「沈黙」 の 「一大 スキャンダル」 | 行政調査新聞

「沈黙」 の 「一大 スキャンダル」

原告 川合善明氏(川越市長) VS 被告 仙波敏郎氏(正義の告発者)
前代未聞の裁判傍聴シリーズ第4弾  

 いま川越市ではメディアが一切報じていない前代未聞の事件が起きている。
 川越市長・川合善明氏が、元愛媛県警警察官で現職時代に警察裏金問題を実名告発したことで国際的に知られるジャーナリスト仙波敏郎氏を 「名誉毀損」 で訴えた裁判(さいたま地方裁判所・川越支部。令和4年(ワ)第126号 損害賠償請求事件)である。
 仙波氏は本年1月21日、川越市長・川合善明氏が市民女性A氏に対し 「強制わいせつ」 に及んだとして川越警察署に刑事告発した。川合市長は、これを 「虚偽告発」 だとして提訴したものだ。だが川合市長の対応はあまりにも不自然だ。仮にも現職市長が性犯罪の嫌疑をかけられたというのに、川合氏は公の場で一切の否定も釈明もしない。
 この事件は、仙波氏の 「刑事告発」 と 「請願不採択」、あるいは本紙記事を通じて一部の川越市民と議会と市政関係者、地元記者らにも知られていながら一切報道されていない、いわば川越市の 「沈黙の一大スキャンダル」 とでもいうべき事件なのである。
 本件事件の本紙既報特集   第1弾    第2弾    第3弾 

▼         ▼         ▼         ▼

「孤立」「意地」「節約」か?  川越市長、本人弁護を継続中

 前回特集記事で詳細を報じたとおり、4月21日に開かれた本件事件の第1回口頭弁論では、川合市長はなんと代理人弁護士をつけずに「ひとりぼっち」で法廷の原告席に座った。いくら川合市長が法曹資格を持ち弁護士登録している立場とはいえ、自治体首長としては異常な対応としか言いようがない。公務を最優先すべき市長が、民事裁判で積極的に本人弁護をすること自体、市長としての資質を疑われるというべきだろう。
 いまだ市民社会を混乱させているコロナ禍に対して、市長として取り組むべき課題はいくつもあるはずで、川合氏に裁判を起こす権利があるにせよ、あえて代理人弁護士をつけずに市長としての貴重な時間を割いてまで本人弁護を続けることは、政治家として非常識といってもいいだろう。

 前回口頭弁論を傍聴した本紙は、川合市長が第1回期日までに弁護士を見つけられなかったのだろうと推測していた。ところが、6月9日のこの日、裁判所内で開かれた非公開の弁論準備手続にも、川合市長は1人で現れた。川合市長は「川合法律事務所」として埼玉弁護士会・川越支部に登録し、法律事務所として住所と電話番号を公式ウェブサイトに公開しているが、これは「川越市長・川合善明」の自宅住所と電話番号と同一である(余談だが、もしも一般人が弁護士を探して同ウェブサイトから川合氏の自宅である「川合法律事務所」に電話をしたら、どのように出るのだろうか?)

 ただ、川合市長が本人弁護で裁判に臨んでいるのは「弁護士だから」ではない。本人弁護という制度は、民事裁判の当事者であれば、法曹資格がない一般人にも認められた国民の権利である。つまり、本件事件で弁護士をつけていない川合市長は、自分が弁護士だから代理人をつけなくても裁判が出来るのではない。川合氏が代理人をつけずに本人弁護をするのは、単に事件を受任する弁護士がいない「孤立」状態にあるか、自分自身で裁判の現場に立ちたいという「意地」を通しているだけなのか、弁護士の着手金などの法務費用を「節約」したいからの何れかだろうと思われる。

 川合市長を市長の座に押し上げた川越市議会最古参議員・小林薫市議は、常々公費で飲食、カラオケに興じていた川合氏の吝嗇家(りんしょくか=ケチ)ぶりを証言するが、後述のとおり川合市長は原告として同時に抱える複数の別件裁判では代理人弁護士をつけている。そうなると、本件「被告・仙波敏郎裁判」だけ経費節減のために弁護士をつけなかったとは考えにくい。川合市長のあまりの濫訴(らんそ=むやみやたらと訴訟を起こすこと)ぶりに眉をしかめた弁護士業界から、川合氏が疎まれ受任する弁護士がいないとしても不思議ではない。それでなくとも実はこの事件の背景には、裁判所も動向を注視しているだろう川合原告の別事件が大きく影響しているのである。

市民女性A氏を訴えた川合善明市長は証人尋問で自らを証人として証言していた!

