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| どこに行く?民主連立政権:第5回 |
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| 内外展望 - 国内情勢 |
| 2010年 3月 15日(月曜日) 00:15 |
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どこに行く?民主連立政権 民主連立政権が誕生して半年以上が経過した。半年が過ぎたところで、改めて民主連立政権に対する各界の評価を眺めてみるとあまり芳しいものではない。そうしたなか、本紙は敢えて民主連立政権に対する期待感を抱きつつ、新政権のあるべき姿を縷々述べてきた。新たな時代への離陸が、何の障害もなくスムーズに行くはずがない。荒波に漕ぎだした日本丸は、悪戦苦闘を続けながらもなんとか外洋に乗り出し、いままさに前進を始めた、と表現していいだろう。 むろん本紙とて、船を操る鳩山・小沢両氏に対して合格点を与えるつもりはない。そもそも船頭が2人いてはならない。核保有をも視野に含めた日本の「真の再編」に対する覚悟が決まらないなら、早々に立ち去ってほしいと考えているのだが。 今年に入って世界は激震を続けている。物理的にハイチやチリで大地震が起きたが、激震は政治、経済の世界にも起きている。ギリシアの金融危機が一気にユーロ危機に向かうとの懸念は払拭されたわけではない。アメリカ経済の立ち直りは依然として困難な状況で、そのアメリカの国債(米国債)を大量に保有する中国との確執が表面化しつつある。米欧だけではない。日本の周辺のすべてが、大変革に向けての不気味な蠢動を見せ始めている。 今回は本欄を通して、民主連立政権のみならず、自民党、みんなの党を含む日本の政党、政治家に対する要望を述べたい。その前に極めて簡略ではあるが、それに深く関連するアジア情勢展望と分析を以下に示す。 米中関係異常あり1月29日、米政府は台湾に対して総額64億ドル(約5800億円)と見積もられる武器輸出を決定し、議会に通告したと発表した。オバマ政権下で初めてとなる武器輸出の決定となる。米国務省はこの発表と同時に、中国に対しても台湾への武器輸出を伝達したという。 輸出される武器兵器は、地対空誘導弾パトリオットや、軍用ヘリコプター、ブラックホーク、対艦ミサイル、ハープーン等々が含まれている。ただしこのなかには、台湾側が強く要望していたF-16戦闘機は入っていない。 米政府の発表の翌日、台湾国防部は米政府に対して「歓迎と感謝」を表明している。 2008年に馬英九政権が発足して以来、台湾では米中両国と台湾の関係が常に話題になっていた。馬英九政権が中国に接近し過ぎることで、米国との関係が損なわれるのではないかといった懸念と、米オバマ政権の対中融和姿勢が、結果として米政府の台湾軽視に繋がるのではないかといった懸念である。 そこにもってきて、昨年秋から米国産牛肉の輸入解禁問題を巡って、米台関係はギクシャクしており、馬政権内部にも憂慮の声が上がっているほどだった。こうした状況下で、米国の武器兵器が台湾に売却されるとの決定は、馬政権だけではなく、台湾の民心安定に大きなプラス効果を及ぼすことになった。 しかし中国はこの決定に怒り心頭である。米国の武器兵器が台湾に渡ることは、じつは昨年11月にオバマ大統領が訪中した時点で、両国首脳が内密に了解していた事実だった。本紙もすでに昨年末に、北京政府に近い筋から、米国製武器兵器の台湾輸出計画を知らされていた。両国首脳がどんな了解に達していたかは不明だが、中国側は今回の決定に恐ろしく怒っている。了解事項と思われていた武器輸出に、なぜそれほど激怒するのか。その理由を北京筋に問い質すと、「量の問題だ」との返事。それ以上の詳細は語られなかったが、どうやら北京政府が了解した輸出額の倍を遥かに越えた量だったようだ。そのため中国政府は怒り心頭になっているのだ。 