獄中記 第二十一回 | 行政調査新聞

獄中記 第二十一回

福 山 辰 夫

獄  中  記

<福 山 辰 夫>

第 二十 一回

皇紀2655年 【平成7年・西暦1995年】

8月11日 (金) 

 賞与金の教示有り。5等工5割増+1割=3,321円也。

8月14日 (月) 

 お盆の連休3日目。午前中は総集行事(9時30分から11時30分)にてテレビVTR視聴が有り、スティーブン・セガールの「沈黙の要塞」を視聴。
 亦、昼餉時に副食として、どら焼き1個が配給される。

8月16日 (水) 

 6連休の最終日。午前は総集行事でテレビVTR視聴。
 ジャッキー・チェン、後藤久美子主演の「シティーハンター」を見る。
 今月は書道の昇位試験が有る為、6連休は書に励み、充実した余暇時間を過す。然し、道を極めるのは未だ未だ先の事。此れからも日々の努力を怠らずに、獄中生活を有意義に過して行きたい。

8月17日 (木) 

 午后は12時20分から13時20分迄、書道教室(4班)に出席。

8月24日 (木) 

 工場定期発信日。近況報告を認め、父宛に便りを出す。

8月25日 (金) 

 平成7年度第2期漢字部昇位試験に出品する課題作品及び、かな等の月例競書作品類を教育課へ提出。因みに、現在漢字部は初段。

8月26日 (土) 

 本日は免業日なるも特に行事予定は無く、午前中は臨地に勤しむ。
 午后の午睡時は読書。亦頭刈りが実施される。
 夜は、過日より執筆していた「平成の民族思想考 其の3」を脱稿。

8月27日 (日) 

 午前10時から11時迄「短歌会」に出席。今月よりSさん(新潟県糸魚川市住人)を誘い、桜きなこ氏(無期+13年)、Iさん(東京都渋谷区住人)、小生と12工場は4名が出席。
 今月の自詠歌は
   追悼の放送鳴りて黙祷す遺影の若き伯父を愁える
 扇畑忠雄先生曰く、「遺影の若き」よりも「若く逝きたる」の方が良いと添削を受ける。午后は午睡時に読書。夕餉後は臨地に勤しみ、夜はNHK大河ドラマ「八代将軍吉宗」を視聴。21時、就寝。

8月29日 (火) 

 昼餉後、12時20分から「古城漢字」が有り10級テストを受ける。元工である13工場の顔振れが先月2人卒業した事で、MさんとI(宇都宮市住人)さんの2人になってしまう。連行中に小声で「共元気そうで何より」と云ったら、Iさん曰く「先日迄、高血圧で倒れて入病していた」という。そういえば少し痩せた感じだ。「皆、長期刑(*殺人)なのだから躰は大切に」と云って別れるも獄(ひとや)暮しは躰が資本。健康管理も全て自分持ち也。

9月10(金) 210日 

 本日付で、「1年無事故章」が交付され赤線が2本になる。尚、夕餉時に配食扶より現在7工場に配役された赤石のおじさんが2級に進級。小野寺の兄弟は2級に復旧した旨のハト(*伝言=伝書鳩からくる隠語)が届く。

9月3日(日) 

 午前中9時30分から10時30分迄、宗教教誨「神道」(坂本寿郎先生)が有るも、勉学ノートの整理が進まぬ故、腹痛と事由を付けて欠席する。
 従って、午前中は自主勉学。午后は午睡中に読書。夕餉後は臨地に勤しみ、夜は20時から同45分迄、NHK大河ドラマ「八代将軍吉宗」を視聴。

9月7日 (木) 

 通信教育「圖南書道」の受講料(6ヶ月分)3,600円を圖南書道會に支払う為、「領置金使用願」(会計課長宛)願箋提出。
 午后12時20分から13時20分迄、書道教室(3・4班)に出席。
 亦、本日付で盛夏処遇が終了。還房時のシャワー浴が中止になる。

9月8日 (金) 

 二十四節気の一つ「白露」。
 平成7年度第2期かな等昇位試験の受験料9,000円を圖南書道會に支払う為、「領置金使用願」(会計課長宛)願箋提出。

9月10日 (日) 

