、容認しがたい。上田知事には、尚真意を問いたい。

 また、県宅建業協会会長の細谷氏をめぐる問題について、「お答えする立場にありません」とすることは、政治家として知事として、二重に許されるものではない。第一に、同氏が公共用地としての買収が明らかな土地の価格吊り上げのため、不正な土地コロガシを主導した明白な証拠を示して政治家としての所見を小紙は問うたのであり、これに答えないのは政治家としての無為を表明したに等しい開き直りである。第二に、宅建業協会は県知事が許認可権を持つ業界の公益団体であり、公正な取引で住民利益を擁護すると共に県から付託される業務(義務研修や認定業務の実施)を遂行していることからも、こうした団体の長が業務に関係した不正行為をしていることについて、監督権を有する知事が「答える立場にない」というのは、全く道義的・政治的責任の放棄である。

 いずれにしろ、問題がここにいたった以上、上田知事の責任は重大である。そして、敢えて小紙は建言するが、この回答書は上田知事が県庁の官僚機構に対して全くコントロールが利かないことを如実に示したものであり、この際、本腰を入れて不正行為を隠蔽する県庁・公務員の悪弊を正す努力なしに今後の知事の政治的生命は時間の問題であるということを明白にしたものといえよう。

 防衛施設庁や地方自治体における官主導の談合の摘発、天下りや業界との癒着の弊害が叫ばれる昨今、小紙が17年前に県営住宅用地をめぐり繰り広げられた不正行為の疑惑を明らかにしたことが静かに波紋となって広がりつつある。既に他のマスコミからも問い合わせがあり、取材も始まっていると仄聞する。

 上田知事は、いま一度この問題への取り組みを見直さない限り、その政治的責任が問われかつての華々しい経歴に汚点を残しかねないと小紙は懸念を表明しておく。


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