中国外務省と全人代は、その日のうちに、在北京米国大使館と米国議会に対して抗議の書簡を送り、武器売却の即時撤回を強く求めている。さらに開催予定があった米中戦略安保に対する次官級の対話を、当分の間見送ると発表。決定されていた米中両軍の相互訪問も停止が発表されている。 米国側は中国の反応にそれほど驚いていない。米政府高官は、「中国の反発は予想されたもの」としたうえで、今回の武器輸出が「米中関係に修復不能な傷が残ることはない」と楽観的な考え方を披露している。この米政府高官の話では、「1月28日にロンドンでクリントン国務長官と楊外相が会談した際に、すでに台湾への武器輸出の全体像を伝えていた」、「米中間には、幅広く、深い関係がある」というのだ。 米政府高官のこの話を、北京筋も認めている。「中国と米国は“準同盟国”の関係にある。今回の問題で一旦は冷めた状態になるだろうが、今年後半には再び熱い関係に戻るだろう」とも語っている。 ただしそこにはある条件が付せられていた。「オバマ大統領がダライ・ラマと公式に会わなければ」……。 ところがご存じの通り、オバマ大統領は2月18日にホワイトハウスでダライ・ラマ14世と会談。しかも会談後、「チベット特有の宗教、文化、言語の独自性、中国国内におけるチベット族の人権擁護を強く支持する」とコメント、「非暴力で中国政府との対話を追求するとしたダライ・ラマの“中庸の姿勢”を称賛した」とも語ったのだ。 当然ながら中国側の反発は強烈だった。「中米関係はさらに悪化するが、これはすべて米国が引き起こしたものだ」という報道が中国民衆のほぼ全員の声だと思われる。 中国人民大学国際関係学院の金燦栄副院長は次のように解説する。 「世界における中国の影響力は昔とは比べ物にならない。米国がチベット問題においてこのままの考えを通し続ければ、最終的には国際社会において米国の影響力が下がる可能性もある」。 3月2日には中国外交部の秦剛報道官が「現在の中米関係のこじれた局面の責任は、中国側にはない」と改めて米国に非があることを表明。悪化する米中関係修復のためにスタインバーグ米国務副長官が急遽、北京を訪問したことを評価することも避けている。 7日には開会中の全人代大会で楊外相が記者会見し、中国と米国の関係が「著しく混乱している」と表現。台湾への武器輸出とダライ・ラマ14世との会談に言及し、「米国は中国の核心利益を尊重する必要がある」と発言し、両国関係の悪化は米国にのみ責任があることを再び強調している。 米国は自由の国であり、人権を尊重し、宗教の自由を公言している。米国としては今回のダライ・ラマ14世会談問題が米中関係の致命傷になるとは考えてもいない。オバマ大統領にしても、この時点で訪米中のダライ・ラマ14世との会談を避ければ、米国世論だけではなく国際世論が黙っていないことは百も承知している。いっぽう中国も、チベット問題だけは絶対に譲ることができない。台湾武器輸出の上にダライ・ラマ14世との会談を黙認すれば、胡錦濤の指導力、求心力すら問題になる。 そうは言っても両国は対立を求めるものではない。楊外相も記者会見の最後に、「中国にとって、米国との関係は常に重要だ」として、両国の関係がこれ以上悪化することなく、近い将来修復することを希望していると締めくくっている。 本紙が得たさまざまな情報を総合すると、遅くとも今年末には、米中関係は元の親密な関係に戻ることが予想できる。それまでの間、当然のことだが、米国も中国も「日本に擦り寄る」姿勢を見せ続けるだろう。普天間基地移転問題で、米国が鳩山政権に対し、予想外に軟弱な姿勢を取り続けるのは、こうした理由による。中国国内のインターネット上で「反日」記事が消え、東シナ海油田問題や尖閣諸島問題がまったく語られていないのも、中国側の対日戦略と考えていいだろう。 「非対称戦」と「超限戦」 - 米中の文明衝突ということは、今、日本は大チャンスを迎えているということになる。今なら外交上、米国を相手に、そして中国を相手に、小国・日本が堂々と渡り合えるのだ。鳩山首相に、そして小沢幹事長に、その読みができているのか。その覚悟ができているのかが問題なのだ。 