戦火は欧州から中東に広がり その直後に日本に飛び火する! | 行政調査新聞

戦火は欧州から中東に広がり その直後に日本に飛び火する!

 ウクライナ戦争に和平の情報が流されたことが何度かあったが、未だ終息への道筋は見えてこない。和平など夢幻で、なお数年は続くとの見通しが強い。終息どころか、欧州全域に拡大されるかもしれない。そんな状況下、中東が怪しくなりはじめた。もし中東に戦火が広がれば、たちまち東亜に飛び火することは確実だ。

「宿敵同士」のアラビアとペルシアが手を握った

 3月10日に中国の北京で、サウジアラビアとイランが握手をした。
 これは人類史にとって衝撃的な出来事だった。日本や欧米諸国では、あまり大袈裟に報道されていないが、とんでもない話なのだ。
 サウジアラビアの原点は数万年前にはじまる。6000年くらい前にアラビアの地に文化がおこり、繁栄をはじめた。今、世界中のすべての国や民族が使っているアラビア数字は、アラビアの文明が作ったものだ。

 イランの原点は2500年ほど昔にできたペルシアである。ペルシアはその当時、「世界の半分はペルシアのもの」と豪語するほど巨大な帝国を築き上げた。中東地域では、3500年前に、モーセが興した「ユダヤ教」がユダヤ人を中心に広がり、その流れの中から2000年前にイエス・キリストが誕生。その教えが1500年前に「キリスト教」として広まり、特にローマ帝国を中心に栄えていった。モーセ、キリストを預言者の一人と考え、その流れの最後の預言者ムハンマド(モハメッド)が出現して「イスラム教」が生まれたのは1400年くらい前のことだ。

 ムハンマドは神アッラー(アラー)の声を聞き、イスラム教を興した。イスラム教は下層階級の人々に支えられ、ユダヤ人との間で戦闘をくり返し、ユダヤ人の財産を奪っていた。西暦624年には、ムハンマドの軍隊がユダヤの大きな隊商(1000頭のラクダから構成された隊商)を攻撃し、勝利を手にする。それ以降、ムハンマド率いるイスラム教徒は次つぎとアラブ世界を手に入れ、中東全域のあちこちでイスラム教徒が勢力を振るうようになっていった。だが中東全域に広まったイスラム教も、ムハンマドの死後、内部対立を起こすようになる。7世紀の終わりころ(680年~690年)、穏健派のイスラム教徒と過激派のイスラム教徒が激しい対立を起こした。この穏健派がスンナ派で、過激派がシーア派の原点だ。

 スンナ派の多くはアラビアに住み、シーア派の多くはペルシアに住んでいた。このため、「中東の盟主」の座をめぐって、アラビアとペルシアが闘争を続けることになった。その裏に、スンナ派とシーア派の戦いがある。宗教だけが理由ではないが、アラビアとペルシアは1300年も昔から、激しく対立し、憎み合い、殺し合いを続けていた。
 そんなアラビアとペルシア――サウジアラビアとイランが、1300年の怨念を越えて「和解」に向かったのだ。これは人類の歴史の中でも特別に大きな意味を持つものだ。なぜか。イスラムが一つにまとまるということは、「巨大な敵の存在」を意識しているからだ。イスラムにとっての巨大な敵とは、ユダヤである。

