行政調査新聞社 社主:松本州弘 埼玉県川越市

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【市職員公金横領事件】
本紙が予告した「もう一つの横領疑惑」
悪用し放題の「川越市民保養施設利用補助制度」
投書が指摘する「疑惑の理事」!

 川越市職員の公金横領事件にいよいよ本格的なメスが入りつつある。

 本紙はさる13日の記事にて、市職員公金横領事件をめぐって飛び交う憶測について触れた。「犯人」である小暮元職員個人は全額を懐に入れたのではなく、市の上級職員らとのいわば共謀関係にあったという噂、複数の現役市議が絡んでいるという未確認情報である。

 こうした未確認情報を後押しするかのように、百条委設置決議の際には「反対派」議員の存在が注目を浴びた。なかでも特筆すべきは、「金権腐敗」を最も過激に追及してやまないはずの日本共産党川越市議会議員団(佐藤恵士・川口知子両市議)が反対に回ったことである。

 佐藤市議は市青少年健全育成協会の理事であったため決議案こそ退席したものの、決議投票を「無記名方式で」と議会事務局に進言したことをはじめ、清潔・透明な党を以て自ら任じる共産党のベテラン市議とは思えない、不可解な動きを見せたのである。

 本紙はいま、この佐藤恵士市議に大注目している。その理由を以下でつまびらかにしよう。きっかけは本紙に寄せられた、一通の投書であった。

「青少年健全育成協会の事業には、保養施設利用補助制度がある。この制度を使った不正行為があるのではないか。一部の理事もこれに関わっている」……。

 投書の趣旨に衝撃を受けた本紙は、さっそく市担当課等への予備取材を実施した。その過程で、投書が示唆した疑惑は明らかな輪郭を描き始めたのである。

 川越市青少年健全育成協会は、@保養施設・戸田川越荘の経営、A川越市民保養施設利用補助制度、B青少年健全育成事業(埼玉県内キャンプ場送迎バス代金補助事業)の三事業を運営している。今回摘発された小暮職員の横領の舞台となったのは@だが、A……つまり「保養施設利用補助制度」についても調べてみると「不正の温床」となるべき要素に満ちたものであることが判明した。

 まして、この事業についても、実質的に担当していたのは、「横領犯」小暮浩職員だったのである

「保養施設利用補助制度」とは?

「川越市民保養施設利用補助制度」とは、川越市が契約した施設に川越市民が宿泊した場合、宿泊費のうち一定額を補助する制度である。川越市民はもちろん、川越市に登録している青少年団体もこの制度の対象となる。

 川越市が契約している施設は以下の表の通りである。

契約先 (2005年度の契約先)

新潟県村上市瀬波温泉
瀬波グランドホテルはぎのや 0254-53-1212 椿の宿 吉田屋 0254-53-2145
大和屋旅館 0254-53-2175 若林 0254-52-5881
瀬波ビューホテル 0254-53-3211 大観荘 せなみの湯 0254-53-2131
夕映えの宿 汐美荘 0254-53-4288 旅館静雲荘 0254-52-1766
ホテル瀬波観光 0254-52-7000 旅館 大清 0254-53-2522
料理旅館五泉屋 0254-53-5000 和楽旅館 0254-53-3187
新潟県新発田市
割烹旅館 多奈可や 0254-41-2013 民宿 松原館 0254-41-2768
割烹の宿 より路 0254-41-4311 渚の宿 マルシン 0254-41-4224
海の家 かみさいや 0254-41-2593 海の家 やまと 0254-41-3903
栃木県那須郡馬頭町
元湯東家 0287-92-3355 栃木の宿 いさみ館 0287-92-4126
かみの湯荘 0287-92-3537 小口館下の湯 0287-92-3184
旅館 ささや荘 0287-92-3150 城の台荘 0287-92-4311
ペンション ひろせ 0287-92-1090 南平台温泉ホテル 0287-92-3211
ホテル 美玉の湯 0287-93-0811    
棚倉・秩父・両神・馬頭
ルネサンス棚倉 0247-33-4111 秩父ミューズパーク 0494-22-8111
国民宿舎 両神荘 0494-79-1221 馬頭グリーンヒル(馬頭町青少年旅行村)キャンプ場 0287-92-3351
キャンプ場(秩父郡両神村)
両神村営薬師公園ロッジ 0494-79-0043 両神村営第1ふるさと村 0494-79-0043
両神山麓キャンプ場 0494-79-0155 おくちちぶ両神キャンプ場 0494-79-0300

 市が契約した、これら民間の旅館、民宿、ペンション、キャンプ場等に宿泊する市民に対して、ひとり年一泊につき数千円が補助される。具体的には大人3,000円/子供2,000円〜大人5,000円/子供3,500円(新潟県村上市と紫雲寺町・7〜11月期)の補助が受けられる。

 利用の方法は簡単である。まず希望する宿泊施設に予約した上で、川越市の青少年課に申請し、利用補助券を発給してもらう。宿泊の際はこの利用補助券を持参する。すると、宿泊先で記載された額面分が、現地精算の際に割引されるわけである。

