米軍による北朝鮮攻撃「Xデイ」は、あるのか?
北朝鮮漁船の漂着が続いている。「冬季漁獲戦闘」との命令で海に出た老朽漁船が遭難しているようだ。だがその裏には、北朝鮮の非常事態が透けて見える。
ICBMミサイル発射実験により米本土全域を射程に捉えたと豪語する北朝鮮が、その奥底で国家崩落の危機を迎えている可能性が高い。それは難民問題や武器・覚醒剤・病気の流入など、わが国に壊滅的打撃を与える可能性がある。
あいつぐ木造老朽船の漂着
11月23日―新嘗祭(勤労感謝の日)の深夜11時30分頃に、秋田県由利本荘市の海岸から「不審者がいる」と110番通報があった。嵐の海岸には粗末な木造船が漂着しており、乗組員らしい男8人が保護された。
彼らは「1か月前に漁に出たが船が故障した。北朝鮮に帰りたい」と語ったという。木造船は長さ20メートルほど。船内にはイカ釣り漁の道具や食料があり、船体にはハングル文字と数字が書かれていた。
11月26日には秋田県男鹿市で漂着木造船が見つかり、船から一部が白骨化した遺体8体が見つかっている。同日、青森県の深浦では無人の木造船が発見されたが人は見つかっていない。また同じこの日、新潟県佐渡の海岸でも木造船が見つかり、数百メートル先には白骨化した遺体が1体見つかった。ただしこの遺体が木造船のものかどうかは不明だ。その翌日、11月27日にも青森県佐井村で漂着船が見つかっている。
さらに11月28日には北海道の無人島、松前小島に北朝鮮籍の漁船が漂着し、10人の乗組員が確認された。彼らは「悪天候のために避難した」と語っていたが、漁師小屋からテレビなどの備品を盗み出していたことも判明。その後、函館港まで曳航され取り調べを受けているが、船内から「朝鮮人民軍第854軍部隊」と書かれたプレートが見つかっている。北朝鮮では軍が生産現場で働くことは一般的で、農業・漁業などに従事する例も多い。
党の水産政策を決死完徹し、漁獲高を上げよ
あいつぐ漁船の遭難・漂着は、北朝鮮の国家事情がもたらした「不幸な物語」として紹介されている。慢性的な食糧不足を解消するために国家として漁業を奨励し、厳冬の海に出て漁をすることを「冬季漁獲戦闘」として朝鮮労働党が呼びかけたという。
北朝鮮の党機関紙「労働新聞」紙に政府の要望として掲載されたものだ。「冬季漁業は年間水産物生産計画の成果を左右する重要な闘いだ」(労働新聞11月7日)
漁師たちが狩り出され「年間300日出漁」という過酷な労働についていることも、彼らの漁船が老朽化した木造船であることも多くの日本人は情報として知っている。それは間違いのない真実である。
だが一方で、北朝鮮の漁師の中にも一攫千金を夢見て無理する人々もいるのだ。金正恩体制になってから、北朝鮮では市場が活性化している。そのため、末端の人民の中に多少の潤いが生まれていることは事実だ。中国からの情報によると、北朝鮮の漁師の中に成金(成功者)がかなりの数に上っているという。自分も漁獲量をあげて成金になってやろうと必死になる漁師がいても不思議ではない。
同時に考えるべきは、この状況を好機と捉えている人々がいることだ。老朽船で特攻のように冬の海に突入するという絶望的な状況を、千載一遇のチャンスと捉える人々がいる。日本に侵入しようとする北朝鮮工作員もそんな連中の一人である。
復活した「北朝鮮産覚醒剤洋上取引」
北朝鮮で作られた麻薬・覚醒剤が日本に大量に流れ込んでいた時期があった。
1990年代の末期のことだ。1998年(平成10年)夏に、高知県沖の海上で大量の覚醒剤を海保(海上保安庁)が回収している。北朝鮮の工作船が運んできた300キロの覚醒剤を受け取った暴力団が、海保の巡視艇に追われて慌てて海上に投棄したものだった。
300キロは異常な多さだが、50キロ・100キロ程度の覚醒剤密輸事件は1990年代にはちょくちょく起きていた。
だが今世紀に入ると海保や警察の取り締まりが強化され、北朝鮮からの麻薬・覚醒剤密輸は根絶されたと思われてきた(かわりに中国・台湾ルートが活発化したといわれる)。
それが2013年、14年あたりから再び北朝鮮ルートが復活し始めたという。
理由の一つとして、国連安保理による北朝鮮制裁決議により締め上げられて苦しくなった北朝鮮軍部の一部が、麻薬・覚醒剤密輸に手を出していることが考えられる。