イスラエルを敵視するイスラム圏

 今年に入ってからのイスラム圏周辺の動きを整理してみよう。
 1月3日に、イスラエルの閣僚ベングビールがエルサレムにある神殿の丘を訪問した。神殿の丘はイスラム教の聖地。その外側の壁は、ユダヤ教とキリスト教の聖地「嘆きの壁」である。神殿の丘は、イスラム教徒だけが礼拝できる場所で、ユダヤ教徒やキリスト教徒は礼拝できない。イスラエルの閣僚が神殿の丘に立ち入ったことに、イスラム教徒は激怒した。
 1月21日には、スウェーデンの首都ストックホルムで、過激右翼政治家パルダンがイスラム教の聖典コーラン(クルアーン)を燃やし、世界のイスラム教徒が騒然となった。スウェーデンは昨年5月にNATO(北大西洋条約機構)への加盟を申請したが、トルコがその承認を渋っていた。
 これに対する抗議活動として、過激右翼がトルコ大使館前でコーランを燃やしたのだが、これはイスラム教を侮蔑(ぶべつ)する行為。世界中のイスラム教徒が怒り狂ったのだ。
 1月23日から27日まで、「史上最高」といわれるイスラエルと米国の合同軍事作戦「ジェニパー・オーク」が実施された。核兵器を積み込める爆撃機など142機の戦闘機、艦船、陸上部隊などが結集し、陸海空から宇宙規模に至る大演習だった。米国もイスラエルも「特定の敵を想定したものではない」と発表したが、誰の目にもイランを仮想敵に仕立てた軍事演習だった。2月7日には、イランが「多目的地下航空基地」の完成式典を行った。「中東の空域はイランが完全掌握している」という現実を世界に見せびらかすものだ。地下基地はステルス(隠密)基地で、人工衛星はもちろん、上空からも見つからないようになっている。
 基地は地下でつながっていて、どこから戦闘機やミサイルが発射されるか、わからないようになっている。この式典で注目を浴びたのが巨大なミサイルだ。白く塗られたミサイルの本体に、大きな文字が書かれていた。それはイランの言葉(ペルシア語)ではない。ヘブライ文字(ユダヤの文字)だ。書かれているのは「イスラエルに死を!」。イランは明白にイスラエルを敵としているのだ。そして冒頭に記した3月10日の「サウジとイランの握手」につながる。イスラムが一つにまとまり、イスラムにとっての最大の敵ユダヤ(イスラエル)に立ち向かおうとしている。

聖書に書かれた預言に生きるユダヤの人々

 ユダヤ教を信じる一部の人々は、聖書に書かれた預言の通りに世界が動いていると考えている。そして奇妙なことに、現実に聖書通りに歴史が動いている。イスラエルは1948年5月14日に独立を宣言したが、これも聖書に書かれた通りなのだ(旧約聖書「ダニエル書」9章25節)。
 その70年後となる2018年に、イスラエルの首都がエルサレムに移され、5月14日には米国大使館の移転式典が行われた。首都をエルサレムにしたのはトランプ大統領(当時)だった。独立から70年後に首都がエルサレムになるという預言も、旧約聖書「ダニエル書」9章に書かれているものだ。ちなみにこのときイスラエルでは記念コイン(金貨・銀貨)が作られ「トランプ・コイン」の名で発売された(正式名称は「イスラエル70周年テンプル(神殿)コイン」)。

 大昔の預言者は未来を正確に言い当てたのだろうか。そう考える人々もいるが、常識的に考えると、聖書の預言通りに歴史を動かそうとしている勢力がいるということだろう。例えば「ダニエル書」12章11節には「憎むべき荒廃をもたらすものが立てられてから、千二百九十日」という預言が書かれている。「民数記」という書物には「神の一日は人の一年」とある。この預言に記された「憎むべきもの」とは神殿の丘に建てられたイスラムの寺院モスクなどを指す。このモスクは688年に建設がはじまったものだが、それから1290日後は1978年。その1978年にはイラン革命が起きている。
 イラン革命とは、それまで親米派だったパーレビ国王を追い出し、ホメイニ師が率いるイスラム教革命が起きたものだ。この革命により、イラン(ペルシア)は過激派イスラム教徒シーア派が実権を握ることになった。イスラエル(ユダヤ)の「真の敵」が世界の舞台に躍り出た日である。

