怪情報に踊る世界 | 行政調査新聞

怪情報に踊る世界

世にあふれる詐欺情報を見極めよう!

インターネットに限らず、世の中に出回っている情報の中には、真偽不明の怪しいものが多い。そうした怪情報は今後増え続けるだろう。だがそんな怪情報に惑わされずに現実を直視すれば、日本にまもなく春がやってくることが理解できる。

「ノーマスク反ワクチン」運動の裏で

マスクが鬱陶しいのは、多くの人の共通意見だろう。
正直なところ、筆者自身もマスクは外したい。仲間うちの会合や親しい人間と話しをするときには、マスクを外すことも多い。しかし新型コロナ感染者が広がっている最中に、人混みの中などでマスクを外すことはエチケット違反だ。法律で決められたわけではないが、公衆道徳から外れている。
 2月6日に北海道の釧路空港でマスクの着用を拒んだ旅客が搭乗を断られ、この騒動で離陸が1時間15分遅延するという事態が発生した。マスク着用を拒んで飛行機から降ろされたのは広島県呉市の市議会議員・谷本誠一市議(65)で、本人は「マスク着用を求められたが、強制はできないはずだ。搭乗拒否は事実上のマスク強制であり、自由を奪う人権侵害ではないか」としている。

 谷本議員は日ごろから「ノーマスク運動」を提唱している人物。自身が「ノーマスク」を主張することに問題はないが、感染力が飛躍的に高いとされるオミクロンの流行の最中に、航空機という密閉された空間でマスクを外すことは、常識的に考えておかしい。
 呉市議会も谷本議員の言動を問題視して政治倫理審査会を設置することが決まった。
 マスクは鬱陶しい。外したい。その気持ちはよくわかる。しかし科学的データは新型コロナにマスクが有効なことを証明している。昨年秋に東京大学医科学研究所の研究グループが行った「本物の新型コロナウイルス」を使ったシミュレーション(模擬実験)でも、マスクが圧倒的な防御結果をもたらすことが証明されている。
 1対1の会話の際、両者がマスクをつけていれば95%の確率でウイルスを排除できる。
 科学的なデータがどうであれ、マスクに反対する人々は一定数存在する。
 「マスクをすることで喉内のウイルス増殖が進む」という理論(実証データは存在しない)を主張する者もいれば、「健康的ではない」「人間の摂理に合わない」などと主観的な意見を訴える人もいる。マスクだけに限った話ではない。新型コロナワクチン接種に対しても、頑強頑迷な反対論者が存在する。

 今年1月5日にテニスの全豪オープン出場のためにオーストラリア入りし、メルボルン空港で入国を拒否されたジョコビッチ選手などはその代表例だろう。ジョコビッチは「新型コロナウイルスのワクチン接種を強制されるのならば、4大大会(グランドスラム)欠場を選択する。喜んでその代償を支払う」とコメント。筋金入りの「反ワクチン」ぶりを披露している(本人は「反ワクチン派ではない。自分の体に入るものは自分で選択するのだ」と主張)。日本にも勿論、反ワクチンやノーマスクを主張する人々はいる。
 時に公の場で反ワクチンを口にし、ノーマスク運動を展開する個人、団体も存在する。それが今年に入って、組織的な運動を展開するようになっている。

組織的運動が最初に確認されたのは1月9日(日曜日)だった。渋谷から原宿にかけて 「ノーマスクデモ」が行われたのだ。このデモを主催したのは「神真都(やまと)Q」 という団体である。「Q」 という字から推測できるように、米大統領選で熱狂的なトランプ支持ぶりを見せた 「Qアノン」 という陰謀論団体が元になっているようだ。Qアノンに関する詳しい説明は省くが、簡単に言えば「悪と戦う正義の集団」を名乗るオカルト的陰謀集団である。日本のQアノンは 「ワクチンは危険」 「マスクは必要ない」 と主張し始めたらしい。1月9日のデモの際に 「次は1月23日に全国展開のデモを」 と予告。

