無期限外国人就労で日本は地獄への坂道を下り始める | 行政調査新聞

無期限外国人就労で日本は地獄への坂道を下り始める

 就労外国人の在留資格が、来年にも事実上「無期限」になることが決まった。人手不足を補うためというが、家族の帯同も認めるというこの決定は、日本を本格劣等国に向かわせることになる!

激増するベトナム人の犯罪

 愛知県津島市で薬などを万引きしたうえ、店長に暴行してケガを負わせたとして、ベトナム人の男(28歳)が11月10日に逮捕された。逮捕された男は警察の調べに対し「50件以上の犯罪に関与した」などと語っているという。
 愛知県警はベトナム人グループによる組織的犯行として調べているという。昨年末には北関東一帯でブタ720頭、ニワトリ140羽を盗んだベトナム人グループの存在が明らかになった。このところベトナム人の犯罪が多発している。
 昨年(令和2年/2020年)の日本国内における外国人の犯罪は、件数も逮捕者数もベトナム人が一位。ベトナム人の検挙件数は6,855件、検挙人数は4,219人(「警察庁組織犯罪対策部」発表)。検挙件数6,855件のうち、刑法犯は2,931件、特別法犯は3,924件。特別法犯とは入管法違反や道交法違反・覚醒剤取締法違反などを指す。
 ベトナム人による刑法犯で目立つのは窃盗犯と万引きで、この2種が全体の7割超となっている。特別法犯では入管法違反が半分以上を占めるが、このところ覚醒剤取締法違反の増加が目立つ。ベトナム人は悪質で、犯罪者が多い民族なのだろうか。一般的には、ベトナム人は勤勉で器用だといわれる。ベトナムのことを知る個人の感想としては、ベトナム人に犯罪者が多いという印象はない。
 ベトナム人と長い付き合いがある知人に尋ねても、ベトナム人に悪質な者が多いとは思わないという。ベトナム人の中にも調子のいい男や、ずる賢いヤツもいる。
 だが概して、おとなしくて優しい人が多いというのが多くの共通した意見だ。
 では日本に来るベトナム人は、一般のベトナム人とは違うのだろうか。
 それは考えにくい。

海外に飛び出すベトナム人

 1975年にベトナム戦争が終わり、ベトナムは統一されたが、国土は荒れ果てていた。食糧に限らず、全ての物資が不足し、道路・水道・ガスなどの生活のための設備はもちろん、工場も企業も、ほぼ完全に破壊されていた。農業以外に生活を支える仕事はゼロといっていい状態だった。そんなベトナムは、ベトナム戦争のときにソ連や東欧諸国から支援を受けていたため、それを返済する義務を負っていた。
 そのためベトナム北部(旧北ベトナム)を中心に、ソ連や東欧諸国に労働力を輸出することになった。一方ベトナム南部からは、戦争終結の前後に多くの人々が米国やカナダに脱出した。ベトナム戦争が終結した1975年に米国に渡ったベトナム人は12万5,000人(米政府公表の数字)。

 2017年には米国全土に約134万人のベトナム人が暮らすようになっていた。
 ソ連や東欧、そして米国やカナダに渡ったベトナム人たちは、それぞれの土地で一生懸命に働き、国に残る家族や親戚に仕送りをした。現金だけではなく、家電製品や自転車・バイクなども送っていた。それはベトナム人にとって当然のことだった。なかには米国などで成功し、技術も習得し、ベトナムに戻って企業を立ち上げる者たちもいた。そんな人々がベトナムの近代化に大きな力となったことも事実である。ベトナム戦争終結前後にソ連・東欧や米国などに渡ったベトナム人は、ベトナム政府や米国政府の援助で渡航した。
 だがその後、政府援助はなくなってしまう。それでもなおベトナムでは働き場所が少ない。社会主義国のベトナムでは、多くの社会主義国同様に学歴偏重社会が作られたが、大学を出ても就職先は見つからなかった。そして周辺の東南アジアは裕福だ。2018年の統計で見ても、ベトナムの一人当たりのGDP(国内総生産)はタイの3分の1、日本の15分の1、シンガポールの25分の1でしかない。
 ベトナムは、まだ貧しい国で、周辺には豊かな国が多い。戦争が終わってから46年たっても、ベトナム人は海外に出て働くしか道はない。

