壊れていくアメリカ
崩れさる自由主義諸国
米国が音を立てて壊れはじめた。日本での報道は少ないが、信じられないほどの壊れ方だ。米国がこれほどメチャクチャに壊れることを予想した者はいただろうか。壊れゆく米国に合わせるかのように、「西側諸国」とよばれてきた自由主義経済圏が崩落をはじめている。世界は激変の度合いをいよいよ強めている。この先、世界はどう変わっていくのか。そして日本は――。
13万円以下の窃盗は「やりたい放題」
スーパーの店内にカート付きの大型バッグを持ち込み、商品を手当たりしだい詰め込んで、代金も支払わずに持ち逃げする。そんな光景が当たり前のようにくり返されているのが米国のカリフォルニア州の町々だ。メキシコ国境に近いサンディエゴではじまった窃盗騒ぎは、ロサンゼルスからサンフランシスコにまで広がってしまった。
ことのはじまりは2014年11月だ。
カリフォルニア州で「提案47」という法律が可決された(正確な名称は「Proposition47、The Safe Neighborhoods and Schools Act」。直訳すると「提案47・安全な近隣と学校法」)。カリフォルニアは特に貧富の差が激しく、小さな万引き、窃盗が以前からそこらじゅうで起きていた。警察官の手が足りず、刑務所も満員。そこで、非暴力的で小規模な犯罪は「軽犯罪」として逮捕をまぬがれることになった。
この小規模な犯罪とは
・950ドル(約13万5000円)を超えない万引きや窃盗
・950ドルを超えない盗難
・950ドルを超えない偽造小切手、偽造手形
などを指す。防犯カメラの目の前で、テレビや小型家電、カメラなどが奪われるようになったのだ。店側が警察官を呼んで現行犯逮捕されることもあるが、その場合でも単に出頭命令書を手渡されるだけ。
その後、犯人が警察に出頭することなどない。有名な大手ドラッグストアのウォルグリーンは、サンフランシスコに展開していた店をほとんど閉じてしまった。アマゾンで配達を頼んでも、玄関前の配送物は持ち去られてしまう。車上荒らしもひどい。サンフランシスコは米国でも富裕層が多い町として知られるが、富裕層の半分近くはサンフランシスコを捨ててテキサス州などに移住しているという。
ゾンビ・タウンになったフィラデルフィア
米国の東海岸、ニューヨーク州の南にペンシルベニア州がある。米国では5番目に人口が多い州だ。住民の8割以上が白人という、白人優勢の州で、一番大きな町はフィラデルフィア。米国の独立宣言や合衆国憲法がつくられた都市として知られる。このフィラデルフィアにあるケンジントン通りが「ゾンビ・タウン」とよばれるようになった。
なぜこんなことになったのか。
かつてフィラデルフィアは、仕事を求めて全米から労働者が集まるところだったが、この数年、仕事がなくなってしまった。新型コロナが追い打ちをかけたため、おカネがない人々が激増、そこに安い値段の麻薬――ヘロインやコカインが大量に入ってきたのだ。
なかでもクラック(煙草として吸えるコカイン)中毒患者が多い。薬物中毒者は街中で前かがみになったまま、いわゆる「ハイ」の状態になっているという。素っ裸で歩く者もいて、街中で人の目も気にせず排便、排尿を行う。強姦や略奪は日常茶飯事で、殺人事件も多い。麻薬、覚醒剤が取り締まれないために、地獄のような街になってしまった地域は、フィラデルフィアだけではない。
最近、オレゴン州(米国北東部)では麻薬を犯罪としない法律が可決された。ヘロインやコカインを所持することは罪ではなくなった(売人は犯罪者として逮捕される)。こうした状況が米国全土に広がっている。もはや米国は、かつての米国ではない。
国民が生活できない国アメリカ