 午前中は3級会に出席。洋画「ドラゴンブルース・リー物語」をプロジェクター映像で視聴する。亦、午后は臨地に勤しみ、夜は19時から20時45分迄テレビ視聴。バラエティー番組、大河ドラマ「八代将軍吉宗」を視聴。

9月11日 (月) 

 22日に「運動会」が予定されており、午前11時から同35分迄、統一分区を組む8工場と合同運動を実施。入場行進及び応援の練習を行う。

9月12日 (火) 

 賞与金の教示有り。5等工5割増+1割=3,348円となる。

9月15日 (金) 敬老の日 

 三連休の初日。午前中は臨地に勤しみ、午后は午睡時に読書。夕方は自主勉学(思想)、夜は読書。亦、昼餉時に祝日菜としてドーナツ2個の配給有り。

9月16日 (土) 曇り 

 本日は「彼岸法要」が9時30分から10時30分迄、講堂にて催され出席。真宗大谷派僧侶に依る「仏説阿弥陀経」を読経する中、出席者が焼香。 
 其の後は30分程の法話を謹聴。
 午后は臨地に勤しむも、途中で頭刈りにて出房。夜はテレビ視聴を行う。

9月18日 (月) 

 「第21回管内矯正施設被収容者書画コンクール」に出展する硬筆部・作品2点を教育課へ提出。

9月19日 (火) 糸瓜忌 

 「運動会」が明後日に迫り午前9時50分から10時25分迄、2回目となる8工場との合同運動を実施。入場行進や応援の練習、更に各自参加競技の練習をする。

9月22日 (金) 

 「運動会」が催される。出役して1時間程は刑務作業を行い、8時50分に終業。作業班毎に工場食堂に入り、トレパン・半袖丸首シャツに着替えて其の儘で待機。警備隊が各所配置へ就いたところで無線連絡があり、9時20分より各分区ごとに行進に入る。
 小生の出場種目は昨年同様、花形種目である「分区別対抗リレー」で今年はアンカーを務める。出走メンバーは、Tさん(岩手県一関市住人)―桜きなこ氏―Uさん(栃木県小山市住人)―小生の順。
 幾つかの競技を終え10時30分頃、リレー予選に出場。
 職員間でも下馬評が高い第1分区や第8分区といった強敵と同組で結果は4位。悔しいが予選で敗退。昼餉はグラウンドにて参加受刑者全員で、弁当(銀シャリ・焼肉)を食す。閉会式後は、工場毎に還房。
 洗身浴(10分間)、「作業安全ビデオ」VTRを視聴。その感想をレポートに纏める(*レポートの提出は、明日)。運動会の特別菜として袋菓子の配給有り。亦、特別下附を願い出ていた「行政調査新聞」2部が手元に届く。

9月23日 (土) 秋分の日 

 昨日の運動会で走った所為で太股が筋肉痛だ。
 昼餉時に祝日菜としておはぎ1個の配給有り。
 午睡時間(12時30分から14時)は読書。
 夕方は自主勉学(思想)、夜はテレビ視聴を行う。

9月24日 (日) 

 午前10時から「短歌会」に出席。
 今月の自詠歌は
   本就寝なりて囚等の声止みて静寂(しじま)に集(すだ)く秋の虫の声
 歌会では、扇畑忠雄先生に1個所だけ指摘され「声止みて」よりは「声止みぬ」とすれば良い歌になると云われる。午後は午睡時に読書。
 夕餉後は臨地に勤しみ、夜はNHK大河ドラマ「八代将軍吉宗」を視聴。

9月25日 (月) 晴れ 

 かな等昇位試験及び漢字部月例競書作品を圖南書道會に出品の為、教育課へ提出。9時頃、若い看守の呼び出し有り。予てより各階毎に雑居房から順次「畳乾燥」を実施しているが、漸く夜間独居4舎3階の番になり各自畳を獄舎屋上へと運ぶ。14時頃、干した畳を舎房に搬入する。

9月29 (金) 

 夜間独居の固型石鹸・スポンジクリーナ・液体洗剤の交換日。
 12時20分から「古城漢字」に出席。9級テストを受ける。夕方は私本配本日故、下附本3冊が手元に届く。内訳は「安岡正篤先生動情記」(林繁之・プレジデント社)、「燃えよ剣 上・下」(司馬遼太郎・新潮文庫)。

