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東亜虚々実々

台湾国家安全局

 4月12日の朝日新聞朝刊に奇妙な記事が載った。国際面のほぼ半分を使ったこの記事の見出しは『秘密資金疑惑 台湾も揺れる』!

 そのリード文を読むと、「日本だけではない。台湾政界も『秘密資金』疑惑で揺れている。地元メディアが、李登輝前総統時代に計35億台湾元(現在のレートで約132億円)の秘密資金があったと報じたのに続き、その使途についての『機密文書』の中身を次々と暴露。資料の信憑性に疑問を残したまま、話は膨らむばかり。日米政界の大物の名前まで登場し、国際スキャンダルめいてもいる。……」

 じつはこの《とんでもない情報》すなわち「巨額ウラ金の話題」は、すでに昨年末に暴露されたものである。

 台湾の国家安全局が動かしたとされる対日工作資金の話だ。その総額は、日本円にして何と130億円以上。それが秘密のうちに日本の政治家の懐に入っているというのだ。公設秘書、政策秘書の給与1000万円程度で騒いでいる場合ではない。だが、台湾や香港をはじめとして、極東マスコミが連日大騒ぎしているのに、なぜか日本のマスコミはこれに触れようとしない。

 たしかに、インターネット上では2〜3のHPなどでこの問題を取り上げてはいるが、ほとんど無視されているのが現状である。

 しかもこの話、内容が深く、絡んでいる政治家、官僚が膨大な数にのぼる。もし、香港・台湾メディアが伝える通りならば、もう日本の国会は運営不可能になるダメージを受けるだろう。……本紙にしても、台湾や香港から漏れ出た情報を朧気に掴んでいるだけで、その深奥を完全に掴んだわけではない。

 順序を追って説明していこう。

 大東亜戦争終結後、大陸においては共産党八路軍と国民党軍との苛烈な戦いが続き、昭和24年(1949年)には毛沢東は大陸を制覇、中華人民共和国が建国される。台湾に逃れた蒋介石・国民党軍はこのときから既に、対日工作機関を組織していたようだ。

 昭和20年代末期に組織された台湾(中華民國)の対日工作機関は『明徳小組』と名づけられ、正規な予算などは持たないが、必要なときに必要なだけカネを使うことができた。そもそも当時の中華民國は、国民党こそが国家であり、国家存続のために諜報機関が湯水の如くカネを使うのは当然のことであった。

 昭和63年(1988年)1月、蒋介石の息子・蒋経国の死去にともない総統に昇格した李登輝は、同年7月に国民党首席となり、ここで改めて台湾(中華民國)の本格的法整備に着手した。こうした法整備のなかで、対日工作機関『明徳小組』も『台湾国家安全局』という国家諜報機関の内部組織の一つとなり、主に対日工作を行う部署という位置づけが確定した。

 このとき、台湾の5つの民間銀行が資金を提供して、その資金運用によって国家安全局が運営されることになった。この5銀行による資金提供は後に、農民銀行1行に集約されるようになった。提供された資金は国際的に運用され、これによって得た利益によって台湾国家安全局が運営されてきたのだ。

 国際的な資金運用というのは、もちろん世界中の株式市場への投資なども含まれる。諜報機関が自分たちの活動資金や給与までもを、全力の諜報活動で稼いでいたという実態は、なんとなく面白い。また国家安全局は世界中でさまざまな企業を展開し、営利活動もやっていた。日本のあちこちにある台湾旅行社などのなかにも、国家安全局直営の旅行社があった。


台湾国民党の反乱

 今回の「巨額ウラ金」の情報は、そもそも劉冠軍・国家安全局出納課長が1.9億台湾元(約7億3000万円)の公金を横領し国外逃亡したという疑惑から始まった。この劉冠軍はかつて台湾旅行社に勤務という顔も持ち、日本にも度々やって来ていた人物。さて、その劉冠軍が横領した公金を持って平成12年(2000年)9月に台湾を脱出、大陸(支那)に潜伏といった情報が流された。これについては支那北京政府当局はすぐに全面否定。その後の調べで、劉冠軍の公金横領はまったくの作り話だったと考えられている。

 劉冠軍の公金横領は無実だったが、検察当局は公金の流れを洗い直し、ここに国家安全局の莫大な秘密資金の存在が明らかにされたのだ。昨年末の話である。

 さらに今年(平成14年)3月末になると、台湾の日刊紙『中国時報』と『壹週刊』がそれぞれ〔機密文書の暴露〕を開始した。4月に入ると香港の『アップルデイリーニューズ』もこれに加わり、さながら暴露合戦の様相を呈してきた。ちなみに、機密文書暴露合戦に加わっている香港紙『アップルデイリーニューズ』は、元々〔反北京政府〕で有名な香港メディア。香港返還後は厳正中立を保っているが、宋楚瑜(台湾野党・親民党党首)の親戚が記者として参入するなど深い関係を持ち、宋楚瑜からの情報が、香港―台湾と流れているのではないかとの憶測もある。

 各紙の情報は大まかな部分は共通しているものの細部は異なり、どれが本物の〔機密文書〕なのか定かではない。だが、大まかな話としては、以下のようになる。

 台湾の国家安全局は昭和63年(1988年)に正式な機関として誕生したが、李登輝総統時代の平成6年(1994年)以降、安全局が国家予算やさまざまな企業活動によって得たウラ金を蓄え、これを秘密資金として李登輝総統の承諾の下、日米政界等への工作資金に使ってきた。そして2年前に就任した陳水扁(現総統)もこの秘密資金を引き継いでいるという。

