川越市銘菓「くらづくり本舗」問 題 | 行政調査新聞

川越市銘菓「くらづくり本舗」問 題

第 2 弾

中野英幸氏に市民から疑問の声…声…声…
自民党川越支部長としての資格はあるのか?

 本紙既報『川越市銘菓「くらづくり本舗」食品表示法改正後、2年間も対応せず!?同社代表で自民党衆議院議員の中野英幸氏は「忘れてました」との軽薄な釈明で禊(みそぎ)を済ませたかつもりか?』は、予想以上の反響を呼び、中野氏についての情報提供や投稿が本紙に寄せられた。

 川越近隣市民からの声が中心だが、本紙読者の多くを占める50代から70代という年齢層では、新聞を目にしても積極的に写真週刊誌を見る人はいない。
 共同通信の配信記事をそのまま転載することが通例の一般紙は、「くらづくり本舗」の改正食品表示法違反について「適正な表示シールを貼るのを失念してしまった」という中野英幸氏の言い訳を報じるに留まった。だがそれでは、市民には問題の真相が知らされないままとなる。そこで本紙が初出「フライデー」のスクープを引用した前回記事を報じたところ、本件が「元従業員の内部告発」から発覚したことを初めて知った市民たちが、「くらづくり本舗」代表取締役社長・中野英幸氏に対する怒りの声を本紙に寄せたのである。参院選を目前に控えたいま、中野英幸氏が束ねる自民党川越支部の動きを追ってみた。

静かな波紋を広げる市民の疑惑と怒り

 本紙に届いた市民の声は、おおむね次のようなものだ。

 従業員の内部告発だったなら、中野氏の釈明とだいぶ事態の重さが違うのではないか。自民党として報道機関に圧力をかけた疑いはないのか。

(前略)菓子屋の社長としてもいい加減な話だが、中野英幸は自民党川越地区の親玉のはずだ。忘れてたなんてガキの言い訳で済む話ではない。地元の自民党議員は黙ってるんですかね?

 元従業員の中野さんに対する怨恨やトラブルが原因の内部告発なら、もっと大きな真相が隠されているかもしれないと思います。
 シールの貼り忘れなんて信用できない。
 安倍内閣での加計学園問題からして、自民党というだけで信用できない。
 中野さんは二階(元自民党幹事長)の子分だというのもネットで見たことがありますし、真相がなんであっても自民党議員には投票しないようにします。

 「元従業員の内部告発」という言及に対して、中野英幸氏は、改正食品表示法に準じた新しい表示シールを「貼り忘れた」との釈明で逃げたものの、市民は馬鹿ではない。この問題に対する市民の核心は、ひとえに中野英幸氏という人物が政治家として信用できないという点にあるのだ。
 「真相がなんであっても信用できない」とする市民の声が象徴するように、政治家が有権者からの信用を失うことは政治家としての死を意味する。
 本紙を含めた一般市民には「くらづくり本舗」の工場内で何が行われていたのかを調査する権限も手段もない。だが、中野氏の釈明が納得できるものではない以上、また本件を重く受け止めての出処進退を明らかにするつもりもない態度である以上、中野英幸という政治家を「信用しないことにした」と判断することは市民の自由であろう。

「議員活動ではないから…」さもしい政治家の逃げ口上

 現在、自民党川越支部の支部長は、昨年、衆議院議員となった中野英幸氏である。メディア既報のとおり、中野代議士は川越市の菓子製造販売会社「くらづくり本舗」の代表取締役社長でもある。
 自民党川越支部に所属する市議らを取材すると、一様に「中野氏の議員活動に関することではないので、政治家としてのコメントは控えたい」と口ごもるばかりであった。「政治家としてではなく個人の問題なので」というコメントは、返答に窮した政治家の常套句だが、これこそ有権者を小馬鹿にした言い訳だ。そもそも当該不祥事が全国区のメディアで取り上げられたのは「自民党川越支部長の経営する会社」が、食品表示法違反で川越保健所より指導を受けたからだ。「自民党代議士による不祥事」だからこそニュースとなったのであって、地方都市の一市民が経営する菓子屋の話だったならば、メディアが報じることなどない。政治家が経営する事業の不正経理や、不倫スキャンダルでも「公人」としての社会的信頼と責任を追及されることは常識だ。
 中野英幸氏も、主権者たる国民から信任を得て代議士となった以上は、公私を問わず社会的責任を負う義務がある。同氏の「くらづくり本舗」食品表示法違反が「議員活動のことではないからコメント出来ない」などと答えた自民党川越市議らもまた、中野氏に右に倣えの「さもしい政治家」だと言うべきだろう。

古参の自民党員が語る「中野英幸独裁体制」
川越市議は、市民より「議員バッジ」が何より大事!

