イスラム国テロが日本に飛び火する! | 行政調査新聞

イスラム国テロが日本に飛び火する!

――邪悪な組織ISが日本を狙う理由――

 1月14日にインドネシアの首都ジャカルタ中心部で爆発テロがあり、死者8人(うち4人は犯人)、負傷者26人の惨事となった。このテロで警察は12人を逮捕したが、「イスラム国インドネシア支部」を名乗る組織が犯行声明を出している。フランスでもテロ事件を起こした「イスラム国(ISまたはISIS)」がついに東アジアに進出してきたが、彼らが最終ターゲットにしているのは日本だという。なぜ日本が狙われるのだろうか。

「イスラム国」の現状

 昨年(2015年)11月末にシリア・トルコ国境付近でロシア軍機が撃墜されたが、ロシア軍はこれに怯(ひる)むことなく、シリア・トルコ国境を行き来する「イスラム国」物資を攻撃している。お陰でトルコによる「イスラム国」支援ができなくなり、「イスラム国」は弱体化しつつある。

 「イスラム国」は石油密売などで月に8000万ドル(約100億円)以上の収益をあげ、この潤沢な資金で傭兵を確保していた。ところがシリア・トルコ国境をロシア軍に制圧され、密輸ルートが断たれて収入が激減。「イスラム国」の傭兵は給料が減らされたうえ、税金まで取られるようになった。さらにトルコからの傭兵流入も難しくなり、1月8日には地中海に潜んでいたロシア潜水艦ロストフナドヌーが「イスラム国」にミサイルを発射。潜水艦からの攻撃は初めてだったが、シリア北部「イスラム国」支配地ラッカの弾薬庫、石油貯蔵施設、兵器工場が壊滅的ダメージを受けた。

 米国とイランが和解し、イラン制裁が解除され、シリア内戦問題がロシアの手に一任された現在、「イスラム国」は早ければ年内にも終焉の刻を迎える可能性もある。ところが一部情報では「イスラム国」はなお健在で勢力を盛り返すだろうとの観測も流されている。中東の「イスラム国」が再生されるだけではなく、「イスラム国」戦士が各地に飛び散って、世界同時多発テロを行う可能性も指摘される。世界経済同時不況が予測されている今年、経済以上に危険な重大事件が起きる可能性が高まっている。

サウジとイラン「国交断絶」の意味

 サウジアラビアとイランが国交断絶関係に陥った。アラビアとペルシア(イラン)といえば古代からこの地域の覇権を争う王者だが、これは中東ハルマゲドンの序章なのだろうか。
 サウジは多くがイスラム教スンニ派で、スンニ派の総本山と目されている国だ。シーア派といえばイランを想像するほどで、イラン国民の96%がイスラム教徒でその内の70%がシーア派だ。スンニ派のサウジとシーア派のイランが昔から仲が悪かったことは否定できない。だがサウジの東部には多数のシーア派教徒がいて(東部州人口の43%はシーア派)、サウジとイランの国交断絶をスンニ派とシーア派の対立だけで語れるものではない。

 サウジは1月2日に47人のテロリストたちを処刑した。正月早々の47人の死刑執行は、46人のスンニ派テロリストと1人のシーア派聖職者ニムル師だった。シーア派のニムル師は、サウジ東部の出身で若い頃にイランに宗教留学し、サウジに戻って反政府活動を展開していた人物。サウジ政府としては当然の処刑だったが、これに東部シーア派の人々だけでなく、イランやイエメンのフーシ派までもが激怒した。イランの首都テヘランではニムル師処刑に抗議する群衆がサウジ大使館に押しかけ乱入、放火する騒ぎまで起きている。

 奇妙なことにサウジはニムル師など47人を処刑すると同時に、イエメンとの停戦協定を破棄。サウジと同盟国(従属国)バーレーン、それにスーダンを加えた国々と、イラン・イエメンとが対立する構図が中東に誕生した。サウジが意図的に作り上げた対立である。

 いったいなぜこんな対立が出現したのか。イスラム教内部のスンニ派対シーア派の対立を煽る勢力(イスラエルなど)が介在したとの説もある。一般的に有力な説とされるのは、制裁解除で国際的地位を確保できるようになったイランをサウジが潰しにかかったとの説だ。アラビアとペルシアの覇権争いといえば、大昔からの構図で、これは当然の分析で国交断絶はそうした意味が籠められている。しかし、理由はこれだけではない。

 原油価格が暴落しているうえ、制裁解除されたイランが原油輸出を拡大することで焦ったロシアが、中東混乱、石油価格暴騰を仕組んだという陰謀説も飛び出しているが、これは完全な見誤りである。真相はもっと単純だ。サウジとトルコが組んで、イラク北部の油田権益を奪いにいったものだ。しかもそこには姑息な方法だが、一時的にサウジによる「イスラム国」再生プログラムが作動している。