 「ダニエル書」12章12節には、こんな予言がある。
 これは神殿の丘がイスラム教徒に奪われてから1335年過ぎると、ユダヤ教徒に幸いがやってくるという意味だ。イスラム教徒が寺院の建設をはじめたのが688年。それから1290年後の1978年にイラン革命が起きた。そして1335年後に、憎むべき敵、イラン(ペルシア)が消滅する、あるいは弱体化すると預言されている。688年から1335年後とは、2023年――今年である。ユダヤ教を熱烈に信仰する一部勢力の人は、今年中に中東でハルマゲドン(最終戦争)が勃発し、ユダヤの宿敵イスラムが消えてなくなると信じているのだ。そして彼らの一部は、その預言を自分たちの力で実現しようと考えている。

意図的に長引かされるウクライナ戦争

 現在の世界の混乱は、昨年2月24日にはじまったロシア軍のウクライナ侵略が口火だった。ロシアによる軍事侵攻は、誰がどう考えても、侵略をはじめたロシアに非がある。悪いのはロシアだ。そこを踏み外してはならない。もちろんロシアには言い分がある。NATOの東方拡大だ。NATOは「東に勢力を拡大する事はしない」と言明しておきながら、次つぎと加盟国を増やし、ロシアの喉元にまで迫ってきている。ロシアが怒るのは当然だ。「盗人(ぬすっと)にも三分の理」という諺があるが、確かにロシア側にも言い分があることは理解できる。
 ここで問題は、準備万端の巨大国家ロシアがウクライナに攻め込んで、まったく勝てないのはなぜか、である。ウクライナは、確かに頑張っている。また米国、英国をはじめとするNATO各国や自由主義陣営がウクライナを援助している。しかしそれにしてもロシアは弱い。弱いと思っていたら、また盛り返す。盛り返したと思ったら、また一部で敗け、また取り返す。敗けそうで敗けないロシアと、勝てそうで勝てないウクライナ。その間、世界の経済は音を立てて崩れはじめている。我が国でも流通の悪化が物価高騰を招いている。

 「いい加減にウクライナ戦争をやめてくれよ」――それが庶民の普通の感情だ。そうした状況下、米国で3つの銀行(シリコンバレー銀行など)が破綻し、続いてスイスのクレディスイス銀行がUBS(多国籍銀行)に買収されるなど、自由主義世界での金融危機が表面化しはじめている。次はドイツ銀行が潰れるといった噂も流れている。さらに前述のように、中東でイスラム諸国とイスラエルが危険な状況に陥りはじめている。
 イスラエル建国以来、中東では何度も戦争が繰り返されてきた。
 第一次中東戦争(1948年)から第四次中東戦争(1973年)、そしてエジプトとイスラエルの消耗戦争(1967年)、レバノン戦争(1975年~と2006年)、ガザ紛争(2006年、2009年など)だ。すべてイスラエルとイスラム圏が戦った戦争である。そして今年に入り、サウジとイランが歴史的な和解をするなど、イスラム諸国が団結を強めはじめている。

 3月10日にサウジとイランが北京で握手した翌日の3月11日、湾岸協力会議(サウジ、アラブ首長国連邦など6カ国)はイスラエルに対し、防空システム「アイアンドーム」の購入契約の破棄を通達している。クレディスイス銀行の最大資金提供者とされてきたサウジのMBS皇太子が資金提供を引き上げたことも、中東大戦争(ハルマゲドン)の可能性を高めている。
 国際環境の激変をあらかじめ理解していたロシアは、ウクライナ侵略戦を意図的に長引かせているようだ。では、ロシアは何のためにウクライナ戦争を長期化させているのか。第一に、NATOとの本格戦争を視野に入れているからだ。それは米軍が欧州戦線に駆り出されることを意味している。ロシアは米軍を欧州戦線に引きずり込みたいのだ。
 第二に、イスラエルとイスラム諸国は、間違いなく戦争を開始する。たぶん今年中に戦闘の火ぶたが切って落とされる。中東で戦争が起きれば、米軍は必ずイスラエル支援に動く。欧州戦線と中東戦線の両方に米軍が出てくる。米軍は、やりたくない二正面作戦に参加するしかない。
 そうすると、極東が手薄になる。米軍の極東戦力は必然として落ちる。ロシア、中国の狙いは、そこにある。
 ロシア、中国の「本命」は極東戦線――日本にある。