また日本側にも理由がある。10年以上の長期刑を喰らった暴力団幹部が出所し、再び洋上覚醒剤取引を開始したのだ。カネに困る北朝鮮と北朝鮮産覚醒剤を求める悪質暴力団(在日も多数含まれる)の結びつきは、今後の日本社会に低質な覚醒剤をもたらす恐れがある。覚醒剤に限らず違法な危険物が北朝鮮からやってくる可能性も高まっている。1990年代には北朝鮮から拳銃や弾薬も運ばれたが、モノだけではない。
最近急増している梅毒(性病)すら、意図的に流された可能性もある。そして最も危険なものは、日本社会を混乱に向かわせる工作員の侵入だ。
「米軍による北朝鮮攻撃はない」という大前提
11月29日未明に北朝鮮はICBM(大陸間弾道弾)の発射実験を行った。ミサイル発射実験は9月15日以来のもので、高度4500キロというロフテッド軌道で打ち上げた「火星15号」は日本のEEZ(排他的経済水域)に着水した。このミサイルは米本土東海岸ニューヨークやワシントンにまで到達できる能力があるとみられる。
高高度から大気圏再突入の精度がどれほどのものか、分かっていない。再突入の際に「複数に分裂した(キャセイ航空パイロットの目撃証言)」ことから、「失敗」の可能性もある。現時点では北朝鮮のICBMは完成品とは言い難いが、核弾頭を米本土に発射できる能力に迫っていることは間違いない。もう一刻の猶予もない。
北朝鮮を話し合いのテーブルで屈服させるか、軍事的に制圧する必要がある。
だが、米軍が北朝鮮を軍事攻撃することは「あり得ない」というのが一般的な見方だ。何故か。かつて米国は北朝鮮攻撃を本気で考えたことが、少なくとも2度あった。
最初は1969年。朝鮮半島近くを飛んでいた米軍偵察機が北朝鮮のミグ戦闘機に、撃墜されたときだ。この撃墜で乗組員31人が全員死亡している。
次は1993年末から94年にかけての朝鮮半島核危機だ。このとき米軍は北朝鮮の寧辺核施設を空爆・破壊する計画を立てた。日本は8党連立の細川政権時代。政府は米国の北朝鮮攻撃を了承し、超法規措置で日本海側に自衛隊と警察による難民防御体制を敷くことを計画していた。
しかし、この時も前回の1969年の時も米軍による北朝鮮攻撃は見送られた。北朝鮮を攻撃すれば隣国・韓国はメチャクチャに破壊され、日本にも相当な被害が出ると想定された。どんなに完璧に攻撃しようが、必ず北朝鮮からの反撃がある。
それは1969年の時も、1994年もそうだった。そして現在、北朝鮮の攻撃力はその当時から遥かに進化し日本全土を捉えるミサイルを完成させ、しかも核兵器まで所有しているのだ。
北朝鮮を攻撃すれば、間違いなく日本も韓国も猛火に包まれる。ソウルは壊滅状態に追いやられるだろうし、日本の場合は米軍基地周辺だけでなく首都東京に核爆弾が落とされるかもしれない。その可能性は誰も排除できない。だから米軍による北朝鮮攻撃は「あり得ない」とされている。果たしてそうだろうか。
陰湿な戦争が極東を揺るがす
1969年4月に米軍偵察機撃墜事件が起きたときのニクソン大統領…24年後の1993年の朝鮮半島核危機に直面したクリントン大統領…も当初は、軍事力で北朝鮮を破壊しようと考えた。そしてそれから24年後の2017年現在のトランプ大統領も、本気で北朝鮮を攻撃しようとしている。
そうしたなか、国連事務次長(政治担当・政治局長)のフェルトマンが訪朝、12月5日には李容浩(リヨンホ)外相と会談し緊迫の米朝関係を修復、国連が仲介して核開発協議を開始する可能性も浮上しているように思える。とくに今回は、北朝鮮側の要望にそった形で事務次長が平壌を訪れるのだから、話が進展することを期待する者も多い。
だが米朝の主張には天と地の差がある。「北朝鮮を核保有国と認めろ」という北朝鮮と「朝鮮半島の非核化」を死守しようとする米国とでは、話し合いなど成立することはあり得ない。どちらかが折れない限り、いつの日か必ず両国は激突する。
現実にどちらかが攻撃を開始すれば核戦争ぼっ発の可能性があり、人類の終焉まで考えられる。だが米国は、かつてその脅威を40数年間の長期に亘り体験してきた「東西冷戦」である。米ソ東西冷戦をひとことで片付けるなど出来るものではない。
