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〜特別編〜日本人こそ必見の少林寺武術
ドキュメンタリー・ビデオ『嵩山少林寺』


ドキュメンタリービデオ『嵩山少林寺』
ドキュメンタリービデオ
『嵩山少林寺』
(54分/カラー/デジタル・ドルビー・ステレオ)
販売 ミュージアム
価格 4800円(DVD)/6800円(VHS)
全国ビデオ店、書店で発売中。
インターネットでも購入可能。

 空手に覚えのある小紙若手記者が興奮して編集部に駆け込んで来た。手には1本のビデオテープ。それは中国少林寺の武術を記録したというドキュメンタリーの映像作品だった。

 小紙はこれまで商業主義的な宣伝に加担したことはなく、今後もその主義に翻意はないが、この映像作品に関する限り結果的に宣伝行為と言われても仕方があるまい。なにしろ、それくらいインパクトのあるドキュメンタリーなのである。

 ドキュメンタリー『嵩山少林寺』(すうざんしょうりんじ)は、中国河南省鄭州にある仏教の禅寺・少林寺の、特に武術に焦点を置いて作られている。

 少林寺の武術、少林拳といえば、香港アクション映画や拳法漫画などで世界中に知られている中国武術の代名詞でもある。しかし、この少林寺と少林寺武術の真の姿は、これまでほとんど紹介されていないという。

 製作資料を取り寄せてみたところ、日本でよく知られる少林寺拳法は、少林寺武術とは技術的な関連なく、60年前、中国武術を基礎としながらも日本人が独自に開発した武術であることが判る。

 このドキュメンタリー映像によれば、少林寺武術、少林拳はすべて「気功」に基づく禅宗仏教の修行の過程であるというのである。

 そして、少林寺の中で特に武術に優れた僧人たちによって組織された集団が「嵩山少林寺武僧団」であり、彼らの姿は1500年におよぶ少林寺の歴史上、これまで公式に公開されたことがないというのである。

 小紙でも裏付け取材を試みたところ、これまで世界中で「本物の少林寺」と宣伝された映像やショーは、少林寺の近辺に70校以上も密集する少林寺武術の専門学校生などによって演じられた武術であることが判った。少林寺武術は格闘技ではなく、仏教に帰依する僧人の護身術を極めた武術であり、商業的な映像やイベントに出演できないのである。

 以下、武道ファンでもある若手記者が編集部のビデオデッキで再生した、このドキュメンタリーの内容を紙上で御紹介しよう。

 ドキュメンタリーは、まず禅寺としての少林寺の歴史と現地少林寺の風景を紹介するところから始まる。

 少林寺は武術で有名なだけではなく、禅の源流として、仏教史にも重要な聖地である。

 少林寺は西暦495年(北魏太和19年)にインドからやって来た高僧・跋陀禅師(ばっだぜんじ)が開祖である。その高弟であった稠禅師(ちょうぜんじ)が、少林寺武術の創始者である。
 
 その後、日本でも「ダルマさん」でお馴染みのインドの高僧・達摩禅師(だるまぜんじ)が西暦527年に少林寺に渡った事から、禅と気功の鍛錬としての少林寺武術が発達した。

 当時の少林寺の僧人たちは宗教弾圧などの外敵から身を守る術に劣っていた。達摩は人に道を説く求道者は、屈強な肉体にこそ精神を宿せるものであると弟子たちに教え、武術の修行を推奨していった。

 少林寺は、中国全土に散在していた武術の流派を一堂に会しての武術大会を呼びかけ交流し、少林武術をさらに発展させていったのである。

 続いて、ドキュメンタリーは少林寺武術学校の学生たちによる演武を紹介する。

 この映像でわれわれは想像を絶する少林寺武術の超人的な拳技を目の当たりにする。

 この映像は映画でもドラマでもない、生の実演を記録している。香港カンフー映画のようなワイヤーアクションやCG、早回しの撮影などは当然行っておらず、肉眼で見たままの演武をビデオで捉えているものだ。それにもかかわらず、演武を披露する人間の動きの速さに驚嘆を禁じ得ない。

