本紙に「東京都町田市在住の匿名市民」氏から投稿メールで情報が寄せられた。
同市立の町田第三小学校で6歳児童が深刻ないじめ被害に遭い、保護者の度重なる相談、訴えにも関わらず、なんら解決を見ないまま、被害児童は急性ストレス反応を発症して、その後3か月も登校できない状態が放置されているという内容だ。
端緒は、国際的な人気動画投稿サイトYouTubeで公開された、下記の動画である。
『ウソつきと共犯者/LERA and ACCOMPLICE(特報)』
httpssssss://www.youtube.com/watch?v=SZf3T2fj8OEyoutube
英語版 ”LIARS AND ACCOMPLICES Special Report”
httpssssss://www.youtube.com/watch?v=AjKBI2QRY6Q
この動画では、当該事例を「いじめという表現では妥当性を欠くほどの、シングル・エイジによる暴行傷害事件」であると過激に指摘し、本件は町田市教育行政の組織的な「いじめ隠ぺい事件」であると言及している。
同作動画には「特報」として断片的ながら、被害児童保護者と学校長らとの生々しい会話録音が暴露されている。昨今、同様のいじめ問題は頻発しているが、当事者の会話がそのまま公開されるのは極めて異例であろう。製作会社に問い合わせたところ、同作の取材・構成を手掛けたドキュメンタリー映画監督の土屋トカチ氏につないでくれた。土屋監督は、同告発動画に至る経緯を以下のように説明した。
Q この動画を制作、公開した経緯は?
土屋トカチ監督(以下「土屋」)
土屋:
製作総指揮の高橋さんの旧知の友人女性から、メールでSOSが届いたことが始まりでした。 彼女の6歳の息子さんが今回の被害児童A君です。
ピカピカの小学一年生として入学して早々、5月頃から同級生の児童からいじめを受け始めて 、エスカレートしていった。母親は、最初は担任教師、学校、教育委員会と相談して回ったが、どうも解決に向かわない。それどころか、加害児童をかばうような、あからさまな隠ぺいではないかと気がついたのです。それで、どうすれば四面楚歌の状況を打開できますかと、彼女が高橋さんに助けを求められた。なんとかしてみようと支援を引き受けた高橋さんは、ドキュメンタリー畑の私に本件を持ちかけて、このプロジェクトが始まったんです。
Q 取材は被害者側だけのように見えるが、事実認定はどのようにしたのか?
土屋 :
もちろん、ちゃんと手順を踏んで学校側にも取材申請をしています。私たちも記録報道の仕事をしている以上、被害者側の主張だけを鵜呑みには出来ません。
最初は町田第三小学校の黒沢志津夫校長宛てに取材を申し込みましたが、回答は「子供たちの学校生活への影響を考え、取材には応じられません。」という一文だけが返ってきました。まあ、ひどい返答ですが、これだけなら私たちも特に異様さを感じませんでした。
ところが、この後に信じられないことが起きます。黒沢校長に続いて町田市教育委員会、さらに石阪丈一町田市長にも同じ取材申請をしたのですが、教育委員会も石阪市長(秘書課名義)も、黒沢校長からの取材拒否理由と、一言一句同じ回答をしたのです。
なるほど、確かに奇妙な話である。一般的な行政制度上では、監督責任の上から順に市長・教育委員会・学校長となるのが普通で、仮に前出の回答が市長から始まり、上層部に右へ倣えで教育委員会・学校長が歩調を合わせて同一の拒否理由を述べるなら、まだ理解できる。
だが、町田市では一学校長の最初の発言が、まるでコピー・アンド・ペーストのごとくに、本来、学校の上部機関である教育委員会と首長の回答にそのまま使われている。
土屋 :
私たちが、これは組織的な隠ぺいだと判断したのは、実はこの取材拒否回答によってなんです。普通、あり得ませんよ。黒沢校長という人物がよほどの実力者なのか、なにかべつの力学が働かない限り、三者とも判で押したような同じ文面を寄越すことはない。私も仕事柄、取材申請は日常ですけど、こんな異様なことは初めてです。
私たちは、メディアとして、あくまでも客観的、公正な事実確認のためにと主旨を説明した上で彼らに取材申請を投げたのです。被害者側の話が事実と違うのであれば、取材に応じて、学校や教育委員会側の見解を示すのが普通です。というより、校長や教育委員会、市長は言うまでもなく公職者です。町田市の公人として、メディアの主張だけでニュースを構成される危険を排除して、関係者や市民に対しての説明責任があるはずです。しかし、それもない。こうなれば、もはや官製犯罪といって過言ではない、組織的な隠ぺいを疑われても自業自得ではないでしょうか。