人手不足を補った日本の「留学生30万人計画」

 日本は「恒常的な人手不足」といわれている。労働人口が減少していることが原因だが、その背後には、リーマン・ショック(平成20年/2008年)以降の景気回復の遅れがある。実は、日本では働き手の人口、本当の意味での就業者数(労働力人口)は減ってはいない。だが、15歳~34歳の「若年就業者数」は23年前の平成9年(1997年)と比較すると、500万人以上も減っている。低賃金で雇うことができる労働者の数が減っているのだ。
 この結果、製造工場や建設現場などが「恒常的な人手不足」に陥っている。この人手不足を補ってきたのが外国人労働者だ。かつては中国人労働者がその中心だった。ところが中国はめざましい経済発展を遂げ、中国国内の富裕層や中間層が増え、日本に出稼ぎに来る中国人がどんどん減少し始めた。中国人労働者減少の穴埋めをしたのが、ベトナム人である。
 福田康夫政権時代の末期、平成20年に「留学生30万人計画」が公表された。留学生のビザ発給を大幅に緩和する政策である。この計画は当初、中国人留学生拡大を狙ったもので、その後この政策は、翌年に誕生した民主党政権(鳩山由紀夫・菅直人・野田佳彦)に引き継がれていった。
 欧米を始めとする多くの国々では、留学生のアルバイトを禁止し、あるいはアルバイト時間の制限が行われてきた。日本では資格外活動を申請すれば、留学生でも週28時間(学校が休みの時には週40時間)のアルバイトを行うことができる。
 日本に留学すると、アルバイトで学費と生活費をまかない、それ以上の収入を得ることができるのだ。なかには留学を名目だけにして働き、ときには留学先から逃げ出して不法就労する者も出てきてしまう。来日したけれど勉強に集中していない留学生が多いのは、こうした理由からだ。

本当は日本に来たくないベトナム人

 ベトナムでは、大学は卒業したけれど就職先が見つからない。特に地方ではその傾向が強い状態が続いた。ベトナム戦争終結以降、ベトナム経済を支えてきたのは労働力の海外輸出だった。こうした理由から、ベトナムの若者たちは海外に飛び出して働く。ベトナム人の海外派遣労働者数は増え続け令和元年(2019年)には、1年間に14万7,387人が祖国ベトナムから飛び出している。その渡航先は1位が日本だ。令和元年の日本にはベトナムから8万0,002人がやってきている。
 ベトナム人海外就労の54.3%が日本なのだ。ベトナム人は日本が大好きなのだろうか。ベトナム人は日本に親近感を持っている。日本の漫画やアニメはベトナムでも大人気だし、ホンダのバイクはベトナム人の足になっている。ベトナムではバイクのことを「ホンダ」というほどだ。日本に親近感を持ち、日本が好きなベトナム人は多い。だが働き先として日本を一番に希望する者は少ない。

 多くのベトナム人の本音は、米国やカナダ、あるいは中国で働きたいと考えている。だが米国やカナダに渡ることは至難の業だ。渡航費や滞在費が高額なうえ、受け入れてくれる企業は極端に少ない。中国は労働力が余っているから、ベトナム人が出稼ぎに行ける状態ではない。必然的に、働きたいベトナム人の渡航先は、アジアなどの近隣諸国になる。実際、2008年(平成20年)のベトナム人の労働者渡航先は、1位・マレーシア26,704人を筆頭に、2位・台湾23,640人、3位・韓国、4位リビア、5位ラオスと続き、日本は6位の5,517人だった。
 この5,517人が11年後の令和元年(2019年)に4倍近い80,0002人になった理由は、日本が好きだからではない。ベトナム人が働き先として希望する国は、日本が1位なのではない。物価を表す数値として「ビッグマック指数」というものがある。