10月4 (水) 

 父宛に『宅下げ願』(会計課長宛)願箋と私本類を会計課に提出する。

10月6(金) 

 刑務所機関紙「人」に短歌5首を投稿の為、投稿用紙を教育課へ提出。
 私本期間延長日。

10月7(土) 

 午前中は臨地に勤しむ。途中、頭刈りを実施。
 午后は午睡時に読書、夕餉後は自主勉学(思想)を行う。
 夜は19時から20時55分迄、テレビ視聴。

10月8(日) 

 巨人の原辰徳が引退。東京ドームで対広島戦が行われ、3対1で広島が勝つ。夜のテレビ視聴は、NHK大河ドラマ「八代将軍吉宗」を視聴する。

10月10(火) 体育の日 

 本日で「夏季処遇」が終了。工場、舎房共に長袖上衣の着用、舎房の半ズボンの引き上げ、長ズボン着用に変更。亦、免業日に実施されていた午睡も中止になる。昼餉時に、祝日菜としてシュークリーム1個の配給有り。

 10月11日(水) 

 「第21回管内矯正施設被収容者書画コンクール」(研修支所体育館)が、昨日と今日催され教育課の嶺岸看守部長より連絡が有り、今年も硬筆部門で金賞を受賞したと知らされる。

 10月12日(木) 

 賞与金の教示有り。4等工3割増+1割の3,440円也。

 10月14日(土) 

 「文集みちのく」に出展する読書感想文「いざさらば我はみくにの山桜」を脱稿する。終日、原稿書きに没入して夜のテレビ視聴も行わず、疲労困憊なる一日だったが達成感は大。

10月16日(月) 

 一昨日に脱稿した「いざさらば我はみくにの山桜」及び短歌作品6首の原稿を教育課へ提出。小野寺の兄弟(7工)が石鹸箱の不正授受で入独する。
 同囚のチンコロらしいが、先月一日付で2級に復旧したばかりだというのに誠に残念。兄弟、仮令懲罰を受けても躰だけは大事にして欲しい。

10月19日(木)

 午前11時40分頃、両親が面会に来る。日刊スポーツ、本の差し入れをして帰る。昼餉後の12時20分から13時20分迄、書道教室(4班)が実施され出席。

10月20日(金) 皇后陛下御誕生日 

 群青忌。野村秋介氏が自決して早や2年を経るが、民族派の若き戦士は今も育ちつつある。
 「死且不朽(死すともかつ朽ちず)」―肉体は死んでも、名声はのちの世まで残る。とは、《左伝・成公三》に在り。

10月21日(土)

 午前10時から11時30分迄、橘プロダクションよる慰問演芸「津山よう子・高木一郎ショー」が講堂で催される。赤石のおじさん(住吉会親和会光京一家・邑楽貸元)に入った慰問。司会は藤則江さん、生バンドは池田進とグリーンアイズと何時もの顔触れも、メインボーカルが若い人に変っている。 
 おかしいなと思っていると、リーダーの池田進より前メインボーカル&サックスの星川マコトが先頃帯広で仕事をした際、急性心不全の為に死去したと語り、其の星川マコトは池田進の実弟と知って慰問に来た二度の往事偲ぶ。この世とは「泡沫夢幻」也。合掌
 午后は臨地に勤しみ、夕餉後は自主勉学(思想)。
 夜は19時から20時55分迄、テレビ視聴。

10月25日(水)

 圖南書道會に提出する月例競書等を教育課へ提出。

10月27日(金)

 昼餉後12時20分から「古城漢字」に出席。8級テストを受ける。尚、今月から新規出席者が増え2班編成となる。先月は小野寺の兄弟も来ていたが16日に入独になり欠席。Ⅿさん・Iさん(13工)・T(7工・八王子一家)は元気そうだ。還房後は私本配布が有り、父より以前に差入れして頂いた「敗者の維新史 会津藩士荒川勝茂の日記」(星良一著・中公新書)が手元に届く。

10月28日(土)

 午前中は読書に耽り、午后は臨地に勤しむ。途中、頭刈り有り。
 夜は19時から20時55分迄、テレビ視聴。

 10月29日(日)