それだけではない。米中両国の関係は、たしかに“準同盟国”とも言うべき良好な関係を築いていくだろうが、それは長続きはしない。 長続きなどはずがないのだ。そもそも世界第2位の経済大国となりつつある中国が「共産主義国家」を標榜すること自体が、世界最大の欺瞞ではないか。 エンロン破綻から始まったアメリカ経済の破綻ぶりをもって、米国の凋落、アメリカの時代は終わった、などと簡単にくくる向きがある。確かに本紙も「米国の凋落」という表現を使うが、アメリカという国の「大きさとしなやかさ」を念頭に置いたうえでの話だ。 そもそも、現代のわれわれの生活の根底にあるのは、西欧においてルネッサンス以降500年にわたって育まれ陶冶されてきた、実に豊穣な文明である。「神の存在証明」は自然科学を爆発的に進化させた。少なからぬノーベル賞受賞科学者が幼少時に神学校に通っていたというのは、神の存在証明について考えることが、のちの科学的思考の発達に大きな影響を与えることを端的に示している。 また「神による予定調和説」は人間の精神と芸術に濃厚に影響を与えた。資本主義の発生をプロテスタンティズムにもとめたのはマックス・ウェーバーであったが、金儲けを悪とし、「隣人愛の実践」で利益(利息)が生じるというメカニズムは、根本のキリスト教的精神が消失してもなお……つまり現代の多くの資本主義社会でも、ひとりでに、自動的に機能している。西欧が育んできた文明とは、人類史の優曇華の花。他に例のない、比類なきものである。キリスト一神教文明、などと軽々しく括るなど、言語道断もいいところ。 そしてわれわれが念頭に置かなければならないのは、アメリカという国が、この西欧ルネッサンス以降500年の歴史と精華の、最先端に位置しているということだ。アメリカは、奴隷牧場から日本への原爆投下まで、非人道の極みともいえる歴史をあわせ持つ。と同時に多様な価値観を包有し、最大多数の最大幸福の実現のために、しなやかに自浄作用を働かせるオープンな社会でもある。 私(松本州弘)の知人に、中国に対し批判精神旺盛な人物がいる。「単なる感情的悪口は御免だが、正当な批判なら聞くから、言ってみろ」とそそのかしたところ、言うわ言うわ。中国人のなかで育ってきた私自身、聞いていて顔が赤くなり、やがて落ち込んでしまった。 その知人の言とは、以下のようなもの。 <確かに西欧ルネッサンス以降の500年が生んだ文明の重さは計り知れない。では、いっぽうの中国。500年間、いや4000年以上、中国人は何をしてきたのだ?簡単に言えば血で血を洗う覇権争いに終始していたではないか。発明したものといえば漢字と羅針盤と火薬と、宦官と科挙と纏足だけ。世界経済第2位に登り詰めても、ノーベル賞科学者の一人もいない。またそれを輩出するだけの豊かな、世界標準レベルの自然科学の基礎研究土壌も貧弱だ。 中国は、そんなことより金儲け。科学技術など、結果だけを他国から持ってくればいい。著作権?知ったこっちゃない。環境破壊?金儲けが先だ。いままでわれわれは貧乏だったんだ。これからは中国の時代だ。繁栄して何が悪い?アジアの、ひいては世界の盟主は中国だ。小日本の「皇室」などあと20年もすれば消滅。やがては中国の属国だ。海底油田問題など遠慮することはない。世界のカネは中国に集まっている。このカネで、アメリカ国債だろうがアフリカの地下資源だろうがドバイの不動産だろうが、何でも買いあされ……。 これが現代中国の偽らざる姿。そして政府は共産党一党独裁。批判勢力が事実上、国内には皆無なのだ。つまり「自浄作用」という言葉は、中国には存在し得ない。 中国的価値観を簡単にいってしまえば、勝者の「力」と、道徳上の「善」と、法的な「正義」と、芸術・精神における「美」と、経済力を示す「富」……この5つ、つまり「力=善=正義=美=富」のすべてがイコールにならぶ。この価値観こそは、始皇帝の時代から上海万博をむかえる現代まで、基本的に変わらず中国の中心に位置している。これほど恐ろしく、硬直しきった、品性のかけらもない価値観をもつ「経済大国」が他にあるだろうか? その中国を訪問し「私は日本の、人民軍野戦司令官」と発言した小沢一郎の神経は本当にどうかしている、としかいいようがない。