 マクドナルドが販売しているビッグマックの価格でその国の物価を評価するもので、経済力を示す1つの目安である。日本より上位には、シンガポールやクウェート・アラブ首長国連邦・韓国・タイ・サウジアラビア・パキスタンなどがある。
 ビッグマック指数がどれほど的確に経済力を示すものかは別な話として、実際の賃金の面から見ても、日本より韓国のほうが上だ。かつて「経済は一流、政治は三流」と呼ばれた日本は、いまでは「経済も政治も三流(以下)」と呼ばれるようになってしまった。ベトナム人は、日本よりも韓国に魅力を感じている。ところが韓国では、ベトナム人労働者の半分以上が失踪したという事実が明らかになり、韓国は2012年8月からベトナム人労働者の新規受け入れを中止した。
 その後、保証金を入れる条件付きで新規受け入れが再開されたが、採用条件は厳しい。日本は入りやすい国なのだ。だが日本に実習生としてやってきた多くのベトナム人は、過酷な条件下で働かなければならない。
 日本で働くベトナム人には「技能実習生」「留学生」「就労ビザ」の3種類がある。一番多いのは「技能実習生」で、これが全体の半数を占める。続いて多いのは、留学生の「資格外活動(アルバイト)」で35%。一番少ないのが「専門技術分野」で働く者で、その割合は1割強である。技術実習生のほとんどは、悪くいえば奴隷状態にある。

 労働時間は早朝から深夜にわたり、過酷な肉体労働が多い。それでいて手取り給与は月10万円に達しない。技能実習生の給与は都道府県別に異なるが、多くは夜間などの時間外手当は時給300円以下。しかも水道料・光熱費などの名目で給与から天引きされる金額が多いから、手取りは10万円以下になってしまう。
 この安い給料こそ、雇い主にとっては魅力なのだ。雇い主にとっては、高額な日本人労働者より廉価で雇える外国人(特にベトナム人)が貴重なものとなる。それが日本を破壊し、日本経済の伸長を妨げていることを理解していない。平成の最後の年、2018年にはベトナム人技能実習生の9,052人が失踪している。日本でベトナム人による犯罪が激増している本当の理由は、この辺りにある。日本が壊れていく原因を作っているのは、日本の社会にある。

外国人就労「無期限」を狙う日本

 我が国は外国人の長期就労や永住に慎重な姿勢をとり続けてきた。実際、在日韓国・朝鮮人を除けば、居住する外国人はほとんどいなかった。そうした中、昭和の末期から少しずつ外国人の数が増え始め、平成元年(1989年)には98万人の外国人が暮らすようになっていた。その後、平成20年(2008年)の福田康夫政権(自公連立)時代の末期に「留学生30万人計画」が打ち出され、これが平成21年からの民主党政権に引き継がれる。そして平成30年(2018年)の春には264万人の外国人が居住するほどになっていた。
 しかしそれでも、政府は一貫して、外国人の長期滞在や永住は認めない方針だった。ところが今年11月に入って、政府は「人手不足」を理由に、多くの分野で在留期限をなくす方向で調整を始めていたことがわかった。
 出入国在留管理庁は令和4年(2022年)にも、在留外国人の外食業・飲食料品製造業・農業・建設・介護・機械製造業など14の業種を「深刻な人手不足」を理由に、在留資格を何度でも更新できるようにするという。しかも家族の帯同も認めるというのだ。これは実質的に永住を可能にすることになる。
 現在、既に資格認定の方法などを関係各省が検討中で、まもなく首相官邸との協議に入り、来年3月には正式決定して、省令や告示を改定するだけで「実質的な外国人の永住」が認められるというのだ。日本は現在、経済的に三流国家とされる。
 労働者の平均賃金は世界でも下にある。18位の韓国より下で、世界22位、年収447万円だ。日本より下にある国は、ハンガリー・スペイン・イタリア・メキシコなど。いずれも経済不安定な国でしかない。
 国民一人当たりのGDP(国内総生産)で比べると、日本は世界31位の532万円。
 3位のシンガポール、15位の台湾、28位の韓国に水をあけられている。

