速報 住民訴訟4市民 全面勝訴! | 行政調査新聞

速報 住民訴訟4市民 全面勝訴!

裁判所、川合善明市長の請求をすべて棄却

2021年12月23日(木)、さいたま地方裁判所川越支部で
川合善明氏(川越市長)の敗訴判決が言い渡された。

事件は、すでに判決が確定した不正市道認定について市民ら23名が原告となって、川越市を訴えた住民訴訟の原告のうち4名に対し川合善明氏が「住民訴訟を起こしたことが不法行為で名誉毀損」などと支離滅裂な主張を展開し、損害賠償を求めて市民4名を提訴していた裁判だ。

齋藤憲次裁判長(すでに12月5日付で定年退官のため飯塚圭一裁判長が判決文を代読)は「原告の請求をいずれも棄却する」と川合善明氏の訴えをすべて退け、住民側の全面勝訴となる判決を言い渡した。市政の疑惑に対して、主権者の権利である住民訴訟という民主主義の制度に則して市を追及した市民らを、市長という公権力を逆用し潰そうとした卑劣かつ邪悪な川合善明氏のやりたい放題に司法がNOを突きつけたことになる。

 判決文 クリック 

「不正市道認定」の可能性にまで言及した判決

裁判所がいかに公権力寄りの体質であろうと、住民訴訟それ自体を違法と判断する裁判官がいることは100%あり得ない。本紙記者は川合市長が問題にしている住民訴訟を欠かさず傍聴してきたが、被告(川越市長)が反論に窮する場面が続いていた。そんな時期に、川越市長が議会に諮ることなく代理人弁護士もつけず、個人の立場で起こしたこの訴訟はまさしく「おれ様市長」の暴走にしか見えなかった。この判決文の中で齋藤裁判長は既に、さいたま地方裁判所で原告敗訴判決が出て住民が東京高裁に控訴中の「不正市道認定」住民訴訟での原告と被告の主張内容や証拠についても言及している(去る12月9日、東京高裁でも原告は敗訴しているが、この裁判は高裁判決前に結審しているので、この裁判の証拠にはなっていない)。

 川合善明氏は「不正市道認定の事実はないのに訴えたからこの住民訴訟は不法行為だ」と主張した。そうであれば、本来は住民訴訟原告市民23名を訴えるのが筋だが、川合善明氏は単に自分が敵だと思い込んでいる4人の市民だけを標的にしていた。裁判を起こすことが違法かどうかは、原告個人の内心ではなく、裁判所に出している主張や証拠内容で判断する事だということくらい、弁護士ならわかりそうなものだ。その意味で川合善明氏の主張は初めから破綻していた。
 齋藤裁判長が判決理由で「不正市道認定」の経過について詳しく触れたのは、原告川合善明氏に対して「この住民訴訟は不法行為にならない」との判断の理由を述べるためだ。

「共謀が認められると考えることが不合理とはいえない」

 この判決理由で注目すべきは、さいたま地裁で市民らが敗訴した「不正市道認定」住民訴訟の判決とは真逆の、川合善明氏と元市議らの共謀や利益供与について市民が疑った点について「原告らに共謀が認められると考えることが不合理とはいえない」と判示していることだ。「原告ら」とは、もちろん川合善明氏と「不正市道認定」にかかわったと市民らが訴えていた齊木元市議ら事件当事者たちのことだ。
 齋藤裁判長は、川合市長が「不正な市道認定ではなく利益供与も事実無根」と訴えたすべての点について、次々と疑問を呈する判断を示したのである。

前掲判決文からポイントを抜粋しよう。

齊木元市議は本件市道認定等に相当程度関与していたことが認められ、原告ら(川合善明氏ら)の間に、齊木元市議らの便宜を図る旨の共謀があったと考えることがあながち不合理とはいえない。