 ある古参の自民党員によれば、「川越支部長」は基本的に川越選出の県議会議員が就くものだという。衆議院議員となった中野英幸氏は、現在、埼玉第7選挙区支部長に就いているが、自民党選出の県議が不在のため、川越支部長も兼任している状態だ。同自民党員は、来年の埼玉県議会議員選挙で自民党県議が誕生するまでは、中野氏の兼任が続くだろうと説明する。
 それだけ重要な立場にありながら、自社の改正食品表示法違反という不作為(真相が何であれ)を2年間も放置していた事実は、釈明すればするほど中野氏の無責任さが浮き彫りにされるといっていい。

 去る4月17日、「ウエスタ川越」の多目的ホールで、自民党川越支部大会が開かれていた。本紙はこの大会に参加した自民党員(議員ではない一般党員)に話を聞いた。同大会で自民党川越支部長として挨拶に立った中野英幸氏は、自社「くらづくり本舗」が保健所から指導を受けたことなどについて「お騒がせして申し訳ありません」と謝罪したというが、その場にいた同党員は「謝罪といっても、半分は言い訳だったよ」と笑ってみせた。
 この一幕だけでも、前述の「議員活動ではないから」と口を閉ざす自民党川越市議の情けなさがわかる。中野英幸氏自身「くらづくり本舗」の不祥事が、政治家としての問題でもあることを素振りだけでも自覚して謝罪しているのだから、口ごもる川越市議らは唯々諾々と中野氏に付き従っているだけの与党子分議員だということだろう。それを裏付けるように、前出自民党員が川越支部所属の自民党市議らを代弁するかのように本紙にこう語ってくれた。

 今回の問題について彼ら(市議)は、何も中野さんに言えないんだよ。
 この件について中野さんに意見でも言おうもんなら、後が怖いからね。
 来年、市議選があるでしょ。このときに自民党公認がもらえなくなったら大変だから(笑)。市議ではない党員だって、中野さんを批判したら何をされるかわからないから黙っているだけなんですよ。

 議員名簿によれば自民党川越市議は12名。川越市議会の3分の1にもなる市議たちが、中野英幸氏を恐れて沈黙するということは、裏を返せば中野氏の指示、命令にも黙って従うという意味である。川越市自民党は、中野英幸氏の独裁国家といっても過言ではなく、そんな市議たちが市民のための政治をやっているとは到底思えない。議員バッジを手にするために強者に屈服するだけの烏合の衆に過ぎない者たちに、市民の選良を名乗る資格はない。

中野英幸氏が「支部長」である理由が「わからない」?!
「和菓子代議士」は川越市内の権威としてのみ君臨する?

 ところで、それほど恐れられる中野英幸氏は、どういった経緯で自民党川越支部長になったのだろうか?
 本紙の取材に前出の自民党川越市議らは、なんと「わからない」という。「自分たちが市議に当選したときから、川越支部長はすでに中野さんだったから、どのようにして支部長を決めるのかはわからない」とは、若手市議の正直な答えだが、自らが所属する政党支部長の選任方法も知らないまま、「支部長だから従っておけば良い」とでもいう了見で、よくも市議だと威張れるものだと呆れ返る。
 結局、市議のひとりが「わからないので県連(自由民主党埼玉県支部連合会)に聞いてほしい」というので、本紙は自民党埼玉県連に電話で話を聞いた。すると、支部長の選任について規則や会則はないという。各支部内で支部長を決め、それを県連に報告するというだけのことで、「くらづくり本舗」の問題で仮に中野氏が支部長を解任され、新たな選任を行うことになっても、すべて支部が決めることだという。早い話、中野英幸氏の独断で、どうにでも出来るということだ。これまでの経緯を見れば、中野氏が自ら支部長を辞めるなど考えられないうえに、自民党市議らが解任を求めることなどはあり得ないことだろう。
 そう考えると、中野英幸氏という人物が川越自民党を牛耳っていられる理由は、「くらづくり本舗」二代目社長で元衆議院議員の実父・中野清氏の七光りに裏打ちされた「和菓子屋社長で政治家」という、二代続いた地元の権威だからというだけのことに思える。

世襲の権力者よ、「市民の権力」を甘くみるな!

 中野英幸氏は埼玉県議を3期務めたが、同氏のような「地元の名士」という来歴の人物が当選することは、特に地方都市ではそう難しいことではない。
 日本型の世襲政治家の典型でもあり、中野英幸氏に傑出した政治手腕があるとは、少なくとも本紙は評価していない。それどころか本件「くらづくり本舗」の不祥事をめぐる、同氏の一連の発言と弁護士を通じた本紙に対する「言い訳」を見るにつけ、中野英幸氏は「信用ならない政治家」であるというのが本紙の率直な見解である。

 冒頭に紹介した市民の声にもあるように、いまや国民の自民不信は根強いものとなっている。「ウソつきは自民党のはじまり」と揶揄しても異議を唱える国民はいないだろうと言っていいほど、「ウソをつかない政治家はいない」与党が自民党だ。中央政権がそうなのだから、川越の自民党議員らは推して知るべしだろう。しかし、だからといって有権者がこれを黙って見ている法はあるまい。「政治屋」の特権に寄生して食っていくために、選挙の時だけは市民に偽りの笑顔で偽りの公約を掲げ、当選すれば市民の信など足蹴にし、悪事が露呈すれば逃げ口上でフタをする。そんな「ウソつき税金泥棒」どもは早いところ議場から立ち退いてもらおう。そこが国会だろうと市議会だろうと。政治家に対する「投票」という名の生殺与奪の権は、いつでも、われわれ有権者の手中にあるのだ。

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