 川越市が市民のために厳選した、選りすぐりの温泉。そこに割引価格で泊まれるとなればこの制度、市民の福利厚生を考えた、何ともすばらしい施策というべきだろう。事実、川越市民は大いに利用すべき制度である。

 だが、「利用価値」が大きいのは、市民だけではないのだ……。

保養施設利用補助制度の典型的「悪用マニュアル」

 宿泊した市民が持参した「利用補助券」は、個々の宿泊施設又は旅館協同組合が月毎にとりまとめ、川越市青少年健全育成協会に請求し、あらかじめ割引いた額に相当する金額の支払いを受けることになっている。

 ところがこの制度には大きな問題がある。利用補助券が発給された後、それが正しく使用されたかどうか、発給側(川越市側)は、何の確認もしていないのである。

 本紙はこの制度に関し、市と各施設とが結んだ契約書を入手し、念入りにチェックしてみた。だが利用補助券の一般的取り扱いについての取り決めこそあれ、双方に対し何らかの後追いの確認義務を課す条項は一切、存在していない。これでは、不正はやり放題となる。

 この制度を悪用することにより、どのような不正行為が可能となるのか?ここでは典型的な例を二つ挙げよう。

@ 宿泊先旅館等と結託した“カラ宿泊”

 あらかじめ関係の深い宿泊先旅館と話を合わせ、予約確認を青少年健全育成協会事務局に電話させておいて利用補助券を発給させ、それを旅館に送り、宿泊はせずに補助券を買い取らせる。

 補助券の額面から手数料分を差し引いた分をバックさせれば、宿泊先旅館も共に大した労もなく補助金を引き出すことができる。特に7〜11月期に大人100人の団体旅行を新潟県在の当該施設で組んだことにすれば、50万円のカネを手にすることが可能だ。この不正は、法的に義務化された宿帳記載の宿泊者名との照合さえあれば、発見することができるが、こうした確認措置は一切取られる仕組みになっていない。

A 旅行業者が団体旅行割引の一環として利用

 旅行業者が市内在住者を対象にした団体旅行に利用補助券を使い、額面分を宿泊先と利益として分け合う場合。こうすれば、業者側は「団体割引」適用を補う利益補填が可能となる。これは、市民による自主的利用がタテマエの制度を利用した営業行為で、趣旨に反するものだが、宿帳への記載もされるのでチェックで発見することが難しい。

 おまけに「個人やファミリー利用が主だ」と市側が主張しても、利用者名簿の提出は団体で旅行する場合、業者に委託してしまうことがあり得る。仮に業者(特に市内業者)が利用補助券の申請を代行したとしても、それが利用者の都合によるものなのか、業者による営業利用によるものかを区別できるはずがないのだ。事実、本紙の取材に対して市側は、業者による利用があることを認めている。

 他にも「市内在住者の名義貸し」による補助対象外者の利用や、同様手口を@と組み合わせた“カラ宿泊”による補助金欺取も可能だ。

 読者諸兄は、「まさか、そんなことが…」と思われる向きもあるかもしれない。しかし、実は上記の手口は最近、全国各地で摘発される地方公共団体等での“裏金づくり”にも利用された典型的な手法なのである。こうした補助制度は、職員共済制度にも含まれている場合も多く、労働組合その他がそれを悪用して“カラ旅行”を組み、交通費等に対する助成も含めて“打ち出の小槌”として使うケースが全国で後を絶たないのだ。

 いずれにしろ、こうした不正を行うには、宿泊先との連携が無ければ不可能だ。その可能性はあったのか? 「あった」というのが、本紙の取材結果だ。それは、新潟県の二つの補助対象施設所在地における不自然な利用状況や、「海の家廃止」の代替措置としてこれらの地域が指定対象となったこれもいささか理解不能な経過である。

 この不可解な事実の積み重ねの中に、一貫して登場し重要な役割を果たした理事がいる。

「海の家」廃止の代替措置検討が始まった平成6年度以来、今日までの長きにわたって理事の席を占める共産党の佐藤恵士市議会議員である。

「車で5時間」の遠隔地を指定する不自然さ

 本紙は、利用補助が適用される施設の宿泊状況等を仔細に調査する中で、不思議な思いが浮かぶのを否めなかった。利用者がトップクラスに多い新潟県村上市の瀬波温泉は、関越自動車道等を経て自動車で5時間前後かかる遠隔地である。

「かつて契約していた海の家の代替であることから、7月から11月の高補助額を海の家と同様にとった」と市担当者は説明するが、釈然としない。そんな措置をとって遠隔地からお客を呼び寄せてくれる瀬波温泉の方では大歓迎だろう。

 だが、瀬波温泉だけはなぜか、個々の宿泊施設ではなく瀬波温泉旅館協同組合が、川越市青少年健全育成協会と指定保養施設利用契約書を締結しているのである。利用補助券の取りまとめと川越市側への精算請求も、ここでは旅館組合が一括して行うことになっている。