「いまの校長になってから、すべてが変わった」
複数の保護者証言から浮上した、町田第三小学校の荒廃
告発動画の土屋監督に事情を聞いた本紙は、投稿メールの送り主「匿名の町田市民」氏に返信で連絡を取り、追跡調査のための取材協力を打診した。「匿名町田市民」氏は「狭い町なので、誰が情報を流したとか、取材源はあの家だとか、いたずらに険悪な空気になってしまうので、情報源も匿名でお願いできるなら」という条件付きで、本件の舞台となった町田第三小学校の実情を明かしてくれた。
初等教育である小学校では、居住地の学区により姉妹・兄弟が同じ学校に通うということが一般的だ。数年歳が離れた兄弟では、同じ学校でも「運営者」である学校長が違う時期に学校生活を送ることも珍しくはない。3学年離れた二人の子供を持つ、町田第三小学校児童の保護者は、こう話した。
「上の子はもう卒業していますが、その時の女性の校長先生(小山紀子・元学校長)は本当に素晴らしかったんです。いじめもあったんですけど、その校長先生は自分で相談の電話を取って、いじめた子の家にも校長自ら出かけて行って、速やかに解決していました。
それが180度、変わったのは、いまの校長(黒沢志津夫学校長)が2013年の春に赴任して来てからです。学校自体が暗くなったというのか、すべてがそれまでと違う。卒業して中学に進んだ上の子自身、いまの校長では悪くなって当然だと言ったほどです」
教育分野の専門家は異口同音に「学校のすべては学校長で決まる」と言う。
黒沢志津夫校長とは、どのような人物なのか?早速、本紙は町田第三小学校・黒沢校長宛てに取材を申し込んだが、現在のところ回答は得られていない。件の告発動画を見れば、学校名も校長も実名でやり玉にあげられている。普通であれば、名誉棄損か公開差し止めを求めるなんらかの法的措置が講じられても不思議ではない。ことに、幼い子供たちが通う小学校の風評に関わる問題である。前出・土屋監督が開示した黒沢校長の取材拒否「子供たちの学校生活への影響を考え、取材には応じられません」という文言が真であるなら、ここで同氏が沈黙することは、かえって学校関係者に混乱を招くだけであるとも思えるのだが。べつの保護者は、次のような衝撃的な話をしてくれた。
「うちの学校(町田第三小学校)は、いま、本当に荒れています。A君(本件被害児童)だけの話じゃなくて、ほかの子供も、かなり悪質ないじめに遭っています。いじめだけではなく、学級崩壊もあります。授業中に半分以上の生徒が、好き勝手に遊んでいることも起きているんですけど、担任は打つ手もないみたいに溜息をつくばかりで統制がとれていません。とにかく、うちの学校では子供がいじめを先生に報告しても、先生が聞かなかったことにするような傾向が強いんです。先生全員がそうだとは言えないと思いますが、子供たちも「先生に言っても無駄だ」と知っていて、それなら告げ口して、いじめのターゲットにされるより見てみぬふりのほうがいい、と考えるようになってしまう。」
にわかには信じられないような話だ。しかし、仮に教員の指導力に問題があるとしても、そのような学校の崩壊ぶりが事実であれば親同士で情報が交換されて、問題行動を起こす児童の保護者も家庭のしつけとして子供を指導するのではないだろうか。すると、前出の保護者は、まるで現状を諦めるかの暗澹たる表情を浮かべながら続けた。
「うちの学校では保護者の連絡網が存在しません。学校内での情報は全部、学校が一元管理するマニュアルというか、システムになっているんです。文書になったマニュアルじゃないと思いますけど、そういう体制になっているというか。ですから、子供からいじめの報告を先生が受けても、数十人で授業を妨害する学級崩壊のクラス担任の先生も、それを加害者の親には連絡しないんです。もちろん、いじめられたほうの保護者も、連絡網がないため、直接、加害者側の親に注意することもできません。もし、それをやれば「親同士は直接連絡をしないでくれ」と学校から言われます。そのため、問題行動を起こしている親たちは、まさか自分の子供が学校を荒廃させている張本人だと知らないままということも多いんです。学校が親に報告しませんから。」
