自民党解体、保守再編成への道 | 行政調査新聞

自民党解体、保守再編成への道

自民党解体、保守再編成への道
―安倍晋三銃撃と統一教会の闇を浮かび上がらせた勢力を考える―

 岸田政権の支持率下落に歯止めがかからない。「聞く耳を持つ政権」というふれこみだったはずだが、国民大衆の声を聞くことなく、官僚の声だけで動いているとの批判が強い。10月4日には政権誕生一周年を迎えるが、岸田政権も自民党も沈没、崩壊の危機を迎えそうだ。いよいよ政界の「ガラガラポン」が始まるのだろうか。

目くらましを喰らった日本

 7月8日に安倍晋三が銃撃され死亡した。以降、日本では「統一教会たたき」が展開されている。「統一教会」は「世界平和統一家庭連合(旧名称は世界基督教統一神霊協会)」と表記すべきだが、本紙は「統一教会」で統一する。
 すべての発端は安倍晋三銃撃事件であり、銃撃犯は山上徹也(41歳)である。事件直後から、新聞テレビ週刊誌の報道は、本筋から外れて思わぬ方向に向かった。
 一つは「真犯人は山上徹也以外に存在する」という陰謀論めいた話であり、もう一つは「統一教会は悪い宗教団体だ」という風評である。どちらも本筋とは関係ない話だ。

 念のため再度お断りしておくが、本紙は安倍晋三も統一教会も好きではない。どちらかというと、両方とも好ましくない存在と考えてきたし、現在もその思いは変わっていない。本紙と同じように、安倍晋三も統一教会も嫌いだという方は多いのではないだろうか。だが好みは別として、事実を追及していく必要がある。
 安倍晋三は銃撃されて死亡した。もう発言できない。容疑者の山上徹也は「安倍氏と統一教会が繋がっていると思い、絶対に殺さなければいけないと確信した」と供述。
 これが現在に至る「統一教会たたき」の原因になっている。
 その状況下、容疑者の主張が全面的にとり入れられるというのは、何とも奇妙な話だ。被害者の発言が優先され、犯人の発言は無視、軽視されるのが普通だろう。容疑者が統一教会を恨んでいたことは、間違いない。容疑者は安倍晋三を銃撃するためにパイプ銃を製作した。専門家たちの検証により、パイプ銃の製作は素人には難しく、莫大な費用がかかり、試射を何度か繰り返す必要があることがわかっている。

 試射には場所とカネが必要だ。容疑者は「統一教会と対立するサンクチュアリ教会」と関係を持っていたことが明らかにされている。サンクチュアリ教会の本部は米国にあり、銃を持つことを重要視している教団だ。山上徹也との関係を考えると、銃の製作・試射との関係をこの教団につなげて考えるのが必然だ。日本ではサンクチュアリ教会は「日本サンクチュアリ協会」を名乗り、今回の事件に関して何回かマスコミにも名前が登場したが、続報はなく、ほとんど忘れられている。

 「安倍の体内から、致命傷を与えた銃弾が消えてしまった」「安倍晋三を殺害したのは、本当は山上徹也ではなく、別な場所から狙撃された」「山上が撃った2発の間に、もう1発が撃たれている」「現場で緊急治療が行われたが、その際に致命傷を負わされた」など、山上徹也以外に真犯人がいるといった奇説・珍説が流れ出ている。
 視線をそらすための作り話と思えるが、仮にそれらが正しいとしても、山上徹也を追っていけば真犯人にたどり着けるはずだ。そのためには山上がどうやってパイプ銃を作り、その費用は誰が拠出し、どこで試射が繰り返されたかを調べる必要がある。

 山上とサンクチュアリ教会(日本サンクチュアリ協会)との関係を調べることが重要だ。
 ところがサンクチュアリ教会が調べられることはなく、敵対している統一教会がたたかれている。辻褄が合わない。自民党と統一教会の関係に関して、日本中が大騒ぎしている。指摘されている通り、自民党と統一教会はズブズブの関係にあり、国政どころか地方議会にもその影響が及んでいる。この問題は後回しにする。

