新型コロナは終焉か、第6波襲来か? | 行政調査新聞

新型コロナは終焉か、第6波襲来か?

―オミクロンが岸田内閣を押し上げる?―

8月5日に東京都の新型コロナ感染者数が5,000人を突破したとき、日本中が暗く沈んだ気持ちになった。それから2カ月、10月上旬に東京都の感染者数が100人を切ったときには、未来に明るい光が差し込んだようにも感じた。12月に入ると、わずかだが感染者数が増えはじめ、「やがて第6波が来るのでは?」との恐れが再燃している。
新型コロナの感染状況によって、内閣支持率も、そして経済も変化する。この先の日本はいったいどうなるのだろうか。

岸田内閣支持率上昇と世界の感染状況

 政府が発表した「18歳以下への10万円給付」「現金とクーポン」になるのか、「全額現金」か、右往左往する岸田政権の対応に批判が集まり、支持率が下落すると思われた。ところが12月初旬に行われた世論調査では、軒並み岸田政権支持率は上昇していた。支持率は朝日新聞49%、NHK50%、毎日新聞54%、産経新聞66%と、どこの調査でも岸田政権支持は上昇傾向にある。
 その理由は「感染を抑制している」ところにあると分析されている。
 岸田政権の新型コロナ対策が優れているかどうかの判断は難しい。しかし感染者数が抑えられていることは間違いない。現在の日本全体の感染者数は183人~247人(12月17日から23日まで)。諸外国と比べても、確かに少ない。異常といえるほど少ないのだ。総人口が日本の約3倍、3億3千万人の米国では、11月には新規感染者数が1日あたり2万9,350人まで減ったことがあった(11月28日)。
 それが再び盛り返し、12月22日には24万3千人超にまで増えている。比率で考えれば、日本で1日に8万人以上の感染者が出ている状況にある。
 人口が日本の半分しかない英国では12月23日に1日の新規感染者が12万2,000人を突破。原則的にマスク着用とか在宅勤務を勧告など緊急時対応策への移行を発表し、英国全域で行動規制が実施されている。英国より総人口が少ない韓国でも新型コロナ感染者数の増加に歯止めがかからない。12月17日から23日までの1週間平均で1日あたり6,380人。日本の約30倍だ。文在寅大統領は「日常生活回復への道を後戻りさせることはできない」としてウイズコロナ政策の継続を主張。
 ワクチン接種だけで危機を突破することに賭けているが、すでに医療崩壊を見せている韓国では、医療専門家からの批判が増大している。韓国では来年(2022年)3月9日に大統領選が行われるが、新型コロナ対策が行方を左右する可能性が高い。
 我が国でも新型コロナの感染状況によって、政権の支持率が変化することは誰もが理解している。新型コロナ「第6波」は来るのだろうか。

ウイルスと変異株についての再認識

 我が国の新型コロナ感染状況は、いま、低い水準を保っている。こんな状況下にこそ冷静に「新型コロナ」と「変異株」について知るべきだ。
 そもそもウイルスとは何か。
 ウイルスとは生命体とも非生命体とも分類される奇妙なモノである。生き物ともいえるし、生き物ではないともいえるのだ。細胞(病原菌など)のように、周囲から栄養をとって生きていくものではない。生きている細胞の中でだけ増殖していくモノである。ウイルスというと病気を引き起こす原因のように思われているが、実際に病原体となるのは一部だと考えられている。そもそもウイルスの種類がどれくらいあるのか、誰にもわかっていない。まだ発見されていないウイルスが地球上に160万とか170万とか、あるいはもっとたくさんのウイルスが存在するとも考えられている。

 今回の新型コロナウイルスは「実験室で作られた生物兵器」だとの説がある。
 これが本当かどうかは、わかっていない。その可能性は否定できない。だが実験室で苦労して作るより、野生の鳥や獣、ヘビなどから探した方が簡単に見つかるらしい。今年の9月に、ラオスに生息するコウモリから新型コロナ(SARS-CoV-2)とほぼ一致するウイルスが見つかり話題になったが、野生生物が持つウイルスが変異して人間に伝染したと考えた方がわかりやすい。ウイルスは遺伝子によって複製される。
 遺伝子は基本的にはDNAとRNAからできている(DNAを複写したものがRNA)。ウイルスが複製を作るときに、ミス(間違い)を起こすことがある。複製ミスから生まれるのが変異株だ。新型コロナウイルスの変異株は、これまでいくつか見つかっている。
 最初に確認されて名前がつけられたのは「α(アルファ)」だった。英国で見つかったものだ。続いて南ア起源の「β(ベータ)」、そしてブラジル発の「γ(ガンマ)」、さらにインドで「δ(デルタ)」が見つかった。これら4つの変異株はマスコミでも取り上げられたから名前をご存じの方も多いだろう。続いて話題になったのが、いま問題にされている「Ο(オミクロン)」である。

 αは英語の「a」。βは英語の「b」。γは「c」。δは「d」。それなのに次が15番目の「o」とはおかしいという話が話題になったこともある。実はおかしい話ではない。デルタ(δ)につづくε(イプシロン)もζ(ゼータ)もη(イータ)も出現したのだが、大きな話題にならなかっただけだ。
 WHO(世界保健機関)は新型コロナの変異株を「懸念される変異株」「注目すべき変異株」「監視中の変異株」「かつて監視された変異株」の4種に分けた。
 α、β、γ、δ、そして今回のオミクロン(Ο)の5種の変異株が「懸念される変異株」なのだ。オミクロンは感染力が驚異的なものと推測され、世界中が身構えた。事実、オミクロンはすぐに世界に広まった。わが国でも12月10日に米国から帰国した男性、翌11日にはギリシアと英国から帰国した2人の男性がオミクロン株感染者だったが、その後瞬く間に増え、24日には東京都で市中感染が確認された。