 10時から11時迄、「短歌会」に出席。
 今月の自詠歌は
   晩秋に刑庭(けいてい)染める孔雀草肌寒き中かりそめに咲く
 扇畑忠雄先生の批評として刑庭という言葉は造語であり、中庭だとかにすべきと指摘を受ける。午后は臨地、読書、自主勉学(思想)に勤しみ、夜は大河ドラマ「八代将軍吉宗」を視聴。

11月3日(金)

 旧明治節。昼餉時に祝日菜として、肉まん2個の配給有り。
 午前中は読書に耽り、午后は臨地及び自主勉学(思想)、夜はテレビを視聴。

11月4日(土)

 午前9時30分から11時30分迄、VTR視聴(*総集行事)が実施される。
 舎房備え付けのテレビで「北の国から 83冬」視聴する。
 午后は臨地・読書。夜はテレビ視聴。

11月5日(日)

 昨日同様VTR視聴にて、続編「北の国から 84夏」を視聴する。
 午后は臨地に勤しみ、夜は大河ドラマ「八代将軍吉宗」を視聴。
 三連休も無事に了わる。

11月6日(月)

 刑務所機関紙「人」に投稿する短歌原稿を教育課に提出する。
 本日付で「冬季処遇」になり、工場にチョッキ一点、メリヤス及び冬靴下各2点。舎房にチョッキ一点、メリヤス及び冬靴下各2点、敷毛布、掛毛布の各1点が支給される。関東に比してみちのくの冬は一カ月以上早い。
 懲役にとっては厭な季節の到来である。

11月8日(水) 初雪 

 今日は二十四節気の一つである「立冬」。暦の上どころか仙台は初雪となる。しんしんと降り続き、宮城刑務所の赤煉瓦塀に雪が積もる様は偏に切ない。

11月9日(木)

 賞与金の教示有り。4等工5割増+1割=4,109円也。
 昼餉後は書道教室(4班)に出席。鈴木登郁先生に月例競書作品の添削・指導をして頂く。

11月12日(日)

 午前中は3級会に出席。今回のVTRは、洋画「バンシング・レッド」ドルフ・ラングレン主演を視聴。内容的にはおもしろい作品であった。
 午后は臨地に勤しみ、夜はNHK大河ドラマ「八代将軍吉宗」を視聴する。

11月14日(火)

 本日は定期運動時にブックフェアが講堂で催され、単行本3冊を領置金にて購入。本の内容は、「逆説の日本史3、古代云霊編」(井沢元彦著・小学館)、「日本のいちばん長い日<運命の8月15日>」(半藤一利著・文芸春秋)「安岡正篤 泳ぎもせず漕ぎもしないで一生を終わるな!」(赤根祥道著・三笠書房)。
 今回購入した本は来月の中旬頃に配布予定。

11月18日(土)

 10時から11時30分迄、慰問演芸「辺見マリショー」に出席。辺見マリ他、樋口夏・朝刊太郎(ものまね)等が来る。亦、慰問に先立ち「第21回管内矯正施設被収容者書画コンクール」の表彰が行われ、硬筆部門で金賞を受賞した小生他、2人(絵画部門、書道部門)の金賞受賞が、所長より賞状及び記念品を授与される。
 午后は臨地に勤しみ、途中で頭刈り有り。夕餉後は自主勉学(思想)、読書。

11月23日(木) 勤労感謝の日 

 新甞祭。午前中は読書。午后は臨地に勤しみ、自主勉学(思想)を行う。
 昼餉時に祝日菜としてチョコレート一枚の配給有り。

11月24日(金)

 圖南書道會に送る月例競書作品等を教育課へ提出。
 午后は「古城漢字」が有り、7級テストを受ける。

11月25日(土) 憂国忌 

 あの市ヶ谷での壮烈なる自決から25年の歳月が過ぎ、今年も千代田区九段にある九段会館では、三島由紀夫烈士を偲び、「憂国忌」が盛大に執り行われる。いみじくも昨日は、私本配布にて三島由紀夫の「豊饒の海 第一巻・春の雪」(新潮文庫)が手元に届き、早速読み始める。生前何度もノーベル文学賞候補に擬せられた氏の作品に接する機会として最上の日といえる。
  床入り寒灯の下(もと)三島読む今日はいみじくも憂国忌かな

11月30日(木)

