極東が戦火につつまれる「Xデー」はいつか? | 行政調査新聞

極東が戦火につつまれる「Xデー」はいつか?

極東が戦火につつまれる「Xデー」はいつか?
―中国の台湾侵攻と第二次朝鮮戦争がぼっ発する日―

 ウクライナは緊迫を続け、中東にも危険な雰囲気が溢れている。
 イスラム圏とイスラエルの中東大戦争(ハルマゲドン)が秒読み段階に入ったとの情報が聞こえる中、極東も危険になっている。台湾と朝鮮半島が戦火につつまれるかもしれない。中国軍の台湾侵攻はあるのか? 中国軍の沖縄侵攻は10月X日? そのとき同時に、朝鮮半島に火がつく!

「台湾有事」が迫っている

 台湾有事があるとすれば来春以降――そう考えられてきた。
 その理由は、来年1月13日に行われる台湾総統選にある。中国との統一を目指す勢力(国民党右派)が勝てば、中国軍の台湾侵攻はない。この2、3年ほど、台湾では与党(民進党)が勢力を弱め、野党・国民党が人気をあげてきた。
 昨年11月末の地方選挙では、与党が大敗した。それも21ある選挙区(直轄市と県知事)のうち、民進党はたった5つ(直轄市2と県知事3)しか勝てなかった。
 国民党が圧勝したのだ。この責任をとって民進党の蔡英文が党主席を辞任するまでに追いつめられた。このまま来年の総統選に向かえば、国民党が勝利するはずだ。それは中国にとってはうれしい話で、中国軍の台湾侵攻はなくなる。

 そう考えられていた。ところが5月に行われた国民党大会では、親中色が濃い郭台銘(かくたいめい)ではなく、中国と距離を置く侯友宜(こうゆうぎ)が選ばれたのだ。
 これは衝撃的なニュースだった。そして7月23日には侯友宜が国民党公認候補となることが正式決定した。侯友宜は元警察官僚で現在は新北市の市長。
 人間的にも政治的にも優れた人物である。しかし、蒋介石→蒋経国と引き継がれてきた国民党の本流は、明らかに郭台銘のほうだ。郭台銘はシャープを買収した鴻海(ホンハイ)精密工業の創業者でもあり、知名度もあり、資金力もある。

 台湾情勢を見つめてきた世界の事情通たちは、来年1月の総統選は「国民党・郭台銘と民進党・頼清徳(らいせいとく)の一騎打ち」と考えていたが、郭台銘は国民党大会で侯友宜に敗け、総統選に出られなくなってしまった。
 7月16日に台北市で行われた蔡英文民進党を批判する集会に、郭台銘も侯友宜も出席したが、近距離に着席しておきながら、二人は言葉を交わすどころか、目を合わせることもなかった。侯友宜陣営の有力者は、「郭氏が侯友宜を支持すると呼びかけるべきなのに、それがなかった」と恨み節を口にしている。

 台湾の大手研究機関「台湾民意基金会」の調査では、7月20日時点で、民進党・頼清徳35.8%、国民党・侯友宜27.6%、民衆党・柯文哲25.1%。
 民進党の圧勝というわけではないが、これまでの流れとは大きく違い、中国から離反しようとする民進党に勢いがある。国民党代表の座を得られなかった郭台銘が、無所属として総統選に立候補する可能性も取りざたされているが、選挙の現実を考えると、もし無所属で立候補したとしても、郭が当選する可能性はゼロだ。 
 国民党の侯友宜が民衆党の柯文哲(かぶんてつ)と話し合って野党統一候補を立てるというアイデアもあるが、その可能性も低い。その一方で民進党の頼清徳は地方に後援事務所を新設するなど、着々と票固めに専念している。台湾国民の現状を見るかぎり、民進党・頼清徳が総統に選ばれる可能性が高まっている。

「台湾有事」を求める世界の圧力

 中国軍が台湾侵攻に向けての圧力を高めているという情報は、長らく世界中に流されてきた。しかし親中国派とみなされている国民党・郭台銘が総統に就任すれば、中国との平和統一に向けて穏やかに政治が動いていくだろうとの観測も強かった。東アジア圏の多くがそれに期待していた。
 ところが国民党大会で侯友宜が選ばれることとなった。その理由は、郭台銘はあまりに中国に近すぎて、一部の人々が猛烈に反対をしているためだという。
 一方、侯友宜は中国寄りというより中間的な考え方の持ち主と評されてきた。
 国民党の執行部は「台湾の中間層は、中国に接近することに拒否感が強い。中間層を取り込むには、郭氏より侯氏のほうが有利だ」と判断したと伝えられる。ところが侯氏が公認候補になると郭氏支持者から猛烈な批判が巻き起こった。そこで7月に入ると、「中台はともに1つの中国」と、侯友宜が郭台銘の主張を口にするようになった。
 国民党の公認候補が侯友宜となったこと、そして民衆党の頼清徳の人気が高まっていったことは、台湾の民衆の意思である。台湾総統選で重要なのは、台湾民衆の意思だ。台湾以外の人々の意思など、意味はない。しかし冷静に眺めていく限り、台湾民衆の意思が大きく曲げられたように感じられる。裏読みすると、台湾を中国から離反させようとする「強い力」が加わったように感じられてならない。

