4度目の公判空転! 川越市長・川合善明氏による「名誉毀損裁判の迷走」 | 行政調査新聞

4度目の公判空転! 川越市長・川合善明氏による「名誉毀損裁判の迷走」

市民団体「コレクト行政!連絡協議会」の刑事告発行動によって、自らの名誉を毀損されたと同会主要メンバーに対して民事訴訟を起こした川越市長・川合善明氏。
本件刑事告発から裁判のこれまでの経緯はコレクト行政!連絡協議会のウェブサイトで閲覧できるのでご参照頂きたい。

「コレクト行政!連絡協議会」 httpssssss://www.correct-gyosei.com/

開廷恒例の裁判長からの、あの一言がまた!
「あのー…確認なんですけどね…」

9月19日午前10時30分、さいたま地方裁判所・川越支部1号法廷。今回もこの裁判には満席の傍聴人が詰めかけた。同所には失礼ながら、これだけ毎回傍聴席を埋める「ヒット裁判」などは、この裁判所史上初のことではなかろうか?
この日は、第4回口頭弁論だが、野口忠彦裁判長は前回、原告・川合善明氏代理人弁護士(佐久間豊弁護士)に「主張を整理するように」と3度目の注意をし、一方、被告側(清水勉弁護士・出口かおり弁護士)には「次回の反論はなくていいですから」と指揮していた。
つまり、裁判所が何度言っても原告側が「審理の土俵に乗らない主張」を準備書面として提出してくるので、裁判長が「次回はまず原告の書面を見てから、被告側の反論の余地があるかどうかの判断をしてからにしましょうね」と告げたのである。
そして、その「次回」が、今回19日の第4回口頭弁論であった。毎回傍聴してきた本紙は、また原告・川合市長側が裁判長から再び忠告され、前回の轍を踏むのではないかと法廷に臨んだが、案の定、開廷早々の裁判長の原告に対する第一声は、またいつもの、あの言葉だったのだ…「あのー…確認なんですけどね」
野口忠彦裁判長は「原告の別表にある点が名誉毀損ということなんですか?」と原告弁護士に問い質す。佐久間豊弁護士は「そうです」と答える。
ここでいう「別表」とは、原告が「この部分が名誉毀損なのだ」と告訴状の記載を抜粋して説明した書面のことだ。ところが、そこに記載されたものは前回までの裁判と同じく、結局のところ被告が告訴状に書いた内容全般に渡って名誉毀損だと言っているだけのものだ。連続して落札したことは川越市が開示した文書から明らかで、これを名誉毀損と主張しても、成り立たないことは明らかであるにもかかわらず、だ。
例えば、「カナイ消防機材が連続落札している」ことを前提事実として、だから「官製談合の疑いがある」と結論付けた部分を「名誉毀損」と主張するなら、理解できる。もっとも、その場合は、前提事実から「推認(すいにん=こうであろうという推理)過程」を経て、「結論」=「論評(官製談合の疑い!)」に至るのだ。
結局、連続落札という事実を指摘しても、このことに名誉毀損が成立するはずがない。ところが、原告の主張は何度書面を出しても「前提事実」「論評」を並べて、告訴状に書かれたこれらの記載が「事実の摘示」による「名誉毀損」だと言っているので、裁判長が「また直してないの?」と言わんばかりに「確認なんですけどね」と切り出したわけだ。

原告、判例雑誌をお手本に!?

裁判長と原告代理人・佐久間弁護士のやりとりの中で、佐久間弁護士は「準備書面にあるように」と、ある判例を示して「同じように書いたから主張は成立するはずだ」という旨の弁論をおこなった。それは『判例タイムズ』という、いわば法曹界の業界誌とでもいう専門雑誌に掲載された、ある名誉毀損訴訟の解説文である。ここで詳しく引用する必要がないので割愛するが、原告は「裁判官が書いているお手本を真似して書いたのだから通用するはずですよね?」と言い張る。
ところが、裁判長は原告が挙げる解説は知っているが、今回の準備書面への当てはめ方は違うのではないか?と指摘。要するに原告代理人弁護士は、裁判官が書いた解説文さえも正しく読みこなせない(良く言っても独自に解釈した)のであり、これでは裁判が始まらない。
裁判長は、「今回出した準備書面は主張扱いにしないことにします」と宣言した。準備書面を主張した扱いにしないということは、被告が反論する必要もないということだ。
傍聴人のなかには「なんで裁判所は、何度も出直しをさせるのだ?原告が市長だから権力に配慮しているのか?」と感想を漏らす人もいた。だが、それは違う。
裁判なのだから、裁判官は「審理しなければならない」だけのことである。だからいくら言っても主張が乱雑な原告に、何度も「土俵に上がれる主張に書き直せ」と命じているのだ。妥当な例ではないかもしれないが、いわばライセンンスのないボクサーがプロの試合をやりたいとダダをこねているも同然で、コミッショナーから「あのね、試合に出たければライセンスを取ってね」と何度も言われているようなものだ。
仮に原告が「いや、この主張以外できない」と言ったとすれば裁判所もべつの言い方をするだろうが、原告代理人弁護士らは毎回注意されては、一応は毎回直すと言うのだから、裁判所も被告も(ついでに傍聴人も)、試合開始のゴングが鳴るまで待つしかないのである。

