激震 の川越市議会 最高裁判決で 全面棄却
「信用できない」 川合善明市長への判決確定!
「市長辞職勧告決議」
川越市議会35名のうち
賛成わずか 8名 反対は、理由を述べずに 27名
川越市議会令和5年第4回定例会(9月定例会)の最終日となった9月28日、議場は異様な空気に支配された。市民女性A氏に対する、強制わいせつ及びセクハラ事件を「すべてA氏のウソだ」とした川合善明市長の主張が、去る8月に言い渡された最高裁判決で全面棄却されたことは本紙既報の通りだ。本件最高裁判決とは、最高裁判所が新たな判断を示したというものではなく、原告川合の上告が棄却された判決だ。つまり、原告川合の主張をすべて棄却した、さいたま地方裁判所の一審判決、続く東京高等裁判所の二審(控訴審)判決に誤りはないとして、最高裁が原告川合の上告を認めなかったという最高裁判決だ。川合市長の言い分や、裁判に提出された川合市長擁護の陳述書も「信用することはできない」と一刀両断にした上で、被害者であるA氏の主張を「虚偽であるということはできず、むしろ、証拠上、それなりの根拠が認められる」とまで判示した、さいたま地裁川越支部と、東京高裁での控訴審判決が、最高裁判決によって確定したのである。
要するに日本の司法が、川越市長・川合善明氏を「信用できない」と認めたのだ。9月議会では、この最高裁判決を受けて川越市議会がどのように対応するのか、市民と市政関係者らは大いに関心を寄せていた。
具体的には、川合市長に対する「辞職勧告決議(案)」が、本議会に上程されるか否かである。議会傍聴席には、被害当事者の市民女性A氏と、その代理人・清井礼司弁護士のほか、支援者で事件を川越警察署に刑事告発し、川越市議会にも請願した愛媛県警の元警察官でジャーナリストの仙波敏郎氏、本紙記者は勿論のこと、一般市民たちを入れておよそ十数名の傍聴人が、川合市長の辞職勧告決議(案)の行方を厳しい眼で見守っていた。
ところが、その結果は、川越市議会議員35名(議長を除く)のうち、賛成はわずか8名、川合市長を擁護する同決議反対は理由を述べずに27名という、市民の誰もが自らの耳目を疑うものとなった。
本稿冒頭の、議場を支配した「異様な空気」とは、市民の人権を平然と侵害する市長を、どこまでも擁護しようとする川越市議会の不気味さのことだ。
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「証拠上、それなりの根拠が認められる」(最高裁判決)
川合市長の性加害を容認する、恐るべき市議たち
川合市長に対する「辞職勧告決議(案)」に反対した議員の名を挙げる。
上掲、27名の川越市議会議員は、同決議の不採択にまわったことで、結果として川合市長を擁護した。後述するが、議会終了後の本紙取材に対して、これら反対派(川合擁護側)議員のほとんどは、問題の最高裁判決さえ「読んでいない」と悪びれもせず平然と言ってのけた。
川合善明氏の主張はおろか、川合市長が自身の影響力を悪用して何人もの市民<三上喜久蔵議員(当時)・「居酒屋とんぼ」経営者・元自治会長・元川越市職員>に「書かせた」陳述書さえも「信用できない」「採用することはできない」と判示した一審判決と控訴審判決に誤りがないとして、最高裁判所は、川合市長の上告に理由がないと判決したのだ。
最高裁に至るまでの、裁判の一連の経過は、本紙で逐次詳細に報じ、判決文も全文を公開している。
(下記URL参照)
「司法が、川越市川合善明市長に“No”」 「速報 川合善明市長全面敗訴!!」
仮に「裁判の内容がわからない」というなら、反市長にして川越市議会最古参の小林薫議員に聞けばいいではないか?自身も川合市長に名誉毀損で訴えられている小林市議であれば、当事者の1人として、一連の川合裁判に誰よりも詳しい。本件最高裁判決は、市民女性A氏が川合市長から受けた性被害について「虚偽であるということはできず、むしろ、証拠上、それなりの根拠が認められる」とまで厳しい判決を言い渡した東京高等裁判所での判決が確定したのであり、これを理由として川合市長に対する辞職勧告決議(案)が提出されたのだから、議員であれば事件そのものを知ろうとしなければならない。
一審からの判決文にある「むしろ、証拠上~認められる」といった書き方は、裁判官の義憤が滲む表現といっていい。普通の人々の言葉に訳せば「A氏の虚偽どころか、原告(川合市長)の不法行為(性加害)はあったと認められる」という内容の判決だ。現職市長による性加害事件の結末を示す最高裁判決を、市議会議員が「読んでいない」など、それ自体が市民の代表であるべき市議の自覚の欠片(かけら)もないというべきだろう。
いずれにしても彼らは、川越市における最高権力者による市民の人権侵害被害について、まったく関心がないという意味では、「反市民的な議員」どころか「反市民議員そのもの」と評していいだろう。有権者は次期選挙での投票を考えるべきだ。これら反市民議員らの思考回路はどうなっているのか?