 ここで「そもそも論」を展開したい。そもそも宗教団体が政治家を応援、支援することはいけないことなのか。法律違反なのか。創価学会が公明党を支援し、幸福の科学が幸福実現党を支援しているのは誰もが知っている事実であり、文句をいう者はいない。PL教や立正佼成会などが「新日本宗教団体連合」を作って平成21年(2009年)の民主党躍進、民主党政権誕生に寄与したことはよく知られている。
 「新日本宗教団体連合」はその後、民主党政権のデタラメぶりに内部分裂を起こし衰退したが、今日も一部は立憲民主党など野党支持に回っている。
 宗教団体に限ったものではないが、政治家が組織や団体の支援を受けるのは当然のことだ。纏まった票が手に入るからだ。それでは、政治家が宗教団体をはじめとする組織・団体と関係を持つことは法律違反なのだろうか。そんなことはない。
 「統一教会と関係がある」だけで政治家を糾弾するというのは、あまりに理不尽だ。
 ここで改めて本紙の姿勢を申し上げる。本紙は現在の自民党政権のあり方に疑問を持っている。統一教会を擁護する気持ちなど微塵もない。だが現在展開されている「統一教会たたき」「統一教会と関係する自民党議員たたき」には異常さを感じる。
 新聞テレビ週刊誌が足並みを揃えて「統一教会たたき」に走っている現状は、作られた世論としか思えない。これまで「米国CIAの手先」と陰口をたたかれてきた有名週刊誌までもが、統一教会たたきに走っている。
 どう考えても、大きな力が世論を動かしているとしか思えないのだ。その大きな力は、世論をどこに向かわせているのか。日本中が冷静になるべきではないだろうか。

統一教会と文鮮明の正体

 統一教会は1954年(昭和29年)に、文鮮明によって、韓国で作られた宗教団体だ。
 「日韓基本条約」(昭和40年)が締結されるより11年前、韓国の経済状態が劣悪の状況下で作られた組織で、文鮮明は戦後間もない頃から宗教家のように振る舞い、布教活動を展開していた。文鮮明は統一教会を創設した翌年1955年には「梨花女子大学事件」を起こしている。女子大の教授や女子大生が統一教会に入信し、10数名が退学処分になった事件だが、このとき女子大生の数名が文鮮明と肉体関係を持った(統一教会では「血分け」という)とされ、文鮮明は女子大生不法監禁の嫌疑で逮捕されたが、女子大生からの告訴が取り下げられたため裁判では無罪となっている。

 文鮮明は日本が韓国を併合していた1920年(大正9年)に朝鮮半島の定州で生まれた。定州は現在の北朝鮮にあり、中国の丹東(旧・安東)と平壌の中間地点にある市。
 終戦直後の1945年(昭和20年)8月下旬に、朝鮮人が日本人を襲撃し、略奪強姦事件が多発した地域として知られる。そうした反日感情の強い土地に生まれたことが、文鮮明に影響を与えた可能性もある。
 文鮮明は19歳になって日本に渡り、専門学校で電気工学を学んだ後、朝鮮に帰国。その翌年には抗日運動に参加したことで警察に逮捕されている。
 戦後からしばらくの間、文鮮明の評判はよろしくない。朝鮮戦争が終わった1952年(昭和27年)に文鮮明は、今日の統一教会の教科書的な位置にある『原理原本』を出版しているが、この著作も盗作だという証言がある(金百文・著『基督教根本原理』を盗作したとされる)。また戦後間もない頃、韓国の大邱(テグ)で置き引き、婦女暴行を重ね、前科11犯だったともいわれる(内閣調査室関係者の証言)。

 生まれ落ちてから終戦直後くらいまでの文鮮明は、婦女暴行を重ね反日思想が強い小悪人という雰囲気が強いが、神秘体験を繰り返していたことも本当らしい。
 もっとも、神秘体験などは証明するものはなく、本人が語っているだけの話で、どこまで本当なのかは本人以外にはわからない。いずれにしても文鮮明本人は、終戦前後から神秘体験を重ねたと口にしていた。それが周囲に受け入れられ、教祖となる伏線になっている。1954年に統一教会を設立した文鮮明は、5年後の1959年(昭和34年)に日本でも統一教会を設立(宗教法人認可は昭和39年)。1961年(昭和36年)には韓国の朴正熙大統領時代に反共思想をぶち上げて、政府の手厚い庇護下に入った。

 この流れからも推測できるが、文鮮明という小悪人を前面に押し出し、文鮮明を宗教家に押し上げたのはKCIA(大韓民国中央情報部)である(正しくはKCIAの前身にあたる大韓民国敵対諜報部)。韓国の反日勢力の一部をまとめ、日本からカネをむしり取ろうという意志が根底にあったものだ。これは日韓基本条約締結以前の話だが、ここで注意すべきは、当時のKCIAの動きは米CIAの了承の下で行われていたことだ。
 つまり、枝葉末節を除いて本筋だけを語れば、日本からカネを奪い取るための組織・統一教会は、米CIAの了承の下で作られたものなのだ。

