危険水域に突入した世界 | 行政調査新聞

危険水域に突入した世界

「ロシア崩壊! 中東大混乱の道筋」
―戦火が日本に飛び火する可能性を考える―

 世界はいよいよ大騒乱、大混乱に向かっている。ウクライナやヨーロッパだけではない。中東のハルマゲドン、そして日本にも火の粉が降りそそぎそうだ。
 この先、世界はどうなっていくのかどこにも書かれていない極秘情報を含め、今年中に起こりそうな大騒乱の情報を開示しよう。

ロシアは徹底的に破壊される!

 6月12日から23日まで、NATO(北大西洋条約機構)加盟国を中心とする、史上最大規模の空軍軍事演習が行われた。目的はウクライナ侵攻を続けるロシア軍に対する圧力だ。英国・米国を中心とする勢力は、ロシアを徹底的に破壊しようとしている。だがロシアは強い。日本に流される自由主義諸国の報道を見ていると、ウクライナの反転攻勢がはじまり、ロシアは各所で敗れ、このままいけばロシアはウクライナから撤退すると期待する方もいるだろうが、現実はそうではない。

 ロシア軍ウクライナ侵攻開始からまもなく1年半になるが、ロシア軍は敗けそうで敗けない戦いを続けている。ロシアが強いのは、支援国がしっかりしているからだ。
 ロシア中央銀行の発表では、ロシアの2022年の経常収支は前年比+86%。過去最高の2274億ドルの黒字だという。ウクライナ侵略で西側諸国はロシアとの貿易を減らしたが、インドや中国がロシアとの貿易を増やし、これがロシアの経済を押し上げている。英米を中心とする自由主義陣営は、ロシアを徹底的に破壊しようと考えている。「強権国家・ロシア」を破壊しようとしている。
 根底にあるのは、ロシア内部に存在している共産主義排斥だ。さらにロシア大衆の心の底に眠っているロシア正教への畏怖心も、ローマ・カトリックやプロテスタントには受け入れられない。ロシアを叩くには、まず中国をロシアから引きはがす必要がある。このためにブリンケン国務長官が北京を訪れ、習近平と会談を行った。
 6月19日のことだ。このとき、まるで習近平は皇帝のように振る舞い、ブリンケンは習近平にひれ伏すかのような雰囲気だったと伝えられる。そんな報道を見ると「中国は強大だ。米国も中国には遠慮している」と思うかもしれないが、とんでもない話だ。面子(メンツ)を大切にする中国の顔を立てただけで、ブリンケンは陰で舌を出している。米国にとって、目的はロシアから中国を引きはがすことだ。

 似たような雰囲気を見せたのは、6月20日にベルリンで行われた中国の李強首相とショルツ独首相との会談だった。共同記者会見でショルツ首相は台湾や香港の問題、さらには新疆ウイグルの人権問題には触れず、「重要なことは中国がロシアに武器を渡さないことだ」と、ウクライナ戦争でロシアが勝たないよう、中国がロシアに圧力をかけるべきだと主張した。ドイツにとって中国は最大の貿易相手。その中国に対して、ドイツは、とにかくロシア支援をやめるようお願いしたのだ。
 米国・英国は、ロシアを徹底的に破壊しようとしている。それは米英が一致している未来図なのだ。6月24日には、ロシアの民間傭兵組織「ワグネル」がロシア軍に対して反乱を起こしたが失敗。ワグネルのプリゴジンはベラルーシに亡命したと伝えられる(6月25日)。ワグネルという組織は「プーチンの私兵」といわれるほどプーチン大統領に近い組織だった。
 プーチンはロシア内では穏健派であり、地政学者ドゥーギン、ゲラシモフ参謀長、ショイグ国防相あるいはロシア正教キリル一世総主教といった過激派と距離を置いている。今回のワグネルの反乱は、大きく見れば米英側の筋書きし読み取れる。
 本紙でもたびたび報じたが、プーチンはロシアを掌握しきれていない。近い将来、プーチンの失脚、暗殺などが起こりえる。どんな道筋をたどるかは不明だが、ロシアは破壊される。徹底的に破壊される。それが米英側のプログラムなのだ。