何しろ中国、保有する核ミサイルのうち十数基の照準は日本(東京)に向けている。本来なら、北朝鮮の核どころの騒ぎではないのだ。 いささか言い過ぎかもしれないが、中国とは、西欧ルネッサンス以降500年の文明を享受する資格を持たない国。ただカネだけが、瞬間最大的に集中している「共産主義を標榜する世界最大の欺瞞国家であり、人権蹂躙国家・侵略国家」、それが中国だ。この認識、世界の多くの国々が暗黙のうちに抱いているものでもある。まるで国ぐるみの「豊田商事」だ。 そしてもう一つ。中国社会の近代化を阻害する大きな問題が「宗族共同体」(父系同族集団)だ。企業という利益追求機能集団が、家族と宗族が支配する宗族共同体に換骨奪胎されてしまう。利潤をあげることに貢献した人間に配るべき富を、父系同族が共有してしまう。かつて毛沢東時代、「人民公社」(農業共同体)が大失敗したのも、やはりその大きな原因は宗族共同体の足かせだった。 アメリカと中国。世界経済第1位と第2位、というライバル関係だけではない。両国は、まったくといっていいほど、本質的に相容れない存在だ。 だから、アメリカは中国を嫌う。自分がアメリカ人とつきあううちに肌で感じることだが、アメリカ人はもう、ほとんど生理的といっていいほど「いまの中国」(=中華人民共和国の繁栄)を憎んでいる……> かなり強烈な意見だが、納得する部分も多々あることは認めざるを得ない。 したがって、基本的に米中両国が同じ価値観を共有することなどあり得ない。利益が一致することもなく、運命共同体となることも絶対にあり得ない。そう遠くない将来、米中関係は確実に破綻する。両国の関係悪化は必然であり、今回の対立がそれを予現しているとも言える。 しかもその対立は、国際社会における「非対称戦」と「超限戦」という不可思議な対立の様相を呈している。 従来の米国の(というか世界各国の)基本軍事戦略とは、最大の敵との対峙を通しつつ、その他の地域の小規模戦争にも対応する「軍同士の戦争」を念頭に置いていた。ところが9.11同時テロ以降、米国は国防戦略の軸足を「非対称戦」(asymmetric war)に移行させ始めていた。つまり正規軍同士の戦争ではなく、テロリストを初めとする“見えない敵”との戦争である。 米国はテロリストに対する戦争として“非対称戦”を選択した。非対称戦の場合、敵は正規軍ではないかもしれないが、「正義のため」の一定のルールに従って行う戦闘行為となる。ところが中国は、テロリストとの戦いに制約はないとしている。これが“超限戦”(Unrestricted Warfare / 超限战)だ。超限戦の場合、ありとあらゆる手段で敵を殲滅させようとする。政治・経済世界や闇社会どころか、森羅万象すべてを巻き込んでの戦争だ。 ダライ・ラマ14世との会談――チベット問題の深奥に、米国流“非対称戦”と中国流“超限戦”の対峙があることを見抜く必要がある。それはまさに、かつてハンティントンが語った「文明の衝突」そのものと言ってもいいのだろう。 米中の文明的対立の狭間にあって、日本はどうすべきなのか。ハンティントンが予測した通り、米中二つの巨大潮流に呑み込まれて消えてなくなる運命なのか。 今、日本は自らの運命を自らの手で選択すべき刻を迎えている。民主連立政権にその覚悟があるか否か。前回本紙に掲載した国防、核武装論議を踏まえたうえで、問い質したい。 北朝鮮の「お家の事情」米中間に隙間風が流れ始めると、日本は両国から丁重な扱いを受けるようになり、絶好の外交チャンスを迎える。北朝鮮の場合は日本とは反対で、米中関係が良好なときには活発な外交を展開するが、両国間が冷え始めると、亀のように甲羅に閉じ籠もることが多い。 この様子は、両親と小さな子供に例えるとわかりやすい。父母が仲良く、熱い関係にあるとき、子供(北朝鮮)は高価なお菓子や玩具を欲しがって、見事にそれを手に入れるというわけだ。逆に、両親の関係が気まずい状態になると、子供は殻に閉じ籠もって大人しくしている。 