日本では約200万人、160万所帯が生活保護を受けている。人口比1.7%、総所帯の3.4%が生活保護所帯だ。米国には日本のような生活保護はないが、その代わりに「フードスタンプ」制度がある。受給者は「バウチャー」とよばれる金券をもらい、この金券を使ってスーパーなどで食料品を買うことができる。最近では金券(バウチャー)の代わりにEBTカードというプラスチックのカードが支給されることも多い。支給額は州によって異なるが、だいたい月に100ドル(1万4000円)くらいだ。
米国のフードスタンプ受給者数は毎年増えつづけている。今年(2023年)6月時点で4,100万人超が受給者だ。総人口の12.5%が受給者、日本でいえば生活保護者である。日本のおよそ7.5倍にあたる。それが毎月増えている。
米国の貧富の差は増大し続けている。所得格差は1970年代後半から目立つようになり、低所得者層はますます貧しく、富裕層はますますカネ持ちになっている。所得格差が広がるのは先進国のどこでもみられるが、米国はひどい。バイデン政権は低所得者の所得を増やそうと6兆ドル(840兆円)の経済対策を打ち出したが、その効き目は見られない。所得格差は教育格差を生み、社会全体が団結を失っていく。もはや米国は、かつてのように光り輝く米国ではない。
2024年大統領選の混乱
来年2024年11月には米大統領選が行われる。民主党バイデンと共和党トランプの争いになるというのが一般的な見方だ。共和党からはデサンティス(フロリダ州知事)やクルーズ上院議員(テキサス州)などの名前も出ているが、共和党の候補者はトランプになる可能性が高い。米国では19世紀に国家が二分された南北戦争(1861年~1865年)が起きたが、それ以前にはホイッグ党と民主党が対立していた。
共和党がつくられたのは南北戦争直前の1854年、日本の江戸時代末期、日米和親条約が結ばれたころの話だ。1860年の大統領選でリンカーン大統領が誕生したが、これが共和党最初の大統領だった。それ以来、米国では「民主党対共和党」という2大政党がシノギを削ってきた。共和党か民主党のどちらかという構図が164年間も続いている。
この構図は、やがて壊れる。2024年にこの構図が壊れる可能性は低いが、ゼロではない。そもそも2024年の大統領選が無事に行われるかどうかも怪しい。共和党トランプ対民主党バイデンとなった場合、2020年の大統領選の再来となる。共和党と民主党は俗に「青い州(共和党)、赤い州(民主党)」と色分けされることもある。
大統領選は「選挙人」を選ぶ選挙だ。選挙人の数は人口に比例して割り当てられる。
州によっては、明確に共和党が強い州、あるいは民主党が強い州があるが、どちらが勝つかわからない州もある。勢力が拮抗している州は「激戦区」とよばれる。
アリゾナ州、フロリダ州、ミシガン州、ペンシルベニア州、ウィスコンシン州の5州は激戦区として知られるが、ニューハンプシャー州やノースカロライナ州もそこに加わることが多い。トランプ対バイデンの争いとなった2020年の大統領選は、激戦区での争いが凄まじかった。開票が終了した時点でも、「投票箱が消えた」とか「偽造の投票用紙が使われた」などといった情報が乱れ飛び、敗けたトランプ陣営の中には「不正選挙だ」とさわぐ連中も多かった。
トランプを応援した狂信的集団「Qアノン」というグループが騒乱を後押しした。それが2021年1月6日に起きた国会議事堂襲撃事件を引き起こした。州兵と警察隊が守る国会議事堂に暴徒集団が侵入、抗議デモに参加した女性を含む10人が死亡する事件だった。2024年の大統領選でどちらが勝つかはわからない。どちらが勝っても「不正選挙だ」という声があがることは確実だ。
現在の米国は、歯止めがきかない危険な状況にある。間違いなく暴動は全米に拡大する。特に激戦区では何が起きるかわからない。州兵や民間警備会社、警察官などが入り乱れる騒乱になる。大統領が2人出現して、米国が内戦状態に陥る可能性もある。
東京に「アメリカ合衆国臨時政府」?
