
謎の内部告発文書が示す
全農埼玉県本部の「暗部」
先月、本紙にある内部告発文書が届けられた。差出人は不明である。
文書のタイトルは「全農埼玉県本部、小久保副会長、古谷本部長の悪事の数々について」。18ページにおよぶ文書には、全農埼玉県本部(JA全農さいたま)の「古谷本部長」および「小久保徳次副会長」……特に小久保副会長の全農さいたま「私物化」の様子が、14項目にわけられて詳細に綴られている。文書は無記名だが、ところどころに「我々職員は……」と記されていることから、本部長および副会長のコンビに強い不満を抱いていた全農さいたま職員の手によるものと思われる。
告発文書の内容を項目別に紹介すると、
1:小久保副会長が昨年の役員改選で中央会副会長に選出されたため関連組織の役員を辞任する際、辞任したすべての組織から退職金を手にした。無報酬の組織にも報酬制を持ち込み日当や旅費をふんだんに得ていた。
2:同副会長は自らの地位職権を利用し、農協と取引するメーカー各社からの接待三昧。また本部長が各メーカーに対しこうした行為の指示を与えている。
3:昨年の役員改選での取り決めに反し、全農埼玉ではこれまで通り常勤副会長制を維持する既成事実が江原会長により作られてしまった。江原会長は信頼できる人物だが、小久保副会長にかなり遠慮しているように見える。
4:同副会長は人事権、メーカーへの発注権を縦横に駆使し、現金ないし換金率の高い商品券等の「土産物」を贈る職員のみ優遇する。本部長は「副会長の土産は商品券にせよ」と指示。
5:全農埼玉本部の宿泊での会議には某ホテルを常宿としバックマージンを得る。
6:管理職や定年OB、同副会長に再就職の斡旋を受けたOBらが毎日、何の用事か同副会長に「詣でて」いる。
7:職員は本部長命令により同副会長の親戚の冠婚葬祭にまで参列させられ出費を強いられる。
8:同副会長らは全農埼玉発注の建設工事入札で業者にあらかじめ示し合わせた高い価格で落札させ、バックマージンを得ている。
9:同副会長らは組織内でのコンプライアンス(法令遵守)を積極的に推進するが、その真意は「コンプライアンス教育していても不祥事が起きるのは職員の問題」との認識を組織内外に持たせ、自らの行為に対する責任追及を回避するため。
10:監査室は無用の長物。副会長の悪事を見て見ぬふり。
11:同副会長らの甚だしい公私混同ぶり。冠婚葬祭から個人的な仕事まですべて全農埼玉から支出させる。
12:組織改編をめぐり従来の組織および会社を解散する際、どさくさまぎれに退職金等を取得。
13:新たな非常勤役員は一年もすれば本部長らに懐柔されがち。全農埼玉のことを真剣に思う新役員に期待。
14:同副会長らの出張旅費や日当の二重取り、役員の送迎に際し職員を整列させ最敬礼させるような古谷・小久保体制を批判し改革する、組織のためになる常識的な役員の就任を期待するか、司直の手による調査処罰を期待する。
といった内容である。
告発文書で問題とされている全農埼玉県本部副会長の小久保徳次氏は、埼玉中央農協の会長でもあった。だがさる4月25日、小久保氏は全農埼玉に対し辞表を提出。さらに5月2日には中央農協に対しても同じく辞表を提出し受理されている。
県中央農協に詳しい消息筋は本紙の取材に対し「著者が匿名なので何とも言えないが、書かれている内容は事実に近いだろう」と証言する。
「去年の12月のことだ。全農埼玉県本部に酪農ヘルパーというシステムがある。牛は毎日乳搾りしなければならないため、酪農家同士が互いに支援し合うためのシステムだ。この『酪農ヘルパー運営委員会』委員長も小久保氏が勤めているのだが、ここである問題が発覚した。同委員会は予算の半分を国からの補助金(平成14年から4年間)でまかない、半分は組合費なのだが、おかしなことに補助金をもらっていても支出がないことが会計監査によって明らかになったんだ。あわてた埼玉県本部は今年の1月、これまでの4年分に相当する金額を組合員に返還した。担当者いわく『支払い処理を忘れていた』というんだが、このことで全農(全国組織)から埼玉県本部へ監査が来た。このとき、この文書に書かれているようなさまざまな問題が露呈し始めたんだ」
別の農協関係者はこう述べる。
「全農埼玉が埼玉県経済連だった頃、東松山市に『武蔵野食品』という会社があった。トップは小久保氏だった。全農に合併することが決まり同社が解散する際には、役員の退職金支給割合はすべてあらかじめ決まっていたんだ。だが解散に際して3500万円の清算金が生じた。本来、全農に返還すべきこのカネは使途不明金として処理され、小久保氏の懐に入ったという話がある。全農の監査報告書が残っているから、もし使途不明金を小久保氏が本当に着服したのであれば、これだけでも背任行為だ」
平成14年(02年)には黄綬褒章も受章している小久保徳次氏は川島町在住。元農協職員である彼は平成2年(90年)5月に農協を辞職し組合長選挙にて初当選後、農協関連のさまざまな組織の長を歴任し、今年の春まで全農埼玉副会長および埼玉中央農協会長を勤めたことは前述の通りである。
「農協の生き字引」的人物である小久保氏が住む川島町。先頃、約40年ぶりに農業委員会委員選挙が行われた川島町……本紙はこの町をめぐる、さらなる不可解な動きに関する情報を入手した。本紙が来月号の「川島町特集」にて、読者諸氏にお伝えする次第である。■
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