姿の見えない「敵」に注意 | 行政調査新聞

姿の見えない「敵」に注意

中東や東アジアで緊張が続くなか、怪しい噂話が乱れ飛んでいる。噂を信じてビクビクすることはないが、注意は怠らないようにしたいものだ。

関東上空に謎の光体が出現

さる1月21日早朝、関東地方上空に大きな音と無気味な光が出現。隕石が落下したのか、UFOが現れたのかなどと大騒ぎになった。映像も撮られているが、落下物はまだ確認されておらず、隕石が鹿島灘に落ちたとの見方が強い。

目撃者の証言や映像を見る限り隕石と思われるのだが、謎となっているのは強烈な光と同時に聞こえた大きな音だ。隕石が大気圏に突入したときの衝撃音だとしたら、光が見えてから数分以上も後から聞こえてくるはずだ。しかし目撃者のほとんど全員が、「光が走る(流れる)のと同時に大きな音がした」と話している。調べてみると、火球が出現したときに大きな音が鳴り響くことは多く、その原因は「電磁波音」ではないかと推測されているが、正確なことはわかっていない。

火球とは流星や隕石の落下などの際に見られることが多いが、航空機や雲に映る太陽、月などを誤認することもある。また火球をUFOだと騒ぐこともあり、目撃者や周囲が冷静に判断することが望ましい。

正体が不明の光体はたくさん目撃される。空中で何かが光っても、多くの人はあまり気にもとめない。世の中にはUFOが大好きな人々がいて、彼らは正体不明の飛行物体を見るたびに「UFO出現」と騒ぎ立てる。311大震災後の福島原発上空にもたくさんのUFOが飛来したらしい。これを見て「宇宙人が原発の状況を確認しに来ている」などと脳天気に解説するUFOオタクもいたようだ。

UFOは実在する

ここで断言しておくが、UFOそれ自体は間違いなく実在する。記者自身も何度かUFOを目撃しているし、周囲にも目撃者は多い。初めてUFOを見たのは40年ほど昔のことで、場所は東京練馬だった。午後遅く、上空にやや細長い灰色の物体が浮かんでいた。通りかかった老紳士と主婦も気づき、3人で見上げていたが、しばらくするとその物体は西の方向に流れるように移動して見えなくなった。翌日の新聞に「練馬でUFO騒ぎ」といった小さな記事が載ったところを見ると、目撃者は多かったようだ。

家族を乗せて車を運転中にもUFOを見ている。はるか上空に小さな光点が見え、次の瞬間その光は車に向かって急降下し、ぶつかると思って慌てて急停車したほどだった。

周りにもUFO目撃者はいる。UFOの存在は疑っていない。しかしそれが地球外宇宙から飛来してきたなどと考えたことはない。そもそもUFOとは「未確認飛行物体(Unidentified Flying Object)」のことであり、宇宙人の乗り物を指しているわけではない。

昭和63年(1988年)にソ連国立UFO研究所所長のウラジミール・G・アジャザ博士が来日した。ソ連の科学者はUFOをどう考えているのか。そのとき短時間のインタビュー取材を行ったが、博士は言葉を吟味しながら学者らしい落ち着いた受け答えをしていた。その内容はしかし、正直なところ、あまり面白いものではなかった。

30,000件余のUFO目撃報告を精査したソ連UFO研究所は、そのほとんどが見誤りや虚偽報告と結論。全体の1%以下の200件弱は「説明不能の事件」とされ、詳細な調査が行われたが、地球外物体が飛来したと推定される事件は一切なかったというものだった。

ロシア語の通訳を帰し、こちらもノートやテープレコーダーを鞄に入れて、食事をしながら英語での雑談中に、博士から興味深い話を聞くことができた。

博士によると、UFO目撃事件は3、4種に分類できるが、その一つに「非生命体が意思を持つ生物のような動きを見せる」場合があり、それは霊的現象によく似ていて、ときに異次元の存在と考えられるという。

博士のUFO談議の中には「集団幻想」といった内容もあったが「隠れて行われる観測、研究、実験」がUFOの正体としては最も納得できるものだった。いちばん多いのが軍の実験である。博士は小型無人機の例を取り上げ、それが飛躍的進歩を遂げると予言したが、彼が軍人であったことを考えると当然の話でもある。

こうした夢物語だけではなく、日本軍の蒟蒻爆弾を熟知していたことも興味深かった。近年博士は異次元説に偏っていると聞くが、かつては全方位を均等に分析していた。

無人偵察機

2011年12月4日、イランは米軍無人偵察機RQ170をほぼ無傷の状態で捕獲したと発表した。当初米軍はこれを否定、「最近行方不明になった偵察機は存在しない」としたが、後にイランが回収した偵察機の映像を公開した直後から、それが米軍製無人ステルス偵察機であると認めざるを得なくなった。

オバマ大統領はイランに対し機体の返還を求めたが、イランはこれに応じていない。応じないのが当然のことだろう。このRQ170捕獲によりイランの無人機開発が飛躍的に進歩した可能性が高い。

RQ170は全長4.7メートル。かなり大きなものと感じるが、無人偵察機としてよく知られるRQ4グローバルホークは全長15メートル、翼幅40メートルという巨大なもの。

無人偵察機RQ170は311震災直後に福島上空を飛び回っていたことで知られる。311の地震直後に日本を襲った津波の映像があるが、これはRQ170よりずっと小型の無人機が撮影したものと思われる。