 小紙の写真部スタッフが付言する「ビデオの映像というのは、肉眼で見たよりも遅く写るんです。たとえば、ドラマのアクション場面なんかでは、映画の撮影よりも速く動かないと、ビデオやテレビでは間延びして写ってしまうんです。ビデオの映像でこれだけ速く見えるということは、肉眼では見えないということですよ」。

 確かに、映像をスロー再生しても、突きや蹴りを繰り出すその拳がぶれて写っていないのである。ビデオの映像は1秒間に30コマであるから、遅くとも30分の1秒以上の速さということになる。驚くべきことは、これら武術を十数年の修行者ばかりではなく、6歳の男子が見せることだ。

 また、身体全体に気を満たし、分厚い鋼をもへし折ってしまう演武も登場するが、これだけ超人的な武術でありながら、少林拳には自ら攻撃を仕掛ける技がひとつもないというのである。すべては、仏教の僧が外敵から身を守るために修行する武術だからである。日本の空手のように、自ら拳を振り下ろして物を破壊する「試し割り」ではなく、演武の相手に鋼や刀を打ち付けさせ、自らは静止したまま、攻撃してくる武器を破壊してしまうのである。

 少林寺武術学校の学生たちにしてこの演武である。果たして本家嵩山少林寺の武僧団とは、どれほどの少林拳の使い手なのか。

 小紙編集部が、全員仕事の手を忘れてドキュメンタリーに見入ると、後半、ついに「世界初公開」の嵩山少林寺武僧団が登場。嵩山少林寺の方丈(住職)にして少林寺武僧団団長の釋永信が画面に現れ、武僧団を紹介する。

 我が目を疑うとはこのことだ。

 前半の武術学校学生たちでも十分驚異だというのに、少林寺武僧団の拳技はそれを凌駕する圧倒的な気迫と武術なのだ。

 たとえば、「猿棍(さるこん)」と呼ばれる演武。これは猿の動きに擬した動きに棒術を組み合わせた拳法である。少林拳には、「鷹拳」「蟷螂拳」「鴨拳」など動物の動きを模倣した拳法が多数ある。これは達摩禅師が、岩の前に九年間座した「面壁九年」という禅の修業の際に、時折、体をほぐすために山林の動物を見て動きを真似たことから発祥したものと言われている。

 そのひとつ「猿棍」で武僧は、斜めに立てたなんら支えのない長い棍棒の上にさっと飛び乗り、そのまま静止するのである。まるで、ビデオを一時停止したかのようであるが、映像は止まっていない。これこそ、西洋力学を越える気功の修練の成果である。

 圧巻は、武僧団の中でも重鎮の釋延禅、そして武僧団総教頭・釋延魯による少林拳の秘拳である。ビデオ映像を通してさえ、見る者を圧倒する気迫は、彼らの修行の厳しさと、背景に窺える中国という国の奥深さを実感させられる。

 この手の武術を見れば、最近の格闘技ブームの影響か「K1の選手とどっちが強いか」などと軽佻浮薄な言も弄されることだろう。しかし、格闘技経験者であればあるほど、この本物の少林寺武術の記録を見れば畏怖と尊敬の念を禁じ得ないはずだ。

 彼は格闘家でも喧嘩屋でもない。仏教を死守するために、禁酒禁煙禁肉食女人禁制の修行を15世紀にも渡って継承してきた、謂わば「天人」なのだ。カネのために人と殴り合う俗人が敵う相手ではない。

 そこに気がつけば、このドキュメンタリー映像は重要な教訓をわれわれに残してくれる。

 遊戯のごとく人の命を奪う若い者があとを絶たない殺伐とした現在の日本は、その子供たちではない、誰あろう精神を喪失したわが国が、その国体に落としてしまった影なのだ。

 巨大なる隣人・中国の原動力の中に、これら少林寺の精神文化があることを知る時に、われわれ日本人は矜持を正さなければなるまい。

ドキュメンタリービデオ『嵩山少林寺』
(54分/カラー/デジタル・ドルビー・ステレオ)
販売 ミュージアム
価格 4800円(DVD) 6800円(VHS)
全国ビデオ店、書店で発売中。インターネットでも購入可能。

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