新井喜一元川越市議の名誉回復を賭けた闘い | 行政調査新聞

新井喜一元川越市議の名誉回復を賭けた闘い

「川越市議セクハラ事件」

まさかの敗訴、即日控訴へ

 開廷前のさいたま地裁川越支部。門前では「セクハラ被害者を訴えるのはセカンドレイプ」などと記されたバナーを持つ女性Ⅹ氏の支援者が、無言のスタンディングを行っていた。
その一方で、傍聴記者席が用意されていないことを怒ったマスコミ記者らが、裁判所職員へ大声で詰め寄る一幕もあった。
 裁判所は、かつてない緊張感に包まれていた。
 2022年1月13日13時10分、元川越市議・新井喜一氏が原告となり、現職川越市職員女性Ⅹ氏を名誉毀損の不法行為で訴えた裁判に、判決が言い渡された。判決文は昨年12月に裁判官を定年退官した齋藤憲次裁判長によって記され、後任の飯塚圭一裁判長によって代読の言い渡しが行われた。

主 文  

1:原告の本訴請求を棄却する。
2:原告は、被告に対し、110万円及びこれに対する令和元年7月18日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3:被告のその余の反訴請求を棄却する。
4:訴訟費用は、本訴反訴ともに、これを3分し、その2を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。
5:この判決は、第2項に限り、仮に執行することができる。

 3年にも及んだ裁判は、たった1分の主文読み上げで終了した。
 齋藤憲次裁判長は、いわゆるコピペ(コピー&ペースト)状態で、ことごとく女性Ⅹ氏の言い分を認め、新井氏に110万円の支払いを命じた。まさかの敗訴だった。「私が主張したことが、一切反映されなかった。これは本当におかしいことです。控訴します」判決後の新井氏支援者向けの集会において、新井氏は苦悶の表情を浮かべつつ語った。   

これは裁判じゃない

 代理人の清水勉弁護士は、判決文を受け取り、ものの30秒で控訴を決めたという。その理由を集会で語った。

 「隠し録音データや、第三者委員会の調査結果など、かなり詳しい資料があるので、職員女性X氏が言っていることが、事実と大きく異なると証明できると考えていました。
 しかし、文脈や会話の前後から考えて、終始冗談として話されているハラスメントじゃないと思われる内容についても、判決文では分析が行われていません。
 「被告がこう言っている」と書いているだけ。法廷内で対立し主張している内容に対して「それは、どういう風に違う」と、本来ならば反論が記されていなければなりませんが、それがまったくありません。こちらが指定した根拠が合理的であるかどうか、検討されていないのです。これは裁判じゃないと思わざるを得ません。
 第三者委員会の報告書でも、ハラスメントの事実はほとんど認定されていません。そのことについても数行まとめて説明されただけ。こちらが提出した証拠との比較や検討は、まったくといっていいほど行われていません。今すぐ控訴し、改めて高裁で判断してもらいます」
と怒りを込めた。なお、代理人の出口かおり弁護士は即日控訴の手続きのため、集会には出席しなかった。
 翌日1月14日の大手新聞見出しは「繰り返しハラスメント認定」(東京新聞)、「元川越市議に慰謝料命令」(朝日新聞)が踊り、現職川越市職員女性Ⅹ氏も登壇した記者会見の写真入り。執拗に新井氏を攻撃するかのような記事内容であった。

「川越市議セクハラ事件」の経緯

 事件は1通の不可解な通知書から始まった。
 2018年9月12日付け通知書で、当時、川越市役所議会事務局に勤務していた職員女性Ⅹ氏が、8期を務めるベテラン川越市議・新井喜一氏(同年 10 月議員辞職)に対して「度重なるパワハラ・セクハラ被害を受けていた」として謝罪と慰謝料100万円を要求した。
 通知書には回答期限を「9月末日」と明記されていた。ところが職員女性Ⅹ氏は、わずか2日後の9月14日に代理人の吉廣慶子弁護士と坂下裕一弁護士を伴って、新井氏を実名告発する電撃的な記者会見を開いた。 メディアは一斉に新井氏のハラスメント疑惑を実名報道した。
 新井氏の信頼は一夜にして失墜した。

 同年4月の人事異動で、議会事務局に就いたばかりの同局内一の「ド新人」職員だった職員女性Ⅹ氏が、議会事務局が多忙を極める議会会期中に多忙な先輩職員たちを気にもせず、弁護士を引き連れて記者会見を開き重鎮市議を実名で追及するとはあまりにも大胆だ。
 だが、職員女性Ⅹ氏の目的が新井氏の失脚であったのなら話は別だ。事実、「証拠がある」「訴える」と騒ぎ立て、新井氏の議員辞職後も新たな記者会見を開いた職員女性Ⅹ氏は、その後、一向に新井氏を訴えることもなかった。

 挙句、「太ももを触った」「手を握った」という身体的接触によるセクハラの事実を一切認めなかった「第三者委員会」の調査結果報告書に「ほっとした」「一定の評価ができる」などとマスコミにコメントしたのである。議会を混乱に陥れた記者会見まで強行したセクハラ被害者のセリフではない。
 一方、社会的名誉の回復を決意した新井氏は2019年4月11日、職員女性Ⅹ氏を「名誉毀損損害賠償と債務不存在(100 万円を払う義務はない)確認」で訴えた。「訴える」「証拠がある」と吠えるばかりで、半年以上、提訴もしないままだった職員女性Ⅹ氏は、新井氏に訴えられてから、齋藤憲次裁判長に「反訴はしないのか」と催促されてやっと反訴したのだ。
 記者会見までして自分の被害を訴えていた職員女性X氏は、まるで裁判を起こしたくなかったかのようだ。そんな職員女性X氏は新井氏からハラスメント被害を受けたことを証明する証拠をほとんど裁判所に提出しなかった。その「不可解」に満ちた裁判が、この日(2022年1月13日)判決が言い渡されたことになる。

 この事件は後年にわたって川越市政に暗い影を落とし続ける出来事である。本紙は、控訴後もこの事件の「背後」について徹底的に追及する方針である。

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