この点については本稿後半で詳述する。
「市長の弁護士としての資質さえ疑われる」
柿田有一議員(共産党)の堂々たる正論
市民女性の人権を踏みにじる市長を擁護する「反市民議員」が大多数を占めることが明らかとなった川越市議会だが、市長に対する辞職勧告決議(案)に賛成した議員も8名いた。
この8名の議員は、川合善明市長に市長辞職を勧告する、強い姿勢で本議会に臨んでいた。「市民の側に立つ」正真正銘の議員だ。このことは非常に重要である。市民=有権者の投票によって選ばれた議員は、市民のために働き、市民の権利を守るために働くことが仕事だ。そのために全国平均で月額40万円を超える議員報酬が税金から支払われている。誰でも知っていることだ。
市民に当選させてもらって議員バッジをつけたと同時に、議員報酬と相応の社会的地位を保証してもらうためには、市民の側ではなく、市政=市長側についたほうが得だと考える市議が主流派という議会が、川越市議会の現在なのだろう。さて、本議会(9月定例議会)に提出された、川合善明市長に対する辞職勧告決議(案)は、最初、共産党が出そうとしていた。
ところが、9月定例議会最終日の前に開かれた議会運営委員会(略称「議運」)で、同決議案を潰したい大多数の「市長派議員」らによって、共産党からの上程は否決されていた。そこで川合市長糾弾の最前線でもある無所属議員の小林薫議員が同決議案を提出し、共産党議員はその決議案に賛同することになったのである。議会では、まず小林議員が川合市長に対する辞職勧告決議(案)の提出理由を述べ、続いて、柿田有一議員が賛成討論を行った。
このスピーチは、傍聴席を埋めた市民たちが心の中から拍手喝采を送った、見事な、堂々たる正論だった。まさに、選良たる「議員」の義務と理念を体現した、柿田議員の賛成討論の全文を以下にご紹介しよう。
柿田有一議員 賛成討論
市長がどのような立場であるか。
予算編成と施策の執行責任を負う立場であり、職員の管理監督にも責任を持つ。
何より、市民の生命と財産を守る責任を負う自治体の長という立場であり、その言動に関しては公私を問わず、市民から関心を持たれる。市民をはじめ、様々な立場からの声には耳を傾け、考えを明らかにするのが職務。何より、この裁判は市長自身が求めて行われたものであることを強調しておく。
我々議会はもちろん市民などから言動に対し疑問を投げかけられれば、見解を明らかにし、適切な対応を指示するのは当然のこと。政治家である市長も我々議員もそれぞれ政治的な立場や思想信条がある。これは市民も同じである。しかし、立場や信条が違っても相手に対して真摯に対応すべきことはまず前提として申し上げておく。
今回問題とされている事案は、市民が市長からセクハラを受けたとの告発だった。市長が制定させた「川越市職員ハラスメント防止の指針」では、「ハラスメントは人権にかかわる問題であり、職員の尊厳を傷つけ、職場環境の悪化を招くだけでなく、市民サービスの低下にもつながる大変重要な問題」とし、対応を示している。この中には、「主に職場外において起こるもの」との記載に「カラオケでのデュエット」が記載されていることに加え、「これらは代表的なものであり限定列挙ではない」とまで記載されている。この指針は職員に向けて定められたものだが、市長を含め、特別職が同様の立場で対応すべきことは当然である。
あえて申し上げるが、市長は過去に新年会の席で、私の手を取りデュエットでカラオケを歌うことを求めた。市長の今回の事件での振る舞いは特殊な事例ではない。
ハラスメントは、疑いが明らかになった場合、告発者の訴えを基本に丁寧に対応することが求められる。セクハラはそれを訴えることそのものが困難であることは多くの事例が示す通りである。加えて本事案は、市長と市民という力関係の差もあり、パワハラの側面も考慮すべき点である。同時に、相手に異論がある場合は想定され、その場合は事実関係を調査し、実態を明らかにする必要がある。しかし、本件において市長は、実態の解明には背を向け、告発した相手を名誉棄損で訴えた。
