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鳩山糞尿譚
ニュータウン溢水事故で明らかになった真実
下水終末処理場隠しバイパス開放で汚水垂れ流し
引き継ぎ確認を怠った「下水道組合」に重大責任!
度重なる溢水事故
原因は「誤接続」ではなかった
7月19日の午後。埼玉県比企郡鳩山町石坂の路上で起きた奇妙な現象を、通行人たちは激しい雨の中、鼻をつまみながらうんざりした様子で見つめていた。あちこちのマンホールから、噴水のような勢いで下水が噴き出したのである。悪臭に満ちた、4回目の溢水事故だった。
下水は鳩山ニュータウンからやってくる。この下水は「毛呂山・越生・鳩山公共下水道組合」(管理者=小沢信義・毛呂山町長)の処理施設へと流れ込む。だが5月から7月にかけての降雨で、設置された中継ポンプの処理能力をはるかに上回る量の汚水が下水本管に流入。溢水した汚水が路上のマンホールから吹き出したのである。
事故の原因について、鳩山町が最初に考えたのは雨水管と下水管との、誤接続の可能性だった。同町は6月末、すでに臨時議会を開催。ニュータウンの下水管に煙を送り込み誤接個所などの調査の実施を決めるとともに、町議会は特別委員会を設置し、終末処理場の管理状況などの実態調査を行うことを決定。
同町の「ニュータウンの送煙調査」は7月末までに完了した。その結果、各世帯の雨どいや雨水升などから間接、直接的に煙が確認されたのは計656カ所。このうち、各世帯敷地内など民有地は計575カ所あった。しかし、雨水が大量に流入するような誤接続個所は発見できなかったのである。
「流量データの誤り」と、地中に隠された「うんこバイパス」
溢水事故を受けて開かれた臨時議会で、保積力・鳩山町長は「鳩山町に原因があるので調査費は鳩山町で負担する」との立場を表明した。鳩山町から公共下水道組合に送られた流量データに誤りがあったため、との説明である。
公共下水道組合の処理施設が稼働しはじめたのは今年の4月。それまで約30年の間、処理を行っていた「鳩山町地域下水終末処理場」から引き継がれたのである。組合は終末処理場から下水道組合の処理施設までの距離約5キロに、02年から今年3月まで約35億円をかけ下水管を敷設し中継ポンプを設置。今年度から運用を開始した。
溢水事故は、事実上その直後から断続的に起き始めた。「終末処理場」の流量データを元に組合がポンプ等を設置したものの、そのポンプでは処理能力の不足が露呈。大量の雨水流入を招く誤接続が発見されなかったため、鳩山町のデータそのものに誤りがあったと考えられたのだ。
鳩山町が組合側に渡したのは、なぜ現実の流量を大幅に下回る「誤ったデータ」だったのか。
この謎の背後にはまず、鳩山ニュータウン開発業者による、不正ともいえる下水処理施設設計がある。さらには終末処理場を鳩山町に引き継ぐ際、開発業者と当時の町長との間に交わされた、濃厚な「密約」の匂いがある。そうしたずさんな設計と密約により、この終末処理場は約30年間、雨量の多い日は汚水浄化の役割を結果的に果たしてこなかったことが歴然としてくる。
つまりこの終末処理場から越辺川には過去30年間、大雨のその都度、人糞を含む汚水が「生」のままで垂れ流されていたのである。
30年以上にわたる人糞垂れ流し、そして溢水事故につながる鳩山町側の「過小データ」の原因は、終末処理場の地中密かに隠された、たった一本のバイパス管であった……。
「鳩山第2中継ポンプ場」ができるまで
ここで鳩山ニュータウン(世帯数約3200)の下水処理の歴史について、簡単に触れておかねばならない。
55年(昭30年)、比企郡亀井村・今宿村が合併し鳩山村が発足した。それから13年後の68年(昭43年)、鳩山村に新興住宅地の建設計画が持ち上がった。当時の開発主は(株)丸金建設。
71年(昭46年)1月、事業者が丸金建設から日本新都市開発へ移り、同社は2月にニュータウン建設に着工。3年後の74年(昭49年)、この新興住宅地は「鳩山ニュータウン」として初めて入居者を受け入れた。入居開始時の規模は住宅202棟だった。
鳩山ニュータウンの建設はその後も継続した。着工時には村制だった鳩山は82年(昭57年)に町制を施行。日本新都市開発がニュータウンの敷地140ヘクタールを開発し終えたのは97年(平9年)のことだった。この年、5期を勤めた宮崎前町長の任期も終了している。
入居開始から約30年以上、鳩山ニュータウンの下水処理は日本新都市開発が建設した「コミュニティプラント」が行ってきた。94年(平6年)には、「コミュニティプラント」の管理運営が日本新都市開発から鳩山町に移管。プラントは「鳩山町地域下水終末処理場」となった。