日本の真の独立を求めるロシア・中国

 ロシア軍は、核爆弾を搭載できる巨大爆撃機Tu-95(ツボレフ)を何度となく日本海に飛ばしている。昨年11月、12月には7時間以上も日本海の公海上を航行した。その後もロシア軍機の飛行は続き、中国軍機と共同飛行することもあった。岸田首相がウクライナを訪問した3月21日にもTu-95は日本海を7時間も飛行している。
 一方、中国軍は台湾に対する圧力を高め続けている。一部には、近い将来、中国軍が台湾に武力侵攻するといった観測も流されている。台湾ではなく、沖縄の米軍を攻撃しようとしているとの情報もある。
 中国軍が台湾に武力侵攻する可能性は非常に低い。ゼロと考えていい。来年の台湾総統選を視野に、圧力を高めているが、武力侵攻することはない。もし武力侵攻すれば、中国軍が台湾人に被害を与えることになる。

 それは、将来もし中国が台湾を呑み込んだ場合に、長い間、怨念として残り、中国の台湾統治の障害になる。それだけが理由なのではない。同胞に対して武力を行使することは、よほどの場合でなければやってはいけないことだ。世界のあらゆる人々、民族が持つ常識である。中国は(ごく一部の非常識人を除いて)その意味では常識を持ち合わせている。古代から引き継がれた儒教の道徳観は、中国に息づいている。
 同じ意味で、中国は沖縄を攻めたり、占領しようとは考えない。中国人にとって沖縄人は日本人であり、アジアの同胞なのだ。その意識は間違いなく存在している。中国軍が沖縄を侵攻したり占領することは、ない。
 しかし、中国にとって米軍は「敵」である。沖縄の米軍基地は、中国軍の攻撃対象である。その沖縄米軍基地を日本の自衛隊が守ったら、どうなるのか。中国軍は自衛隊と戦闘するのか――。これが難しい問題だ。
 一方、ロシアはどうなのか。北方領土に軍事基地をつくり、戦略爆撃機を飛ばしているロシアは、ウクライナに侵攻したときと同様に、領土拡大を目指して北海道に侵略するのではないか。――そんな雰囲気を感じる者も少なくない。

 戦後78年、連合国軍に占領され、その後はずっと米国に隷属し、平和こそが日本の宝、憲法九条こそ日本の理想形などと主張する国民が多くなってしまった現状では、日本の使命などについて考える者は、いないのかもしれない。しかし日本は、本当にこのままでいいのか。米国に隷属したままでいいのか。世界に平和を広める日本の使命を感じなくていいのか。

 米国の属国のまま、未来永劫、自分の国のことだけしか考えないみじめな国家に甘んじていいのか。そんなだらしない国の民でいいのか。
 世界の多くは、日本の真の独立を望んでいる。米国に隷属している日本など、世界は求めていない。日本の真の独立を求める強い思いは、アジア一帯、特に東アジアに強い。もちろん日本に、真の独立を求めない勢力も存在する。隣国・韓国をはじめ、永遠に日本が米国に隷属することを望んでいる勢力も間違いなく存在する。中国やロシアの中にも、ごく一部だろうが、そんな勢力がいるかもしれない。しかし冷静に世界全体を見渡せば、多くは日本に真の独立を求めている。

 日本からすべての在日米軍を追い払い、日本が完全独立することを望む勢力は多い。欧州と中東で火の手が上がり、米軍の主力がそちらに動いたとき、在日米軍は弱体化する。日本から米軍を追い出す絶好の機会になる。欧州の戦争、中東全域の戦争は、東アジアの勢力地図を塗り替える絶好の機会になる。欧州と中東に火の手が上がれば、それは直ちに東アジア、特に日本に飛び火する。その時期は、間違いなく2023年、今年である。日本はこれから激動、激変のときを迎える。その覚悟を肚の底に持ちながら、今後の世界情勢に注目していきたい。本紙はこの動きを今後もお伝えし続ける覚悟である。■

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