「新・大西洋憲章」が世界を動かす

 「大西洋憲章」という言葉は中学校の教科書に出てくる。だが知る人は少ないだろう。大西洋憲章とは1941年8月に、英国のウインストン・チャーチル首相と米国のフランクリン・ルーズベルト大統領が発表した「未来設計図」である。
 この憲章が発表された1941年8月には、ドイツがヨーロッパの多くの地を手に入れ、日本はまだ太平洋戦争に突入していなかった。米国は中立国として、戦争には加担しない立場をとっていた。1941年(昭和16年)4月には、野村駐米大使とハル国務長官が「日米和解」協議を開始して、4月には「諒解案」がつくられた。そんな状況下、チャーチルとルーズベルトは日本やドイツが戦争に敗れることを既定路線として発表したのだ。
 ウィキペディアをはじめネット上に掲載されている「大西洋憲章」の解説を見れば、チャーチルとルーズベルト(英国と米国)が、このとき、世界の未来を決めたことが理解できる。戦後に誕生した国連(国際連合)の仕組みも、GATT(ガット=関税と貿易に対する協定)も、NATO(北大西洋条約機構)も、このときに決められた。
 大西洋憲章の秘密を語ると膨大なものになるので、ここでは省略する。大西洋憲章は1941年以降の世界を決めたものだ。しかし今、問題としたいのは、過去の物語ではない。1941年から現在に至る歴史は過去の物語だ。私たちにとって重要なことは「未来」である、これから先に何がはじまるかだ。

 2021年8月に、「新・大西洋憲章」が発表された。英国のジョンソン首相と米国のバイデン大統領が発表したもので、「80年前に締結された『大西洋憲章』を上書きする憲章」だと宣言された。2021年8月といえば、世界がコロナ禍に怯えていたころだ。ロシアは、まだウクライナに侵攻していなかった。
 それなのに英米両国は、ロシアや中国が「世界の平和をおびやかす存在」であると決めつけ、これをせん滅する計画を発表したのだ。英国と米国は、未だに自分たちが世界の未来を動かせると確信している。そんな英国と米国が「ロシアを叩き潰す」と宣言した。それが「新・大西洋憲章」である。

「自由主義国家」とは甘言でしかない

 日本人の誰しもが「民主的」で「自由な世界」こそが正義だと思っている。
 私たちは民主主義国家に生まれたことを誇りに思い、自由で開かれた世界に暮らしていると考えている。だが同時に、自由主義、民主主義を守るために、多大な人命が奪われていることも事実だ。反論されることを覚悟で申し上げれば、資本主義は戦争を招く。その事実を冷静に受け止める覚悟も重要だ。
 自由主義国家とは、「西側諸国」とも呼ばれる。
 西側諸国とは、かつて米ソ冷戦の時代に、社会主義国と対抗する英米と西ヨーロッパ、豪州、日本などを指す言葉だった。今でも「自由主義陣営」とか「西側諸国」という名が普通に使われる。それでは自由主義陣営、西側諸国は世界全体の人口比のどれほどを占めているだろうか。統計により多少の差があるが、だいたい25%前後である(23~28%)。世界の人口の7割以上は、自由主義陣営に属していない。

 米国・英国は、世界のすべてを自由主義陣営に組み込む計画を立てている。それが「新・大西洋憲章」なのだ。だが、よく考えてみると、ちょっとおかしい。辻褄が合わない。世界人口の20数%が、世界人口の70数%を呑み込もうとしているのだ。民主主義の基本原則「多数決の原則」に逆らっている。自由主義諸国と非自由主義諸国が、これから先、話し合って、問題を一つ一つ解決していくべきだ。
 常識ある人々なら、そんな答えを出すだろう。ところが2021年に発表された新・大西洋憲章は、待ってくれない。今すぐに非自由主義国家を潰し、世界中に自由主義、民主主義を行きわたらせようと考えている。そのためにまずロシアを倒し、返す刀で中国を分解しようとしているのだ。「新・大西洋憲章」が発表されたとき、クレムリン(ロシア)も北京(中国)も、英国米国の危険な考え方に気づいた。

イスラム諸国対自由主義国家

 ロシアは共産主義一党独裁のソ連とは異なり、共和制(国王は存在せず選挙で選ばれた政府による国家)の国家だが、「強権国家」とされ、政府(頂点は大統領)の権限が圧倒的に強い国である。中国はマルクス主義やレーニン主義とはちょっと違うが、毛沢東主義に基づいた社会主義の国だ。ロシアと中国が「非自由主義国家」であることは誰もが理解している。非自由主義国家、あるいは強権国家は、ロシアと中国だけではない。北アフリカから東南アジアに広がるイスラム圏諸国もまた非自由主義国家である。英米による「新・大西洋憲章」は、イスラム圏も叩き潰し、自由主義、民主主義を世界に広めようとしている。経済的には世界を資本主義一色に塗りつぶし、資本主義の覇者が世界に君臨すべきだと考えている。そんな自由主義陣営とイスラム圏諸国とが、真正面から敵対している地域がある。イスラエルだ。