訴えを受けた裁判は最高裁まで争われた結果、市長の訴えを退けた。こうした経過を経てなお市長は事件について市民にも社会的にも、ましてや我々議会に対しても一切の説明を行っていない。
私の一般質問は、最高裁まで争い、敗訴したことを受け、説明を含めどのような対応をするのか問うものであったが、市長は私的なこととして何ら説明もしなかった。私は冒頭と、質問の最後に、市長に問いかけたが、そこには市民や職員を顧みる姿勢はなく、自身の身の潔白を訴えるのみであった。裁判の経過を拝見すると、市長の主張は専ら相手の主張は信用できないと、相手を嘘つき呼ばわりするものだったが、裁判所はこれをきっぱりと退けた。判決が確定している以上、相手を嘘つきと扱った裁判でのやり取りに対しては判決を受けて真摯に向き合うべきではないか。市長が市民を嘘つき呼ばわりする姿勢は許されるものではない。
質問への答弁では、最高裁判決を受けても、何ら変わらないと答弁した。これは、法令に基づき施策を執行する立場の行政トップの姿勢として問題である。司法判断を経て態度を変えないという姿勢で、法令順守を求めることができるだろうか。また、最高裁への上告は訴えること自体が退けられており、市長の弁護士としての資質さえ疑われるものであった。
このような態度を続ける市長と、その指示で運営される市政を市民は信頼するだろうか。何より、このような態度を続ける限り、ハラスメント事案に対して川越市が合理的な判断が下せるとは思えない。それでも自身の名誉のために争いたいというのであれば、市長の職を辞して、個人として行えばいい。
議員各位に申し上げる。
我々は、ハラスメントの事案を受け、議会での議論を重ねてきた。川越市議会ハラスメント防止条例、川越市議会議員政治倫理条例を定め、疑いをもたれた場合の説明についても真摯に向き合う姿勢を定めている。そして、地方自治法以上に踏み込んでこの問題に向き合い、4月の選挙の後に、「川越市民の代表者として、市民に信頼される公正で開かれた民主的な市政の運営のため、誠実かつ公正にその職務を行うことを誓います」とする宣誓書に署名しているはずである。
二元代表として、市長と執行機関をチェックする役割を果たすため、市長に必要な説明を求め、それが果たさなければ辞職を促すことは我々の当然の責務ではないか。各位がその役割をきちんと受け止め、職責を果たすことを期待して討論とする。
柿田有一議員(壇上)の賛成討論中、憮然と腕組みをする川合善明市長(前列右)
柿田議員が、堂々たる正論で川合市長への辞職勧告主旨を演説する最中、川合市長は、じっとしていられない様子で腕組みをしたり首を動かしたりと落ち着きがなく、だが「おれ様市長」たる憮然とした態度は、マスクの上からでも見て取れた。それにしても、賛成討論の中で柿田議員が明かした「市長に手を握られたことがある」との告白には、ベテラン警察官出身の仙波氏をして仰天した事実である。
小林薫議員も、カラオケ・デュエットの際に川合市長に手を握られて驚いたという話を議会で述べているが、柿田議員も同じ「被害」にあっていたのだ。
公費出席した宴会でも、公衆の面前でコンパニオンと登壇し、手をつないでカラオケに興じていた光景も含めれば、少なくとも川合市長のセクハラ的行動は、複数回にわたって公然と行われていたことは事実である。
本紙は、議会が始まる前に、各会派の控室を訪問して事前取材を行うなど、辞職勧告議決(案)の票読みを試みていた。その時点で、否決は確定的だった。
それでも本紙記者は、柿田議員の、この賛成討論を聞きながら、市長擁護に舵を切る反対派は「自分たちは間違っていた」と気がつき、わずか数名であっても正しい選択をする議員が増えるのではなかろうかと期待した。
しかし決議案は、反対27名、賛成8名。川越市議会の反市民性が明白に浮き彫りにされた結果となった。
公明党、参政党 までもが 「性暴力容認」 の 異常事態!