本件整備事業の代替地のために本件市道を整備する必要性は高くなかったと考える余地がある。

代替地の割り当て等が本件市道認定等ありきで行われたものであって、もっぱら齊木元市議らの便宜を図るために行われたものであると考えることもあながち不合理とはいえない。

 さらに齋藤裁判長は、川合市長の「市議会で、全員一致で可決した市道認定なのだから違法でないことは明らか」との主張についても、そのことは齊木元市議らの便宜を図るためだったか否かの判断をただちに左右するものとは言い難く、川越土地開発公社の理事会でも問題の土地購入について「適法性や妥当性に疑問が呈されていた」として、「本件市道認定等が違法ではないことが明らかであるとはいえない」と述べている。この「齋藤判決」は、住民訴訟のさいたま地裁判決をちゃぶ台返しにしたかのようなもので、いわば川合市長は、自ら投げた市民4名訴訟という「大ブーメラン」で 大怪我を負ったようなものである。

本紙社主松本の不当性も否定した「齋藤判決」
川合善明市長の胸中やいかに!?

 川合善明氏は、行政調査新聞の松本が川合善明氏を個人的に攻撃する目的で、市民4名をそそのかして住民訴訟させた不法行為である旨を繰り返し主張していた。この点についても「齋藤判決」は川合善明氏の主張を一刀両断にしている。以下は判決文の該当部分の要約。

原告(川合善明氏)は、別件住民訴訟は、原告に敵対的感情を抱く松本らが画策、主導し、原告個人を攻撃する不当な目的で提起された訴訟であるから、不当訴訟に当たるとも主張する。しかしながら別件住民訴訟における被告ら(市民4名)の主張が、松本の記事に影響されたものであるとしても、そのことから直ちに松本らが別件住民訴訟を画策、主導したということはできない。

原告(川合善明氏)個人に対する嫌がらせ等の不当な目的をもって別件住民訴訟を提起したことをうかがわせる事情もないから、原告(川合善明氏)の主張は採用することができない。

 ほとんど痛快なまでに川合善明氏の主張を全面的に撥ねつけているといえよう。また、この判決は自ずと本紙松本による一連の「川合市長糾弾」言論活動に不法性がないことを示す判例になったといえるものだ。最近本紙が報じた「市道不正認定事件住民訴訟」の控訴審不当判決と比べて、市民4名訴訟での齋藤判決が、いかに川合善明氏の主張を全否定しているかは一目瞭然である。
 特にさいたま地裁判決が完全に無視した代替地希望者についても言及している点で、「齋藤判決」は、まるで「市道不正認定」住民訴訟の一審判決を誤りだと示唆するような爪痕を、別事件であるこの裁判の判決文に残したようにも思える。
 この判決文は、齋藤裁判長が傍若無人な提訴を繰り返す川合善明氏に警告を込めて書いたとさえ思える。これまで齋藤裁判長を精神的に頼りにしていたとも思える川合善明氏は、この判決をどのように受け止めているだろうか?

「非常に特殊な事件」住民代理人清水勉弁護士が「判決後に記者会見」

 本事件の「被告」市民4名の代理人・清水勉弁護士は、さいたま地裁川越支部での判決後、場所を埼玉県庁記者クラブに移して、NHK・朝日新聞・時事通信らメディアを前におよそ1時間の記者会見を開いた。

清 水 勉 弁護士

 この裁判は、原告の一部の人間を選んで、特定の人物を困らせようとしているかのような川合善明氏の訴えでした。
 住民訴訟を提訴したことが不法行為ならば、23人全員を訴えなければおかしい。4人だけにしていることが1人1人を品定めして訴えている感があります。現に原告の主張の中には、4人それぞれに対して、この人物はどういう人物かが主張されている。このようなことは住民監査請求や住民訴訟を行う人たちにとって非常に恐怖を感じる。
 この裁判は市長が個人の立場で本人訴訟を起こすという非常に特殊な裁判でしたが、結論的には裁判所がちゃんと分析して違法ではないと結論付けてくれました。