 「被告・仙波敏郎裁判」事件の第1回口頭弁論が開かれた4月21日のひと月後となる本年5月19日、さいたま地裁・川越支部では本件事件を上回る異様な裁判があった。
 それは川合市長が市民女性A氏とその代理人・清水勉弁護士と出口かおり弁護士をやはり名誉毀損で訴えた事件での証人尋問である。「川合善明川越市長から性被害を受けた」という市民女性A氏を複数の個別の事件として訴えた川合市長だが、それら現在継続中の「原告・川合善明」の裁判を整理してみよう。

 「市民女性A氏が、行政調査新聞社主・松本を使って、埼玉弁護士会に懲戒請求を行ったことが不法行為」だとして、川合氏が損害賠償と慰謝料300万円を払えとA氏を訴えた裁判。

 同上「1」の裁判で、A氏の代理人を受任した清水勉弁護士と出口かおり弁護士に対して「川合市長から、わいせつ被害を受けた」という嘘を言ったA氏と、虚偽だと知りながら懲戒請求の代理人になったことが両弁護士の不法行為だから、A氏と両弁護士に連帯して200万円の損害賠償金と慰謝料を払えと訴えた裁判。

 (本件事件)同上「1」および「2」の裁判で被告となったA氏が嘘を言って仙波敏郎氏を使って川合氏を刑事告訴し、仙波氏もA氏の主張を虚偽と知りながら刑事告発し、さらに記者会見を開いたことが不法行為だとしてA氏と仙波氏を訴えた名誉毀損損害賠償請求訴訟。

 上記3件の裁判すべての争点は、要するに川合市長による「市民女性A氏へのわいせつ行為があったのか、なかったのか」という、まったく同じ争点が核心部となる訴訟である。まともな弁護士であれば、これら事件はひとつの事件として提訴するべき事案であることを理解している。だが弁護士でもある川合市長は、A氏に対する経済的、精神的負荷を増す狙いから、わざわざ別の事件として執拗なスラップ訴訟を重ねたのである。これだけでも川合市長の異常な人格が窺えるというものだ。
 このうち「1」と「2」の事件は、争点が同じだと判断した裁判所により、事件番号としては別事件だが同じ期日での口頭弁論とする訴訟指揮が執られた。
 そして先月、この裁判の口頭弁論で証人尋問が行われ、原告・川合氏と被告・A氏がそれぞれ法廷の証言台に立ったのである。この時、傍聴席には、すでに川合市長から訴えられていた仙波敏郎氏と代理人・清井礼司弁護士と内藤隆弁護士の姿があった(詳細は特集第3弾参照)
 そこでの川合市長の証言内容と態度については、別の弁護士が受任する別事件であるため現時点で詳述は控えるが、その裁判で川合市長は意外な行動を見せた。それは川合市長が、証人尋問として自らの証言を終えたと同時に法廷から引き上げたことだ。
 代理人弁護士がいながら欠かさず自身も出廷している川合市長が、口頭弁論のクライマックスとも言える被告・A氏の証人尋問を見ることもせず、弁護士任せで退廷するとは想像しなかった。川合市長は自分の証人尋問が失敗したとでも感じたのだろうか、A氏の証人尋問が始まる前に、逃げ去るかのように法廷を後にした。

 一方、被告・市民女性A氏は毅然とした態度で7年前に川合市長から受けた性被害について証言を述べている。言うまでもなく両者は「嘘偽りなく証言する」ことを宣誓した上で証言台に立っており、虚偽の証言をしたことが判明すれば偽証罪に問われる。
 いずれにせよ前述のとおり「別件だが同じ争点の裁判」である3つの事件はそれぞれの審理と判決で共鳴するであろうことは自明である。

「第1回口頭弁論の次には非公開の弁論準備手続」
原告・川合市長と被告・仙波氏が対峙した緊迫の15分間

 こうした背景事情があった後の6月9日午後2時30分、さいたま地裁・川越支部別館3階会議室において弁論準備手続が行われたのである。出席者は、飯塚圭一裁判長と陪席判事1名、川合善明市長、清井礼司弁護士、仙波敏郎氏。ちなみに飯塚裁判長は、川合市政に対する住民訴訟を起こしたことが不法行為だとして、市民女性A氏を含む4名の川越市民を訴えた原告・川合氏の裁判で、その請求を全面棄却した齋藤憲次(元裁判長)の判決を代読した人物である。弁論準備手続は一般には非公開の、原告・被告当事者と弁護士、裁判官だけで行う、書記官も不在の記録に残らない密談といっていい。
 弁論準備手続を終えた仙波氏は、その様子を本紙取材に応じて語ってくれた。

