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2008年北京五輪の舞台裏


 国際オリンピック委員会(IOC)はさる7月13日、2008年夏期オリンピック開催都市を北京に選んだ。

 北京はかつて、2000年五輪誘致に失敗した苦い経験を持つ。江沢民が国家首席に就任して間もない1993年(平成5年)9月、北京は2000年五輪開催地の最有力候補地とされ、最初の3度の投票はすべてトップの票を得ながら、最後の4度目の投票でシドニーにわずか2票差で逆転を許した。1989年(平成元年)の天安門事件の人権弾圧イメージが尾を引いたことが敗れた原因だとされた。

 今回は見事に北京がトップ当選を果たし、大阪は僅か6票しか得られないという、見るも無惨な敗北だった。大阪市民はこの結果 に案外冷やかで、また日本中も全体として、たかがスポーツの祭典ではないかといった冷めた見方をしているように思われる。

 かつて1936年(昭和11年)、第11回オリンピックがベルリンで開催された時、ヒットラーはこれを政治宣伝に利用しただけでなく、アテネからベルリンに繋ぐ聖火のコースを設計することで、ヨーロッパの地政を実地検分したことからもわかる通 り、オリンピック開催の陰には重大な政治レベルでの争闘がある。
 今回の2008年北京五輪決定のウラには、中国共産党政府とロシアとの巧みな連携が見える。

 北京共産党政府にとって、五輪誘致のマイナス条件は前回同様、人権問題である。とくにチベットや新疆ウイグルの独立運動が展開されたら、得票は一気に下落する。事実、IOC総会が開かれるモスクワには、チベット独立運動支持派やロシアの人権擁護派の団体が入り込み、デモが行われるという情報も流れていた。

 これらを厳しく取り締まったのがロシア政府だった。ロシア警察の取締り、デモ阻止の動きは異常なほどだったと伝えられる。このため各国のIOC委員は反北京、人権擁護といった雑音をまったく聞くことなく、総会に臨んだのである。

 モスクワでのIOC総会で北京五輪が決定した2日後の7月15日、北京政府の江沢民はモスクワに現れ、プーチン大統領と新たな「中ロ条約」(善隣友好条約)を締結、調印している。表面 的には米国のMD(ミサイル防衛)構想の牽制が主な狙いとされているが、同時にこの条約では中国=ロシア間の懸案事項だった国境問題が解決されている。

 とくに中国東北部(旧満州)とロシアとの国境問題は複雑で、旧満州一帯には1億人の中国人が住み、ロシア越境が日常茶飯事のように行われている。対して、この国境付近にはロシア人は僅か100万人しか住んでおらず、実質的に中国が国境を大きく北に押し上げている状態だった。中国はロシアに対して大幅な譲歩をした形でこの国境線を確定したのだが、そこには江沢民の北京五輪誘致への並々ならぬ 決意が感じられる。

 さらに五輪誘致を軸として、北京政府とロシアが共闘したことが、米国ブッシュ政権に与えたインパクトは大きかった。

 五輪誘致は単にスポーツの祭典場所選びではなく、国際政治のさまざまな駆け引きの場なのである。そう考えたとき、大阪五輪誘致運動がいかにだらしなかったかが見えてくる。

 大阪五輪誘致運動は、一切の国際的政策を排除する一方、次期IOC会長と噂されていた金雲龍(IOC理事)だけに擦り寄るという不思議な活動を展開したのだ。

 金雲龍(67歳)とは韓国民主党の国会議員でもあり、旧KCIAの主力メンバーだった人物。金大中の北朝鮮訪問(南北会談)にも同行して金正日にも会っている。金雲龍はまた韓国テコンドー界の立役者でもあり、わが国テコンドー協会との繋がりも密だ。

 情報通によると、「金雲龍が使うカネのすべては日本から流れている。金がIOC会長を目指して莫大なウラ資金を動かしているという噂もあるが、その資金はすべて日本から持ち出したものだ」。

 実際に金雲龍は6月25日に東京千代田区のパレスホテルで出版記念パーティーを主催、ここには八木祐四郎(JOC会長)や、NHKの海老沢、日本TVの氏家など政財界から500人以上が集まったが、この会費1人1万円は全額ソウルに持ち出されている。NHKとしては2002年の日韓ワールドカップの放映権の問題もあり、金雲龍の求めには今後も応じざるを得ないといったところか。

 日本テコンドー協会の丸山会長も、大阪五輪誘致資金として3000万円を集め、これをソウルに運んだという。この3000万円は、ほんらいなら民間企業から集めるものだが、この不況下に民間がカネを出資するわけはなく、闇世界から調達されたとの専らの噂だ。

 ところが、モスクワのIOC総会では、大阪は僅か6票しか獲得できなかった。そのうえ、次期会長候補No.1と見なされていた金雲龍には、会長選出選挙に対する違反行為の可能性が報道され、結果 的に金雲龍が次期会長になることは見送られた。

 金雲龍自身は、「サマランチに嵌められた」と嘆いているというが、金雲龍に嵌められた日本テコンドー協会や大阪五輪誘致運動は、いったいどこに文句を言えば良いのか?

 あらゆる舞台で国際政治感覚の無さを暴露する日本。参議院選後の小泉純一郎首相、田中真紀子外相の活躍に期待することにしよう。

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