 工場定期発信日。父宛に近況報告の便りを出す。
 夜間個室の液体洗剤と固型石鹸の交換日。

12月1日(金)

 掛布団の一斉交換を実施。平成4年4月12日の入所以来、初めて真っ更の掛布団が支給される。
 刑務所機関紙「人」に短歌5首を投稿する為、原稿を教育課に提出。

12月2日(土)

 午前9時30分より、宗教教誨「神道」に出席。仙台・櫻岡大神宮の宮司である坂本寿郎先生に、年越の袚をして頂き、其の後は「師走」と「宗教について」と題する講話を拝聴する。特に「師走」の語源として社会一般では「師も走る月―」等と云われているが、
 せわし……忙(せわ)しい
 師僧が東西を馳せる月
 四季が果てる月
 年の果てる月
 為し果つる月
 しねはつる……収め終える月
 しおえおさめ月
と、何れも正解で有るらしい。
 「宗教について」では、今年はオウム真理教の一連の事件で終始したが、特に宗教について問われる機会が多々有った。
 先生曰く「我田引水ではないが、宗教にも色々とあり、やはり長い歴史の中で自然に淘汰されながら残ったものこそ、人々に認められたものである。
 それに教誨の初めに年越の祓を行ったが、祓ぐさや水浴び、塩で清めようとも、自身に腹から清める(仏教では、帰依)する気持ちがなければ意味が無い」と。
 余談乍ら、今月より小野寺の兄弟が同教誨に出席。現在5工場(革工)でミシンを踏んでいるというが、元気そうで安心した。兎に角、事故を起こさずに務めて欲しい。午后は臨地に勤しみ、読書。夜はテレビ視聴。

12月4日(月)

 平成8年の年賀状(父宛)を提出。自ら小筆を執り毛筆書きをしたが、下手糞な字で恥ずかしい。

12月7日(木) 大雪 

 12時20分から13時20分迄、書道教室(4班)に出席。来月は漢字部昇位試験の為、鈴木登郁先生に課題作品の添削・指導を受ける。

12月8日(金)

 開戦記念日。
 賞与金の教示有り。4等工5割増+1割=4,117円と成る。

12月9日(土)

 「年忘れカラオケ大会」(9時30分から11時30分)が講堂にて催される。
 審査員長として歌手のさとう宗幸、審査員で民謡歌手の山田美津子が来所する。今回はミヤギテレビの取材が入り、司会者も同局の女子アナウンサー渡辺翔子が担当。後日、テレビ放送されるとの事。
 概要は、各工場の代表1名が予め歌うカラオケ曲を決めて一番だけを歌い優劣を競う。12工場の代表はHさん(仙台市住人)で吉幾三の「海の舟唄」を歌い、見事優勝する。小生の前の席に、小野寺の兄弟と前粟蔵武さん(沖縄旭琉会向陽一家)が座っていた。午后は臨地に勤しむも、途中で頭刈り有り。夜は19時から20時55分迄、テレビ視聴。

12月10日(日)

 31歳の誕生日。朱熹の言葉に「少年易老学難成一寸光陰不可軽」とあるが、この瞬間を無駄にせず精進の日々を送る。その積み重ねが明日へ繋がる第一歩也。時を惜しんで貪欲に己れを磨くべし。

12月15日(金) 先代命日 

 所内文芸誌「あおば」に投稿する短歌の原稿を教育課へ提出する。
   作業する気持ち倦(う)みたるわが元に耐えて忍べと父からの文
 今回推しの自詠歌。
 パジャマ(上下)の一斉交換が実施される。

12月17日(日)

 午前9時30分から11時迄、12月生れの「誕生会」を講堂で実施。
 誕生会といっても篤志面会委員の講話を拝聴して、冷めた汁粉を啜りながらプロジェクターで「水戸黄門」(*録画)を視聴。然し、此の時期に講堂に集まり誕生会を行うのは寒くて敵わない。
 午后は臨地に勤しみ、夜は19時から20時45分迄、テレビ視聴。

12月18日(月)

 夜間個室総転房が実施され、4舎3階25室より同4室へと移る。右隣りはSさん(新潟県糸魚川市住人)で転房前と一緒。
 夕方は、先月14日の「ブックフェア」で購入をした単行本3冊が配布される。「逆説の日本史3、古代言霊編」「日本の一番長い日」「安岡正篤 泳ぎもせず、漕ぎもしないで一生を終わるな」―。