米軍は2005年以降、アフガンのタリバーン掃討戦に全長1メートルの無人機RQ11を投入しているが、津波の映像はこの程度の無人機が撮ったものと推測される。

日本でも防衛省技術研究本部などを中心に、かなり以前から無人偵察機の研究が進められてきた。偵察機ではないが、平成20年(2008年)には情報収集ロボットが公表されたこともあった。平成23年(2011年)6月には防衛省技研本部で球形の無人偵察機が完成し、同年10月には「デジタルコンテンツEXPO2011」(日本科学未来館)でデモ飛行が行われた。

この球形の無人偵察機は直径40センチほど。垂直離発着も可能。水平飛行もホバリングもできる。リモコンで操縦するものだが、ビデオカメラで撮影した画像をリアルタイムで送る機能もついている。防衛省技研本部の開発者によると、この無人機の部品はすべて秋葉原で買いそろえることができるという。高校生程度の知識があれば誰にでも簡単に作れるものらしい。

専門家によると最小の無人機はトンボやカブトムシ程度の大きさで、監視網をかいくぐって飛行し、映像を送信することが可能だそうだ。日本の無人機がどこかで活躍したという話は聞こえてこないが、膨大な数の無人偵察機が世界中で活躍していることは間違いない。それらが謎の光体だったりUFOと呼ばれたりすることはあり得ることだろう。1月21日早朝の火球騒動も、単純に隕石とは結論できないことがわかる。

無人攻撃機

2009年(平成21年)8月7日にパキスタン政府は「パキスタン・タリバーンの指導者ベイトゥラ・メスード司令官が米軍無人攻撃機により殺害された」ことを明らかにした。その半年後の2010年1月には同じパキスタン・タリバーンの指導者で米国市民7人殺害容疑により国際手配中だったハキムラ・メスード司令官も無人攻撃機により殺されたといわれる。

無人攻撃機(戦闘型無人機)の歴史は第二次大戦中のドイツV1号に遡るのか、あるいはドイツのV1号発射基地を破壊する目的で米軍がB17爆撃機を無人操縦に改造したことに始まるか、分析は学者諸氏にお任せするとして、とにかく第二次大戦以来ずっと研究開発が続けられてきたものだった。21世紀に入って無人攻撃機の性能は向上し、実用化が進み、現実に敵司令官を葬り去るところまできている。

攻撃側はオフィスでコーヒーを飲みながら画面上の敵を攻撃し、仕事を終えると通勤電車に乗って帰宅するといった日常生活の中で戦闘に参加することになり、道徳的な観点や精神ストレスが問題視されていることはあるが、こうした攻撃手段は今後もエスカレートしていくことだろう。

生化学兵器攻撃

無人機による攻撃は、これまで多くの場合、搭載されたヘルファイア・ミサイルが使用されてきた。ヘルファイアにも数種類のミサイルがあるが、だいたい大人ほどの大きさである。しかしこれでは大きすぎて、周囲の民間人を巻き込むケースが出てくる。そこで近年では、より小型のスコーピオン・ミサイルが使用されるようになっている。

スコーピオンは2010年4月に公開され、全長55センチほど。2009年のパキスタン・タリバーン司令官殺害もスコーピオンが使用されたという。

しかし無人攻撃機として怖い噂が囁かれているのは、小さな対象を攻撃するミサイルではなく、大量殺人兵器としての小型無人機である。わかりやすく言えば生化学兵器を積んだ無人機が無差別に出撃することだ。

米オバマ大統領は、シリアが生化学兵器を使用した時点で、限定的に米正規軍を投入すると言明。昨年12月5日、米国務省はシリア政府軍がサリン等複数の化学物質を装填した爆弾を準備したと報じている。いっぽうシリア政府は生化学兵器の保有を否定している。万一サリン等の生化学兵器が使用された場合、どこの誰が使用したものか、判断は極めて難しい。

サリン等の生化学兵器は、貧者の原爆と称される。オウムの地下鉄事件の2年後、平成9年(1997年)に発効した「化学兵器禁止条約」に署名していない国はシリア、北朝鮮、ソマリア、エジプト、アンゴラの5カ国のみ(署名国190)。

明確な殺意が立証される化学兵器が国家間紛争で使用される可能性は極めて低くなっているが、明瞭ではない生物兵器の恐怖はむしろ増大しつつある。怪しげな噂話を鵜呑みにしたくはないが、HIV(エイズ・ウイルス)もSARS(サーズ)も特定の人種を攻撃するために人為的に作り出された実験兵器だという説もある。

この冬、中国全土を襲っている大気汚染は「異常」といったレベルではない。異常をはるかに通り越したレベルである。

米国が定めた大気汚染指数(AQI=Air Quality Index)では

0~50 Good 綺麗で健康的な空気
51~100 Moderate 許容範囲であるが注意も必要な空気
101~150 Unhealthy for Sensitive Groups 一部で呼吸器症状が発生する空気
151~200 Unhealthy 人体に害悪 高齢者や子供に肺疾患が起きる空気
201~300 Very Unhealthy 誰もが人体上の悪影響を経験することになる空気
301~500 Hazardous 緊急事態 人口減少が起きる空気

となっているが、北京を含む中国東部でのAQIは1000を越えたという。もはや「人が住めるレベルではない」というのだ。

もともと中国の大気汚染は凄まじく、2008年北京五輪の折りには工場の操業を停止し自動車の通行を制限したほど。低品質の自動車ガソリン使用が大きな原因ともなっていた。冬場には中国大陸の大気が上昇することなく地上に留まりやすいため、中国全土を汚染物質が覆ってしまったと考えられている。すでに国務院常務会議では対策が決定され、年内には詳細な制限が発表されるという。

しかし一部には「意図的攻撃」説も出ている。証拠もない陰謀論の域を出ないが、汚染物質は九州や山陰だけではなく、関東から東北地方にまで達している。インフルエンザの流行もピークを迎え、外出には最大限の注意が必要なようだ。■