だが大雑把に纏めれば「いつでも開戦できる」という極限の緊張状態を続けながら、米ソ両国は背後で様々な政治、外交戦・経済戦・神経戦を複雑に繰り返し、敵を疲弊させ…混乱させ…最終的に米国はソ連を自滅に追い込んだ。
ひとことで片付ければ米国は「情報戦に勝利した」のだ。
いま朝鮮半島で行われているのは、米朝どちらが先に耐えられなくなるかという「チキン・レース」であり、それは形を変えた冷戦ともいえる。
米国は政治的・外交的・経済的に北朝鮮を締め上げている。そのうえ春の米韓合同軍事演習では、過去最大規模の30万人体制で「先制攻撃を仕掛けて敵の親玉である金正恩の首を斬る『斬首作戦』を実施する」と公言。夏には韓国軍の数は減ったが、米軍は倍の兵員を投入。今回もまた12月4日から5日間の予定で過去最大規模となる米韓空軍の合同演習を開始している。
これに対して北朝鮮は「われわれに対する公然たる全面挑戦であり、一瞬で核戦争の火蓋を切る雷管になりかねない」と応じ、米国が北朝鮮の暴発を誘っていると厳しく非難する。米韓合同演習の「金正恩のクビを斬る作戦(斬首作戦)」に関して、世界中はこれを「脅し」だと理解しているが、北朝鮮当局あるいは当の本人・金正恩は単なる脅しとは思わないだろう。
様々な形での米国の圧力は、北朝鮮の政治・軍事・経済を破壊しようと動く。いま朝鮮半島では砲弾も飛んでいないし銃撃戦もないが、静かで陰湿な戦争が繰り広げられている。間違いなく北朝鮮は、現在戦時下にあると認識している。一般に認識されている武器兵器を使用しないこの陰湿な戦争には、ルールがない。何でもありである。汚い手であろうが、ずるいやり方だろうが問題ない。そして北朝鮮は、日本を「敵の一翼」と見なしている。
そんな筈はない。北朝鮮は大日本帝国陸軍が置き残した国……日本の「残置国家」のはずだ。日本のトップの奥深いところと北朝鮮の深奥は繋がっている……そう考える方がいるかも知れない。だが残念なことに、かつて仮にそうだったとしても、それは金正日の時代で終わったのだ。
日本と北朝鮮を繋ぐ「見えない糸」は完全に断ち切られてしまった。断ち切った最後のダメ押しは、来日したトランプ大統領と拉致被害者家族の面談である。
11月のトランプ来日の最大の目的は、天皇陛下との会見であり拉致被害者との面談だった。拉致被害者との面談により日本人は、北朝鮮が「非法で残酷な拉致を行ったこと」を再認識させられ「北朝鮮は悪い国」で「テロ支援国家と認定されるのが当然の国」と強く思うようになった。
自由主義経済とか市場原理主義とか民主主義こそが世界唯一の正義だと、日本人はまたまた学習させられることになってしまった。そんな日本は、北朝鮮にとっては「米国に追随する『悪の属国』」に過ぎない。
日本を混乱混迷に陥れる工作が行われる可能性は高い
このところ、北朝鮮の漁船と見られる木造船が日本に漂着している。それは厳冬の海に狩りだされた北朝鮮の可哀そうな漁民たちだ。だが多くの日本人の同情心を裏切るように、漂着漁船に北朝鮮工作員が紛れ込んできている。
今年4月15日、金日成生誕105周年を記念する軍事パレードが平壌で行われたが、このとき世界中が仰天する行進があった。顔を真っ黒く塗り、サングラスをかけた異常な風体の男たちの行進である。これは北朝鮮軍特殊部隊と思われる。
世界中の軍隊は特殊部隊を持っている。米軍のシールズが有名だが、自衛隊にも特殊作戦群(陸自)・特別警備隊(海自)という凄まじい特殊部隊がいる。北朝鮮軍に特殊部隊が存在することは当然のことで、改めて強調するまでもない。だがその特殊部隊が軍事パレードに姿を見せたことは異常だった。
明らかに北朝鮮は「核やミサイルだけではない。特殊部隊が活動しているのだ」という現実を誇示したのだ。
有事の際に北朝鮮特殊部隊が日本に侵入を試みることは、日本にとっては「想定内」であり数百人単位の特殊部隊に対して、海自・陸自などが包囲・撃退する計画を作っている。万一上陸され、原発・浄水場・政府機関などが狙われる場合に関しても細かな対応策は出来上がっている。
安倍首相も国会答弁で、「日本政府は最大数万人の難民が船で日本海を渡ってくると想定しており、日本海側に数カ所の拠点となる港を選定し、その拠点港において身元や所持品を調べ、北朝鮮の工作員やテロリストの入国を防ぐ。また、北朝鮮が韓国を攻撃した場合は韓国からも難民が来ると想定し、臨時収容施設の設置計画を検討するとしている」(4月17日 衆院行政監視委員会)と答えている。