 その後の文鮮明に関し、記憶すべきは「国際勝共連合の設立」(1968年)と、拠点を米ニューヨークに移し(1972年)「商業活動を多方面に展開」したことだ。
 日本は安保闘争(1960年)第二次安保闘争(1970年)の狭間にあり、日本政府が左翼勢力に怯えていた時代だった。「国際勝共連合」の発起人として岸信介(元首相)が名を連ね、岸信介の自宅(渋谷区南平台45番地)の隣に統一教会の本部が置かれていたのも、そうした社会情勢に応じたものだったと理解できる。共産主義勢力を断固として排除するという強い姿勢が「国際勝共連合=統一教会」を日本政府中枢に接近させたのだ。だが日本政府の思惑とは異なり、統一教会の根底には、「反共」より「反日」の姿勢が強かった。それが日本を蝕んでいく。
 1968年に創設された勝共連合は、その教義として「日本は生活水準を3分の1に落としても軍事力を増強する必要がある」と説き、それを「美しい国・日本の使命」と謳った(日本国際勝共連合初代会長・久保木修己の論説)。この勝共連合の標語でもある「美しい国・日本の使命」がそのまま安倍晋三に受け継がれ、『美しい国、日本』となったことは周知の事実である。日本の政権与党である自民党が、奥深くまで統一教会と関係していることは枚挙にいとまがない。本当は事細かく、いろいろな事例を書き並べたいところだが、あまりに紙幅を要してしまうので今回は割愛する。一言で言えば自民党は「反共」思想に乗るために統一教会を自民党内の奥深くに招き入れてしまった。自民党の派閥の一つ「清話会」(小泉純一郎-安倍晋三)は特にその傾向が強かった。

 清話会の重鎮、小泉純一郎と安倍晋三が、半島に独自の繋がり(パイプ)を持っていたこともその理由の一つだった。安倍晋三襲撃事件もそうだが、その後の熱狂的な「統一教会たたき」には、明らかにプログラムがある。明らかに大きな力が働いている。単なる「清話会つぶし」ではなく、「自民党つぶし」あるいは「親韓国・親朝鮮つぶし」である。それは「歴史の流れ」などという曖昧なものではない。明確に日本の国體(国体)勢力の意思が働いたものだ。では、その力はどこに向かっているのだろうか。

2016年米大統領選で「破壊屋」トランプが勝利した理由

 ここで話題を大きく変える。6年前の米大統領選を思い出して頂きたい。
 共和党ドナルド・トランプと民主党ヒラリー・クリントンが争ってトランプが勝利した大統領選だ。トランプは2000年から共和党の大統領予備選に候補者の一人として顔を連ねていた。だが正直なところ、大統領選候補者としては泡沫(ほうまつ)的な存在で、米国以外では、トランプの名はあまり知られておらず、無視されていた。

 もともとトランプは自己顕示欲が強い人物で、有名人と一緒に本の表紙を飾ったり、記事にされることを好んだ。「トランプ・タワー」「トランプ・プラザ」「トランプ・マリーナ」など、自分の名を表に出すことが好きだった。大統領選の候補者となるのも、名前を売るためだと思われてきた。そのため米国内では、ホテルやビル経営者、そしてテレビ番組のホスト役として、かなり名は知られていたが、大統領選候補者という認識はされていなかった。トランプは米大統領選の前年、2015年6月に、共和党の米大統領予備選に立候補を表明したが、このときも前評判は低調だった。

 当時人口が増え続けていたヒスパニック系(中南米系)の反感をよぶ発言をくり返し、テレビ局が一斉にトランプ外しを始めたこともあったし、メキシコ系住民の反感を買ったこともある。
 2015年12月には「ムスリム(イスラム教徒)の入国を禁止すべき」とも発言。イスラム世界がトランプ・ブランドの商品を回収するなど、敵を作ることが多かった。それが逆に功を奏したものか、2016年に入ると共和党候補は一気にトランプに一本化されていった。それでもなお、ヒラリーとの差は、歴然としていた。ヒラリーが「米国初の女性大統領」になる雰囲気が米国全土を圧倒していた。
 世界中のあちこちでもヒラリー大統領の可能性が口にされていた。そんな状態でトランプが大統領選に勝利した理由は何か。様々な理由があるが、簡単に纏めれば、これまで選挙に出向かなかったブルーカラー(労働者層)や低所得者層を掘り起こしたことだ。それは、資金力や知名度だけではできない。組織力・動員力が必要だった。
 トランプには資金はあったが、組織力・動員力がなかった。