昨年11月にオバマ大統領が訪中した時点で、米中間は“準同盟国”と豪語するほどの良好な関係となった。 これより数カ月も前から北朝鮮は活発な外交活動を展開していた。6カ国協議復帰へのシグナルを送り始めたのも、米中関係が良好になり始めた頃だった。懸案となっていた米国の在平壌連絡事務所開設について、オバマ大統領から金正日総書記宛に親書が届けられたのが2009年12月上旬。また今年1月中旬に発表された「国家開発銀行」設立に向けての動きも、すでに12月中旬には情報通が入手し、話題にしていたものだった。北朝鮮は米中両国に対し、見事に割り振って“おねだり”をしていた。米国からの軍事的脅威を取り除き、中国からは経済的支援を勝ち取ったというわけだ。金正日総書記が近々、北京を訪問するだろうとの観測が流れたのも、こうした背景があったからだ。 ところが台湾への米国製武器輸出問題やダライ・ラマ14世会談問題、グーグルへのサイバー攻撃問題が表面化し、米中関係が冷え込み始めたところで、北朝鮮の外交活動は活発とは言えない状況に陥った。 もっとも今回に限れば、北の外交活動の沈静化は、米中関係よりも北朝鮮自身の問題だった可能性もある。デノミネーション(通貨単位の変更)の悪影響だ。 2月に入ってすぐに、北朝鮮の「労働新聞」、「朝鮮中央放送」が金正日総書記に関する興味深い情報を流した。その内容は、北朝鮮の食糧難について金総書記が、「私は人民がまだトウモロコシの飯を食べていることに最も胸が痛む」と語ったというものだ。 北朝鮮の新聞や放送は、「行け行け!ドンドン」といった強がりや虚勢であふれているのが普通。総書記自身が食糧難の現状を憂えるなど、これまででは考えられないものだ。金総書記は続いてこう発言したと報道されている。「いま私が行うべきことは、この世でいちばん立派なわが人民に白米を食べさせ、小麦粉のパンや麺を腹一杯食べさせることである。わが人民をトウモロコシ飯を知らない人民としてこの世に立たせよう」――。 今年1月以降2月末までの、報道される金総書記の行動も、これまでと変わっている。これまで総書記が最も数多く視察するのは、軍であり軍関係の工場などだった。今年に入ってからは軍関係の視察が激減し、農園や家畜園、あるいは民生の生産現場への視察が増えているのだ。3月に入っても、6日には咸鏡南道の繊維工場「2・8ビナロン連合企業所」の16年ぶり再稼動を祝う咸興市群衆大会に出席している。 金総書記が弱気な言葉を吐き、また農園視察などを行っているのは、デノミの失敗を認めたうえで、その失敗責任を回避する狙いがあるとも推測できる。 2月初旬に北京の外交筋から得た情報では、「北朝鮮の権力内部で、貨幣改革(デノミ)の失敗に対する責任を巡って攻防が繰り広げられており、そのなかで貨幣改革を主導した朴南基(計画財政部長)が解任されたものと考えられる」というのだ。さらにこの情報筋は、「貨幣改革を断行して以降、市場機能がマヒし、北朝鮮国内の物価が急騰している。北朝鮮は今回の貨幣改革によって物価を安定させ、その成果を以て、三男の金ジョンウン(正恩)後継体制を確固たるものにしようという腹積もりだったが、結局のところ失敗に終わったようだ」とも語っている。 早く米朝国交回復の手を打て!この北京外交筋の分析の真偽はさておき、分析内容は日本をはじめ世界のマスメディア等が報じ、国際政治評論家らが述べているものとほぼ一致する。「真偽はさておき」と述べたのは、真実か否かはともかくとして、各国の世論がおおむねこうした分析を提示している、という現象そのものが大切だからだ。 この「現象」は、ある意味をもったシグナルと化す。つまり「金正日が健在でなければ、国交回復への道順は、また最初の一歩からのやり直しになるぞ」というシグナルだ。 北朝鮮が置かれた状況は、また、米中の「非対称戦」と「超限戦」の狭間に立つ微妙な状況とも捉えることができる。中国による経済的支配体制の押し売りは、中国による超限戦(勝つためにはあらゆる手段を行使する)とも見なすことができる。圧倒的苦境のなか、北朝鮮はこれを甘受するしかなかった。