本紙は、議会終了後、傍聴した市民女性A氏・仙波敏郎氏・支援者と共に各会派控室を回り「市長への辞職勧告決議に反対する理由はなにか?」を聞いた。
なぜなら、同決議案に反対する理由を述べた議員がひとりもいなかったからである。先に紹介した柿田議員の賛成討論に対して、本来なら「反対討論」が行われるのが議会の常識である。そもそも賛成と反対が議論する場が民主制議会なのであり、それを無視して理由もいわずに、いきなり一方の結論を決めてしまうことは、国会でよく見る数の暴力政治にほかならない。
国政に比して、有権者と政治の距離が近接する地方自治体政治では、こうした「多勢に無勢政治」の体質が如実に現れる。ところが今議会の反対派(市長擁護)議員らは、沈黙のまま、市長への辞職勧告に反対した。市民には、その理由を問いただす権利がある。
すると、初雁自由政令会など「会議中」との、あからさまな取材拒否の議員らは論外だが、面談に応じた公明党 桐野忠議員、参政党 加藤みなこ議員、川越志政会 吉敷賢一郎議員からは、驚くべき言葉が返って来た。
その一問一答を要旨の抜粋で紹介しよう(敬語略)。
<公明党・桐野議員の対応>
仙波敏郎氏:
どこの議会でも、公明党は、特に女性に対する性暴力事案については厳しく対処するが、なぜ川越市議会の公明党は、川合市長を擁護するのか?
私もボランティアで全国を回ってきましたが、公明党がこの事案で(川合市長への辞職勧告に)反対するなど、初めてのことでショックを受けた。辞職勧告は法的拘束力もないというのに、公明党がそれにさえ反対されるとは信じられない。
桐野議員:
これまでいろいろ話を聞いてましたけど、新聞(行政調査新聞)だとか、(被害者である市民女性A氏からの)直接のお手紙とかいただきましたけど。
この間の本会議の時も、市長からも自分は潔白だという話を聞いたし、なかなか判断の材料が見当たらなかったから。判決を見てるわけじゃない。
辞職勧告するほどのことじゃないと思っている。
耳を疑う言葉である。簡単にいえば「よくわからないが、市長が潔白だといっているんだし、辞職勧告するほどの事案じゃない」と判断したというのだ。
つまりは、最初から「市長陣営」として議会にいたわけで、到底、市議会議員がやることではない。ここで仙波氏が桐野議員に指摘したことだが、公明党川越市議団が反対した「辞職勧告決議」というものには、そもそも法的拘束力がない。要するに、川合市長は辞職勧告が議決されたところで、その後もすっ呆けて市長の座に居座り続けられるのだ。いわば、辞職勧告とは、市議会の意思表明というだけのことでもある。
だからこそ、これにさえ反対するという公明党川越市議団は、本質的な考え方として、無条件に川合市長を味方する「市長のための議員」であり、そして性暴力事案を「大したことではない」としか思わないということになる。
公明党本部は、これら川越市議団の見解をどう受け止めるのだろうか?
本紙は、機会を改めて党本部に回答を求めることにしている。
では、新興政党の参政党はどう答えたか?
参政党 加藤みなこ議員
「私は(新人議員として)入ったばかりで、よくわからなかったので、党(参政党)に確認したら「共産党が上げている案件なので乗らないように」といわれたので。党からの方針なので個人的なことは言えない」
開いた口が塞がらないとしか言いようがない回答だ。議案の内容ではなく、「共産党が提出した議案」という理由だけで反対したというのだから、仮にも市長が、市民女性の人権を侵害した事件よりも、党利党略が最優先だと公言しているも同然だ。これでは議員とは言えない、自分と所属政党の利益のために議員報酬を得ている税金泥棒でしかあるまい。
現在、参政党代表で参議院議員の神谷宗幣氏は、初当選した2022年8月、メディアでこう報道された。
「賛成することは賛成し、絶対おかしいと思うところは断固として貫く」と述べ、政権与党と是々非々で臨む姿勢を強調した。
引用:日本経済新聞 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA036Y80T00C22A8000000/
一方、加藤議員の話では「共産党が上げた議案だから賛成するな」と命じられていたことになる。神谷党代表の「是々非々」の姿勢はどこにいったのだ?