 見えない力――国際情報通にも姿を見せない勢力がトランプを背後から支援したから、組織力・動員力を手にできた。その「見えない力」とは何者か。これまでの米国をぶっ壊そうと考えた米国国體(国体)勢力と表現できる。国體(国体)勢力とは、「国のはじまりから連綿と国家を動かしてきた、愛国的な歴史ある一群、勢力」と説明できる。
 米国の国體勢力とはWASP(ワスプ=英国系白人至上主義者)東部エスタブリッシュメント(東部支配層)と表現される、一群の米国中枢を意味する。米国の「愛国者」と表現してもいいだろう。

 どんなに健全な政体勢力(政府)でも、長期間経てば、どこかにほころびが生まれる。どんなに頑丈で優れた建築物でも、長い月日の間に見えないどこかが腐敗し、錆びついて機能不全に陥る。人間が動かす政体勢力には必ず癒着や腐敗が起きる。身内や知り合いをかわいがる人間としての必然の行動が、組織を蝕んでいく。これを是正する手っ取り早い方法は、ぶっ壊すことだ。トランプは、米国の政体をぶっ壊すために、国體勢力によって押し上げられた存在だった。国體勢力が押し上げた人間であっても、トランプは、やっとの思いで勝利を手にした。

 ぶっ壊すことがいかに難しいか、2016年米大統領選が証明してくれる。そしてそのぶっ壊しが過度にならないように、2020年大統領選ではトランプは憂き目を見て今、米国の破壊は、ひと休みしている。長大な歴史軸を俯瞰すると、ぶっ壊しが成功した米国の底力が見えてくる。その健全さが見えてくる。逆に、破壊ができない国々の根本的な弱さが浮かび上がる。
 例えばロシアや中国では、こうした破壊を行うためには、多くの血が流されるだろう。血が流されたあげくに、壊れるだけで何も生まれないかもしれない。
 破壊されても必ず健全な形で再浮上すると信じられているから、破壊が成功する。
 今日のロシアや中国には、こうした破壊はできない。壊れたら再生できなくなる可能性が高いからだ。それでは、我が日本の場合はどうだろうか。

自民党は解党し、与党として復元できるか

 安倍晋三銃撃事件とその後の日本の世論の作られ方は、明らかに大きな力に動かされているとしか考えられない。「大きな力」とは、我が国の国體(国体)勢力を意味している。国體勢力以外に、こんな大がかりなことはできない。問題は、国體勢力の意思に従って政体(政府)及び野党全体が破壊を受けいれるか否かだ。
 健全な政党であれば、一度ぶっ壊されても、必ず健全な形で再浮上する。日本にいくつもある政党の中で、一度完全に破壊された後、ゼロから再度立ち上がることができる政党は、どれほどあるだろう。日本共産党は、解党してゼロから再浮上できるだろうか。立憲民主党は…そして公明党は…。

 一番の問題は最大政党である自由民主党だ。我が国の最大政党、保守本流の自民党が、一度解党しバラバラになったとしたら、本来あるべき形に再生できるか否か。
 国體勢力の今回の動きは、自民党の喉元に剣を突き刺したのも同然の話。我が国の国體勢力は自民党に対して「解党」を求めているのだ。統一教会の会合に参加した、統一教会に選挙運動の人員を調達してもらったなど、どうでもいい話。「自民党」という金看板を放り出し、解党してそれぞれが新たな再出発を期すべき覚悟が自民党にあるか否かだ。米国は「破壊屋」トランプを大統領にしたことで、大きな傷を負った。

 まだ破壊は途中で、これから先、最悪の場合には内戦に突入するほどの激動を体験することになるだろう。それでも間違いなく米国は再浮上する。なぜか。破壊を受け入れたからだ。日本が本当の意味で復活するためには、自民党を解党・解体し、痛みを伴った大改革をする必要がある。国體勢力が求めているのは、自民党解党だ。
 日本に、歴史のある最大政党をぶっ壊す底力が残っているかどうか。自民党に、痛みをともなった解党の意思が生まれなかったら……。あるいは解党もできない自民党を国民が黙認したら……。日本から「未来」が消えてしまう。■

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