 清水弁護士と出口かおり弁護士は、本事件の端緒となった3年に及ぶ住民訴訟を戦い抜いた末に不当判決の苦汁をなめたが、この日は一転して勝訴の喜びに表情も明るいように見えた。判決翌日(24日)、「川合善明氏敗訴」を報じたメディアはなかった。そもそも川合善明氏がこっそり起こしていた裁判であったから、清水弁護士が記者会見で説明するまで川合善明氏が裁判を起こしていたことを記者たちが知らなかったとしても不思議ではない。
 事件を知っていた川越支局の各紙記者も、いつもながらの市長への忖度(そんたく)なのか、はたまた川合善明氏の毎度の「ご乱心」とばかりに取り合わなかったのかもしれない。だが、この事件と判決は、本来なら中央メディアが大きく報じるべきものだ。住民訴訟という住民の権利行使に脅しをかける、川合善明氏のような首長が実在するという事実、そうした存在がいかに民主主義社会にとって危険なものであるか、そして主権者を踏みつけた川合善明氏が裁判で敗北したという事実を広く国民に知らしめることは、同じような悪政がはびこる他の自治体での市民活動や住民訴訟の一助にもなるからだ。
 清水・出口両弁護士は、この裁判では勝っても負けても記者会見を開くと本紙に話していたが、その真意は、本事件が一見「デタラメ市長が墓穴を掘った」地味な裁判に思えて、極めて深刻な民主主義の根幹を揺るがすほどの事件だったからである。結果的にこの日の「齋藤判決」は、さいたま地裁が棄却した住民訴訟「不正市道認定」での清水・出口両弁護士の主張が誤りではなかったことを証明するかたちとなった。「試合に負けて勝負に勝つ」とは、まさしくこのような展開を指す言葉だが、皮肉にも市民らに勝利をもたらしたものは、川合善明氏自身のスラップ訴訟だったのである。

新たな裁判長…「女性市民A氏」に対する川合善明氏の訴訟

さて、市民側の勝訴となった市民4名訴訟に先立ち、さいたま地裁川越支部では、同じく川合善明氏が原告の別件裁判が開かれた。川合善明氏が個人として、清水・出口両弁護士と「女性市民A氏」を名誉毀損で訴えた、200万円の損害賠償を求める事件の裁判である。事件は本紙社主松本が、弁護士としての川合善明氏を懲戒請求した際の弁明書に川合氏が「女性市民A氏」の事を書き、それに関し女性市民A氏が松本に虚偽の証言をしていたというものだ。
 さらに川合市長は、氏代理人の清水・出口両弁護士も、A氏がウソを言っていることを知りながら、本紙松本の代理人弁護士として書面に書いたから不法行為になるのだと、清水・出口両弁護士までを被告として訴えたのである。
 この女性市民A氏こそは、同日市民4名訴訟で勝訴した4人の市民のうちの1人だ。川合善明氏の女性市民A氏に対する敵意は異常で、女性市民A氏を同時並行に3件の事件で訴えているのである。そのうちの1件、市民4名訴訟は前述のように川合善明氏の敗訴となったが、川合善明氏による女性市民A氏に対するスラップ訴訟はまだ2件も係争中である。だがこの日、いつもは嬉々として法廷の原告席に座る川合善明氏の姿は法廷になかった。
 原告席には川合善明氏の代理人・坂本慎二弁護士と齊藤洋弁護士、被告席には清水勉弁護士と出口かおり弁護士、女性市民A氏代理人谷合周三弁護士の3名が着く。開廷時間となり入廷したのは、本事件の前任裁判官で退官した齋藤憲次裁判長の後任で、新たに本事件を担当する飯塚圭一裁判長である。