本紙:公開裁判の法廷と違い、一般的な会議室のテーブルで川合市長を目の前にしたと思いますが、どのようなやりとりがあったのでしょうか?
仙波敏郎氏(以下、仙波):結論から言いますと、川合市長は一瞬たりとも私と目を合わせることはありませんでした。
本紙:元警察官で眼光鋭い仙波さんを恐れたのではないでしょうか?
仙波:反対だと思います。彼は自分が裁判所も忖度(そんたく)する権力者だと自任していて、それを告発した私など歯牙にもかけないという意思表示として、1メートル先に座る私と目を合わせなかったんでしょう。
本紙:おれ様市長・川合善明の面目躍如ですね。
仙波:それが証左に、川合氏は目の前の私を呼び捨てにしました。
本紙:本当ですか?!そこまでとは予想しませんでした。
仙波:弁論準備手続が行われている間、裁判長は「仙波さん」、私は「原告の川合さん」と、常識として「さん」付けで呼んでいましたが、川合市長だけは「被告仙波」と私を呼び捨てにしました。川合市長としては訴状や準備書面にあるとおり「被告仙波」としただけで他意がないとでもいうつもりでしょうが、あからさまに挑戦的な態度でしかありません。全国の自治体でこれほど無礼千万な首長は川合氏をおいて他にいないでしょうね。

 川合市長の「呼び捨て癖」はクセではなく、権力者である自分を批判する市民への制裁のつもりなのである。本紙松本社主、大山記者についても「川合よしあき市長ブログ」で公然と呼び捨てにして憚らない「おれ様市長」が川合善明という公人である。
 挙句にその態度について、小林市議から議会で問い質され、自分が尊敬できない相手を呼び捨てにして何が悪いのかと開き直る始末である。仙波氏が指摘するように、自治体首長でこれほど異常な自尊心の権化は川合善明氏以外にいないだろう。
 仙波氏が続ける。

 弁論準備手続の冒頭、私は「この裁判は原告による性暴力が原因で争いが起きている」という点を強調しました。それ以上は清井弁護士に止められましたが、川合市長は自分が性加害者だと私に言われたことで腹を立てたんでしょう。でも、私に言わせればそれは川合市長の身勝手な怒りでしかない。なぜなら私は川越市議会に請願したんですからね。私は警察官を満期定年退職した後、阿久根市の副市長も務めていますから行政執行部と議会の関係もよくわかっています。請願の採択は議会が決めることだというのは建前で、どこでも執行部が与党議員らに根回しをする。簡単に言えば請願を取り上げるか潰すかは市長の胸先三寸です。私の請願も川合市長の意思がなんらかのかたちで影響して不採択となったと思っています。逆に言えば、川合市長は請願を議会に上げて、自分にかけられた性加害疑惑を否定するなり反論するなり出来たんです。
 そう出来たというより、私のような請願が上がってきたら、市長として市民に対する説明責任を果たすことが義務です。その反論の機会を自分で潰しておいて、私を訴えたわけですから、性暴力と言われて腹を立てるなど身勝手も甚だしいですね。

▼         ▼         ▼         ▼

 仙波氏の意見は正鵠を射る。川合市長が、仙波氏の刑事告発は虚偽だと訴えるにしても、提訴についての記者会見なり議場での答弁を行うことが政治家の常識だ。
 たとえば最近、タレントの水道橋博士氏を名誉毀損で訴え「公人によるスラップ訴訟」との世間の批判を浴びている松井一郎大阪市長でさえ、定例記者会見で記者の質問に公人として答えて、その内容はともかく提訴についての見解を述べている。

 そもそも名誉毀損による損害賠償請求訴訟とは、文字通り毀損された名誉の回復を争う裁判なのだから、ことに市長たる公人による訴訟であれば、まずは市民に対して公の場で説明する責任と義務がある。ところが川合市長は「事実無根の虚偽告発」だと訴えながら、まるで人目を避けるかのように公人としては沈黙したまま、一方で裁判所内の密室では、仙波氏への敵意と憎悪をむき出しにするかのような非常識な態度に終始したという。それだけではない。