だが北朝鮮は同時に、対中国戦略の先兵となることを、非対称戦を仕掛けようとする米国にシグナルとして送っているように思えるのだ。 米中、そして北朝鮮の状況は、簡単に述べると以上のようになっている。この状勢を判断し、日本はどう動くべきか。これが外交戦略である。民主連立政権はどんな戦略を持ち、どういった戦術でそれを実行に移そうと考えているのか。それを問い質したい。 3月8日「産経新聞」(WEB版)によると、昨年夏の政権交代の後、朝鮮総連が民主党の議員等に働きかけ「対北制裁の撤回をさせる世論工作を行った」という。さらにその結果として、「日朝民間交流事業として40団体の訪朝団を実現した」と報告。中央や地方で政界やマスコミ、労組などに「親北勢力」を再構築し、反共和国(反北)に対する糾弾ムードを組織したと述べている。 現在の北朝鮮は基本的・原則的に日朝平壌宣言を履行せず、あいかわらず拉致問題に拘泥している日本を「まったく相手にしていない」。したがって民主党政権に変わろうと、平壌政府自らが日本の民主党工作を働くことはない。「北朝鮮が民主党に対し工作活動」とは、それがどんなにありそうに見えても、実際にはない。民主党に対し工作活動を仕掛けるのは北朝鮮政府自身ではなく、日本の朝鮮総聯(在日本朝鮮人総聯合会)による独自の行為、と考えていい。 すでに本紙1月5日「海外展望」に記したが、「北朝鮮による日本人拉致問題をめぐり、複数の民主党関係者が昨年夏以降、数回にわたって中国で北朝鮮側と極秘に接触し、拉致被害者の行方を確認するよう要求していたことがわかった」「北朝鮮側は、民主党関係者に対し、拉致被害者の中に生存者がいる可能性を示唆しているという。北朝鮮側の対応次第では今夏の参院選前にも日朝両国の公式協議が始まる可能性が出てきた」(「産経新聞」WEB版より引用)といった情報も存在する。さらに小沢一郎の関係者が北京で北朝鮮高官と何かを話し合っていることが確認されている。むしろ民主党の方が、北朝鮮に対しさまざまな働きかけを行っているのだ。 働きかけるのはいい。問題は、どのような大局的目標をもって動いているか、である。激動の世界、動乱のアジアにあって、日本は何をすべきか。日本の未来のため、アジアの明日のために何をやるべきか。民主連立政権はこれを明確に意識する必要がある。 日朝関係正常化はあり得ないか田中角栄がロッキード事件で首相の座から引きずり降ろされたのは、米国の頭越しに日中国交回復をやったためである。この説に異論は山のように出ているが、どんなに粉飾しようが、日中国交回復が角栄の致命傷になったことは間違いない。 北朝鮮と接触し、国交回復までは遠く及ばなかったものの、北朝鮮と接触したというだけで政界から追い出され、挙げ句に膨大な不正蓄財まで摘発されたのが金丸信だった(東京佐川急便のヤミ献金が発覚した当時の金丸信の役職は自民党副総裁)。金丸の場合も、失脚理由がいろいろ説明されるが、根幹は、米国の頭越しに行われた北朝鮮との接触だった。 北朝鮮との接触が米国の怒りに触れた――。こう理解した金丸信は、訪朝時の自民党幹事長・小沢一郎を伴い、謝罪のために直ちに米国に飛んだ。 本紙は、当時高級官僚として二人の訪米の実態を掌握していた人物に、その話を聞くことができた。それによると、金丸・小沢の土下座訪米は、米国からは完全に無視されたという。 「金丸、小沢の二人は、米国に着くと、まず最初にCIAを訪れた。ところが応対に出たのは二十歳代の若僧。何を説明しても、『了解しました。後刻、上司に伝えておきます』で終わったという。翌日、ホワイトハウスを訪れたところ、ガードマンから『お前たちの入り口は、ここではない』と言われ、裏口に回るように指示されたと聞いています」(前出の元高級官僚の話) 日本が米国の頭越しに北朝鮮と接触すれば、とんでもないことになる。小沢一郎はこのとき、明確にそれを理解したはずだ。 平成4年(2002年)9月、小泉純一郎首相(当時)は、平壌を訪れ、日朝国交正常化交渉を開始した。この直前、小泉は訪米し、日朝首脳会談の方向性について、ブッシュ大統領(当時)と緊密な話し合いを行っている。