だが鳩山町は「終末処理場」の実際の管理業務を、日本新都市開発の傘下企業に委託していた。鳩山新都市開発である。同社は後にニューシティリビング→鳩山プロパティサービスと社名を変えるのだが、鳩山町と契約しているのは、あくまで「鳩山新都市開発」だ。
そして今年4月、終末処理場そのものが「毛呂山・越生・鳩山公共下水道組合」へと引き継がれた。ニュータウンからの下水は終末処理場を接続地とし、県道岩殿・岩井線下に敷設された約4キロメートル幹線管により、新たに着工された「鳩山第2中継ポンプ場」へ送られ、さらにそこでポンプアップされ、組合処理場までは圧送菅で送られる。
溢水事故の直接的原因はこの「鳩山第2中継ポンプ場」の処理能力にあった。つまり鳩山町側からのデータを元に建設した中継ポンプ場が能力不足であったため、雨量の多い日には、下水が逆流することで溢水事故が起きたのである。
鳩山町から下水道組合への引き継ぎ工事……「鳩山第2幹線工事」に要した費用は総額34億8400万円。このうち国の補助金は17億9600万円(公共下水道費補助金・国交省)である。下水道組合の運営は毛呂山・越生・鳩山3町の地方債でまかなわれている。組合予算は3町の面積で按分されるため、毛呂山町の負担は58%を占める。
糞尿バイパス管のバルブは常時「開きっぱなし」
不正工事と意図的な運用
結論から先に言おう。日本新都市開発が建設した「コミュニティプラント」は不正工事であったと思われる。ニュータウンからの実際の汚水処理能力よりはるかに規模の小さな施設を建設し、予測される「過負荷」に対しては、施設内部の中継ポンプ手前にある第1汚水槽内部に密かに設置された450mmのバイパス管で直接、越辺川に逃がしてしまうよう、あらかじめ設計されていたのだ。
94年(平6年)、日本新都市開発から鳩山町に「コミュニティプラント」が移管される際、本来なら業務引き継ぎ作業に生じるはずのデータの再調査や検証等は、まったくと言っていいほど行われなかった。図面の確認さえまともに行われなかったのである。
鳩山町の小峰孝雄町議は自身のニュースレターで、興味深い指摘を行っている。それによると「コミュニティプラント」が国から事業認可された際の、1日あたりの最大汚水量(4900トン)と計画時間最大汚水量(7200トン)。小峰町議は鳩山町から下水道組合に渡されたデータの中で、「過去数年間の最大汚水量発生日に7000トンに達する汚水が発生」したことを指摘し、「鳩山町から渡された『誤ったデータ』ですら、鳩山第2中継ポンプ場の能力をはるかに上回る水量」と述べている。
換言すれば、終末処理場内の中継ポンプは約30年間、過負荷に次ぐ過負荷に耐え続けてきた、ということになる。
ではなぜ終末処理場の中継ポンプは酷使に耐えて「無事だった」のだろうか。答えは明らかだ。雨量の多い日に限って中継ポンプは、汚水をまともに処理しなかったからだ。
引き継ぎ図書すら確認されなかった?
宮崎前町長と日本新都市開発との「密約」疑惑
終末処理場の地中深くには、汚水本管と放流管のあいだに設置してある開閉バルブが常時開放されたままの、一本の「バイパス管」があった。太さ450mmのこのバイパス管は、本来なら浄化処理された水が流れる「放流管」に直結していたのである。この菅のおかげで終末処理場は、大雨による増水時にはその処理能力をまったく果たすことなく、バイパス管を通じて汚水は生のまま越辺川に、意図的に流されていたのだ。
<汚水管からのバイパス管は直接、放流管に接続されていた。これでは、下水処理施設が何のために存在するのか意味がないではないか> |
バイパス管による「生汚水の放流」は明らかに意図された行為だった。バイパス管の開閉をコントロールする手動式バルブは開放されたまま、何とアスファルトで埋められていたからである。いつ埋められたのかは定かではないが、おそらくは「コミュニティプラント」稼働時からのものと思われる。
溢水事故→鳩山町データの信憑性が問われるまで、このバイパス管の存在は誰にも気づかれることがなかったという。
鳩山町はバイパス管について本紙にこう答えている。
「バイパス管が放流管に直結されていた実態については、(鳩山町から下水道組合への)引き継ぎの際、もはや使わない『終末処理場』を清掃した際に、初めて気がついた」
だが、日本新都市開発から鳩山町へ終末処理場が引き継がれる際、引き継ぎ図書の中にはバイパス管の完成図(昭和55年9月)が存在している。鳩山町は引き継ぎ図面までをも見落としていた、というのだ。