さらに言えば、同議案を「共産党が上げたから」との認識自体が間違っている。前述のとおり、同議案は共産党が上程しようとしたが、議運(議会運営委員会)で否決されたため、急遽、小林薫議員が提出者となって本会議に出されたもので「共産党が出した議案だから乗るな」との参政党の反対理由は、根本的に間違っている。これは、経験のない新人政治家・加藤議員の不注意による、党本部への説明不足が原因なのか、はたまた、参政党も公明党議員団と同じく、川合市長の性暴力事案を「辞職勧告するほどの話じゃない」と本気で思っているのか? 本紙は、参政党についても、機会を改めてコメントを求める予定だ。では、川越志政会代表の吉敷賢一郎議員はどうか?
本紙:
川合市長の主張をすべて棄却とした最高裁判決をどう考えているのか?
吉敷議員:
判決は読んでない。(川合市長の)名誉毀損にはならなかったという判決ですよね?それにまだ最高裁判決が出てない事件もあるし、係争中だから辞職勧告決議案には反対した。
吉敷議員の場合は、川合市長が市民女性A氏を訴えた裁判が、名誉毀損を理由とする損害賠償請求事件であったことだけを捉えて、A氏の性暴力被害が存在しなかったかの言い草だ。たしかに吉敷議員の言うとおり、司法は事件ごとに判断される。本件、最高裁判決がすでに言い渡された「原告川合×被告市民女性A氏とA氏代理人弁護士2名」の事件は、川合市長の上告は棄却されて、A氏の主張が「虚偽であるということはできず、むしろ、証拠上、それなりの根拠が認められる」との判決が確定した。
吉敷議員が「まだ最高裁判決が出てない事件もある」といった、もうひとつの裁判は、内容が全く同じ性加害事件でありながら、「原告川合×被告A氏」という、わざわざ別の事件として、川合市長がA氏を訴えた事件のことである。事件番号が個別になるから、最高裁でも個別の事件として扱われる。
その意味では、吉敷議員の「まだ最高裁判決が出てない事件もある」という言い方は間違いではない。
ただし、最高裁判決の言い渡しを待つもうひとつの事件が、仮に「原告川合の主張を認める」との判決だったとしても、すでに確定した川合市長の主張を「信用できない」とした判決が無効になるわけではない。最高裁判決で確定した、川合市長の方が嘘をいっていたという主旨の1通の判決文だけであっても、議員として市長に辞職勧告することは当然ではないか。
吉敷議員の回答は「2人殺したら凶悪犯罪だが、1人だけなら無罪」というような話で、それ以前に、市長という権力の不法行為や暴走を監視し排撃するという、議員の義務を一切放棄した態度ではないか?