そんな状況を見据えて、米合衆国の「臨時政府」を米国外につくることを提唱している政治家がいる。米国の「第三の政党」緑の党の候補者の一人、エマニュエル・パストリッチだ。パストリッチという政治家は、日本で東京大学大学院修士課程を経て米国に戻り、ハーバード大で博士号を取り、米国で教授生活をやった後に韓国にわたり、韓国人の女性と結婚。奥さんと死別後に日本に来て、その後日本人女性と再婚している。台湾にも留学経験があり、英語以外に日本語、中国語、韓国語を普通に話す。日本の古典文学にも通じている。そんなパストリッチ博士は、こういう。
「2024年の大統領選後には、米国は大混乱を迎えるだろう。もし米国が内乱、内戦になった場合、合衆国の政治機能が破綻する。そんな場合にはTOKYO(東京)に『アメリカ合衆国臨時政府』を樹立して、私が大統領になる」
パストリッチ博士の指摘通り米国が内部混乱を迎える可能性は高い。だが米国が内乱・内戦に陥ったとしても、東京に臨時政府が成立するかどうかはわからない。博士は「これから先の米国は、東洋に学び、東アジアの文化をとり入れて、これまでの米国と訣別する必要がある」と説く。博士は日本、中国、韓国の思想や歴史を熟知しており、大アジア主義の理解者でもある。博士は今年(2023年)8月15日と9月2日に、日本人に向けて非常に意味のある演説を行った。ちなみに8月15日は終戦記念日であり、9月2日は戦艦ミズーリ号上で日本が降伏文書に署名した日(公式な終戦記念日)である。
この日に行われた演説は長いもので、すべてをご紹介する紙幅はない。日本を愛する者、大アジア主義に生きる者として記憶に留めておきたい内容がいくつかあるので、以下に簡単にご紹介しよう。
米国人政治家として初めて日本に謝罪
パストリッチ博士の長い演説の冒頭に、以下の言葉がある。
「私は1945年の原爆投下の犯罪性と残虐、そして東京やその他の都市への一般市民を狙った焼夷弾(しょういだん)による絨毯(じゅうたん)爆撃について、すべての日本の国民に対して、そして世界に対して、厳粛に正義を以て、心よりおわびを申し上げます」
昭和20年(1945年)8月6日に広島、そして9日に長崎に原爆が投下された。広島では14万人以上が、長崎では7万数千人がその犠牲となり、重傷者も広島で8万人、長崎で7万5,000人を数えた。「戦争を早期終結させるために、やむを得ない原爆投下だった」とか「原爆が落とされなかったら日本は本土決戦に向かい、なお数百万人の死者が出ただろう」といわれることもある。こんな説は米国の身勝手な言い訳に過ぎない。
パストリッチ博士も語っているが、日本はその時すでに敗戦を決意し、ソ連を通してポツダム宣言受諾の意思を伝えていた(「ポツダム宣言」提示は7月26日)。原爆投下は、ウラン型とプルトニウム型の「実験」であり「データ収集」が目的だった。米国の実験により、一瞬で22万人以上の尊い一般市民が犠牲になったのだ。
さらに昭和20年3月10日の東京大空襲に代表される焼夷弾(しょういだん)による空襲もある。実は東京大空襲だけではなく、戦時中の3年半の間に米軍は日本本土に200回に及ぶ空襲を行っている。その多くが焼夷弾による空襲である。
焼夷弾とは(いくつも種類があるが日本本土空襲に使用された多くは)ナフサという化学薬品による爆弾。上空600メートルほどで分裂し無数のリボン状に分裂する。目撃した人の話によると、空から火の海が落ちてくるように感じたという。リボンが体に付くと、貼りつき、服を溶かして皮膚にへばり付く。水をかけても消えない。体が燃える恐怖と苦痛で川に飛び込む者もいたが、川に入っても火は消えない。東京大空襲では最初は下町の周辺が爆撃され、逃げ場を失った人々が集まる中心部に最後の空襲が行われ、11万人以上が亡くなった。当時の新聞は「東京大焼殺」と報道。米軍資料には「住民の大量殺戮により戦争継続の意思を失わせるための爆撃」と記されている。
