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石井紘基代議士刺殺事件の闇

 さる10月25日、民主党の石井紘基衆院議員(61歳)が自宅前で刺殺されるという事件が起きた。

 石井議員は政官癒着の構図を暴き政界再編の先駆けとして果敢に活動を展開していただけに、当初この刺殺の背景に闇の勢力が介在したのではないかとの思惑が走った。とくに道路公団関係の財団法人「道路施設協会」はサービスエリア(SA)のテナント権を独占し、「JHの伏魔殿」「利権の巣窟」と呼ばれていたが、この協会追及には石井紘基代議士は手を緩めることがなかった。道路施設協会そのものが二つに分割されたことについても、「天下り先が増え事業が広がった。見せ掛けの改革で焼け太りしている」(今年8月の国会での追及)と厳しく批判をしたばかりだった。また、莫大な資金が動きこちらも利権絡みが噂される土地関係の特殊法人についてもその追及を始めようとしていた矢先だっただけに、石井議員刺殺の背景を誰もが疑った。

 だが、事件は呆気なく解決した。

 自称右翼団体代表の伊藤白水容疑者(48歳)が事件の翌日、警視庁に出頭、逮捕されたのだ。事件を管轄していた北沢署捜査本部は初めから伊藤容疑者を重要参考人として行方を追っていただけに、これで事件は解決したと誰もが考えた。

 じっさい、伊藤容疑者は「自分がやった」と認めている。伊藤容疑者は約10年前から石井氏の事務所を頻繁に訪ねていた。伊藤容疑者が事件前、周囲に「石井議員と金銭トラブルを抱えている」と話していたことや、体格や年齢が現場の目撃証言と似ていたことなどから捜査線上に浮上した。供述などによると、伊藤容疑者は家賃を3年間分・約200万円を滞納、今月17日に世田谷区のアパートを強制退去させられるなど経済的に逼迫していた。伊藤容疑者は石井氏に金銭援助を要請したが、これを断られたことを恨んで犯行に及んだという。調べに対し、「家賃を滞納してアパートを追い出されるので、助けてほしいと、お金を無心したのに、思うようにいかなかった」と話している。

 伊藤白水容疑者はいわゆる「一人右翼」で、最近は右翼としては目立った活動もしていなかったという。まあ、誰もが「バカな右翼だな〜」と思ったというのが本当のところだろう。

 先週末、本紙は偶然に伊藤白水容疑者のかつての師とされる右翼界の人物に会った。そこで奇妙な話を聞いたのだ。この人物(T・H氏)はこう語る。

「たしかに伊藤泉(改名前の名)はすぐに頭に血が上るタイプだが、絶対に人を殺すような男ではない。もともとお坊っちゃま育ちで、わがままだが、家賃を立て替えてくれないからと言って人を刺すようなヤツではない。あれは何かウラがある……」。

 昔の配下の者についての話だから、全面信用するわけにはいかない。そこで伊藤容疑者と面識のある右翼関係者3人を訪ね話を聞いてみたところ……。

「あいつはすぐにカッとなるし、乱暴な言葉を吐くから誤解されやすいが、じつは結構優しいところもある。どう考えても人を殺せるようなヤツじゃない」。

「カネには相当困っていたようだ。カネが入るなら何でもする感じだったが、だからと言って強盗や人殺しができる人間じゃなかった。言い含められて犯人に仕立てられた可能性がないわけじゃないと思う」。

「9月ぐらいから石井代議士を殺そうと思い包丁を買って持ち歩いていたって言うでしょ。でもね、あいつは長時間も怒りを持ち続けるなんてタイプじゃないんだよね〜。どうも腑に落ちないって感じだなぁ」。

 ただし、彼らはここ2〜3年、伊藤容疑者とは会っていなかったという。男子3日会わざれば刮目して礼を正すべしと言うが、貧困生活を何年か続ければ男の性格だって変わるかもしれない。

 ところが。

 現場に落ちていた包丁には指紋がついていなかったということが明らかになった。

 しかも現場付近をうろついていた伊藤容疑者は目撃されているが、刺殺現場そのものは誰も見ていない。不思議なことにすぐそばにいた運転手も、犯人の姿は見ていないと証言しているのだ。

 伊藤容疑者は殺害そのものを認め、包丁の入手先などについても正確に自供している。だが、なぜ指紋が付いていなかったかは謎である。……非常に穿った見方をすると、石井紘基代議士に追及されては困る特殊法人絡みの何者かが、伊藤白水をうまく利用した、ということになるのだが……。

 

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