 日本の労働者が低賃金に喘ぎ、今や台湾・韓国・シンガポールどころか東南アジア諸国に並ばれ、抜かれようとしている状態なのだ。なぜこれほどまでに低水準なのか。理由はいくつか考えられるが、所得の分配が偏(かたよ)っていることが最大だ。会社は儲かっても経営者が賃金を上げてこなかったのだ。
 その低賃金政策に拍車をかけたのが「アベノミクス」である。アベノミクスにより、国債を買い上げることで市場に流通するおカネが激増。その結果「円安・株高」が演出され、企業が持っている株価は上がるものの、賃金は横ばいが続いた。もちろん他にも理由は考えられる。アベノミクスで「円安」が演出されたのだから、輸出が好調になり、日本経済は潤うはずだった。それなのに輸出は伸びなかった。なかには円安なのに輸出を減らした企業もあった。企業努力が行われなかったか、間違えた方向で走ったか…。
 経済政策を分析することは至難の話で、「アベノミクスは間違っていた」とは言いきれない面もある。間違えたのは政府ではなく民間企業だと主張する者もいる。
 明確に断言できるのは、日本経済は30年間停滞を続け、労働者の賃金も全く変わらなかったということだ。この間、米国では賃金が1.5倍に、先進国の賃金はおよそ1.3倍になったというのに、日本だけが変わらなかった。こうして日本は低賃金に喘ぐ貧困国へと落ちてしまったのだ。

地獄の入口にたどり着いた日本

 そんな状況にある日本が「外国人の永住」を認めるというのだ。それは、いよいよ日本を地獄に突き落とすことになる。ベトナムだけではない。東南アジアや中東を中心に、世界には労働力が余っている国がたくさんある。そんな外国人労働者が入ってくると、企業は日本人より安い外国人を雇うようになる。日本人の賃金は上がらない。日本のデフレは増々進んでいく。賃金は上がらず物価だけが上昇する状態(スタグフレーション)が誘発されるだろう。

 確かに短期的には利益が出たり、経営がうまくいく企業などが現れると思われる。農家や製品を作り出す工場、介護の現場、あるいは産廃業者などは、短期的に経営がラクになるかもしれない。それはあくまで短期的な話なのだ。
 重要なことは、企業が経営努力をしなくなることだ。技術革新やIT活用などに目を向けず、目先の利益だけを追求するようになる。日本から新しい技術が生まれにくい環境になってしまう。
 問題はそれだけではない。家族帯同で長期滞在あるいは永住する外国人の「教育」はどうするのか。「医療」や「社会福祉」の面倒はどうするのか。発展途上国の労働者にとって、日本の医療制度や教育制度は夢のような世界である。低賃金で雇われる外国人労働者やその家族が、多額の納税をすることはない。

 彼らの医療・福祉・教育は日本人の税金でまかなわれることになる。そして犯罪の多発が起きる。社会環境が異なり、宗教が異なり、生活全般に対する価値観が異なる外国人が永住するようになれば、狭い日本の中で必ず対立が起きる。犯罪が多発する。今日の警察が外国人問題に対処できるとは思えない。
 外国人の長期滞在あるいは永住は、来年3月には決定する見込みだ。この30年間、地獄に向かって坂道を進んできた日本は、ついに地獄の入口に辿り着いてしまった。本気で声を上げなければ、日本は真っ逆さまに地獄に突入する。
 今こそ一人ひとりが声を上げるべき時である。■

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