町田第三小学校の、この“情報遮断マニュアル”については、べつの学校関係者も指摘した。
「あの学校では、問題児の親もまた問題児だという考え方があるんです。もしも教師が“おたくのお子さんが、こんな問題を起こしている”と言ったら、逆ギレするような親だろうと。それは厄介だから、加害児童、問題児の行動は親には黙っておこうというわけです。だから、あそこではいじめは泣き寝入りで耐えるしかないことになっていく。」
これは本当に2015年現在の公立小学校の実態なのだろうか?聞けば聞くほど、耳を疑うようなエピソードが、事実として証言されていく。親同士を接触させないことで情報を遮断して、問題の流出を阻止しているとすれば町田第三小学校は、まるで黒沢志津夫校長という独裁者が支配する、小さな暗黒大陸とでも言えはしまいか。
「それでも、一度、問題児の親に学校から連絡がいったことがあります」と証言は続けられた。
「いつも先頭を切って授業を無視している子供がいるんですけど、あるとき、授業中に外に出て、みんなで石を投げて学校のガラス窓を割ったという事件がありました。そのとき、投げられた石のひとつが学校に隣接する一般住宅の車かなにかに当たって傷つけてしまった。近所に被害が出たし、学校もガラスの弁償を親にしてもらわないと、ということで問題児童の保護者に連絡したようです。」
普段は深刻ないじめも学級崩壊さえも、それら加害児童の保護者には連絡しないという学校が、ガラス代の弁償のためにはマニュアルに反して加害児童の親に連絡したというのだから、開いた口が塞がらない話である。
町田第三小学校では、いったい、なぜこのような異常事態が放置されているのだろうか?
児童の学び舎を覆う、町田市の見えざる「闇」
石阪丈一町田市長と公明党
未確認の情報が錯綜する段階なので、ここで証言のすべてを取り上げることは控えるが、町田第三小学校のこうした実態の背景には、もうひとつ大きな「闇」が見えてきた。そのキーワードは、石阪丈一町田市長と公明党の関係である。現・町田市長の石阪丈一氏(68)は、横浜市総務局に勤務、同港北区長を経て、2006年に町田市長選で初当選し、第四代町田市長に就任した。
しかし、その直後に石阪氏は、選挙当時の政治資金規正法違反により、横浜簡易裁判所から罰金30万円の略式命令を受けている。この事件は、当時メディアに報道された上、日本共産党町田市議団も石阪市長の辞職要求の声明を発表している。
石阪丈一市長の辞職を要求する(声明) 2006年8月9日
httpssssss://www.jcp-machidashigidan.jp/seisaku060809.html
当然、石阪市長への責任追及の声は議会のみならず町田市民の間でも起こった。二期目はないと思われた石阪氏だが、そこに「神風」が吹いた。2010年、二選目の選挙戦で石阪市長を推薦し、全面的にバックアップしたのが公明党なのである。そして、石阪市長は昨年も再選を果たし三期目を迎えていまに至っている。
ここで、話を本題の町田第三小学校「いじめ隠ぺい事件」に戻そう。
本件では被害児童保護者、加害児童保護者、黒沢志津夫校長、教育委員会らの出席による、問題解決のためと称した「話し合い」が行われている。冒頭に紹介した告発動画の中にも、そのときの録音が暴露されている。もう一人のキーパーソンが、告発動画の中で「町田市議会議長」とされている上野孝典町田市議である。上野市議は公明党に所属する。
そして、「これは噂の域を出ませんが」と関係者が前置きした上で語ったことではあるが、本件いじめ事件の加害児童保護者は、創価学会の信者であるというのだ。上野孝典市議も、創価中学→創価高校→創価大学と一貫して創価教育を受けて育った生え抜きの学会議員である。自身のホームページにも、その経歴は明らかにされている。そもそも町田市には町田文化会館という創価学会の施設があり、それは町田第三小学校とは目と鼻の先に位置している。
無論、信教の自由は憲法で保障された権利でもある。本紙も、上野市議が創価学会信者であること自体を問題視するつもりはない。だが、予てから政教分離に反するとの批判を受け続けている公明党議員の上野市議が、いわば「身内びいき」から、仮にも公立小学校内での会議において、創価信者のいじめ加害児童の保護者を味方したのならば、看過できない重大な問題である。