 その23日には東京をはじめ宮城・福島・茨城・静岡・愛知・岐阜・滋賀・大阪などでデモ行進が行われた模様だ(ネット上に映像がアップされているが、いずれも数十名規模と推測される)。許可を得たデモは合法であり、問題はない。ただ頭の片隅に入れて頂きたいのは、デモや抗議活動などにはカネがかかるという事実だ。連絡費・通信費・交通費に始まりプラカード作成代など、規模により金額は大きく変わるが、相応のカネが必要となる。参加者の中には費用を自己負担する者もいるだろう(それが大多数の場合もある)。だが、表には姿を見せないスポンサー側は、このデモにより何らかの効果(利益)を得ることを目的としている。全国規模で展開された「神真都(やまと)Q」の背後にいるスポンサーは不明。その目的もわからない。表に出ている主宰者は都府県ごとに異なっている。東京の「神真都(やまと)Q」主宰者は岡崎礼(別名:岡崎一兵衛。本名:倉岡弘行)氏。東映や日活で活躍した映画俳優岡崎二朗氏の息子で、平成12年(2000年)にデビューし任侠物のVシネマで活躍、「ポスト哀川翔」といわれたこともある俳優だった。だが平成19年に映画会社のプロデューサーをナイフで襲撃し、殺人未遂の容疑で逮捕。以降、転落人生をはじめたという(『ZAKZAK』より)。

 全国規模で展開する「神真都(やまと)Q」の各支部長が、それぞれ、どのような経緯で「ノーマスク反ワクチン運動」を主宰しているのか、明確にはわからない。マスク着用に反対すること、ワクチン接種を忌避する者がいることは理解しているし、ジョコビッチ選手の主張がわからないわけではない。しかし、姿を見せずに大衆を操ろうとする運動には、危うさを感じる。地下鉄毒ガス事件を起こし、世界をひっくり返そうと考えていたオウム真理教の怖さと同質の危険性が潜んでいる。「私もマスクには反対で、ワクチンも拒否している」というだけで、正体不明、目的不明のデモに加わることが、非常な危険を含んでいることを、参加者たちは理解しているのだろうか。

報道される情報も怪しい

 今、世界の注目を集めているのはウクライナだ。ロシアがウクライナに侵攻する可能性があると報道され、世界中が緊張している。2月17日の米株式市場は、今年最大幅となる622ドル(71,000円)の下落を見せたが、これもウクライナ情勢が原因だ。
 だが、ウクライナ情勢に関するニュースは、実はかなり怪しい。
 意図的に危機が誇張されているように感じられる。我が国の報道、あるいは米欧をはじめとする西側諸国の報道と、ロシア側の報道には、共に作為が感じられる。両方とも真実を伝えていない。我が国や米欧の情報は基本的に 「ロシアがウクライナに侵略しようとしている」 というもので、ロシアを悪者扱いしている。だが現実には、ロシアはウクライナが欲しいわけではない。
 ロシアとしては、クリミア半島は死守したいが、ウクライナの他の地域、例えばルガンスク州やドネツク州を欲しいとは考えていない。クリミア半島とは黒海に突きでている九州ほどの半島で、全人口235万人のうちの6割はロシア人。 2割5分がウクライナ人。他にベラルーシ人やユダヤ人が住んでいる。クリミア半島では2014年に、ロシア領かウクライナ領かの問題が起き、住民投票でロシア側が圧勝した。その結果を受けてロシア軍が進駐。クリミアはロシア領になった。ところがウクライナをはじめ米国、英国など西側諸国はこれに反発し、ロシア領であることを認めていない。

 そんな状況下に、ウクライナがNATO(北大西洋条約機構)に加盟する可能性が浮上してきた。NATOとは、第二次世界大戦後の冷戦(米ソ対立)の際に、ソ連からヨーロッパを守るために作られた組織である。成立(1949年)の過程では、ソ連の脅威からヨーロッパを守ってもらうために、ヨーロッパ側が米国に頼み込んで仲間になってもらった面があった。NATOは成立以来、加盟国のどこかが攻撃された場合には全NATOが一致協力して、敵に立ち向かうという条文がある。ウクライナがNATOに加盟した瞬間に、クリミア半島に侵出したロシアは全NATO軍から攻撃されることになる。