進行協議に突入

このままでは埒があかないと判断した裁判長は、「この裁判にはたくさんの傍聴人が来ているのですが、次回はできれば非公開の弁論準備手続で今後の裁判の進め方について原告・被告双方と打ち合わせをしたいが、どうか」と、原告・被告双方に意見を聞いた。清水弁護士は非公開手続になることに少し躊躇したようだが、このままではいつまで経っても裁判手続が進みそうもないということで、了解した。原告側の弁護士も同意した。裁判長は続けて、「今日、これから15分くらいの時間があれば、進行協議をしたいのですが」と言った。清水弁護士はとにかく裁判手続を早く進めたいという判断から、これに応じた。
原告側弁護士も応じた。そこで、清水弁護士から裁判長に、「次回を弁論準備手続にするのはいいですが、その次は公開にしてもらえますか」という確認の質問があった。ずっと非公開手続が続くようだと、傍聴に来てくれた人たちが裁判のことを忘れ、裁判が公開手続に戻ることがなくなってしまうことを懸念したからだ。
裁判長は、「原告側がどういう書面を出して来るかによります。主張が整理されていれば、次々回は公開に戻してもいいですが、そうなるかどうかは次回の弁論準備手続を待たないとわからないので、そのときに確認して決めることにします」と言う。もっともだ。

裁判長の指摘

法廷での手続が終わると、続けて、別の部屋で進行協議をすることになった。
この進行協議というのは、法廷とは違う部屋で、裁判官と原告・被告だけで裁判の進め方について話し合う手続だ。今回は、原告の主張がどうしても名誉毀損訴訟の主張としての構成にならないので、そこを何とかする為の話し合いだ。割とフランクな調子で話し合う作業である。
裁判長から、「原告が言いたいのは、官製談合だ、都市計画法違反だ、と言われていることではないか。しかし、入札結果などは前提事実で争いはないはず」との指摘があった。
そのほか、前提事実と結論を結ぶ推論過程に問題があるということなら、被告は1つの入札結果だけで官製談合という結論を出しているわけではなく、幾つもの入札結果やカナイ消防機材の代表者が市長の選挙後援会の会長になっていることなども合わせて官製談合だと疑っているのだから、部分部分を取り上げて『名誉毀損だ』と言うわけにはいかないだろう、などの説明がなされた。
そして、「今回の準備書面の別表中には名誉毀損にならない内容もあるので、それをカットすると名誉毀損として主張する部分は少なくなるが、それを手直しすれば主張になると思うので、作ってみてほしい」と言われ、原告側の2人の弁護士も理解できたようだった。
次回は、10月20日までに原告が5度目の手直し準備書面を提出することとなり、それを再度の進行協議で検討し、名誉毀損の主張として構成できていれば、次々回は再び公判(傍聴人の前での弁論)に戻されるということになった。

つくづく不思議な原告弁護士チーム

これまで本紙でも、被告当事者のコレクト行政!連絡協議会ウェブサイトでも述べられていることだが、原告・川合善明市長は弁護士で、当たり前ながら代理人2名も弁護士だ。3人の弁護士が、訴える主張の基礎中の基礎である準備書面を5回も書き直しを命じられるというのは、いったいどういうことなのだ?
本件裁判を傍聴してきた市民のひとりは「川合市長は市長選挙のパフォーマンスで打った「名誉毀損」の訴訟が下手を打ったので引くに引けず、時間稼ぎにわざとヘンテコな主張を続けているのではないか?」との感想を漏らしていた。
原告が時間稼ぎをすることのメリットがあるとも思えない。川合市長の強引な提訴方針が代理人を引き受けてしまった弁護士を困らせているという構図があるような気がする。

川合市政追及の矢は尽きたか?

コレクト行政!連絡協議会には、「いつまでもこのような裁判を続けることは、本来の川合市政追及の目的から外れてしまうのではないか」という、読者からのメール投稿があったという。
しかし、弁護士である現職市長とこれを助ける2人の弁護士が、本来、訴状に書くべきことをいつまでも書けないでいることが、裁判所で繰り返し確認されることによって「現職市長の傲慢ぶりを川越市民に対して明確に判らせている」という意義もある。
コレクト行政!連絡協議会によれば、
「今後は、こちらから川合市政追及の本当の矢を放つ予定だ」とのことだ。
川越市民たちの豪語が、市政改革の現実となるまで本紙も引き続き見守り続けたい。