焼夷弾の目標は、軍事施設や軍需工場ではなく、一般家屋や一般市民である。日本の民家は木でつくられている。焼夷弾とは、一般市民を焼き殺す目的で考え出された爆弾なのだ。一般市民に対する攻撃は戦争犯罪である。原爆も、焼夷弾による爆撃も、戦争犯罪だ。米国の政治家が謝罪するのは当然のことだ。
なお焼夷弾はベトナム戦争でも使用されたが、このときは「ナパーム弾」と名前が変えられた。焼夷弾というと大東亜戦争の米軍空襲の記憶が生々しくよみがえるから、意図的にナパーム弾と名前を変えさせられた。さらに付け加えると、大戦中は「空襲」だったものが、その後は「空爆」と名を変えさせられている。
「狂気」を生み出した大西洋憲章
パストリッチ博士は原爆開発の「マンハッタン計画」に問題があるという。マンハッタン計画は1942年(昭和17年)8月にルーズベルト大統領の命令で始動したものだが、この狂気の計画を生み出した背後に英国チャーチル首相と米ルーズベルト大統領が交わした「大西洋憲章」がある。1941年8月に交わされたものだ。
1941年(昭和16年)の春から夏にかけて、野村吉三郎駐米大使は米国国務長官コーデル・ハルと戦争回避に向けて話し合いを続けていた。だが大西洋憲章締結後には米国の態度が一気に強硬となり、同年11月には「ハル・ノート」とよばれる文書が提示され、日本はこれを最後通牒と受け止めて米国との戦争を決意する。
英米が協力してつくり上げた原爆開発のためのマンハッタン計画は、当初から日本を目標としていた。日本を壊滅させるために、チャーチルとルーズベルトが手を組んだ。マンハッタン計画(原爆から焼夷弾まで)は、米国国民、そして米国政府を超えた存在として秘密裡に動き、それは国防総省に引きつがれて今日に至っている。米国防総省は、米国民の意思や米国政府を超越した存在として世界を動かしている。
この存在こそが、俗に「DS(ディープステイト=影の世界政府)」とよばれるものの正体なのだ。これを暴かないかぎり世界に平和は戻らない。米国民の意思、米国政府の意思を超えて動いている国防総省こそが諸悪の根源なのだ。
国防総省はロシア、中国に対する先制核攻撃を検討している
パストリッチ博士の演説の中に、「国防総省はロシア、中国に対する先制核攻撃を検討している」というくだりがある。これこそ、国防総省の狙いとも思える。
とんでもない話だ!と怒る方もいるだろうが、冷静に考えればこれは当然のことでもある。米国だけではない。ロシアも中国も「先制核攻撃」の検討をやっているはずだ。軍があり、核を所有していれば、実行に移すかどうかは別として、攻撃の手法やその後に想定される敵軍の動きをシミュレーションするのは必然の話である。重要なことは「米国の現役政治家がそれを告白した」点だ。
今、世界は、あらゆる局面が煮詰まり、ギリギリの緊張の中にある。ウクライナや欧州戦線だけではない。中東ではユダヤ教徒が第三神殿建立に向けての圧力を高め、イスラエルのシリア空爆が連日行われている。シリア内戦も、アフガン内戦も、まだ決着がついていない。トルコではクルド人との紛争が長引き、アフリカ諸国でも多くが内乱の危機にひんしている。中国では不動産バブルが弾け、目も当てられない状態だ。購入したマンションに電気ガス水道が流れてこないとか、高層マンションのエレベーターが動かない程度は普通の話。米国はこの記事の冒頭に記した通り、もはや正常な国家状況ではない。台湾海峡に沈められたと噂される中国原潜の話、シーク教徒殺害事件をめぐるカナダとインドの確執も、BRICS対大西洋諸国連合の激突に見える。
今年2023年は残すところあと3カ月。この3カ月で世界は激変する。最初に起きるのが金融崩壊なのか、それとも極東有事(台湾海峡開戦)なのか、はたまた巨大地震襲来なのか、誰にも予測はできない。予測はできないが、必ず何かが起きる。世界金融崩壊と戦争が前後するように起きるかもしれない。そこに天変地異が重なったら、いよいよ人類文明終焉の刻が来るのかもしれない。不安を煽るつもりはない。だが間違いなく、年内に何かが起きる。激変に対処する肚を決めることこそ重要だろう。■