 ロシアはそれを危惧しているのだ。それだけが問題なのではない。ロシアからドイツに直結された天然ガスパイプライン(ノルド・ストリーム2)を稼働させるか止めるかといった問題もある。この天然ガス問題からも理解できるように、ヨーロッパ全域はロシアのエネルギーを頼りにしている。ロシアとヨーロッパは地続きなのだから当然のことだ。だが米国にとっては、ヨーロッパ全域がロシアと密接な関係を持つことを許したくない。
 1949年にNATOが成立するとき、ヨーロッパは米国にお願いして仲間に引き入れた。その経緯を考えれば、ヨーロッパがロシアと関係を強めることは、米国としては許し難い。そんな状況下、全ロシア将校協会が「プーチン辞任」を要求する公開書簡を公表したとの情報が世界に流された(2月16日)。プーチンの足元が反乱を起こしたような話である。だがこの公開書簡が本当に実在するのかどうか、誰にもわからない。
 2月15日にはウクライナの銀行や軍に対するサイバー攻撃も行われている。この日、ロシア軍がウクライナから一部撤収したとの情報がロシア側から流されたが、米政府は「ロシア軍は撤退どころか増強している」と、全く逆の情報を流した。その翌日、ロシアは軍が撤収する映像を流し始めた。すると米政府は、その映像が作り物だと非難。これは完全に「情報戦」である。
 銃弾が飛び交うことなく、米ロとも「自分たちが正義だ」と主張しているだけだ。こうした状況下で、片方だけの(米国や西側諸国の)情報を信じることは、真実から遠ざかってしまう。もっとも、どこにも真実の情報が流されていないのだから、正確な分析は誰にもできないだろう。言えることは、報道されているほど危険な状況に立ち入ってはいないということだ。だがこの間、世界の株式市場は下落を続け、ビットコインなども値を大きく下げている。
 2月17日にはビットコインが7.4%安、イーサリアムは8.2%安と大暴落。一方、金地金(ゴールド)は大きく値上がりしている。もし仮に米ロが協調して軍事的緊張を作り上げているとすれば、金融市場で大儲けしていることもあり得るだろう。

激動の世界を冷静に見つめよう

 一般庶民は、軍を動かして緊張を作ることはできない。数百兆円、数千兆円というカネを動かして金融市場を揺さぶることもできない。最前線に立って胃が痛くなるような緊張感は味わえないが、大きく世界の全体像を見ることができる。
 今、世界は大激動の渦の中に突入している。新型コロナの大騒動がどうやら終盤に差しかかってきたことは、何となく肌で感じとっているだろう。日本は幸いなことに、軍事的緊張とは遠い位置にいて、コロナからも何となく抜け出そうとしている。

 政府も役所(省庁)も能力が劣り、動きが鈍く、総てが後手後手に回っているように見えるが、庶民大衆は結構しぶとく生き抜いている。世界中が今、インフレの波に襲われている。2月10日に米政府が発表した消費者物価指数は+7.5%で、40年ぶりの高いインフレ。日本でも2月は物価が上がり、3月には更に値上げがあると発表されているが、なにしろ超長期のデフレを体験してきた日本だ。その程度のインフレなど、苦痛にはならない。日銀の観測でも日本のインフレ率は2%には達しないとされる。世界に比べれば 「さざ波」 程度だ。

 米国では、これまで金融市場を支えてきた量的緩和(QE)が昨秋から規模縮小がはじまり、3月で終了することになっている。この後、米国をインフレと不況のスタグフレーションが襲うことは間違いない。そんなときに中間選挙(11月8日)が行われるのだから、バイデン民主党が敗北することは火を見るより明らか。
 ウクライナ問題、NATOの対ロ問題で敗北する可能性の高い米国は、いよいよ崩落を始めるだろう。米国はまもなく三流国家に転落していく。米国だけではない。ヨーロッパ…中国…ロシア…。どこを見ても、世界に明るい兆しはない。

 世界は当分の間、春を迎えることがなさそうだ。そうした中、日本はまもなく春を迎える。そのことを世界中が理解している。とはいえ、日本はこれから何度も激流の中に叩き込まれるだろう。それは経済・金融の話だけではない。政治的にも外交的にも、今年は大嵐を通過することになりそうだ。地震や大雨、事件・事故も多発するだろう。それでも夏前後、遅くとも秋には、日本が輝くときが来る。
 それまで、怪しい情報や危険な詐欺話には耳を貸さず、冷静に世界を見つめる姿勢を保つことが肝要だと考える。

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