「バイパス管は施設保護目的で設けられたものと思っていた」と弁明する鳩山町。だが下水道処理施設の本来の目的とは、河川に「生の汚水」を流さないようにすることだ。にもかかわらず終末処理施設への導入口にバイパス管を設置し、過負荷時(増水時)の逃げ道として、処理施設により消毒され希釈された状態で河川に流す「放流管」に直結していたのである。この事実一つをとっても、この終末処理場(コミュニティプラント)は極めて不正常な下水道処理施設だ。日本新都市開発によるコミュニティプラントの設計と施工は、当初から下水処理機能を十分に満たしていなかった不正工事であったことを、まざまざと見せつける。しかもバイパス管のバブルは開きっぱなしのまま、埋められていたのである。
94年(平6年)、日本新都市開発から鳩山町に「コミュニティプラント」が移管される際、データの確認および再調査は、まったくと行われなかった。これは鳩山町が本紙に明言したことである。
公共施設となるべき大規模な設備が民から官に引き継がれる際、綿密な図面確認さえ行われなかった、ということが何を意味するのかおわかりだろうか。当時の鳩山町行政のトップと日本新都市開発との間に、引き継ぎの際の確認行為を意図的に排除する、癒着の可能性が濃厚に存在するのである。
引き継ぎの際に「コミュニティプラント」の処理能力不足が設計段階から露呈すれば、日本新都市開発が負うべき処理場再建の費用は膨大なものとなる。同社から鳩山町トップには、そのリスク回避に十分見合うだけの多額の「カネ」が流れたはずなのだ。
溢水事故の全責任は下水道組合にある
鳩山町と意思疎通を深め事態の収束を!
「隠された糞尿チャンネル」……汚水管と放流管とを結ぶバイパス管が長年にわたり開放されたまま存在した事実について、その責任の所在が現在の鳩山町制にあることはいうまでもない。日本新都市開発からの引き継ぎの際に、確認作業をしなかったからである。
しかし今回、鳩山第2中継ポンプ場の処理能力オーバーにより発生した溢水事故の責任は、誰が負うべきなのか。
鳩山町は終末処理場を運営する際、実際の管理業務は鳩山新都市開発(後にニューシティリビング)に委託していた。鳩山町は毎月、月報という形で同社より運営データを受け取っていた。
鳩山町は組合側にこれらデータ(平成12年4月〜平成14年12月分)を提出しているのだが、驚くべきことに、データの引き渡しは鳩山第2中継ポンプ場への引き継ぎ後のことだったという。鳩山町は委託業者からのデータをそのまま組合側に渡した。
つまり、である。「毛呂山・越生・鳩山公共下水道組合」という、町行政から独立した下水道の専門集団は、民間業者からのデータを鵜呑みにしたまま鳩山第2中継ポンプ場を作ったということなのだ。
本紙の確認に対し組合側はこう述べる。
「データにより新たに何かを設計した、ということはありません。あくまで(ポンプ場の)計算によるキャパシティ確認のために、鳩山町のデータを用いたのです。データの検証はしていませんし、現地調査も行っていません」
あまりにずさんな引き継ぎというべきではないか。かつて鳩山町は日本新都市開発のデータに対し確認検証を行わなかった。そこに同社と当時の町政トップとの癒着の可能性があったことは先に記したとおりである。
だが今回、組合もが同じ轍を踏んだ。データの確認作業も再調査もしないまま、鳩山町のデータを「はいそうですか」とばかりに受け取り、いざ溢水事故が発生すれば鳩山町の責任を声高に主張するのである
とんでもない話だ。
組合が新たに建設した鳩山第2中継ポンプ場は、公共工事の産物だ。3町の税金を予算とし、入札を経て指名業者に請け負わせる工事である。ならば施工する事業の事前調査が、厳密に行われなければならないのはいうまでもない。
管渠工事とポンプ場を含めて約35億を要した「鳩山第2幹線工事」のうち、認可設計(国の認可をとるための設計)は(株)光エンジニアリングが、実施設計は(株)日本水工コンサルタントが担当している。これら設計業者は、当然行うべき現地調査を放棄し、検証も再調査もせず、ただ与えられた資料に基づいて設計した、ということである。こうしたずさんな設計もまた、最終的には発注業者(下水道組合)がすべてを負うべきなのだ。
下水道組合は本紙にこう漏らした。
「私たちは同じ行政機関として、鳩山町を信じていたんですがね……」
下水道組合は職員を独自採用する。下水道組合とは、その名の通り下水道の専門家集団であるはずだ。プロの集団の仕事は徹底的に検証されたデータに基づいて業務を遂行することである。「信じること」ではない。
「毛呂山・越生・鳩山公共下水道組合」は今回の溢水事故に関し、全責任を負わねばならない。その「責任」とは鳩山町との意思疎通を密にしつつ、組合主導で事態を建設的な方向に進めていくことだ。■
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