 オミクロン株は感染力が非常に強い変異株と考えられている。感染力は強いが、罹った場合の重症化率は低い。英国のインペリアル・カレッジ・ロンドン(理工系では世界8位とされる大学)もオミクロン株の重症化率はデルタ株の5分の1以下の入院リスクとしている。同様の研究結果を南アフリカ政府も発表している。新型コロナは、極論をいえば風邪の一種だ。感染力が強く、最悪の場合には死に至る危険な風邪だ。
 この危険な風邪を生むウイルスは、どんどん変化して、新しい変異株を生み出す。
 新しい変異株は、古い変異株をやっつけて、流行を広げる。変異株は原則として、感染力を強めるが重症化率は下げていく。やがて無害に近い変異株が世界に拡散され、そして新型コロナは消えていく。
 オミクロン株は日本でも猛威をふるう可能性が高い。だが、重症化率は低い。低いけれどゼロではない。オミクロン株が猛威を振るえば、それが「新型コロナ第6波」ということになるだろう。

岸田政権がコロナを制圧して日本経済を復活させる日

 オミクロン株の感染力の強さから考えて、新型コロナ第6波襲来の可能性は高い。
 多くの医師、専門家は「早ければ年初、おそらく2月はじめには第6波が襲来する」との観測を流している。だが一部の専門家は「変異し過ぎたウイルスは自滅する」というドイツのM・アイゲン博士(ノーベル賞受賞の生化学者)の説を根拠に、第6波は襲来しないと予測する。この説を支持したいが、支持すればコロナが消えるというわけではない。

 日本では10月以降、新型コロナ感染者が激減している。その理由はわからない。
 日本の感染減には世界中が首をかしげ、「不思議な現象」と表現している。マスクの徹底、手洗いなどの清潔さに加え、ワクチン接種の正確さが理由として挙げられているが、真相は不明だ。不明だが日本の感染者数は異常なまでに少ない。日本の感染者減が岸田内閣の支持率を高めていることもたしかだ。
 そうした状況下の12月22日に、岸田首相は「アベノマスク」を廃棄する方針を発表した。これが岸田内閣のさらなる高評価につながっている。

 本紙は安倍晋三政権時代の政策に関して、疑問を提示してきた。特にアベノミクスという経済政策が社会に何ら寄与しなかったこと、それどころか賃金その他の収入が物価上昇や増税に追いついていかず、結果として庶民の生活が苦しくなっていったことを強く糾弾する立場にある。ただしアベノマスクに関しては、全マスコミが文句を並べることに違和感を覚えている。マスク保管は、全マスコミが糾弾するような重要問題なのだろうか。安倍晋三元首相を庇おうとは思わない。
 だが安倍晋三が全国民にマスクを配布すると発表した時点では、確かにマスクは欠乏していた。日本はマスクを必要としていた。全国民に無料で配布するという政策は、決して間違ってはいなかった。大急ぎでラオス・ミャンマー・ベトナム等でマスクを製造したため、ある程度の不良品が出回ることは折り込み済みだったはずだ。
 現在、アベノマスクは8,000万枚の在庫があり、その保管に年間6億円かかる(会計検査院)という。6億円という大金を垂れ流すのはおかしい。
 そこで急遽、厚労省は12月24日から1月14日までの間に配布希望を受け付け、3月末までに残ったマスクを廃棄処分することを決定した。マスクを含め、緊急時のために必要物資を保管するのは、国として当然の役目だ。
 また、国が必要物資を保管するのに国のカネを使うことも当然。6億円は、家計の規模から考えたら途轍もなく膨大だが、国家予算から考えたら微々たる金額。
 国民一人当たり5円にしかならない。12月24日に閣議決定された来年度予算でも、コロナ対策予備費として5兆円が計上されている。これと比べても、必要物資保管の6億円はゼロに近い額だ。

 ともあれ、アベノマスクを希望者に配布し、残りを廃棄することは決定した。
 これは岸田文雄が安倍晋三を叩き切ったことを意味している。史上最長の内閣総理大臣、自民党最大派閥の領袖として、今なお隠然たる勢力を持ち、状況次第では令和6年(2024年)の総裁選に再立候補すら狙える状況にある安倍晋三を、岸田文雄が叩いたと考えていいだろう。
 さらに注目すべきは、マスコミがそろって岸田内閣擁護に回っている点だ。アベノマスク廃棄は、アベノミクス廃棄を意味する。マスコミが安倍晋三時代の終焉を考え、岸田文雄に乗り換えたと見るのが妥当と思える。この大きな流れは、世界全体が安倍晋三から岸田文雄に転換したとみていい。それでは、岸田内閣の本当の狙いはどこにあるのか。「成長と分配の好循環」を謳った岸田政権が日本経済を立ち直らせることを本心から願っているのは、全ての日本国民である。コロナの終息だけで岸田支持率が上がっても意味はない。
 来年早々からの岸田政権の動きに注目しようではないか。■

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