その町田市行政の頂点に、公明党の創価学会票田に浴している石阪丈一市長が座しているとなれば、本件は単なる学校単位のいじめ隠ぺいではなく、小学校の児童教育の理念からはかけ離れた、醜い政治的な思惑が動いていると想像しても絵空事ではあるまい。
石阪町田市長は、公明党市議・上野町田市議会議長の顔色をうかがって、本件を無視黙殺するつもりなのだろうか。
一方、創価学会に精通する某人物からは、興味深い情報も寄せられた。
今回の上野市議の言動については、当の創価学会関係者も「迷惑している」と怒りをあらわにしているというのだ。巷間、ただでさえ問題視されることも少なくない創価学会からすれば、学会の名誉を傷つけることになりかねない上野市議の単独プレイには辟易しているのだろう。いかなる宗教も、弱者救済を唱えているはずだ。上野市議が信教の自由を錯誤し、個人的な覇権欲から、いじめ加害児童に加勢したのであれば、自ら教義に反したことになる。
本紙は特定の政治、宗教に与する立場にはないが、当該いじめ隠ぺい事件に悪影響を及ぼしたに等しい上野市議に対しては、公明党も創価学会もその責任を追及すべきではないのか。
立ち上がる被害者家族
動きだした学校改革へのムーブメントと、学校関係者の混乱
本件を告発動画としてインターネットに公開した前出の土屋トカチ監督だが、それはむしろ被害児童の一家による覚悟を受けてのものだったという。
土屋 :
私たち、記録映像の専門家は、今回のような告発行動に免疫がありますが、被害児童本人や保護者には相当の覚悟をしてもらわないと危険です。その点は、今回の呼びかけ人のひとり、高橋さんも、被害者側に「いくら友人とはいえ、決して“代理戦争”はやりませんよ」と念を押していましたね。辛くても闘わないといけないのは、被害者側の本人たちだからです。私たちも、人として応援するべきだと、ボランティア活動として着手しましたが、あくまでも立ち上がる決意をした彼らによって、今回の告発報道という方法論になったんです。
被害児童保護者は、加害児童保護者・学校・教育委員会の民事責任を訴えるために弁護士を委任。東京弁護士会所属の武田健太郎弁護士が受任した。過去にもいじめ事案を手がけて解決に導いた法律家であるという。いじめ事例を扱う法律家が極めて少ないと言われる日本で、武田弁護士も彼らの光明となった。
被害児童の母親は、かつて外資系企業での勤務歴もある社交的な女性だが、本件での精神的苦痛から、子供と同じくうつ病を診断されるまでに追い込まれている。しかし、彼女が過去の外資系人脈にも本件への解決を呼びかけたことで、諸外国からも支援の声が届いているという。英語版による記事も、近いうちにメディアに公開されていくだろうと被害児童一家の関係者は語った。
他方、町田第三小学校と町田市教育委員会では混乱が広がっているようだ。
本稿既述の通り、同学校では「なにも知らされていない」保護者が多くいる。黒沢志津夫学校長がそのように構築した情報統制によるものだが、保護者達からすれば寝耳に水の事件である。中には事実の追及よりも、平穏を乱されることへの危機感から、立ち上がった被害児童家族や協力者たちを疎んじる親もいるという。本紙も本件について続報し、被害児童救済に向けて微力ながらの支援をしたい。そう思わせた理由は、被害児童家族に親しい人が語った、次の言葉だった。
「被害児童のお父さんは、自分の子供のことだけを言っているんじゃないんです。なによりも、自分の息子がいじめに遭っていると教えてくれた女の子を心配しておられました。どこのいじめでもそうですが、証言した子は、報復でまた標的にされる。それがあの学校のように、校長までが事実を隠そうとするようなところでは、ものすごい勇気がいると思います。そんな女の子を置いて、自分たちだけ転校すればいいとは考えられないって、お父さんは仰ってました。あの学校でいじめや学級崩壊に耐えている子や保護者がいるのは事実です。もし私なら、そんな勇気はとても持てないと思います。」
実際に、被害児童の父親は、この紛争の最中にあって、自ら町田第三小学校のPTA副会長に立候補もしている。荒れた学校から立ち去るのではなく、自分たちの手で改革していかなければならないという意志からだ。そこでまた、事態を理解しない学校寄りの保護者から反発されるようなことも起きているのだという。
12月11日―本紙独占速報!