 川合市長にとって本件事件の弁論準備手続は、被告・仙波氏の代理人に川合市長の司法修習同期生だった清井礼司弁護士がつくという、予想だにしなかった状況に追い込まれた中、「ひとりぼっち」で臨むことになったものだ。危機感を払底し自らを鼓舞するためには「被告・仙波」と虚勢を張らずにいられない川合市長の心中が透けて見えるようだ。いずれにしても、このような人物が、今年12月に市政施行100周年を迎える川越市の市長だというのだから、市民にとってこれほどの不名誉はあるまい。

「被害を細かく算定せよ」裁判所から「宿題」を出されて不機嫌な川合市長?

 では、弁論準備手続での裁判所の意見はどうだったのか。
 そのやりとりの概要についても仙波氏が語ってくれた。

 裁判所は川合市長に対して、争点を明らかに、被害金額を個別具体的に出し直すよう指示しました。この事件での川合氏の訴えは、まず市民女性A氏が川越警察署に虚偽の刑事告訴をした件で、その支援で警察に同行して集まった記者らと話した私による共同不法行為で名誉を毀損されたから、A氏と私が連帯して慰謝料300万円を払えという請求と、さらにこの事件を川越市議会に請願した仙波に450万円払えというものです。
 そもそも請願は制度に則した市民の権利で、議会事務局が内容を精査して受理された請願が不法行為だと主張すること自体、尋常ではありません。
 川合市長は弁護士でしょう? この請願が不法行為だから慰謝料450万円を払えという川合氏の訴えについて、裁判所はいまのところ何も言っていません。ただ、A氏と連帯して払えという300万円については、ざっくりと300万円では審理のしようがないから、仙波がプレスリリースを記者クラブにFAXしたことでいくらの被害で、警察署構内で記者会見を開いたことでの被害がいくらというように、名誉毀損の被害額を細かく算定し直して主張して下さいと、裁判所は川合氏に指示したわけです。
 川合氏もなんだかんだとは言ってましたが、市長といえども裁判長に逆らえば不利になりますけんね。マスクをした状態ですが、川合氏は不服そうに見えました。

 実はこの日、6月9日は川越市議会の休会日にあたり(だから川合市長本人が出席できたのだが)、A氏と仙波氏を支援する有識者グループのひとりである小林薫川越市議も裁判所に来ていた。もちろん、弁論準備手続は傍聴できないことを承知で川合市長の様子を見ておこうと思ったからだと小林市議は言う。

 うん、どれくらい時間がかかるんだろうと思ったら、ものの10分かそこいらでしたね。私は弁論準備手続をやった裁判所別館の1階で仙波さんを待ってたんだけどね、そこに川合市長が階段を下りて来た。マスクの上からだけど不機嫌な顔して足早に出てったね。私は川合さんが市長になる前からよく知ってますから、様子を見てりゃカラオケで女性とデュエットしてれば上機嫌だとか、自分が人に指示されただけでムッとするとかね、わかりますよ。この日は裁判長に宿題を出されて不機嫌になったんじゃないですかね(笑)。

小林薫市議、川合市長を「お題の枕」で一席

 さて、その弁論準備手続があった翌日6月10日に開かれた川越市議会の議場で、小林薫市議は早速、川合市長にジャブを放った。この日の議会で、小林市議は「川越市の観光客が放置するゴミ問題」「今年の川越まつりについて」という2点の一般質問に立ち、その冒頭で「川合原告裁判」に言及した。そのほぼ全文をご紹介しよう。

小林薫市議
(6月10日:川越市議会)

 私は、6月議会は出席できないんだろうと思っていたんですが、本日ここに登壇することができて非常に嬉しく思います。なぜかというと、市長が請願人及び市民女性を名誉棄損で750万円の損害賠償請求をした裁判が開かれております。
 昨日は弁論準備手続が行われまして、その訴状の中の4ページに、請願の紹介議員に私はなりましたが、私は「請願人と共同不法行為の関係にあるので」断定しています。「あるらしい」じゃなく「あるので」と断定。「別途国家賠償法に基づく請求を行う予定である」ということを私は裁判所に訴えられております。
 だから私は、国家賠償法で請求されたら、とてもじゃないけど6月定例会は出席できないんじゃないかなと思って、この3か月間、不安な日々を送っていたんですが、いまだかつて市長の方から、国家賠償法に基づく損害賠償請求はされておりませんので、市長、早くしてください。皆さん、どういう心境になります?
 普通の裁判じゃないですよ。国家賠償法に基づく請求をするって、請願人との関係まで断定されているんですよ。皆さん、どう思います?市長は弁護士ですよ。
 そんなこと書かれたら、1日、毎日の生活が不安よ。だから私は、6月議会に登壇できるかなと思っていたんですよ。市長ねー、私の心情も察してください。非常に毎日、毎日が不安なんです。早くやってください。お願いしますから。