12月19日(火)

 昼餉後の12時20分から1時20分迄、「忌日読経」に出席。曹洞宗僧侶が「般若心経」を読経する中、席次前列より順番で焼香。その後30分程、僧侶の法話を謹聴する。

12月21日(木)

 夕餉後、畳縁(たたみべり)の段差が気になるので、夜勤の柴田看守に畳の入れ替えを願い出るも判断が付かず、偶々通り掛った小田桐看守が「入れ替え許可」を出して呉れる。慌てて小机に布団・テレビと積んだ所、畳入れ換え時に誤って縁をテレビぶつけてしまい板の間に落して壊す。
 直ぐに報知器を点けて小田桐看守に訴え出ると、処遇部から熊沢処遇官が壊れた箇所を検分しに来て、その場で「福山、官物破損で就業取調べは覚悟しろ」と言い残して戻っていった。
 暫くして、今度は熊谷看守部長が来て「本日の当直長より其の場で厳重注意処分にする」と言い渡しを受け、「今回は当直長の寛大なる処分で済んだが、今後はテレビだけではなく備品は大切に取り扱う様にしろ」と釘を刺される。
 改めて、普段から落ち着きが無い己が身を反省せねばならない。

12月22日(金) 冬至 

 朝一番、昨晩のテレビ破損の顚末を管野工場担当に報告する。只、管野看守部長は夜勤者からの報告を受けておらず、小生の報告でその事実を知る。不注意でテレビを壊したことに対して素直に謝罪をする。
 工場入浴日は、冬至ということで「柚湯」に浸かる。

12月23日(土) 天皇誕生日 

 天長節。午前中は読書。午后は臨地に勤しみ、自主勉学(思想)。
 尚、昼餉時に祝日菜として大福一個の配給有り。

12月24日(日)

 10時から11時30分迄、「短歌会」に出席。
 クリスマスイブという事で、昼餉時にコーヒーとショートケーキ1個が特別菜として配給される。午后は臨地に勤しみ、読書。夜はテレビ視聴。

12月25日(月)

 教育課へ書道作品を提出。亦、白物4点(枕カバー・衿布・敷布・毛布カバー)と座布団カバーの計5点の交換有り。新年へ向けての官給品交換で身の周りの物品が殆んど真っ新になる。

12月26日(火)

 午後12時20分から1舎3階の教誨室に於いて「古城漢字(2班)」が実施され、6級テストを受ける。

12月28日(木)

 年末年始の連休分として、夜間個室は液体洗浄の交換と固型石鹸1個(ハマローズ)が支給される。

12月29日(金)

 御用納め。午前中は通常の作業を行い、工場の大掃除。12時過ぎに還房。直ぐに点検・昼餉・舎房の大掃除を行い、総入浴。私本配付日にて、領置下附本「豊饒の海 第2巻奔馬」(三島由紀夫著・新潮文庫)が手元に届く。

12月30日(土)

 年末年始の連休に入る。9時30分から11時30分迄、テレビVTR視聴(総集行事)有り。VTRは「スピード」(製作:米国。1994年公開。出演:キアヌ・リーブス、デニス・ホッパーほか。監督:ヤン・デ・ポン)。
 午后は、1時から3時迄の2時間が午睡時間と成るも、圖南書道の昇位試験が近い為、横臥せず臨地に勤しむ。夜は19時から20時55分迄、テレビ視聴。年末の特番を見る。

12月31日(日) 大晦日 

 午前中は臨地に勤しむも途中総入浴の為、出房。13時から15時30分迄の午睡時のテレビ視聴は、読書に耽る。夕餉時に特別菜として袋菓子と年越そば(カップ麺)の配給有り。
 今日は特別動作時限となり、通常よりテレビ視聴も30分早い18時30分から「日本レコード大賞」。21時から「NHK紅白歌合戦」を視聴。
 23時45分から24時迄、ラジオ放送「ゆく年くる年」を聴取。本就寝となる。大晦日の夜長を布団に入り菓子を喫食し乍らだらだらと過す。
 懲役の我にとっては年に一度の僥倖とならん。
   年明けて齢(よわい)重ねる獄中は失う日々のおもさ身に泌む

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