 それは台湾を危険な方向に導く力である。米CIAや英MI6といった諜報機関が裏で暗躍したのかもしれない。とはいえ、具体的な証拠はないから、それを強く主張することはできない。いずれにしても、台湾民衆は「中国との緊張関係が強まること」を選んだ。台湾有事を求める英米の思惑通りに進んでいると考えられる。
 習近平は昨年(2022年)10月に開かれた中国共産党大会で、台湾を「不可分の領土」「核心的利益」と位置づけ、「武力行使を放棄しない」と強調している。中国は台湾に侵攻する覚悟を内外に示した。来年1月の台湾総統選が民進党勝利の方向に向かうなら、中国軍はためらわずに侵攻するだろう。

台湾有事の前に、前哨戦「尖閣有事」が起きる

中国軍が台湾に侵攻する可能性は、私たちが想像するよりはるかに高い。中国軍は真剣に台湾侵攻を計画している。そんな中国軍にとって最大の脅威は米太平洋艦隊だ。中国軍の出動に対して、米軍はどう動くのか。必然として、米軍の動きを見極めるための前哨戦が起こるはずだ。舞台は無人島の尖閣諸島(沖縄)だ。
 中国はかねてから「尖閣(中国名=釣魚島ちょぎょとう)は中国領土」と公言している。中国にとって釣魚島は資源面からも多少は重要だが、なにより戦略的な価値がある。尖閣を攻めることで台湾に強力な威嚇を行うことができる。
 台湾総統選の活動中に尖閣が攻撃されたら、頼清徳(民進党)の人気は下落する。来年1月の総統選を睨んで、今秋、中国軍が尖閣諸島で軍事行動を展開する恐れが強い。現状が続けば、10月を待たずに、夏の終わりから秋の初めころに尖閣諸島に火の手が上がる可能性が高まっている。

台湾有事は「朝鮮半島有事」につながる

 中国軍が尖閣諸島を舞台に米軍相手に局地戦をはじめた場合、自衛隊が標的になるのは必然のことだ。さらに、尖閣有事のときには同時に朝鮮半島に火の手が回るだろう。実際ミリー議長(米軍統合参謀本部)は7月22日に「(朝鮮半島の)脅威は非常に現実的だ。半島は、世界でも常に高い即応態勢でいなければならない場所のひとつで、前ぶれもなく数日間のうちに戦争状態に入る可能性がある地域」と異例の警告を発している。台湾危機、尖閣有事、第二次朝鮮戦争など、すべて脅しだけだ。実際に戦争をする気がないと考えているのは、平和ボケした日本人だけだ。その最大の理由は「新大西洋憲章」にある。(「新大西洋憲章」については、本紙『危険水域に突入した世界』をご覧ください)

 米国英国を中心とした自由主義陣営は、「自由で平等な社会を全世界に広げていく」という美辞麗句をかかげて、世界を戦争に向かわせている。
 自由と平等をふりかざす自由主義は、資本主義とつながる。自由で平等な世界で、それぞれが幸福を求め、競い合うことで、人類の進歩発展がかなえられるという幻想は、資本主義社会が大衆を引き付ける魔法の言葉だ。現実には資本主義はあらゆる世界で覇道を生み、貧富の差を拡大し、行き着くところ戦争になる。
 資本主義は最終的に一人の勝者を求め、戦争に突入する。それでは中国や北朝鮮のような共産主義国家がいいのか。すべてを管理される強権国家を求めるのかと問いつめられそうだが、そんなつもりは毛頭もない。ここで、今から100年前(正確には99年前)に孫文が神戸で行った演説を思い出して頂きたい。

 孫文は死の直前に日本でこう語っている――
「あなたがた日本民族は、既に欧米の覇道の文化を手に入れている上に、またアジアの王道文化の本質をも持っておりますが、今より以後、世界文化の前途に対して、結局、西方覇道の手先になるのか、それとも当方王道の干城(かんじょう)となるのか、それはあなたがた日本国民が慎重にお選びになればよいことであります」
 いま全世界を覆っているのは「覇道」の文化だ。英米自由主義陣営だけでなく、ロシアも中国も覇道を突き進んでいる。そんな世界を人間本来の生き方に変えていくのは、縄文からずっと日本人が伝統的に引き継いできた「東洋王道」の道である。すべての日本人が体の奥底に持ち続けてきた平和への憧れ、縄文の叡智である。武力や資金に頼ることなく、暴力やカネを求めることなく、人類全体の目を幸福に向ける姿勢である。そのためには、まず若者の教育からはじめる必要がある。
 だが世界はそんな悠長なことを言っている場合ではない。それでは、どうすればいいのか。とにかく「王道」に立ち返ることだ。一切の戦闘を否定することだ。
 あちらが正しい、こちらが悪だと決めつけることが戦闘を続行させる。
 日本人ひとりひとりが縄文の精神に立ち返ることを願う。■

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