だがこれは北朝鮮有事の場合であり、いま現在のような「見かけ上は平穏な状態」とはちがう。総数20万人と推測される北朝鮮軍特殊部隊は、いま…どこで…どのような活動を展開しているのか。それは不明だ。韓国や中国そして米国にも入り込んでいるだろう。そして間違いなく日本にも……。
彼ら特殊部隊が日本に侵入したときは、顔を黒く塗ったりサングラスをかけていることはない。彼らは、背広…ネクタイ…あるいは作業服を着て時には、中年の女性として群衆の中に紛れ込み「陰湿な戦争」の重要局面で日本の中枢機能を破壊する。
狙われるのは交通網・電気・ガス・水道・通信といった生活インフラが中心になるだろう。ATMが1週間止まったら、国民の生活はどうなるだろうか。電気・ガス・水道が止まったら……。現実に交通網に対する攻撃はすでに実験済みの可能性もある。
米朝は現在、陰湿な冷戦を繰り広げている。
日本がその前線に立たされているという自覚は、多くの日本人にはない。
米軍による北朝鮮攻撃は「絶対にあり得ない」か…
米軍による北朝鮮本格攻撃は「あり得ない」とされる。核施設だけを狙った空爆であっても北朝鮮は間違いなく報復攻撃を行い、韓国にも日本にも想像を絶する甚大な被害が出る。在日、在韓は勿論グアム島まで含めた極東の米軍基地、あるいは米本土まで攻撃される可能性がある以上、米国は決して北朝鮮を攻撃しない攻撃できないといわれている。本当だろうか。
ニクソンもクリントンも日韓に甚大な被害が出ることを考慮して、北朝鮮攻撃を行わなかった。現在のトランプも米ソ東西冷戦の再現かのように、いつでも開戦できる状態を持続させながらチキン・レースを展開し、敵の自滅を待っているのが現状であると国際事情通の多くが分析している。
だがそれは前世紀流の甘ったるい分析に過ぎない。戦争に被害が出るのは当然の話だ。何万人…何十万人…何百万人の被害が出ようが、戦争を止める理由にはならない。人類の歴史が、それを証明している。そして世界情勢は20世紀とは全く変わっている。米国は軍事的にも経済的にも文化的にも弱体化してしまった。ロシアは米ソ冷戦の緊張から、かなりの部分で解放された。そして何より中国の巨大化である。
今年10月、米国の非営利・超党派のアジア戦略研究機関である「プロジェクト2049研究所」が衝撃の本を出版した。
『中国侵略の驚異(The Chinese Invasion Threat)』(イワン・イーストン著)である。
この本によると、中国は2020年までに台湾侵攻の準備を完了させる。中国軍40万人が瞬時に台湾に上陸し、米国が何らかの動きを起こす前に台湾を完全制圧する。
2040年までには、尖閣諸島奪還の準備を完了させるというのだ。
この本の真偽がどんなものかは、ここでは問題ではない。
この戦略研究機関が非営利・超党派の「米国の意志」であることは間違いない。
米国は中国をこのように捉えているということが重要なのだ。2年後の2020年に中国が台湾を統一し、尖閣を奪還するという東アジアの状況の下で米国はどう動くか。これを考える必要がある。
いま北朝鮮を壊滅させ半島統一に向けての動きが加速されると、やがて米国は東アジアから出て行かざるを得なくなる。米国の睨みがなくなったとき、東アジアの勢力図はどう変わるか。北朝鮮問題の奥底には、米国対中国あるいは米国対ロシアの問題が潜んでいる。
現在本紙の元に、米軍が年内にも北朝鮮攻撃に踏み切る可能性があるという極秘情報が流れてきている。中途半端なところから流されたものではない。
信頼できる情報筋からのものだ。だが本紙は、これは米軍が意図的に流出させた偽情報と確信している。こうした極秘情報もまた、北朝鮮に対する圧力の一環と考える。米朝の緊迫した対峙状況は、まだ当分は続くと考えるべきだろう。
ギリギリの緊張状態を継続し、衛星やレーダー網をフル回転させ、米空軍・米海軍その他の強力部隊が朝鮮半島周辺に何時でも結集できる状況を作り上げておくこと。それが米国の当面の狙いだろう。日本はいま米朝対峙の最前線にある。北朝鮮工作員は、いますぐにでも破壊活動ができる状況にある。
私達は、そんな中を生きているという緊張感を持つべきではないだろうか。