石油利権にたかる卑しい軍団

 サウジが「イスラム国」再生のプログラムを発動させるなどあり得ないという人々もいる。サウジは米国勢と一緒に「イスラム国」を空爆し、殲滅しようとしている。そんなサウジが「イスラム国」を再生させるなど考えられない――というのは、表面しか見ていない常識人の判断である。砂漠の民は昔から対立する両方を支援してきたものだ。どちらが勝っても自分を「勝利者の仲間」にするためだ。現実にサウジは「イスラム国(サウジと同じスンニ派)」を攻撃しつつ、裏では「イスラム国」にカネを渡していた。それは決して複雑な話なのではない。中東では当然の物語なのだ。

 サウジがニムル師を処刑した夜、テヘランでは群衆が騒ぎ、サウジ大使館に押しかけ放火したが、警察はほとんど動かなかった。そして大使館放火を理由にサウジはイランと国交を断絶した。表面的には――あくまで表面的には、サウジもトルコもイランも「イスラム国」を敵として叩いていた。だが現実には、トルコとサウジは「イスラム国」と通じ、裏から支援してきた。サウジとイランが断絶したことで「イスラム国」包囲網が分断された。

 つい2年前までイラク北部の油田地帯はイラク(シーア派)が掌握していた。「イスラム国(スンニ派)」がこれを奪い、石油密売を始めた。ところがロシア軍の本気の攻撃で「イスラム国」が北部油田地帯から撤退する可能性が高まってきた。これを元のイラク(シーア派)の手に戻すのはもったいない。そこでサウジとトルコが手を組み、とりあえず「イスラム国」を支援し、最終的に自分たちが手に入れようと企んでいる。事実、1月1日からサウジはトルコとの「戦略的協力関係」を締結。これまで閉鎖していたバグダッドのサウジ大使館を再開させ、それに伴い、イラクから撤退したトルコ軍が再度サウジの支援を得てイラクに駐留し北部油田地帯に軍を展開させている。何のことはない、サウジとトルコが他国(イラク)の石油を山分けしているのだ。

「イスラム国」のテロリストが日本を狙う

 「イスラム国」戦士は多くが傭兵である。傭兵にとって戦場はシリア、イラクに限定する必要はない。世界各地に「イスラム国」のテロが起きる可能性は高い。現実にパリではテロが起きているし、インドネシアのテロも「イスラム国」が介在していることは間違いなさそうだ。

 ヨーロッパで最大のムスリム(イスラム教徒)を抱えるフランス、しかもシリアの旧宗主国フランスがテロの標的にされる理由は理解できる。インドネシアは世界最大のムスリム人口2億4000万人を抱える国家であり、ここでムスリムによるテロが起きることも想像に難くない。東南アジアには他にも1億人近いムスリムがいるフィリピン、9000万人を抱えるベトナム、7000万人のタイ、5000万人のミャンマーなどがあるが、ムスリムの人口が多ければテロが増えるわけではない。ムスリムと「イスラム国のテロ」とは、じつのところ無関係だ。

 「イスラム国」を攻撃する米欧各国やロシアがテロの標的になることは理解できる。だがテロの矛先が日本に向かうことなど常識的には考えられない。ところが日本がテロの標的とされているというのだ。なぜか。「イスラム国」は「十字軍とその手先」を攻撃目標にすると公言している。(十字軍とはイスラム教徒の手に落ちた聖地エルサレムをキリスト教徒の手に取り戻す目的で作られ、中東に攻撃を仕掛けた中世のヨーロッパの軍隊のこと。十字軍が中東遠征を行った目的等は複雑なので、とりあえず簡単に表現した。)

 米国の片棒を担いでいる日本は、たしかに「十字軍の手先」となっており、それだけでテロの標的とされる可能性があるのだが、日本を狙う理由は他にある。イスラム世界が日本を好み、あこがれている面がある。それを破壊したい勢力が存在するのだ。

日本にあこがれ尊敬するムスリムたち

 日本と中東各国との間にはさまざまな絆があり、物語があり、歴史がある。
 たとえばトルコだ。明治23年(1890年)にオスマントルコの軍艦が和歌山県沖で台風により沈没し死者行方不明者580名以上を出す大惨事となったが、このとき串本の住民が総出で必死の救出活動にあたり、約70名を救出、手厚く看護して生存者全員を本国に送り届けた。これはトルコでも大評判のニュースとなり親日感情が強まったのだ。さらにその後の明治37年に始まった日露戦争で日本がロシアを破ったこともトルコには好感をもたれ、それが1980年(昭和55年)にイラン・イラク戦争が勃発した際に、イランに取り残された日本人338名をトルコ航空機が救出するという世紀の大救出作戦につながり、多くの日本人が涙を流してトルコに感謝したものだった。こうして日本とトルコの間には強い結びつきが生まれ、その関係は現在も続いている。

 イラン(ペルシア)とも結びつきは強い。古くは正倉院御物にペルシアのガラス白瑠璃碗があるところから始まる。明治11年(1878年)には榎本武揚がペルシア国王と公式会見しているが、日本イランの緊密関係は何といっても昭和28年(1953年)の日章丸事件だろう。