 暴露された機密文書の細部までが真実かどうかは別として、そこには興味深い記述もある。たとえば平成8年(1996年)3月、台湾総統選挙直前に、台湾近海で支那軍がミサイル演習などを行って示威行動を続けたが、このとき台湾軍は厳戒態勢に入り、米軍が空母2隻を派遣して支那軍を牽制、台湾海域に異常な緊張が走ったことがあった。このとき、台湾から要請を受けた橋本龍太郎(当時首相)が米側に対し、「もし米政府が台湾を防衛しなければ、日本は中国(支那北京政府)に降伏するか、あるいは日本が核武装するかの道を選ぶ」と伝え、結果として米軍・米政府による台湾防衛が決定されたというのだ。台湾政府はこの時点で、事実上、日米安保条約の枠組みの保護圏に入ることを意図していたと考えられる。日本が支那北京政府を「唯一の中国政府」と認めて以来、日本と台湾の外交関係は断絶されたまま。そこで台湾政府は日本政界の重要人物に的を絞って買収(台湾語では「収買」)してきたのだという。買収されたのは、歴代の首相級のほとんど全員で、とくに橋本龍太郎はその中心的人物だという。

 さて、この「国家安全局の秘密資金」疑惑は、いったいどういった経緯で姿を表し、そして真実はどうなのだろうか。

 この秘密文書暴露は結果として何を生んだか。ここがポイントとなる。

 明らかなことはただ一つ。日米台の安全保障の問題が微妙に壊れ始めたということだ。今後、さらなる内幕暴露に発展する可能性もあるが、何しろ事は「諜報の最前線=国家機密を扱うウラ世界の深奥」に関わる問題であり、簡単に否定することも簡単に肯定することもできない。

 では、誰がこうした企みを行ったのか?

 これほどの極秘文書が流出したのだから、当然、国家安全局内部に情報漏洩者がいることは間違いない。普通に考えれば、それは蒋介石以来の国民党が野に下ったことに対する鬱憤晴らしか、または陳水扁政権に対する不満の表れと見ることができる。しかし何しろ、ウラのウラを読む諜報機関の話である。あるいは支那北京政府が影で操っていることも十二分に考えられることなのだ。一部には、英国情報部MI6の関与を疑う説もある。日米関係、米台関係を清算させ、英国の東亜進出を企むという話だ。中東から東南アジアに対する英国の進出ぶりを考えると、これもあり得る話だ。


外交

 機密文書には日本政界の大物小物の実名が載っているようだが、ここで問題としたいのは橋本龍太郎である。橋龍といえば、週刊誌で「支那政府(中国)国家情報院の女工作員と関係を持った」ことを暴かれ、売国奴呼ばわりされた元首相だ。それが、台湾から資金を得て、台湾のために全力を挙げていたというのだ。いったいこれは、どういうことなのか。永田町事情に詳しいマスコミ関係者はこう語る。

 「国際的には『外交とは戦争の一局面である』という認識があります。実際、外交というものは、表面的には軍事力や経済力といった『力』を背景にして行うものです。そして裏面から見れば、諜報機関の暗躍ですね。暗躍とは、情報収拾から国家規模のテロ、破壊・革命活動、要人暗殺にまで至るものです。世界中のすべての国は、こうした背景をもって外交戦を繰り広げています。

 ところが日本には、軍隊がない。表面的には援助外交という分野でカネをばらまきながら外交戦を行うしかないんです。そして裏面の活動は、まったく存在しない。

 もし日本の首相あるいは外相が真の愛国者であり、国家や民族の未来を憂いていたらどうするでしょうか? 『私は実はこうした気持ちをもって外交にあたっている』などと真実の話を語るわけには行かない。恐らく愛国者である彼は、心奥の理念を包み隠し、あらゆる人々から誹りを受け、石で追われる生涯を通して、結果として日本のための外交戦を行うでしょう。橋本龍太郎が真の愛国者だったかどうかは不明ですが、彼が親中国と呼ばれたことは、実態とは違っていた。橋龍は間違いなく台湾派だったということです」。

 こうして考えると、ベッドの上で支那北京政府の女工作員に情報を漏らしていたと噂される橋本龍太郎は、女の正体を知りながら巧みに偽情報を流して支那政府を誤魔化し、売国奴呼ばわりされながらも日本と台湾のために尽力してきたということになる。……しかし、正直なところ直観的に橋龍がそんな大人物とは思えないのだが。

 これについて国家情報に詳しい事情通はこう語る。

 「橋本さんがそれほど優れた人物かどうかは別として、彼が台湾の工作資金を受け取り、台湾のために動いたことは事実でしょうね。『壹週刊』という雑誌はゴシップ誌なんですが、あの情報は間違いなくホンモノです。われわれとしては機密情報がどうして流れたか、誰が何の意図をもって流したかという点が興味の対象で、橋本さんを初め歴代の大物政治家がいくら貰ったかは、問題ではないんですが。橋本さんのことで言えば、台湾国家安全局のウラ資金の内容が暴露され始めた頃、ほんとうは中国(支那)に行く予定だった。それがとつぜん心臓病になって入院、手術……。

 中国(支那)にしてみれば、橋本さんは許せないでしょうね。掌の内に入れて操っているつもりだったのが、逆に手玉に取られていた。しかもタダで女まで寝取られてるんですからね。

 いやあ、橋本さん、誰が見ても本当に心臓病で死にそうな顔をしてましたね。外交ってのは、あんなものですよ。本当に橋本さんが心臓病だったのか、そうではないのか。それは未来永劫わからないんです」。

 ここで大切なことは一つ。外交とか政治とかについて、状況を把握していない人間の解説など絶対に聞いてはならないということだ。とくに最近、朝から昼まで延々と繰り広げられているTVのワイドショー。ここで政治外交の解説を行っている無知なタレントに同調なぞ、絶対にしてはいけない。世界が全体として今どうなっているのか。それを知るためには、まずワイドショーから遠ざかることである。

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