 しかし、なぜ新潟の……しかも車で5時間もかかる遠隔地なのか?その答えはすぐに見出すことができた。

「前回海の家を見たが、10年くらい前ならあのぐらいの施設は市民に歓迎されたと思う。今後、受け皿を決めてからということであれば、交通の便がいい新潟方面で検討し、海の家を廃止する方向がよいのではないか」―平成6年度第二回理事会(平成6年9月1日)の議事録に記録された佐藤恵士理事の発言だ。「新潟」を対象にするとの発言は、全ての理事を通じて初めてのもので、他の理事の大多数はこれに同調した。

 平成7年度第二回理事会(平成7年9月1日)では、上記の佐藤理事による提案がより具体的な方向まで進められたことが示されている。事務局サイドで新潟県の各地が調査され、その報告を検討したのである。この際も佐藤理事は積極的に発言し議論をリードしていった。

 事務局は新潟県下の7市町について調査した結果を、地理的条件も含めて資料化して配布した。議論の前半で、佐藤理事はやや唐突に次のような発言をしている。

「一定額の補助をする場合の金銭の流れの調査がないが、その辺の相手の対応は調査したのか」

 要するに補助が出された場合のカネの流れを確認したのであるが、これに対して事務局はこう答えている。

「村上市は、その辺の話も含めて調査してあり、観光協会がまとめて請求してくれる旨の確認はしてあります。又、紫雲寺町に関しては、組合がないので、個々の民宿には、承諾を得ている」

 こうした説明に「我が意を得たり」とばかりに、佐藤理事は次のように発言する。

「金銭の流れは大切なので、それに対応してくれるところでないといけないと思う」

 佐藤理事は、個々の旅館や民宿が利用補助精算をするより、旅館組合がとりまとめて一括して精算することが望ましいと議論を誘導しているのは明白だ。だが不可解である。こうしたとりまとめは、利用者にとっての利便性には関係がない。せいぜい、精算金として補助を支払う協会側の事務負担をやや軽くするだけだが、その代価として不明朗さが入り込むことにつながりかねない。

 いや、佐藤恵士理事はそれを望んだのではあるまいか?

 結局、この理事会では平成7年10月26〜27日に、なぜか村上市の瀬波温泉と紫雲寺町を、理事会として現地視察することを決定している。補助指定することを前提とした視察である。ここまでの経過を見る限り、佐藤理事と協会事務局をプレイヤーとした「出来レース」の感を深くせざるを得ない。

一部旅館に宿泊者の大多数が集中する瀬波温泉

 新潟県の二つの遠隔地(川越市から道路で向うと、紫雲寺町は瀬波温泉のやや手前に位置しているため、“アリバイ”的に指定された感がある。実際の議事録を追ってもそのようなニュアンスだ)が補助指定施設の所在地に決定された経過に加え、特に瀬波温泉での宿泊利用には非常に不自然な状況が見られる。

 同旅館協同組合加盟の12施設のうち、毎年の利用者の8割程度が3つの施設に集中しているのである。これでは、協同組合に取りまとめさせる意味などあまり無いのではないか。

 まして、利用者の半数近くが毎年たった一つの旅館=「夕映えの宿汐美荘」に集中しているのだ(平成16年度の瀬波温泉利用者871名のうち427名、17年度は同696名のうちの299名)。

 そしてこの旅館の経営者こそが、まさに瀬波温泉旅館協同組合の理事長なのである(同理事長は、補助指定の検討が始まった頃から交代していないことを市担当課は明らかにしている)。

指定保養施設宿泊状況(H15-H18)
(クリックしてダウンロードしてください。PDFファイル・ 約400KB)

 瀬波温泉旅館協同組合加盟で補助対象とされる宿泊施設には、数年にわたり川越市の補助制度利用者数がゼロで推移したところ、あるいは平成13〜17年度においてずっと利用者数がゼロだったところもある。組合と補助する側との間の契約としては、いささか不自然といわなければならない。理事長が経営する旅館への利用が集中していることとあわせ、その実態に疑惑のまなざしが向けられるのは、むしろ当然といえよう。

 本紙はここで、投書に記された具体的な氏名を明らかにする。

 投書の告発が指摘した、不正行為への関与を示唆する「疑惑の理事」とは、他でもない、共産党の佐藤恵士市議なのである。投書には佐藤市議の氏名がはっきりと記されているのだ。本紙はこれが事実かどうか、可能な限り調査を行った。その過程において明らかになったのが、先に記した補助金利用の「典型的悪用ケース」なのである。佐藤市議への疑いは濃厚であると言わざるを得ない。

 しかし、捜査権を持たぬ単なる一地方紙である本紙が、現状で追及できるのはここまでだ。個人情報が法的に保護されている以上、真の宿泊者名簿と利用者の照合を行うことができるのは行政または司法・捜査機関である。職員の巨額横領の真相究明は、同様な悪質行為の再発防止という目標に到達させなくてはならない。そして、調査すべき対象は周辺にまだまだあるということなのだ。

【参考資料】

平成17年度 経営状況説明書 (約660KB・PDFファイル)
(舟橋市長が提出した、財団法人川越市青少年健全育成協会の経営状況)

 

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