 エルサレムにある神殿の丘をめぐって、ユダヤ教徒とイスラム教徒が激しく対立していることはご存知だろう。聖書に書かれている預言に基づいた「第三神殿建立」の計画が進行中で、おそらく年内の早い時期――たぶん今年の秋には、中東で火の手が上がる可能性が高い。秋まで待たずに8月下旬あたりにはじまるかもしれない。それは中東大戦争(ハルマゲドン)の様相を呈するだろう。
 自由主義陣営――民主主義を掲げる資本主義陣営は、「自由と平等」という錦の御旗を振りかざしてイスラム諸国をせん滅し、世界を自由主義一色にしようと考えている。それが正義だと主張している。イスラム圏諸国とひと言でいっても、実体は理解しづらい。「イスラム協力機構」に加盟している国は57カ国(総人口13億人)だが、これ以外にもイスラム教徒が多いエチオピア、タンザニアなどがある。
 またインドにはイスラム教徒が1億5,000万人もいるが、イスラム協力機構には入っていない。そうしたなか、世界最大のイスラム国家はインドネシアである。

 6月17日から1週間、天皇皇后両陛下がインドネシアをご訪問された。天皇即位後初となる海外公式訪問だったが、両陛下のインドネシアご訪問は年初の計画にはなかったものだ。しかも公式訪問の最後には、インドネシアのジョグジャカルタ特別州でスルタン(ハメンクブウォノ10世)主催の晩さん会に出席されている(皇后陛下は体調不良で欠席)。ジョグジャカルタの州知事ハメンクブウォノ10世はスルタン(皇帝)と敬われるイスラム教徒だが、穏健派としても知られる。陛下のインドネシア訪問は、英米「新・大西洋憲章」に逆行するような動きでもある。これに対し、我が国をはじめ世界の報道機関は沈黙を通している。陛下は自らのご意思で行動を起こし、世界に平和を訴えたと考えるのが当然だろう。

背後にうごめく「宗教戦争」

 英米による覇権追求は、その奥底に宗教戦争の雰囲気を秘めている。イスラム圏諸国に自由主義・民主主義を広めようとすること自体、イスラム教潰しなのだから、宗教戦争の匂いがするのは当然のことだ。
 ヨーロッパ全域、特に西側はキリスト教圏だ。それもカトリックとプロテスタント、聖公会がほとんどである。日本人の多くは「キリスト教」といえばカトリック、プロテスタント、聖公会のいずれかだと思っている。これらは「西方教会」とよばれる。キリスト教には東方教会(正教会)の流れもある。(キリスト教の分類については複雑なため大ざっぱに表現します。)
 正教会には、ギリシア正教、ルーマニア正教、シリア正教、エチオピア正教、そしてロシア正教などがある。日本にも日本正教会が存在している。正教会は英語では「オーソドックス」という。両者の違いは複雑で、交流を深めている教会もあれば対立する教会もある。最近になって、西方教会と正教会(東方教会)に、わかりやすい大きな対立が生まれている。「LGBT」をめぐる対立だ。
 LGBTとは「L=レズ」「G=ゲイ」「B=バイセクシャル(両性愛者)」「T=トランスジェンダー(性同一性障害)」を指す。我が国では「LGBT理解増進法案(略称LGBT法案)」は与党内からの反対意見も強かったが、6月16日に国会で可決されてしまった。すでに可決されてしまったが、これは将来に禍根を残すことになりそうだ。オーソドックス(正教会)ではLGBTを「悪」と規定している。
 ロシア正教やイスラム圏諸国ではLGBTは「隠すべきこと」であって、これを認めることは悪魔に従うような話なのだ。その結果、LGBTを正式に認めることは、正教と敵対すると宣言したとみなされる。LGBT法案を推進する人々の中に、正教会と敵対するとの覚悟があったのだろうか。

 我が国には伝統芸能としての歌舞伎がある。大正時代の初期に生まれた宝塚歌劇団もある。何をいまさらLGBTとして認める必要があるのか。こんな法律が成立する前から、マツコ・デラックスは画面からはみ出すほど大きな顔をテレビに出していた。はるな愛の活躍もあったし、古くはおすぎとピーコ、もっと前には美輪明宏もいた。森蘭丸と織田信長の関係だって、誰もが理解していた。
 なぜ今さら、わざわざLGBT法案なのか。日本を西側諸国陣営の同士とするための「踏み絵」だったとしか思えない。いまから99年前の11月(大正13年11月)、亡くなる3カ月前の孫文が神戸で「大アジア主義」と題した演説を行った。

「今後日本が西洋覇道の犬となるか、あるいは東洋王道の牙城となるか、日本国民が慎重に考慮すべきことであります」

 今再び、日本は大西洋勢力に組み込まれるか、アジアの範として覇道を捨て世界平和への道を進むかが問われている。天皇陛下は御自ら進んで世界最大のイスラム国家インドネシアをご訪問されて、日本人としてあるべき姿を示された。
 世界はこれから大激動のるつぼに突入する。日本人として一人一人が覚悟を決める時が来ている。■

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