このとき小泉の口から出た「拉致問題の解決なくして日朝国交交渉に妥結はない」という言葉に国民大衆は熱狂。これがその後の日朝交渉の重い足枷となってしまった。 北朝鮮が拉致問題解決に対し真正面から答えるはずがない――。平成4年当時、米国も日本も、いや中国、韓国、ロシアを含め世界中がそう考えていた。ところが金正日総書記は拉致を認め、正式に謝罪したのである。これは衝撃的、驚愕の出来事だった。 後から分析すると、北朝鮮は日朝国交正常化交渉を本気で願い、そのためにあらゆる手を打つ覚悟を持っていたことが理解できる。だが平成4年9月17日の時点では、小泉も日本政府もマスコミも、そして国民までが冷静さを失い、相応な対処ができなかった。外交戦略の天才といわれる金正日に比べれば、日本は余りにも軟弱だった。 あのとき、小泉政権が冷静に対応し、日朝交渉が継続されていれば、北朝鮮との関係は今日のような冷めたものではなかっただろう。だが小泉には、米国より先に北朝鮮と国交回復を行う度胸がなかった。同時に官僚を中心とした圧力が、日朝交渉を破断させる方向に動いた。 今日もなお、日本の官僚は日朝国交正常化に消極的である。いや消極的どころか、日朝国交正常化を阻止しようと動いている。 先ごろ、日米間を巡る「核密約」が話題になっている。国会でも議論されてはいるが、米国側は、「日本政府の問題。この問題が日米関係に著しく影響を与えるとは思わない」(3月10日クローリー次官補)と冷静さを装っている。 米国の言われるがままに何でも要求に応えてきた自民党政権時代のことだ。国民大衆の多くは、核密約は当然のことと思っていた。密約が明らかになっても、それほど衝撃は受けなかった。米国側にも自民党側にも、バレてしまったのだから仕方がないといった諦めの雰囲気も漂っている。だが北朝鮮に関する秘密をバラすわけにはいかない。 それでは実際のところ、北朝鮮、米国、日本を巡って、「秘匿し続けなければならない事実」など存在するのだろうか。――その可能性は非常に高いのだ。本紙は衝撃の証言を、真実を知り得る情報源から直接聞いているし、その証拠も存在していると聞いている。その証拠が表に出たら、世の中がひっくり返ってしまうような「事実」が存在している。これを隠し通そうと、死力を尽くしている人間たちもいる。 だからこそ、北朝鮮問題は進展しないのだ。現実に、拉致問題の責任部署にいる高級官僚は、こう断言している。 「民主党政権下では、拉致問題解決に関して、これ以上進展させる気はありません」 日朝国交正常化が進展することを米国が嫌う理由は、もっと単純な経済的覇権問題だと見るむきもある。 わが国が北朝鮮の「宗主国」だったことを思いだそう ここでちょっと話を北朝鮮から離れ、韓国に向けてみよう。1910年8月から終戦(1945年)9月7日まで、つまり大日本帝国による韓国併合から太平洋戦争終結まで、朝鮮半島は日本の統治下にあった。 戦後、紆余曲折を経て、昭和40年になってやっと結ばれた「日本国と大韓民国との間の基本関係に関する条約」(日韓基本条約)が結ばれた。 条約が結ばれた当時の韓国は、工業化に成功した北朝鮮より貧しく、国民は貧困に喘いでいた。零戦はおろか原爆までをも開発しようとしていた日本の科学技術と比べ、朝鮮の技術力は李氏朝鮮時代の亀甲船からあまり成長していなかった。旧ソ連の初期と同様、社会主義国はその離陸時において、一時的に資本主義国を凌駕することがある。昭和40年当時、北朝鮮は大日本帝国が朝鮮半島北部に残した、たとえば東洋一のダム(水豊ダム)や、旧日本窒素の残した工場など「帝国の遺産」を活用し、工業化に一定の成功を収めていた。だが、韓国には何もなかったのである。 そんな韓国では、1961年(昭和36年)にクーデターがあり、独裁権力を握った朴正煕大統領は強引に日韓正常化交渉を進め、条約締結に漕ぎつけた。このとき日本側は、3億ドル(約1千億円)の無償金の支払いと、計5億ドル(約1千800億円)の借款を提供している。 