判決を知らないとしても、議会人として、小林議員による同決議案の提出理由と、柿田議員の賛成討論は、いまさっき聞いたはずである。
小林議員や共産党が、川合市長に辞職勧告を求める同決議案を提出した理由は、川合市長が「市民女性A氏が、私(川合市長)からセクハラ、性被害を受けたという主張は、すべて虚偽だ」と訴えた裁判での主張が、最高裁判所判決で全面棄却されたという事実に尽きる。言いかえれば、川合市長に性被害を受けたというA氏の主張を「嘘ではない」と最高裁判所が判断したのである。
これを「市長に対する名誉毀損が成立しなかった程度の話」であるようにしか認識できていない吉敷議員は、議員という公職の義務と重責をなんら理解できていない無知ということになる。
「弁護士市長」 の 議会洗脳 は 成功 ‼
公明党控室では「川合市長がセクハラ(性暴力)をやったとは最高裁判決には書かれていない」という、桐野議員らのコメントも飛び出していた。
これが今回の決議案反対(市長側)議員らの、根本的な事実認定の誤りである。第一に、川合市長が原告となった市民女性A氏らに対する一連の裁判は民事事件である。有罪か無罪か(犯罪をやったか、やらなかったか)を審理する刑事事件ではない。民事裁判の判決というものは、原告・被告双方の言い分を裁判所が聞いて「どちらが本当のことを言っているか」を判断するもので、捜査で証拠を集めて起訴する刑事事件の裁判とは違う。
たとえば、刑事裁判で検察が「川合市長は犯罪をやった」と論告求刑するのに対して、民事裁判では「川合市長が犯罪をやったという市民女性A氏の主張は虚偽とは言えない」と裁判所が判断する。
繰り返しになるが、本件ではすでに、さいたま地方裁判所川越支部と東京高裁判決において、A氏の性被害の主張は「虚偽であるということはできず、むしろ、証拠上、それなりの根拠が認められる」と判決されており、最終的に最高裁も「それで間違いない」と判決したのである。
ところが、公明党や吉敷議員ら反対派(川合市長側)議員らは、判決を読んでいないし内容を知らないなどと言いながら「判決には、やったとは書いていない」などと、読んでいないはずの判決文の内容を断言している。おかしくないだろうか? 賢明なる読者ならお気づきだろう。
そこには、市長であり「弁護士」でもある川合善明氏による、無知な議員らに対する一種の「洗脳」が透けて見えてくるのである。想像に過ぎないが、川合市長が吉敷議員に対して「判決にセクハラをやったなんて書かれていない」などと話したとすれば、こうした回答になるのも無理はないだろう。
ただでさえ、権力側に立つ議員らは「川合市長は自分とは比較にならない、優秀な“弁護士”で法律の専門家なのだから、嘘をいっているのは市民女性A氏や支援者たちの側に決まっている」と、思考停止のまま信じているのかもしれない。そして、川合市長自身、「弁護士」という社会的地位が、一般的に「不法行為を犯すはずがない」というイメージを市民や議員らに与える効果を、充分に理解している筈である。
しかし、冷静に考えればわかることだが、「市長であり弁護士」という社会的地位にありながら、一介の主婦である市民女性を相手に総額950万円もの損害賠償金を請求する裁判で訴えるなど、最高裁判決を待つまでもなく異常極まりない事件だ。それにさえ気がつかない、市長擁護派議員らは、とっくに川合市長に洗脳されているのかもしれない。
議員 は「おいしいシノギ」?
川合市長に留まらず、議会の腐敗こそが「悪」だ!
川越市議会が「川合市長に洗脳された議員ら」を多数派とする腐敗議会だとすれば最悪だが、市長の存在とは関係なく「何事も“見ざる言わざる聞かざる”の三猿主義が一番だ」と考える議員が主流派なら、もはや議会として内部崩壊していると言わざるを得ない。
前述のとおり、川越市に限らず自治体議会の議員は、誰でも議員報酬を受領している。月額報酬に加えて期末手当(ボーナス)、政務活動費などを含めれば、平均年収は一般市民よりも圧倒的に高額で、それでいながら議員は、公務とは別に民間人としての自分の商売も兼業できるのだから、世の中に議員以上に「おいしいシノギ」はないとさえ言えるだろう。この点では「特別職」である市長も同じだが、川合市長に至っては月額100万円の市長報酬と1任期4年ごとに計上される市長退職金は、今期で辞職すれば2,400万円となる。
格差社会にあえぐ市民が手にすることが困難な、このような桁外れの報酬を受け取りながら、川越市長は今日も、市民女性やその弁護士や支援者までを訴えた複数もの裁判の準備書面を嬉々として書き続けている。
これ自体が、いかに異常な状況であるかにも関心さえなく、「市長の側にさえいれば「おいしいシノギ」を失うことはない」と、考えているとしか思えない、自己利益の保身しか頭にない烏合の衆が、川越市議会議員であることが、この日の「川合善明市長に対する辞職勧告決議(案)」の否決で明らかになった。例外は、市長の対岸から矢を放ち、同議決に賛成した『七人の侍』ならぬ「8人の侍」というべきか。
川合善明市長の「悪」を追及すると同時に、今後、本紙はその「悪」を黙認することで自己利益のぬるま湯に浸かろうとする腐敗した川越市議を徹底して厳しく看視して止まない決意を新たにした。