 本紙は川越市議会ウェブサイトでのインターネット議会中継を見ていたが、さすが真打の落語家・三遊亭窓里こと小林市議だけに川合市長への痛烈な皮肉を込めた枕本題に入る前の小噺)である。このときの川合市長の表情は中継画面からは見えないが、おそらく顔を真っ赤にして怒りを堪えていたことだろう。

背筋が凍る川合市長のコロナ対策?!「扇風機でコロナを吹き飛ばす」

 実際に、川合市長はこの後の小林市議の一般質問に答えて、枕と本題を一緒にしたのか「小林さんのご発言は、かなりデタラメであったので、何が質問なのかよく解りませんが、私が質問と捉えたことについてご答弁申し上げます。」と答弁、小林市議に「今、市長から発言がありましたが、私の発言がデタラメ?どこが、どうデタラメなんですか。大変な問題だよ。デタラメなんて」と切り返されている。
 コロナ禍も収束していない本年に「川越まつり」「やりたい」と川合市長が具体的な対策も打ち出さないまま軽々に発言することは無責任だと追及した小林市議に対して、川合市長は「私は「やる」と断言したわけではございません。「やりたい」という希望を述べたわけでございます。従いまして市長が勝手に決めないでくれというのは、それは小林さんの誤解でございます」と、独特の「川合ロジック」で応酬してみせた。

 本紙が長年にわたって研究してきた「川合ロジック」とは、川合善明氏特有の「言葉の揚げ足取り」を意味する。たとえば、同じく小林市議に議会で追及された、公費で参加した商店街の新年会でコンパニオン女性と手をつないでカラオケに興じた一件では「コンパ二オンと手をつなぐことの何が問題なのか」と開き直った川合市長だが、「川合ロジック」では「コンパニオンは宴会の参加者にサービスを提供する職業なのだから、一般女性の手を握ったのとは違って当然だ」という意味になっている。つまり、小林市議が言及した「市長」としての姿勢、倫理観というものを、川合善明氏はまったく理解することなく言葉の意味を自分に都合良く置換してしまうのである。
 今年の「川越まつり」についても同様で、市民から開催の目途を問われて「今年は100周年なので、ぜひ川越まつりをやりたいという発言は、きっと10回くらい発言していると思います。」と川合市長自身が答弁したもので、小林市議はそれを無責任だと追及したのである。一般常識として市長が「ぜひやりたい」と10回も発言すれば、市民にとっては開催決定に等しい響きを持つ。市長は判断の最終決裁者なのだから、川越まつりを「やりたい」とは言ったが「希望を述べただけ」だという「川合ロジック」は市民を軽視した発言である。
 さらに、川越まつりを実施するにあたって、山車の上で笛や太鼓を演奏しながら市中を練り歩く恒例の出し物で、具体的なコロナ対策をどうするつもりかと小林市議に問われた川合市長は次のような「トンデモ対策」を打ち出した。

川合善明市長
(6月10日:川越市議会)

 私の考えていることとしては、小さな扇風機を笛の奏者にあてて、常に風が人のいない方に向かって吹くような、そういう仕組みを考えれば、感染防止になるのではないだろうかと、これは私の私案でございます。

 一昨年から続く新型コロナウィルス対策の一環として、換気や空気清浄機の設置が奨励され、飲食店などでは持続化給付金申請の条件にもなっていることは周知のとおりだが、言うまでもなくそれは「密を避ける」屋内での話であることは市民の誰もが理解していることである。
 それを川合市長は、川越まつり名物の、屋外を練り歩く山車に乗って笛を吹く奏者に「小さな扇風機をあてて」「人のいない方向に」ウイルスを拭き飛ばすというのだから、天才発明家・ドクター中松氏も仰天のコロナ対策ではないか。議会中継を見ていた本紙愛読者の市民のひとりは、小林市議の枕噺に調子を合わせた市長の冗談かと思ったが、どうやらこれが川合市長の真剣な私案であるらしいと知って、背筋が凍るような思いだと呟いた。2020年、21年と開催が中止された川越まつりの2019年の来場者数は96万6千人だった(川越市発表)