先に述べたとおり、朝鮮(李氏朝鮮)の技術といえば亀甲船に代表される造船。このカネを元に朴正煕大統領は、巨大タンカー建設など造船技術による経済発展をこころみる。造船と言えば典型的な重厚長大産業だ。そのため朴正煕大統領は、日本からのカネでまず財閥を育成。現代(ヒュンデ)や三星(サムソン)などいまの韓国の大手財閥企業は、このころ朴大統領の政策によって、おもに巨大タンカーの造船産業のために育成された「恐竜」であった。 やがて朴大統領の政策により、韓国は「漢江の奇跡」と呼ばれる経済発展に成功した。ところがその後、この経済発展が思いがけない方向に向いたことが明らかになった。先に述べたとおり韓国は日本から得たカネで、巨大タンカー建設のための財閥を育成。ここに港湾開発のみならず第2次産業発展のための、インフラを含むあらゆる「近代化」への準備が整えられた。 それらの整備には当然ながら日本製品が使われていた。その結果、簡単に言えば韓国工業が仕事を受注し、潤うと、同時に日本が潤うという構図が出現したのである。 旧宗主国とは、そういう力を持っている。 むろん本紙は朝鮮の日本統治の善悪や是非を述べているのではない。日本(大日本帝国)がかつて約36年間、朝鮮半島を植民地化したことは、否定しようのない歴史的事実である。日本人の一部、いわゆる歴史修正主義者を自認する人々が「日本は統治時代、朝鮮に○○を施行して、結果的に朝鮮の近代化を進めた」などと、植民地政策を肯定する主張を述べている。本紙はこのような意見に同調するつもりはなく、またこれらの人々をいわゆる「右派・愛国者」とも考えない。戦後60年、日本人の財産を守り、日本の経済繁栄に有形無形の支援をし続けたのは、紛れもなくアメリカである。だからといって、そのことで原爆投下という非人道的行為を正当化できるだろうか?植民地化により朝鮮の人々が味わった恥辱と苦しみと、「日本がしてあげた」近代化への整備との関係は、それと同じことだ。 国を侵略される、あるいは大量殺戮兵器で国民が虐殺される……これはやられた側にとって、許し難い行為である。また純粋に相手国を思い支援するなどということは、世界史上あり得ない。経済発展への支援はかならず「支援する側の思惑」で行われる。 ともあれ、日本と朝鮮との関係において、我が国は「宗主国」であり、朝鮮は「植民地」であった、という歴史的事実……このことが持つ、未来への途方もない可能性について、ここできちんと考えておきたい。 もし日朝国交正常化となれば、100%間違いなく、「日本+朝鮮半島」という、同一基盤を持った巨大経済・工業地域が出現する。世界のどの地域にも類例を見ない、傑出した頭脳と労働力が集積され、それは間違いなく世界経済の最大原動力となる。 米国のみならず全ヨーロッパが、そして中国が日朝国交正常化を望まないのは、当然のことなのだ。 米国が日朝国交正常化を望まないのは、もっと単純な理由もある。日朝が手を組むということは、北朝鮮の核が「日本のために使われる」可能性が高まることを意味する。それは米国が全力を挙げて避けなければならないものだ。 日朝国交正常化のためには、これだけの障害を乗り越える必要がある。それを承知で、小沢一郎は北京に特使を派遣し、北朝鮮高官と何度となく会談を重ねてきた。田中角栄のとき、そして金丸信のときと同様、地検特捜部からの圧力がかかった。そんな圧力が来ることは、小沢一郎は百も承知だったはずだ。 北朝鮮問題の深奥に何が潜んでいようが、いつの日か解決されねばならない。それを乗り越えない限り、日本の対米独立はない。そして、本当の意味で日本が米国と対等になったところで、日米同盟が締結されれば、これほど強力なものはない。米国はそれを理解しているか否か、わからない。理解していれば問題ないし、理解していなければ教えるしかない。 2月2日にキャンベル国務次官補、ルース駐日大使と会談し、4月末に訪米を決めた小沢一郎は、単純に、特捜部を通して米国の圧力に屈したのか。それとも、アジアの未来、世界の未来のために命を差し出そうと胆を据えたのだろうか。 小鳩が去るか? 魅力ある新党結成なるか? |