被害児童の父親、町田市議会で請願意見陳述
町田市では町田第三小学校関係者や、一部、本件改革の動きに反発する人々の間で、思わず失笑を禁じ得ない噂やネガティヴ・キャンペーンが流布されている。
信じ難い流言飛語は、本件で注目を集めている告発動画について「あれは映画スタッフが作った短編映画で、全部、役者を使った作り物で、デマだ。被害児童のお父さんは売れない役者だから、これで売り出そうとしている」などというものだ。
これは告発動画の製作会社が本来はフィクションの劇場映画を製作していることや、ドキュメンタリーには「監督」はいないと思っている一般人の誤解も理由だろう。また、被害児童の父親が、若い頃に俳優活動をしていたことを知っている関係者が、その話を曲解して、伝言ゲームのように馬鹿げた噂がひとり歩きしているのかもしれない。そうでなければ、本件告発をデマだと吹聴することで自己保身を図ろうとする、事実を追及されては不都合な「誰か」または派閥による誤誘導、情報操作である。
その渦中の人物、被害児童の父親が12月11日午前10時、町田市議会・文教社会常任委員会において、武田健太郎弁護士と共に本件の請願意見陳述を行った。
この時点で、本件問題は公共の案件となったこともあり、本紙は当事者の合意を得た上で、被害児童保護者が山本忠(37)氏であることを公開する。もちろん、山本氏は愚かなデマが吹聴するような「売れない役者」ではなく、市内の造園会社に勤務する植木職人だ。確かに山本氏は、過去にモデル、俳優として活躍し、常盤貴子主演の東宝映画 『赤い月』 などにも出演していたが、結婚を機に芸能界を引退し、一家の大黒柱として造園業で腕を振るっている一町田市民である。
そんな山本氏が、小学校に上がったばかりの一人息子を襲ったいじめ事件に立ち向かい、支援協力者の輪を広げていったことから、ついに市議会での請願にまで辿り着いたのである。
請願には紹介議員が必要だ。今回、名乗りを上げたのは、新井克尚市議(保守連合)である。
受理された本請願は、文教社会常任委員会に付託され、委員会審査となり、今日の山本氏の意見陳述となった。
本紙は、同委員会での意見陳述、質疑応答を見守った傍聴人から話を聞いた。
議場にはNHKも取材に訪れ、告発動画の取材・監督の土屋氏など複数のカメラが請願人である山本氏と武田弁護士、市議会と教育委員会とのやりとりを追っていた。
5分間という意見陳述の制限時間で、山本氏は堂々たる請願理由を述べた。
印象的だったのは「自分の息子だけの問題ではなく、こうしたいじめ問題は保護者と学校と行政が連携して協力しなければ解決できない。私ひとりの力では無理だから請願を申し上げています」という、山本氏の真っ直ぐな言葉だった。
これに対して、町田市教育委員会の答弁は、いずれも首をかしげるものばかりが目立った。
この日、請願第16号として事前に出席者に配布された山本氏の請願書面は『いじめ事件に対して真摯に取り組むことを求める請願』と題されており、その結尾にはこうある。
『教育委員会として、いじめ事件を隠蔽せずに真摯に取り組み、現在通学が出来なくなってしまっている被害者児童が安心して通学が出来る環境を作ると共に、このような痛ましい事例の再発防止に向けた誠実な対応を強く望みます。』
山本氏がこの請願を述べた後に見解を求められた町田市教育委員会の学校教育部長は、次のように答弁した。
「本請願は、一般論として教育委員会がいじめに対して真摯に取り組むことを求めているのではなく、町田第三小学校の個別の具体的事案について、それをいじめ事件と捉えた上で、その対応を求めるものでございます。そういった意味では、これまで述べました通り、現在、事実が明確になっていない中で、本件をいじめ事件として捉える請願につきましては、願意に沿うことはできない。」
このふざけた答弁は、誰が作文しているのだろうか?