 もしも今年、川越まつりの再開となれば市政施行100周年の高揚感も相まって、例年以上の来場者となることは容易に予想がつくというものだ。そんな状況で「小さな扇風機」「人のいない方向」に風を吹かせることがコロナ対策だと、滔々と議場で答弁できる川合善明市長の思考性そのものに市民が戦慄を覚えても無理はなかろう。
 10月中旬の川越市の気温は、日が沈むと日中に比べてかなり低くなる。寒空の中、笛の者に扇風機をあてれば翌日、風邪どころか肺炎になる恐れもある。川合市長はそのような私案を、感染症対策などというのだから恐ろしい話だ。

「続く弁論準備手続」
原告・川合「スラップ訴訟」裁判の行方が事件を左右する

 5月19日に前述した別件「原告・川合裁判」で川合市長の証人尋問を傍聴し、6月9日には眼前の川合氏と対峙しての弁論準備手続を終えた仙波敏郎氏は、訴えられた被告として改めて今後の裁判の見通しについて次のように語った。

仙波敏郎氏

 間違いなく前の2件の裁判は私の事件に影響するでしょう。
 なにしろ同じ裁判所で、まったく同じ裁判体
(裁判長、2名の陪席判事も同一)という裁判ですけん、前2件の判決はそのまま私の事件を左右するはずです。
 証人尋問も終わった別事件は遅くとも年内に判決言い渡しになるだろうと思いますが、私の事件は次の期日も非公開の弁論準備手続となりましたから、たぶん翌年になっても予断を許さないと思います。まあ、おかげ様で私の自宅がある松山と川越の往復も当分続きますけん、JAL
(日本航空)のフライト・マイルも溜まります(笑)

 本紙特集第3弾までに述べたことだが、仙波敏郎氏が裁判の被告になったのは本事件が初めてのことだ。これは、当初の川合市長が「仙波敏郎」が何者なのかを知らないまま訴えたからだと見て相違ないだろう。
 なぜなら、川合市長は常に「自分よりも弱い」と自分が位置付けた相手だけを標的にスラップ訴訟を濫訴しては、権力者たる自我を満悦するタイプの人間だからである。そして川合市長が仙波氏による刑事告発に危機感を覚えなければ、裏で川越警察署に仙波氏を刑事告訴するなどという異常な行動はしない。

 すべては7年前いやそれ以前から川合市長によるセクハラ、性暴力の被害を受けた人々のひとりである市民女性A氏が、勇気を振り絞って川合市長告発の声を挙げたことから、仙波氏を巻き込んだ一連の川合市長の狂ったようなスラップ訴訟濫訴が始まったのである。本紙では何度も報じているが、松山市在住の元警察官・仙波敏郎氏が名もなき川越市民女性を救うために刑事告発を行った理由は「正義」だけである。警察を退官後も、警察裏金問題の講演で全国の都道府県を飛び回り、あらゆる行政悪と闘ってきた仙波敏郎氏をして「私が見てきた腐敗市長のワースト・ワンだろう」と言わしめた人物が、今年、市政施行100周年を迎える川越市の市長・川合善明氏なのである。
 最終的に「おれ様市長」の暴走を止められるのは有権者である市民の声だ。
 次回期日は、「7月20日午後4時」非公開の弁論準備手続で行われるが、本紙は仙波氏への密着取材を継続する。

 ところで、川合善明市長自身が会長となっている「川越市市政施行100周年会議」のウェブサイトでは、「川越市の誕生」を次のように解説している。

(前略)
 川越では市制施行についての論議が活発になりました。
 大正デモクラシーの風潮に影響され、地方自治に対する住民の意識が向上し、市制施行の実現への機運が高まったのです。こうして、大正11年(1922年)に川越町仙波村が合併し、12月1日、県内で初めてとなる市制を施行し、「川越市」が誕生することになったのです。

 「川越」町と「仙波」村から川越市が生まれたとは、川越市長と仙波敏郎氏との宿命さえ感じさせる史実ではないか。ぜひとも市民たちの手で、長期政権・川合市政に終止符を打ち、誇りある川越市の新たな市史を刻んで欲しいものである。

(プリントアウトはこちらから)