 戦後独立したイランは石油の国有化を宣言した。だがイランの石油資源を握っていた英国がこれに怒り、イランが石油を売らないように英軍艦が海上封鎖を行った。出光興産の出水佐三社長はこの封鎖は国際法上正当性がないと判断。英海軍の包囲網の目を盗んでタンカー日章丸をイランの港に着岸させ石油買い付けを行ったものだ。戦後まもなく、日本が独立した翌年の話であり、当時は「敗戦国日本が英国海軍に喧嘩を売った」と騒がれたものだった。この件でイランは石油を売ることができ、これが原因でその後の世界の石油取引が自由貿易となったものだった。

 日本と中東諸国との関係は枚挙に暇がない。昭和13年に東京代々木に建設された東京モスク(東京回教学院)や同年に東京に作られた回教圏研究所、あるいは大正6年に三菱の岩崎久弥が作った東洋文庫も中東との関係を密接なものにした研究所だったと思われる。そしてムスリムを惹きつけた巨大な事件は昭和47年(1972年)5月のテリアビブ空港乱射事件だろう。イスラムとは関係のない3人の日本人がカネのためでもなく名誉のためでもなく、自らの命を捨ててイスラムのためにテロを起こした――。この事件で一人生き残った岡本公三はムスリムから神のように尊敬され、この事件が元でイスラムの自爆テロが生まれたのだ。

 中東の、そしてムスリムの多くは日本に対してたいへん好感を抱いている。世界の中で日本だけを特別視している。それが気に入らない人々がいる。とくにアジア進出を狙う欧州勢にとって、イスラム世界で日本が人気であることは許し難いものなのだ。日本と中東とが対立し、憎み合う形を構築したい。そのためにはイスラム世界が日本を嫌い、日本を憎むように仕掛ける必要がある。そしてまた、日本人がイスラム世界を嫌うようにしなければならない。こうした理由で「イスラム国」の傭兵が使われる可能性がある。この構図を理解しておく必要がある。

ジェマ・イスラミーアの変質

 ムスリムが多く住む東南アジア諸国には古くからイスラム過激派が組織を作っていた。それらはひと言で「過激派」とまとめられるが、実態はそれほど過激ではなかった。とはいえ、貧しく虐げられた人々が反政府活動を展開するのだから、闘争がいくぶんか過激になることは必然だった。

 こうした反政府イスラム過激派集団は、東南アジアではジェマ・イスラミーア(略称JI)がよく知られる。ジェマ・イスラミーアはインドネシアを中心にタイ南部、マレーシア、シンガポール、ブルネイ、フィリピンに展開していた巨大組織だ。過激派としては他に、フィリピンで活動するモロ・イスラム解放戦線、アブサヤフ、あるいはタイ中心に活動するパッターニ統一解放機構などがある。これらとJI(ジェマ・イスラミーア)とは密接な関係を築いており、東南アジアのイスラム過激派はJIにまとめられるともいえる。
 そのJIだが、911米国同時テロ以降、大きく変質した。一部には911テロ事件以降、おとなしくなったとか、地下に潜ったという評価もある。いずれにしても正体が掴みにくくなった。

 911以降、JIが主導したと考えられる爆破テロがいくつかある。2002年のバリ島爆弾テロ、2004年のジャカルタ市オーストラリア大使館爆弾テロ、2005年にはまたもバリ島で爆弾が破裂。これらはJIの仕業だと考えられている。しかしその後警察の取り締まり強化、逮捕者の続出で組織は弱体化し地下に潜る。そしてJIの首領だったヌルディントップがテロ特殊部隊との銃撃戦で死亡(2009年9月)。翌年にはJIの精神的指導者と目されていた聖職者アブ・バカル・バシル師が逮捕拘束され、空中分解直前にまで陥ったJIは、遠く離れたパキスタンの活動家でヌルディントップの親分であるアッバスを頼ったが、アッバスは武装解除を宣言。2010年をもってJIは過激闘争を中止したことになっている。

 ところがJIは現実には活動を中止していない。それどころかアジア各地のイスラム過激派と連携して、さらなる過激な地下活動を訓練中だという情報がもたらされた。東南アジアの闇組織からの情報で、確たる証拠はないが、精度の高い情報だと認識している。JIに接近しているのは中央アジアのキルギスやウズベクを中心に活動するヒズブアッタハリル(解放党)だという。

 解放党は1953年にヨルダンで設立され、その後本部を英国ロンドンに移し、またパレスチナに移転したが機能の中心をロンドンに置いている。アルカイダとは別系統のアルカイダなどと表現されることもあるが、一説では彼らに資金を提供しているのはサウジ王家だとされる(これは噂の域を出ていないので、頭の片隅に入れておくことだと思う)。ロンドンに機能中心を置いているところが非常に気になる。

 解放党の思想を注入されたJIは「虐げられた貧しい民は、新しい原則、新しい文明、新しい価値観としてのイスラームを樹立する」ための世界革命を起こすと語る。そこには古くから中東の民が持ち続けてきた親日的感情は存在しない。彼らが何者かに操られているとしたら、今年中にも日本にテロ事件が発生する可能性がある。

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