つまり、町田市教育委員会は、本件について「事実も明らかになっていないのだから、いじめ事件とは言うな」「町田第三小学校のことであって、しかも一方的にいじめ事件と言うような請願に対して、教育委員会にちゃんとやれと言われても無理だ」と言っているのに等しい。最後には「引き続き事実を解明していく」などと、曖昧な答弁で逃げていた。
これに対して、録音証拠の全容を聞いている告発動画の土屋監督は憤る。
土屋 :
動画では一部を公開していますが、山本さんと学校らとの全4回の話し合いは、すべて録音されていました。裁判では全容が明らかにされると思いますけど、その話し合いの第一回目で、いじめの事実認定はされているんです。被害児童、加害児童のふたりの担任である女性教員が、加害児童本人から確認した話として“やってしまった”ことを、学校長や教育委員会、さらに加害児童両親の前で報告しているんですね。その場で、誰も反論していません。
このことに明らかですが、話し合いはいじめの事実を教育委員会も含めた学校関係者が共有したからこそ設けられたんです。その話し合いは回を追うごとに、いじめの事実認定の定義みたいなことにすり替えられていったんです。被害児童が“やった”というのは、刑事事件でいうなら自白と同じです。教育委員会は山本さんのお子さんから話を聞けていないことを理由に、事実が明確にできない、事実解明を邪魔しているのはむしろ山本さん側だとでも言うような言語道断のことを言っています。
本件では、たとえば「傘で眼を突いた」という現場を目撃した、ほかの在校児童の証言もあります。というより、その証言から事実が判った。しかし、担任も教育委員会もこの児童の存在を知りながら、その子に公式に聞き取りをするなどの動きもありませんでした。
明確にいじめがあったことを判った上で、これが外部に漏れたら困るのは、加害者側と学校、そして教育委員会です。被害者である山本さん以外の当事者には、本件を隠ぺいしたい明らかな動機があることになります。
彼らは、まさか録音されているとは知らず、密室会談で山本さんを丸め込めるとタカを括っていたから“本音”を口走っていた。ところが、議会にまで持ち込まれてしまったものだから、あとは頑なにウソをつき通すしかないんでしょう。
これが真相ならば、教育委員会は、山本氏の息子である被害児童が、長期に渡って登校出来ない深刻な病状を利用するかたちで「被害児童への聞き取りが出来ていないから、解決も遅れるのだ」と開き直っているも同然なのである。 「ウソ」でなければ、「現場からそのような報告は上がって来ていなかった」とでもいう役人お得意の、部下への責任転嫁をするつもりなのだろうか。
いずれにしても、現に被害が長期化している6歳児童を放置してまで、言を左右に責任回避を優先するかの町田市教育委員会の態度は、市民に厳しく追及されるべきではなかろうか。
だが、議会は動いた。
町田市議会録画放映 平成 27年12月11日午前10時
文教社会常任委員会 学校教育部 請願第16号
httpssssss://www.gikai-machida.jp/g07_Video_View.asp?SrchID=3586
本件は市議会・文教社会常任委員会によって、継続審査が可決されたのである。
しかも、市議のひとりは「これは緊急を要する案件でもあり、閉会しても継続審査するべきだ」と発言。本件を不採択に持ち込みたいであろう教育委員会を、図らずも牽制するかたちとなった。
質疑応答の詳細については、町田市議会のインターネット議会中継録画でも閲覧可能になり、土屋監督の告発動画でも公開するという。
本紙でも、山本氏一家と関係者、支援者への取材活動を密にして、無名の改革者たちの動きを引き続きお伝えしていく。
本紙特別取材班