 清水弁護士によると、飯塚裁判長は、さいたま地裁熊谷支部からの異動だという。裁判長が変わっても裁判自体は原告の準備書面の提出と、それに対する被告の反論予定の確認といった、数分で閉廷した口頭弁論であった。新たな裁判長でも前任・齋藤憲次裁判長による裁判記録に目は通す。そのうえで本事件についてこれ以上審理の必要がないと判断していたのか、飯塚裁判長は「次回その主張や補充をしたうえで終結ということを念頭において進めていきたいと思います」と、次回で結審する方針を述べた。ところが、ここで川合善明氏代理人坂本弁護士が「立証に対して尋問も必要だと考えています」と裁判長に発言した。
 すると飯塚裁判長は、坂本弁護士の方を無言で見据え数秒間の沈黙があり、「次は結審にしようと言っているのに、何を言い出すんだ!」と言わんばかりの驚きの表情を見せたのである。被告席の清水弁護士らが黙っていると、今度は齊藤弁護士が立ち上がり「被告側も証人尋問をする考えはないのか」と被告側に確認した。
 被告側はしばし沈黙したが、「市民女性A氏」代理人谷合弁護士が「検討します」とだけ答えた。だが飯塚裁判長は、これにも関心を示す様子はなく「その点も含めてご準備頂けますか。そのうえで裁判上、その必要性について判断させて頂きます」と告げ、次回期日は2022年2月24日に決まった。

「おれ様市政」の崩壊が始まった?!

 裁判終了後、清水弁護士に飯塚裁判長の印象を尋ねると「前裁判長の引き継ぎ事件を確認して、変な事件を溜められていると見て、早く終わらせたいと思っているのではないか」とのことであった。また、出口弁護士は「原告は川合善明氏がセクハラをした事実があったかが問題だと主張しているが、それ以前に原告の請求は成り立たないと思っている雰囲気があった」とコメントした。

 清水弁護士のいう「変な事件を溜められて」とは正鵠を射る表現だろう。無論、これは飯塚裁判長が「変な事件」と口にしたわけではない。だが川合善明氏が女性市民A氏を的にかけた一連のスラップ訴訟は、仮にこれが一般人による提訴であれば即決裁判に等しいスケジュールで処理(判決)されていたはずだ。しかしタチの悪いことに原告川合善明氏が弁護士であり川越市長であることから、裁判所も門前払いのようなスピード結審をやりにくかったのではないか。
 その一方で、川合善明氏の訴状や準備書面に並ぶ主張たるや「これが本当に市長で弁護士という人物の提訴なのか?」と目を疑うようなものだらけであることから、裁判長からすれば、まさしく「変な事件」としか言いようがなく、それが何件もあるのだから、この際「市長」だからなどという遠慮はせず、赤字(未処理事件)解消のために、さっさと片づけたいと考えてもおかしくない。
 それに加えて、「市道不正認定」住民訴訟から本事件まで、川合善明氏による一連の裁判は明らかに濫訴(らんそ)であり、裁判にかかわる全員がいわゆる「無理スジ(強引な理屈)」だとわかっている。わかっていないのは川合善明氏だけである。混沌をさらに混乱させるような川合善明氏の「おれ様裁判劇」で、川合善明氏の訴えを全面棄却した齋藤憲次裁判長の判決は、川合善明氏に相当な大ダメージを与えることになるだろうと本紙は予見する。大袈裟に言えば、「齋藤判決」は川合善明氏のこれまでの主張のすべてを封印してしまったと言っても過言ではないだろう。予てから本紙が追及してきた川合市政の不法行為について、初めて裁判所がその疑惑を「不合理とはいえない」と判示したからである。

 口を開けば「事実無根」「捏造」だと本紙の言論活動に罵声を浴びせてきた川越市長・川合善明氏の主張が疑わしいことが司法によって指摘されたのである。公権力たる「市長」の立場に利して、司法さえも意のままに動かせると増長し慢心した川合善明氏は、今後、あらゆる場面で追い詰められていくことになるだろう。
 そう、市長任期あと3年を残して「おれ様市政」崩壊のカウントダウンが始まったかもしれないのである。

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